〈艦これ×FGO〉神機残響海戦 七大洋 ~天地人の狭間~   作:やみなべ

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余談ですが、サーヴァントと艦娘は比較の仕方で優劣が変わる設定。
それぞれのスペックを数値化して比較すると、基本的に火力と装甲などは艦娘に軍配が上がります。最低でも対軍宝具持ち出ないと駆逐艦とすら勝負になりませんしね。ついでに、運用のし易さや数の揃え易さも艦娘の長所。ただし、スピードに関してはサーヴァントに分があります。特に、水上を突っ走れるアルトリアやオリオンみたいなのは40ノット程度じゃ話にならないでしょうしね。
反面、設定上まっとうにやり合うとサーヴァントが有利。このあたり、艦娘が割とオカルトに片足突っ込んでるのが悪い。オカルト方面じゃ別格だもん、あの連中。

要は、色々な意味で運用しやすい反面サーヴァントとは相性の悪い艦娘と、色々な意味で使い辛いがハマる場面では強いサーヴァントといった感じ。
深海棲艦は姫とかのボスクラスならサーヴァント並みですかね。

とまぁ、だいたいこんな感じ?



序/2027年3月31日

一週間後。藤丸立香の姿は、太平洋の真っただ中にあった。

 

「 う―――――――――――み――――――――――!!!

  夏だ! 海だ! デッドヒートサマーレース開幕…しません、やったね♪

 →まさか、話を受けた瞬間に飛ばされるとは……」

 

流石に即決は避けて一応丸三日かけて考えた末に出た結論は、やはり当初と同じものだった。

そんな自分に苦笑しつつダビデ提督に返事をすれば、あれよあれよという間に話が進み、気付けばこうして海の上。向かう先は硫黄島、日本近海とはちょっと言えないものの、一応は辛うじて自衛隊が制海権を確保している範囲だ。とはいえ、実質的にはほとんど最前線。こんな場所に新任の、それもろくに訓練も教育も施していないペーペーを送り込むとか、立香でも正気じゃないとわかる。

まぁつまり、その裏の思惑位察せられないほど、立香も若くはないわけで。

 

「 失敗させるのが目的かぁ

 →期待されてないところからスタート…うん、懐かしくなってきた

  去勢拳されればいいのに、あのダビデモドキ」

 

なぜ失敗させたいのかは立香にはわからない。思惑は察せられても、もっと深いところを探るには足りないものが多すぎる。だが、藤丸立香の動揺は小さかった。

不安はある。恐怖もある。緊張も、焦りも、それこそ山盛りだ。

しかし、やることだけはハッキリしている。ならそれで十分。

 

そう、いつだって“やれることをやる”しかないのだから。

幸い、硫黄島には深海棲艦の侵攻に際して一度は放棄したとはいえ、自衛隊の基地がある。そこに手を加え、“硫黄島鎮守府(仮)”なるものを作ったそうな。まぁ、他と違って立香以外の提督は当面着任予定はないらしいが。

あとあまり詳しくはないが、火山島という地球のエネルギーの噴出点の一つらしいので、霊地としての格もそこそこのものだろう。第二次大戦の激戦地の一つらしいので怨念とかその辺はちょっと心配だが、慰霊はされているらしいので大丈夫…と思いたい。

 

それに、流石に一人で放り出すほど上も無体ではないらしい。鎮守府や基地、泊地には必ず数名の艦娘が配属され、またそれぞれの提督には秘書艦あるいは初期艦なる艦娘がつけられると聞いた。

孤立無援というのは立香としても流石にレアなことなので途方に暮れるところだが、そうでないなら何とかなる、多分。

 

そうやって自分を奮い立たせて硫黄島に降り立った立香を待っていたのは……思っていたよりは立派な赤レンガが鮮やかな庁舎や工廠といった施設の数々。

立香は知らないことだが、一応は“革新派”の息のかかった鎮守府(仮)なので、艦娘に対する設備は充実している。艦娘用の小奇麗な宿舎()があり、孤島という娯楽が少ない場所だからか庁舎や宿舎から離れた場所には食事処のような店舗が見える。さらに、運動場や大型の倉庫など……カルデアくらいしか知らない立香には比較が難しいが、僻地の割に設備は整っているように思われる。

 

ただ、とりあえず港に下りて指令書にある通りまず庁舎の「執務室」とやらに向かうも……

 

「誰もいねぇじゃん!?」

 

そう、人っ子一人会わないのである。一応提督だし、誰か待っててくれるのかなぁと思っていたら、だ~れも出てこない。一人寂しくゴーストタウンみたいな鎮守府を進むのは、寂しいとか怖いとか通り過ぎてなんか虚しい。

 

結局、指令書に同封されていた鍵で庁舎の鍵を開け、なんか新築っぽい匂いのする中を進み、執務室を開ければ……

 

「→え、もしかしてものすごい勢いで嫌われてる?

