〈艦これ×FGO〉神機残響海戦 七大洋 ~天地人の狭間~   作:やみなべ

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キャスト:提督、翔鶴、瑞鶴


「煙の向こうに何を見る」

「確か、地図だとこのあたりのはずなんだけど……あれは、提督?」

 

「ん? ああ、翔鶴。どうしたの、こんなところで」

 

「えっと、瑞鶴に慰霊碑があると聞いたので、一度お参りにと」

 

「そっか。なら、目的達成かな」

 

「それじゃあ、ここが……」

 

「うん。どうぞ」

 

(……綺麗。よく手入れをされていて、花もこんなに。もし沈んだとしても、こんなところで悼んでもらえるのなら、それはきっと……)

 

「綺麗なもんでしょ」

 

「はい、とても」

 

「みんなが小まめに手入れしたり、花を植えたりしてくれてるからね。特に、瑞鶴がさ」

 

「瑞鶴が?」

 

「あれ、知らなかった? 慰霊碑周りの管理は瑞鶴に一任してるんだ。

手入れや花の植え替えなんかはみんなの自主性任せとはいえ、一応全体を把握してる人は必要でしょ」

 

「そう、だったんですね」

 

「まぁ、翔鶴は来たばっかりなんだから知らなくて当然だよ」

 

「瑞鶴ったら、教えてくれればいいのに」

 

「気恥ずかしかったんじゃないかな。アレで結構照れ屋なところあるし。そのあたり、先輩に似たのかもね」

 

「先輩……加賀さん、ですね」

 

「喧嘩なんて日常茶飯事で、もう半ば日課みたいになってたっけ。その度に、電が半泣きになって仲裁してね」

 

「……ここでも、沈む娘はいるんですね」

 

「………………………ごめん。俺の、力不足だ」

 

「あ、いえ!? 別に、提督を責めているわけでは……」

 

「“未熟”って、言えたらいいんだけどね。大淀たちにも手伝ってもらって勉強はしてるし、みんなからの意見も取り入れながらやって来たけど、中々……」

 

「…………それは、仕方がないことです。私たちは、戦争をしているのですから」

 

「……」

 

「“勝敗は兵家の常”と言います。百戦して百勝とはいかなくて当然です。ましてや、ここは最前線に最も近い場所。正直に申し上げれば、今日までに轟沈が一桁で済んでいるのは奇跡的です」

 

「だとしても、それを“仕方なかった”で済ませることはできない。

どれだけ備えても足りることなんてないし、万全を期しても想定外は起こり得る。分かってるんだ、そんなことは。それでも“もっと何かできることがあったんじゃないか”、そう考えることはやめたくない」

 

「提督より優れた指揮官でも、一人も失うことなく乗り切れたとは思えません」

 

「それでも、犠牲を減らすことはできたかもしれない」

 

「……沈んでいった人たちは、悔いはあっても本望だったと思います。最善を尽くして、その末に居場所を、仲間を、大切なものを守るために戦えたのですから。それは、私たちの本懐です。ましてや、こんな綺麗な場所で眠ることができるんですから」

 

「これくらいでしか、報いてやれないだけだよ」

 

「この慰霊碑も、ですか?」

 

「自己満足さ。せめて自分の手で刻みたい、っていうね」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……お線香みたいですね」

 

「ん?」

 

「煙草の煙がお線香みたいだなって」

 

「そう、かな?」

 

「煙を目で追ってる時の提督、凄く哀しい目をしていましたから。思い出していたんですか、沈んでいった娘たちのことを」

 

「……翔鶴はすごいね。言われるまで気付かなかったけど……うん、そうかもしれない。思い返してみると、最近はここでしか吸ってなかったかも」

 

「煙の向こうの皆さんは、どうでしたか?」

 

「……笑ってた。楽しそうだったり、仕方ないなぁって困ったように笑ってたり……俺が好きだった、みんなの姿だ。勝手かな?」

 

「いえ、それで良いんだと思います。どうせ思い出すなら、綺麗な思い出であってほしいですから」

 

(……昔、“一生夢見る度に魘されるほど覚えていて欲しい”って言われたことがあるっていうのは、言わない方が良いか)

 

「私も……」

 

「?」

 

「私にも一本、いただけますか?」

 

「ダメ、俺が瑞鶴に爆撃される。線香はあるから、こっちにしなさい」

 

「むぅ……そもそも煙草って美味しいんですか?」

 

「他の銘柄は知らないけど、これ(煙龍)はクッソ不味い」

 

「……なら、なんでまたそんなものを?」

 

「昔、旅先で知り合った人からの貰い物。“礼”だとか何とか……」

 

「お礼に不味い煙草って……」

 

「まぁ、身体に悪いものだからね。不味いくらいでちょうどいいのさ」

 

「はぁ……それでは、代わりに聞かせてくれませんか、瑞鶴と加賀さんのこと。あの子のことなので、多分あれこれ誤魔化しちゃう気がするんです」

 

「そうだなぁ。例えば……瑞鶴のことを一番買ってたのは加賀だったとか?」

 

「もしかして、あの子が“一航戦”たらんとするのは……」

 

「加賀に発破をかけられたのが、今も効いてるみたいだ。そういえば、翔鶴たちも一航戦だったんだよね?」

 

「そうではあるのですが、今の私の自己認識だと“五航戦”の方がしっくりくるんです。あの頃も、前任の方々が沈んでしまった穴埋めというのが実情でしたから。“一航戦”の座を奪うにしろ引き継ぐにしろ、自信を支える“ナニカ”があれば違ったのかもしれませんが」

 

「瑞鶴にとっては、加賀の言葉がそうなのかもね」

 

「それはいったい……」

 

「ごめん。流石に、俺の口からはね」

 

「そうですね、無粋でした。でも、ちょっと羨ましいです。私も、先輩にお会いしたかった。聞きたいこと、教わりたいこと、いっぱいあったのに…残念です」

 

「また会えるかもしれないよ、縁があれば。まぁ、それはそれで一悶着ありそうだけど」

 

「クスッ……では、その時を楽しみにしています」

 

「翔鶴姉~」

 

「お呼びだよ」

 

「はい。それでは、失礼します」

 

「翔鶴姉、提督さんとなに話してたの?」

 

「色々よ。そうね、例えば……加賀さんとの話とか」

 

「ちょっ、やめてよ恥ずかしい……」

 

「……加賀、瑞鶴はしっかりやってるよ。あの日、君が言った通り。まだまだ危なっかしいところはあるけど、いまや艦隊を支える“要”の一人だ。君のことだから“まだまだです”か、“この程度で満足してもらっては困ります”か、そんなことを言うんだろうけど」

 

―――しっかりしなさい、“一航戦”瑞鶴。

 

(そうだな。なら、この“鍵”は翔鶴に託すことにしようか)




~鎮守府裏日誌~

「慰霊碑」

ある事件をきっかけに、鎮守府の一角に据えられた石碑だよ。提督は妙なところで勘が良いから、そこに名前が刻まれることは滅多にないけど…流石に皆無とはいかない。彼の指揮官としての力量はいいとこ「並」だからね、どれだけ慎重を期しても限度があるのさ。
ちなみに、材質は御影石、名前は一つ一つ提督の手彫りだよ。

鎮守府全体の運営をしないといけないから管理は瑞鶴に一任しているんだけど、偶に煙草を吸う提督の姿が目撃されるのさ。彼はそこで、煙の向こうに何を見ているんだろうね。

ネタバレ上等の設定集、いる?

  • いる
  • いらない
  • そんなことより続きはよっ
  • 全部晒してしまえwww
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