〈艦これ×FGO〉神機残響海戦 七大洋 ~天地人の狭間~ 作:やみなべ
「はぁ? おつかいぃ?」
「そ。今回霞にはそっちに行ってもらうから、そのつもりでね」
「ちょっと! ふざけんじゃないわよ、このクズ! 今回も何もこれが初出撃なんだけど! それなのに、最初の任務が“おつかい”? あたしのこと馬鹿にしてんの!」
「そんなことはないよ。駆逐艦限定ではあるけど、可能な限り最初の出撃はそっちにあてることにしてるってだけ。うちの駆逐艦は大体みんな経験してるしね」
「はい、“おつかい”が始まる前に着任した人たちは“最初の任務”とはいきませんが、みんな経験しているのです」
「してないのは……」
「電くらいですね」
「だねぇ。これをやるようになった頃には、もう電なしには運営が立ち行かなくなってたし」
「一日二日ならともかく、何日も鎮守府を空けると司令官の資材浪費が怖くて集中できないのです」
「……信用ないなぁ」
「鏡とこれまでのやらかしを見やがれ、なのです(満面の笑顔)」
「…………うぅ、いつの間にかすっかり辛辣になって」
「自業自得なのです」
「まぁ、そういうわけだから頑張って。うちでも屈指の重要任務だから」
「はぁ? おつかいの何が……」
「超重要任務なので、気を引き締めて臨んで欲しいのです。舐めてかかると痛い目を見ますよ」
「倍率も高いしねぇ」
「希望者を募ったら全員応募してきて大変だったのです」
「そうそう。で、結局順繰りに回すようになったんだよね」
「みんなやりたがるからその方が平和的なのです。下手に先着順とか抽選にすると、余計に話がややこしくなりますから」
「っていうか、軽巡どころか重巡とか戦艦とかまでこっそり応募してたりするんだよ。一回、危うく瑞鶴が紛れ込みそうになったこともあったっけ」
「大和さんもですね。大赤字になるからホンットやめて欲しいのです」
「戦艦と空母がやりたがる任務って何よ!?」
「それ位人気があるってことだよ」
「全然説明になってない!」
「さ、出撃時間が迫ってるので早く向かってください。霞ちゃんの活躍を期待しているのです」
「どういうことなの!? ねぇってば!?」
“バタン”
「……締め出したわね。まったく、何が何やら訳が分からないわよ」
「? 執務室に何か御用ですか?」
「大和さん……いや、あのクズ…司令官が“おつかいに行け”とかなんとかわけわかんないこと言って」
「あ~…そういえば、霞はこれが初出撃でしたね」
「碌な説明もないし、電は変な圧出すし……おつかいの何が重要任務なのよ」
「重要ですよ」
「は?」
「艦隊の士気にかかわる、超々重要任務です」
(や、大和さんがそこまで言うほどなの……?)
「これの成否で今後の艦隊の行く末が決まると言っても過言ではありません。
付け加えるなら、大和も一度くらいは行ってみたいです。ああ、どうして大和は駆逐艦じゃなかったのでしょうか」
(そういえば、さっき電もそんなこと言ってたわ。でも、大和さんがこんなこと言いだすなんて、いったいどんな任務なのよ)
「ちなみに、どなたと一緒なんですか?」
「確か……朝潮姉と時雨、夕立、黒潮、あと不知火だったはず」
「……なるほど。それは、厳しい戦いになりますね」
「はい?」
「六駆の誰かがいてくれれば、成功は約束されたも同然なのですが……」
(え、アイツらが頼りになる任務ってどんなのよ……)
「霞は未知数ですし、黒潮と夕立が頼みの綱でしょうか。
「…………………本当に訳が分からないわ」
・
・
・
「それで、結局どういうことなわけ?」
「どうかした、霞」
「だから、この“おつかい”のことよ! こんなことにわざわざ六隻編成で、しかも小型とはいえ船まで用意するって……」
「それだけ重要な任務ということよ。司令官、朝潮は今度こそあなたの信頼に応えて見せます!」
「朝潮が燃えてるっぽ~い。これは…またカモられるっぽい?」
「夕立…少しはオブラートに包もう」
「そ、そんなことはありません! 今度こそ、前回のような失態を犯さないよう備えてきたんですから! そうですよね、不知火!」
「無論です。今日の不知火に死角はありません」
「不知火も肩に力が入ってるっぽ~い。……不安しかないんだけど」
「なんでしょうか? 不知火に落ち度でも?」
(く、駆逐艦とは思えない眼光っ!? どんだけ本気なのよ……)
「朝潮と不知火、カモのツートップっぽ~い」
““ガ――――ンッ!?””
