〈艦これ×FGO〉神機残響海戦 七大洋 ~天地人の狭間~ 作:やみなべ
「………………………ふぅ」
「月を、見ているのですか?」
「鳳翔? どうしたの、こんな時間に」
「なんだか寝付けないので、少し散歩を。お隣、よろしいですか?」
「どうぞ」
「では、失礼します」
「……その浴衣、初めて見る奴だよね」
「あ、はい。先日、飛龍と蒼龍が」
「ああ、“母の日”のプレゼントか。瑞鶴たちとアレコレ相談してたっけ」
「ええ。みんなで示し合わせた様で、帯や簪といった小物も揃えてくれて……ただ、慕ってくれるのは嬉しいのですが、私そんなに老けて見えますか?」
「“母の日”はあっても“姉の日”はないからねぇ」
「姉、ですか?」
「傍から見ていると、みんなの“姉”で“先生”で、そして“母”って感じかな。鳳翔、面倒見良いから」
「それは金剛さんもだと思いますけど……」
「ほら、あっちはぐいぐい引っ張ってくタイプだから。母って言う感じにはならないんじゃない?
鳳翔は陰ながら見守って、必要な時にそっとサポートしてくれるから“保護者”ポジション全般に該当するんだと思うよ」
「そういうものでしょうか……」
「ただ……」
「?」
「こうしていると、そういう保護者成分のない素の鳳翔って感じがするけどね。母でも姉でもない、一人の女の子」
「ふふっ、お上手ですね。ですが、その…少し、派手ではないでしょうか? こんな華やかな柄は、私にはちょっと……」
「そう? 落ち着いた色が似合うのは確かだけど、そういうのも好いと思うよ。鳳翔はもっと着飾ってもいいくらいだと思うし」
「な、なるほど……そ、そうだ! 提督も一献如何です?」
“コトッ”←お猪口と徳利を並べて
「……もしかして、散歩は建前?」
「偶然です。“どうせ寝酒をするのなら星を肴に”と思って良い場所を探していたら、
“クイッ”
「うん、旨い」
「星、お好きなんですか?」
「…………そうだね、ちょっと思い入れがあるんだ。色んな場所を旅してきたけど、この空だけはどこも変わらない。場所が変わっても、時代が変わっても、この空だけは……本当は違うんだろうけど、人間の視点からだとわからない」
「星の裏側でも変わらない空、ですか。理屈としてはわかるのですが、実感が湧きませんね。艦だった頃も、そこまでは行きませんでしたから」
「いつか、見に行くと良い。世界は広くて、俺たちはどうしようもないほどちっぽけだ。だけど、だからこそこの世界は多くを許容してくれる。この星からしてみれば、人間も艦娘も些細な違いでしかないんだから」
「…………そうですね。いつか、見に行きたいものです。その時には……」
「みんなで行けたら、いいね」
(……以前の私なら、こんな風に未来を語ることはなかった。私たちは戦うための兵器、役目を終えれば消えるが必定。そんな私たちにとって、未来を語ることはとても残酷なこと…今もその考えは変わらない。なのに、そうとわかって尚未来に思いをはせ、描かずにはいられない。
いつかきっと、そんな穏やかで幸せな時間が私たちにも訪れる。そう、信じたいと思ってしまう)
“チラッ”
(ヒドイ人……戦うための兵器と共に夢を、未来を描こうとするなんて。
愚かな人……平和な世界に私たちの居場所などないと、分かっているでしょうに。
悲しい人……傷つけば悲しみ、喪えば泣いてしまうのに…懲りずに私たちに寄り添おうとする。
………………………そして、誰よりも強い人。すべて承知の上で、何もかも受け入れて、それでもなおこの人は未来を諦めていない。自分の、ではなく“
……その残酷さに憤るのではなく、愚かさを嗤うのでもなく、悲しさを憐れむのですらない。“支えたい”と、そう思った時点で私の負けなのでしょうけど。でも、悔しいから少しだけ困らせてしまいましょうか)
「鳳翔?」
「提督、“月が綺麗ですね”」
「あ~…………………………」
「ふふっ、ごめんなさい。そんなに真剣に困っていただけるとは思っていなくて。酔っ払いの戯言と、流してくださってよかったのに」
「…………“死んでもいい”とは、言えないよ」
「ええ、分かっています。あなたは、それでいいのです。あなたは、決して死んではいけません。あなたは私たちの“
だからどうか、誰が沈もうとも…決して、諦めないでください。足を止めてもいい、誰かに寄りかかってもいい、時には後ろを向くのもいいでしょう。でも……」
「わかってる。大丈夫だよ、そういうのは得意だから」
「そう、ですか?」
「それにしても、夏目漱石なんてよく知ってたね」
「あら、なにしろ古い艦ですから。それに、ロマンチックじゃありませんか」
「ロマン、浪漫かぁ…そうだね、ロマンは大事だ」
「直截的な言葉もちろんもいいですけど、私はこういう表現の方が好きです」
「なるほど…俺にはちょっと荷が重いな」
「そうですか?」
「うん。何しろ、誰よりも“ソレ”が似合う人たちを知っているからね」
「? ? ?」
「孤高の空に座した女神と、愛を以て彼女を撃ち落とした狩人の話さ。“月が綺麗ですね”も“死んでもいい”も、あの二人を知ってたらとてもじゃないけど口にできないよ」
~鎮守府裏日誌~
後年、提督の経歴を知った鳳翔は轟沈する勢いで「猛省しております」と土下座したそうだよ。
ネタバレ上等の設定集、いる?
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いる
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いらない
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そんなことより続きはよっ
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全部晒してしまえwww