  ミカンの段ボールって、いつの時代の苦学生だよ

  もうドッキリでいいからだれか出てきてください。泣くよ、マジで」

 

壁紙なし、カーテンなし、絨毯はおろかカーペットもない、挙句の果てに照明は裸電球。外観と内装は立派なのに執務室だけこの有様とか、嫌がらせ以外の何物でもない…と言いたいところだが、この辺はどこの鎮守府でもはじめはこんなもの。まぁ、何の救いにもならないが。ただし、実は一番ひどいのは執務室と隣接した立香の自室だったりする。何しろベッドなし、イスなし、テーブルなし、その上風呂どころかシャワーもない。あとついでにトイレもない。トイレはまぁ、庁舎内のものを使えばいいのでまだいいが、シャワーすらないというのは衛生的にどうなのだろう。艦娘寮には風呂があるようなのでそちらを借りるという手もあるが、上官がプライベートな空間に頻繁に足を運ぶのは、あまりよくないだろう。そのあたり、ロマンもゴルドルフも結構気を使ってくれた。というか、提督なのに官舎はおろかまともな自室すら用意されていないのはどういうことか。これにはさすがに怒ってもいいと思う。

しかも、段ボールの上に載っていた封筒を開ければそこにはとある一文、内容を要約すると……

 

―――手続きに不備があり、初期艦をはじめ大淀、明石、間宮、計四名の着任は遅れる見込み。急ぎ手続きを進めるので、それまではマニュアルを参照し鎮守府を運営されたし

 

完全無欠に嫌がらせである。というかこれだと、艦娘四名と立香以外に基本的に人はいないということか? 建物が立派な分、全員そろっても寒々しさが半端ではない。

余談だが、ハード面がちゃんとしているのは“革新派”のおかげなのに対し、人員不足や着任遅れをはじめとした不手際は“保守派”の嫌がらせだ。より正確には、“革新派”も“保守派”の横槍を止めなかったからこそのこの事態。

要は、さっさと立香を追い出して本命を着任させるための手回しである。

 

が、彼らは自分たちの目論見の甘さをわかっていない。

この藤丸立香が何者で、どれほどの困難を乗り越えてきたかなど知る由もないのだから当然だろう。

 

―――右も左もわからないどころか、限りなく無知なまま炎に包まれた街に放り出されたことがある。

 

―――容易く己を殺せるものたちが跋扈する月の聖杯戦争を模した地獄を、身一つで彷徨ったこともある。

 

―――大勢の仲間たちを失い、補給はなく食料も乏しいまま閉鎖空間で雌伏の時間を過ごしたこともあった。

 

今更、誰もいない鎮守府に一人ぼっちになったところで、挫けたりするほどやわではない。

むしろかつての経験を刺激され、「意地でも居座ってやる」と覚悟が決まったところだ。

 

とはいえ、着任が遅れている四人がいつ到着するかわからない。

自慢ではないが、藤丸立香の戦力は微々たるものだ。昔からの習慣で鍛えてはいるが、深海棲艦の前では無力だろう。ならば、まず自分がすべきことは……

 

「確か、建造ってのができたはず」

 

そう。大体において、戦力補充は各鎮守府が独自に行う。稀に上から配備されることもあるそうだが、建造によって作られた“艤装”にあらかじめ用意された“ヒトガタ()”が反応し、対となる“セイントグラフ”にかつての軍艦の魂が降り、三者が一体となることで艦娘を生み出すか、かつて敗れ轟沈した艦娘を“黒い海”からサルベージするかの二択が基本。

特に前者とかメッチャ立香には覚えがあることだが、そこはスルー。サルベージはそもそも戦力がないので論外だし、上からの配備を待っている状態なのでこれも不可。となれば、今できることは一つ。

 

荷解きをする手間も惜しみ、マニュアルをひっくり返して“建造”の方法と手順を確かめる。

ここは事実上の最前線、いつ深海棲艦が襲ってくるかわからない以上戦力の確保は至上にして最優先。なんか早速書類の山とかあるが、そんなものよりこっちが大事。生きていなければ、書類を処理することもできやしない。

