〈艦これ×FGO〉神機残響海戦 七大洋 ~天地人の狭間~   作:やみなべ

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ちなみに本作、とにかく「定期的に書く」が第一目標なので、「intro」以降は時系列とか基本的にありません。多分作中でもその辺に触れることはほとんどないでしょう。
言わば、白紙の上にランダムに点を落としていくようなもの。それらを繋げて物語を想像するもよし、一つの話から得られた情報からその前後にあったであろうことを推察するもよし。なんなら、「付き合ってられんわ」と無視を決め込んでいただいても。

とはいえ、一応の区分けくらいはありまして「前・中・後期」の三つですね。それぞれの節目に大きめの事件があったという想定になります。そっちを書くかは全くの未定ですが、行く行くは三つの章を立ててどの辺の話なのか、大雑把にはわかるようにするつもりです。
まぁ、後期の方はまだほとんど書いてないんですけどね。


序/2027年3月25日

「……提督、ですか?」

「ええ、藤丸さんにはその資格がおありなのです。我々自衛隊としましても、民間の方を引っ張り出すのは遺憾の限りなのですが、何分適性を持つ者は限られておりまして。お恥ずかしながら、こうしてご助力を賜りたく参上した次第です」

 

人好きのする笑顔を浮かべながら、襟には大層な徽章をつけて結構偉そうに見える壮年の男性が遜ってくるものだから、どうにもすわりが悪い。

特に、さも「あなたは特別だ」「選ばれた人だ」と言わんばかりの言い様には背筋がゾワゾワしてくる。自分がそんな大層なものではないことなど、他ならぬ立香自身が一番よくわかっていた。

 

「艦娘のことはご存じでしょう? 彼女らが戦うには特別な資質を持つ人間が必要なのです。これがまた、中々適性を持つ者がおりませんで。自衛隊内でも方々手を尽くしたのですが、100名にも満たないのが実情です。

 それでも、辛うじて日本近海までは深海棲艦を追い出すことが出来ました。ですが、それでは足りないのです。日本は食糧自給率も低く、資源にも乏しい国です。今はまだ何とかなっていますが、それも時間の問題。輸出入の復活は、最優先の課題です。

 ですが、そのためには艦娘たちと共に戦える、彼女らが命を預けられる、そんな勇者が必要なのです」

 

言わんとすることはわかるのだが、一々大仰で反応に困る立香。

人によってはやる気が出たりするのかもしれないが、立香としては唯々戸惑うばかりだ。

かと思えば……

 

「アチッ……いや、お恥ずかしい。どうにも猫舌でして」

 

湯気を立てる出された茶を冷ましもせず口をつけ、ちょろっと舌を出す姿は年齢を考えれば情けなく映りそうなものだが、どうにも不思議な愛嬌がある。そういえば、部屋に通した時も家具に小指をぶつけたりしていたし、そそっかしいというかドジというか、軍人…もとい、自衛隊員らしからぬ人物だ。

まあ、あまり四角四面な人物に来られても、立香としては困ってしまったのだろうが。

 

「……不躾ですが、藤丸さんは艦娘を…彼女らをどう思われますか?」

「 カッコいいですね!

 →可愛らしいな、とは」

「ええ、彼女たちは大変容姿が整っています。“作られた存在”と考えれば当然なのかもしれませんがね、私にはそれが彼女たちの生存本能の表れなんじゃないかと思うんですよ」

 

まるで、あるいはさも当然のように艦娘を“一人の人間”であるかのように語る。

苦汁の滲んだ表情、やりきれないものを飲み干したかのような重い口調、肩には力が入り、組んだ手は固く握りしめられている。これが演技なら、大層な演技派だろう。

 

「人と同じ姿をしていれば、特にそれが見目麗しい少女や妙齢の女性の姿となれば、相手が全人類共通の脅威とはいえ、矢面に立たせることには疑問を持たずにはいられません。だからこそ、そのような姿を取ることで彼女たちは自らを守っていると思うのですよ。