「……それで黒潮、実際のところどうなの?」
「………………………努力はしたんよ、それで察して」
「まぁ、そういう意味での駆け引きに致命的に向いてないからね、あの二人。司令官をダシにすれば、面白いくらい簡単に引っかかるし」
「ホンマになぁ……ひっかけるこっちが罪悪感覚えるくらいチョロいんやもん。しっかり見とかんと、また連敗記録更新するで」
「僕もあまり人のことは言えないけど、あの二人はね。やる気は人一倍なんだけど、ちょっとイノシシなところがあるから」
「黒潮が頼りっぽ~い」
「いや、なんだかんだで夕立も要領良いやん。うちだけやと手に余るし、しっかり頼むで」
「僕はどっちとも言えないから、あっちの二人の手綱を握るのに集中するよ。ちゃんと目の届くところに置いておかないと、今度はどんなガラクタを掴まされることか……」
「………………………何の話してるの?」
「あ、そうか。霞は今回が“おつかい”初めてだっけ」
「せやったら、詳しいことはまだなんも聞いとらん感じなん?」
「まぁね。っていうか、着任早々意味不明な任務を押し付けるって何なの! どんな采配してんのよ! ホンットに迷惑だわ!」
「あ~、夕立たちも初めはそうだったよね?」
「懐かしいね。何の説明もなしに放り込まれてさ」
「せやなぁ。まぁ、この艦隊なりのサプライズや。今回はお客さん気分で楽しんどき」
「すれ違う人達が、誰も彼も“頑張れ”だの“応援してる”だの言ってきたんだけど、あれも何なの」
「みんな、それだけ僕たちの成果を楽しみにしてるってことだよ」
「あ、もしかしてメモとか預かってるっぽい?」
「そういえば、なんか色々押し付けられたわ。バタバタしててまだ目を通してないんだけど……」
「見てみ。この任務の意味が分かるで」
「……………………なにこれ?」
「どれどれ……ああ、こっちは化粧品だね」
「こっちはお菓子っぽ~い」
「で、こっちのは……この字は間宮はんやね。見覚えのない名前ばっかりやけど、たぶん調味料かなんかやろ。
にしても、新人やからって押し付けすぎなんちゃう?」
「確かに。霞、次からは適当に断った方が良いよ。まぁ、受け取ったからって全部律儀に応える義務はないんだけど」
「……アンタたちも持ってんの?」
「「「うん」」」
「夕立は?」
「なにかの種とか釣り道具かしら?」
「空母とか戦艦かな? 僕は鈴谷たちからアクセサリーと服のリクエスト」
「うちは本やね。ハチやったり鳳翔さんやったり……図鑑に料理本、漫画に小説もあるで」
「あ、図書室が潤うね。リスト見せて、今のうちに目星着けておこうっと」
「ほいっと。夕立、その種の中に食べられるのとかあるん?」
「お野菜の種もあるっぽい」
「それやったら、肥料とかも確保しといた方がええなぁ。食べ物はホンマに死活問題やし」
「……どういうこと?」
「まぁ、早い話がある種の“輸送任務”っちゅうこっちゃ」
「うちの提督は大本営から思いっきりハブられてるからね。資材は元より、物資の補給も不定期で量も少ないんだ。放っておくと、そのうち干上がっちゃうくらいにさ」
「……マジ?」
「大マジや」
「だから、提督さんが民間の人たちから買い付けてるっぽ~い」
「まぁ、流石に資材とかは軍事物資だから無理だけどね。その辺に下手に手を付けると、お互いに引くに引けなくなっちゃうし。でも、食料とか嗜好品とかならまぁなんとか」
「で、ここからミソや。司令はんはちょっと多めのお金をうちらに預けてくれてるんやけど、余ったお金は自由に使ってええことになっとる。ま、ちょっとしたお小遣いやね」
「向こうもそれがわかってるから、発注した食糧以外にもいろいろ持ってきてるんだ。その上で、僕たちは浮いたお金でアレコレ買い物を楽しむ」
「みんなそれを知ってるから色々頼んでくるっぽい」
「鎮守府から本土までは一応こっちの領海だけど、完全に安全とは言い切れないからそれなりの戦力がいる。けど、軽巡以上だと資材の消費との兼ね合いで釣り合いが取れないし、潜水艦はこういうのには向かない。だから、こうして僕たちが従事してるってわけ。まぁ、駆逐艦の特権ってところかな」
「……それで“重要任務”なわけね」
「いやぁ真面目な話、士気にダイレクトに影響あるからなぁ。毎日のご飯は大事やし、おまけで買ってくあれやこれやは日々の潤いになる。それは、出てくる時のみんな様子でわかるやろ?」
「……………まぁね。そういえば、六駆が頼りになるとかなんとかって話を聞いたけど、どういうこと?」
「ああ……」
「あのおチビ達はなぁ……」
「値切りの達人っぽい」
「は? 値切り?」
「さっきも言った通り、余ったお金は自由に使っていいことになってるわけなんだけど、それなら“値切って安く仕入れられればその分買える物が増える”ことになるよね?」
「値切るの? アイツらが? って言うかできるの?」
「一言で言うと……圧巻だね」
「電は鎮守府を離れられんからわからんけど、そもそもの財布を握っとるからある意味最強や」
「……なら、他の連中は?」
「雷はねぇ……最終的に一桁単位で値切ってくるから」