というか、書類の処理の手順がわからないので迂闊に手が付けられない。カルデアと同じ方式ならいいのだが、組織が変われば手順や暗黙の了解も変わる。特に、カルデアは色々と特例が重なっていたので、まっとうな書類の処理とか自信がない。

 

幸い、艦娘たちや鎮守府の設備のあれこれをサポートする通称“妖精さん”はしっかりいるのでたぶん行ける。

なんでも「見えたらレベル“1”、触れれば“2”、コミュニケーションが取れたら“3”」とか基準があり、立香は普通にコミュニケーションが取れる。が、今は知ったことではない。

ただ、ちょこまか動く姿にノウム・カルデアでシャドウ・ボーダーやストーム・ボーダーの整備をしていたネモたちを思い出すが、それも記憶の引き出しにそっと戻す。

 

「よし、まずは戦艦だ!」

 

ちなみにこの人、“軍艦”と“戦艦”の区別がイマイチついていなかったりする。精々、“戦闘に参加する艦が戦艦”、“それ以外の軍務に従事するのが軍艦”位の認識。

なものだから、脇目も降らずにマニュアルに書いてあった“戦艦レシピ”なるものを即実行。もうちょっとちゃんと見ていれば“駆逐艦”とか“軽巡洋艦”とか色々書いてあったのだが、すっかり見落としてしまうという、大ポカをやらかしてしまうのであった。

 

おかげで、自覚がないままに資材がマッハで大ピンチ。

翌々日着任した初期艦こと“電”は……

 

「着任したらすでに資材が破産寸前とか斬新過ぎるのです!!」

 

と頭を抱える羽目になったという。

 

ちなみに、立香は建造の際に燃料や鉄材、弾薬にボーキの他に自前で持ち込んだなんかよくわからない試験管を投入。その結果、どうなったかというと。

 

「え、“くちく”艦? って戦艦じゃないの?」

「ぜんっっっぜん違うのです! クジラとアザラシくらい違うのです!!」

「いやでも! ほら、ちゃんと戦艦来てくれたし!」

「それは……不幸中の幸いなのです。これで駆逐艦だったら泣くに泣けないのです。

 それで、だれがきてくれたのです? というか、建造時間は?」

「8時間だよ」

「は?」

「大和型戦艦、一番艦、大和。推して参ります!」

「ど……」

「ど?」

「どうして通常建造で大和さんが出てくるのですか!?」

 

ということで、実は各派閥から念のためスパイがてら送り込まれていた明石、大淀、間宮の三人もあり得ない事態に頭を抱えることに。

 

とはいえ、最前線であることを考えれば大変頼もしい戦力……なのだが。

 

「とりあえず、大和さん」

「はい」

「当面出撃禁止なのです」

「え、で、でも……ほら、私戦艦ですよ? とっても強いですよ?」

「強すぎて敵より先に資材が死ぬのです」

「せ、節約しますから!」

「節約してどうこうなる問題じゃないのです! 燃料も弾薬も消費が破格過ぎて戦闘=\(^o^)/オワタなのです!」

「ちなみに、もし被弾したら?」

「即破産なのです」

「ごめん、大和。大人しくしてて」

提督(マスター)!?」

 

とりあえず、資材が足りないので明石の工廠も当面は開店休業状態、大淀担当の通信に人手はいらないということから、電の(秘書官)補佐をしてもなお暇を持て余した大和は間宮の手伝いをすることに。

日本一、ともすると世界一有名かもしれない戦艦かもしれないにもかかわらず、大和は料理上手で食の面で大いに貢献してくれたのだが……

 

「ふ、ふふっ。ここでも出撃せずに結局ホテル、そう、私は大和ホテル、戦艦大和? 知らない子ですね、ウフフフフフフフフフフフ……」

 

と、日に日に病んでいくのであった。




あ、あとおまけで魔術師たちは基本的に不干渉です。
とはいえ、流石に流通が滞ると研究材料の確保も難しくなるし、場合によっては資金源が潰れてしまうかもしれないということで、艦娘の存在には目をつむっています。自分たちの秘奥とは関係ないし、神秘としては出来損ない扱いです。
自力で深海棲艦何とかすればいいじゃんって話ですが、なんでそんな些末なことに手を煩わせられなきゃならんのだ、と考えるのがほとんどなため無視を決め込んでる次第ですね。

ネタバレ上等の設定集、いる?

  • いる
  • いらない
  • そんなことより続きはよっ
  • 全部晒してしまえwww
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