 どれほど大きな力を持っていても、彼女たちは自らを率いる提督なしには戦えません。精神的なものではなく、実際的にそうなのです。一時であれば提督抜きでも戦えますが、彼女たちは提督との繋がりを介してしか体力を回復できません。装備は修復できますし、弾薬も補充できます。体に負った傷も、専用の設備があれば治せます。しかし、失った体力だけは無理なのです。食事や睡眠で多少は回復できますが、提督との繋がりから得られる力がなければ、いずれは衰弱する」

 

聞けば聞くほどに、懐かしい人たちを思い出す。人間と比べ、はるかに卓越した力を持ちながら、契約者がいなければほんの数時間、長くても数日で世界から消えてしまったかけがえのない人たち。

目の前の人は知る由もないはずだが、立香にとってその話はとても他人ごとには聞こえなかった。

 

「身内の恥となりますが、そんな彼女たちを“道具”や“兵器”と見る者は少なくありません。

気持ちはわかるのです。人の枠組みを大きく超えた力に対する畏怖もあるでしょう。年若い女性を戦わせ、自分は安全圏から指示を出すことへのやるせない気持ちもあるのだと思います。だからこそ、“替えの利く道具”や“消耗品”として見てしまった方が楽なのです。

ですが私は、それは違うと思うのです。彼女たちにも心があり、個性があり、命がある。我々と何も変わりはありません。しかし、現実問題として彼女たちの力なしに海を奪還することはかないません。彼女たちには戦ってもらわねばなりません。ですがせめて、彼女たちを一人の女性として、かけがえのない仲間として、人の世の理不尽から守ってくれる…そんな人に提督となっていただきたいのです」

 

言っていることは正しい。彼の主張は、立香にとっても共感できるものだ。サーヴァントと比べあまりにも無力な立香だったが、それでも彼らのためにできるだけのことはしたかった。ちっぽけな自分でも、彼らを守り助けることができるのなら、何でもやるつもりだったから。

結局助けられてばかりの自分だったけど、皆はこんな自分を最後まで支えてくれた。守り、助け、道を拓き、信じて送り出してくれた。ただ、その信頼に応えたいと駆け抜けた10年前の日々だった。

 

「今も、彼女たちは過酷な戦場に向かっています。傷つき、恐怖を押し殺し、時には仲間を失うことも。それはすべてこの世界のためなのです、我々のためなのです。私は、彼女たちの献身に何か一つでも報いたい。

 口惜しいことに、私に適性はありませんでした。ですが、それならば適性のある方に、志同じくしてくださる方に、彼女たちの側に立っていただこうと思うのです。こんなことしかできない私ですが、私にもできることがあるのなら、それを惜しみたくはないのです」

 

つくづく、彼の言葉に頷くばかりだ。

その声に宿る焦りも理解できる。今まさにどこかの海で艦娘たちは命を賭して戦い、散って行っているかもしれないのだから。むしろ、当然のことだろう。

 

「っと、いや失礼。年甲斐もなく、熱くなってしまいましたな。いや、お恥ずかしい」

「気持ちは、分かるつもりです」

「有難い。答えは急ぎませんので、どうかご一考いただければ」

 

深々と頭を下げられると、流石に恐縮する。年齢も社会的地位も上の人物にそんなに頭を下げられるのは、本当に困ってしまう。

 

「そう言えば、藤丸さんは昔よく海外旅行をされていたとか。もしや、今のお仕事も?」

「→出来るだけたくさんの人に、“こんな暮らしもあったんだ”と見てもらいたくて

  旅の中で見てきたものを、無駄にしたくなかったんです」

「なるほど。今の時代、国内はまだしも海外旅行は難しいですからな。恥ずかしながら、私は海を越えたことがないのですよ。ですから、このような異国情緒あふれるデザインというのは、少々憧れます。まぁ、妻にはいろいろと買い過ぎて叱られてばかりですがね」

 

立香の仕事はなにも室内空間の演出だけではない、家具や壁紙、雑貨のデザインなども手掛けている。昔取った杵柄で建造物の構造や資材の知識は少なからずあったし、なにより……自分たちだけが知っているものをそこで終わりにしてしまいたくなかった。“彼ら”は確かにいたのだと、その“歴史”は確かにあったのだと、その痕跡を残したかった。