「しかも、相手が泣いて“勘弁してくれ”って言い始めてからが本番とか思ってるっぽ~い」
「提督に頼られてると思って、いい意味で張り切るタイプだね。まぁ、相手からしたら“鬼”だろうけど。
参考までに、悪い意味で張り切ってカモにされるのが……」
「朝潮と不知火っぽ~い」
「「はぅっ!?」」
「多少高くても、“司令はんが喜ぶ”とか“お値打ち価格”とか言われるとあっさり信じてまうからなぁ」
「あと、“現品限り”って言葉にも弱いっぽい」
「なるほど、カモだわ」
「ま、まぁ不知火が後ろで睨みを利かせるだけでも交渉はし易くなるから、まったくの戦力外ってわけじゃないよ。……交渉には参加しない方が良いけど」
「そ、そんなことで不知火は……!」
「つまり、事実上のお荷物は朝潮姉ってわけね」
「霞!? その目は姉に向ける目じゃないわ!」
「……それじゃ響は?」
「響は……女の武器を使ってくる」
「えっ、まさか色仕掛け? あのチンチクリンが?」
「霞って実はムッツリ?」
「ち、違うわよ!」
「そっちやなくて…“涙”や」
「涙…泣くってこと?」
「“泣き落とし”って言うのが正確かしら?」
「……僕たちから見ても、演技とは思えないくらい自然に泣くんだ。考えてもみなよ、あの外見で嗚咽を零しながらハラハラと涙を流すんだよ? “みんながお腹を空かせてるんです”とか、“司令官が私たちを信じて預けてくれたお金なのに”とか言って。自分の容姿を最大限に活用して、相手の罪悪感に訴えるんだ。ある意味、雷より質が悪い」
「うわぁ……」
「しかも本人、うちらにだけ見える角度で“してやったり”って真っ黒な顔するんやで?」
「……いい性格してるわ。なら、暁は? アイツ、そういうことできそうに思えないんだけど」
「それはそれで間違ってはないなぁ……」
「雷が鬼、響が悪魔なら、暁は………天使だね」
「はぁ?」
「あ~、そういえば一番人気があるのも暁っぽい。暁がいないと目に見えて落胆するもんね」
「……どういうこと?」
「いやな、あの背伸びした感じがウケるらしくて、本人にはその気がないのに勝手に値引いてくれるんよ」
「暁の周りだけ空気が違うっぽ~い」
「そうそう。ホワホワしてるっちゅうか、みんな暁を見る目がめっちゃ優しいんよ。それで、人気取りとばかりにこぞって値引いていくっちゅうわけや」
「無邪気の勝利、っていうやつなんだろうね」
「そんな連中がいるのに取引してくれるの?」
「ま、向こうもある程度わかった上でやっとるからな。一応上客っちゅう扱いなんやろ」
「実際、毎回いろいろ買っていくしね」
「むっ。そろそろ例の海域に入ります、一度迂回しますよ」
「全艦、取り舵! ここからは警戒を厳に!」
「「「「了解」」」」
「……なんでわざわざ?」
「軍事物資には手を付けていないとはいえ、大本営からしたらこの“おつかい”は面白くないからね。鎮守府からの航路には目を光らせてるし、見つかったら多分かなり不味い」
「せやから、こうして毎回ルート変えてるんよ。向こうさんと落ち合う場所も、もちろん軍港はアウトやから人目につかない場所にしとるし」
「それもう完全に裏取引じゃない!?」
「「「「「物資を寄越さない大本営が悪い(っぽい)」」」」」
~鎮守府裏日誌~
潜水艦と駆逐艦、鎮守府で最も多忙な艦種といえばこのどちらかだろうね。
まぁ、前者と違って後者の方が数が多いから、一人当たりの負担はいくらか下がるだろうけど。とはいえ、それでも他の艦種に比べればその仕事量は圧倒的に多い。
なら当然、潜水艦たちが娯楽や嗜好品なんかで優遇されているように、駆逐艦たちにも相応の措置が必要だ。
そこで提督が考えたのが、この“おつかい”なわけさ。
別名「おつかい艦隊」なんて呼ばれるこれは、鎮守府でもダントツの人気任務だ。編成は駆逐艦限定、本人たちの頑張り次第で浮いたお金を使って自由に買い物を楽しむことができるのが最大の魅力だね。値切り上手の艦娘なんかは、割と本気でヒーローだったりするよ。
まぁ、流石に彼女たちばかりが自由に買い物をするんじゃ不公平だから、艦隊メンバーに対しての「依頼」は黙認。他の艦種も間接的に買い物を楽しんでいるし、なんあら買い込んだものを鎮守府内で売買したりするのもオッケーさ。
ただ、それでも一度はおつかいをしてみたいと思う艦娘は多いみたいで、油断するといつの間にか軽巡や重巡、場合によっては空母や戦艦が紛れ込んでいるから、そのあたりに関しては提督も入念にチェックしているよ。
ネタバレ上等の設定集、いる?
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いる
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いらない
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そんなことより続きはよっ
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全部晒してしまえwww