しかし、旅の思い出や出来事を公開することは固く禁じられている。そこで選んだのがこの仕事だった。立香たちが見たものを知っているのは仲間たちだけ、報告書からでは詳しい生活様式や文化など知る由もない。

だからこそ、立香はそれを世界に伝えることを仕事に選んだ。

 

世界中を回っていたのも同じ。かつて旅した場所を巡り、彼らが生きていたかもしれない場所を目に焼き付けたかった。あの旅を、あの日々を、“過去”の一言で置き去りにはしたくなかった。

最早二度と巡り合うことはないであろう、パートナー(後輩)のためにも。

 

「しかし、不躾ですがなぜこのような山奥に? 色々と不便なのでは?」

「→山が好き――――! でも、海も好き――――――――!

  ネット注文とかあるし、そんなに不便でもないですよ

  自分で家具を作るのもやってみたくて」

「は、はぁ……」

 

というのは、まぁ冗談だが。

元をただせば、先の旅の話にもつながることだ。なにしろ、その旅も決して安全とは言い難いものだった。

そもそも、旅の中で多くの縁を紡いだからか、ついには協会に目を付けられ危うく“貴重なサンプル(封印指定)”として保存されるところだった。そちらは、契約の要であった“右手”を差し出すことでかろうじて回避できた。なので一応、協会からは“手出し無用”との御触れが出ている。

しかし、それに大人しく従う輩ばかりではない。立香がこの山中に居を構えているのも、“安全圏”として確保してもらった場所だからだ。旅に出た場合、命を狙われる可能性は否定できない。

まぁ、その旅の最中に出奔した人体工学に優れた人の好い“元”魔術師と出会い、右手の義手をあつらえてもらったのだから、人生とはつくづく何があるかわからないものだ。

 

そのまま、しばらく雑談に興じると彼はあっさりと帰っていった。もちろん、艦娘や提督の話などを蒸し返すこともなく。本当に“できればやって欲しいが無理は言わない”と態度で示していた……ように思える。

 

一等海佐という結構偉い立場の人の乗った車が去っていくのを見送りながら、立香は彼が残していった書類を手に取り苦笑いを浮かべる。

 

「“赤紙”とはまた、シャレが利いてる」

 

まぁ、ジョークはジョークでもブラックジョークの類だろうが。

 

とその時、立香の背後の茂みから何かが飛び出してきた。

それは、一見すると仔猫のような…でも四肢が太くがっしりとしており、頭には何やら金と青の縞模様の被り物。ここまでであれば、獅子の子どもが変な被り物をしている…位でかろうじて通る、かもしれない。問題なのは、その小動物には顔がなく、顔を含めた全身が宇宙柄であること。

もちろん、こんな生物が通常いるはずがない。普通なら驚天動地ものだが、まだまだ。何しろ、その子どもの後ろには同種ながら体高三メートルはありそうなのが鎮座しており、その更に後ろにはその倍はありそうな巨体が寝そべっている。

 

「 大丈夫、話をしただけだよ

 →襲っちゃだめだよ」

 

一応言っておかないと、立香を害するものと判断してムシャムシャしかねない。いや、何を食べるか知らないが。

何しろ、十年近く前にどこぞのファラオからもらって以来、適当に立香の食事の一部を貰っていただけにも拘らず、このありさまだ。多分、意図的に成長を調整しているのだろうが……あまり深くは考えない。

というか、藤丸家にはこの手の“得体のしれないもの”は結構いるというか、あるというか。例えば、朝になると位置の変わっている三体のぬいぐるみとか、本当にどこからやってきているのかつくづく謎な白いモフモフとか、その他諸々本当にたくさん。

 

とはいえ、アウラード(子ども)……と今も呼んでいいのかはわからないが、あの子たちが警戒したのも無理はない。何しろあの自衛官ときたら……

 

「絶対怖い人だ、あれ」

 

外見こそちょっと抜けたところのある穏やかな人だが、その中身は徹底した合理主義者だろうというのが立香の見立て。

人間は非合理的な生き物だ。そんな人間を相手にするには、合理的に振る舞う方がかえって非合理的。本当に合理的な人はそうとは思わせない。有能かつ冷静でありながらも、人情を汲みつつちょっと抜けたところがあり、大抵のことは鷹揚に受け止めてくれるとなれば、そりゃ支持者や支援者には事欠かないだろう。多少の失敗も“まぁあの人だから”と深刻なことにはなりにくい。そういったことをぜ~んぶ計算したうえで、あのように振る舞っている。

何故そう思うのか、理由は簡単。似たような人物に覚えがあったからだ。

 

「な~んか、ダビデに似た匂いがするんだよなぁ」

 

そう、あの古代イスラエルの王様も結構似たところがあった。一見すると穏やかで寛容、親しみやすく誠実な人柄だ。涼やかで、切羽詰まることなく余裕を崩さない姿は頼もしい限りだろう。また、思慮深く軽率には敵対しない賢者でもあった。まぁ、それらとは別に自分のことを棚に上げた発言が多かったり、女性に滅法弱かったり、自己中心的な面の目立つ“爽やか系クズ”なところもあったわけだが。

もちろん、それらが嘘だとは言わない。ただ彼の本質は冷徹に、あるいは冷酷な判断を下すリアリストなのだ。

そんなダビデと、あの“ダビデ一佐(立香命名)”はどこか似ている匂いがした。

 

味方、あるいは“敵ではない”うちは良いが、明確に“敵”となった時、彼はきっと恐るべき障害として立ちはだかるだろう。

まぁ、今後どうなるかわからないことに頭を悩ませても仕方がない。それよりも、今考えるべきは……この“召集令状モドキ”の事だろう。

ダビデ一佐は「答えは急がない」と言っていたが……

 

「 ホントいい性格してる

 →あれで急ぐなって、無理でしょ」

 

あんな話をされて心動かされない人間はそうはいまい。根が善良であればあるほどに、効果が高い。

艦娘たちの置かれている現状を伝えつつ危機感を煽り、彼女たちの未来を憂えているという彼の話の内容は、立香の人間性的に思いっきりクリティカルだ。そういうことをやってくるから、彼は怖い。

 

まぁ、元より断るつもりもなかったのだが。

 

「王様の言ってた後始末、か」

 

確証はない。だが、カルデアが解体される前夜、“未来を見通す目”を持った彼の賢王は言った。

 

―――貴様にはまだやり残しがある。その完遂を以て、カルデアでの任務は完了となる。努々忘れるな、雑種

 

立香の手元に艦娘についての情報はほとんどない。おそらく、市井に出回っている以上のことと今日語られた事情以上のことは知らないだろう。いまだに手紙で細々とやり取りのある旧カルデア職員たちも、何も言ってきてはいない。

だが、それでもわかることがある。彼女たちはきっと……

 

「終わりにせず、次につなげる。それが人間だというのなら」

 

きっと彼女たちが、自分たちの“次”なのだろう。

ならば、すべきことをしなければ。かつて己が、先達たちによって多くを与えられたように。今度は、自分たちが与える側に回る番なのだろう。




以下、基本設定および注意事項になります。


●藤丸艦隊に所属している艦娘は旧帝国海軍所属艦のみ。

●マシュは生存。ただし、魔術協会や国連から立香との接触を禁じられていたので、十年近く会っていない。現在は欧州方面で国連所属の提督をやっている。艦隊は海外艦で構成。

●基本は藤丸側、偶にマシュ側にスポットをあてる予定。

●いつかは再会する…はず。

●サーヴァントが出てくる可能性もあります。そもそも立香の置かれた立場がガチで四面楚歌なので、ことと次第によってはサーヴァントの召還も十分にあり得そう。

●話の最後に「鎮守府裏日誌」なる補足説明が入りますので参考に。

●口調とか超怪しいので、やんわりご指摘ください。

●応えられるかはわかりませんが、リクエストは受け付けます。メッセージで「この艦娘とのこんな話」とざっくりとした感じで。

ネタバレ上等の設定集、いる?

  • いる
  • いらない
  • そんなことより続きはよっ
  • 全部晒してしまえwww
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