〈艦これ×FGO〉神機残響海戦 七大洋 ~天地人の狭間~   作:やみなべ

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キャスト:提督、電、青葉、那珂


「彼女たちの未来」

「これはまだ内々の話なんだけど、青葉と那珂は今後艦隊とは別に行動してもらうからそのつもりでね」

 

「「…………はいぃっ!?」」

 

「詳しい話は追って伝えるから今日はもう休んでいいよ。はい、かいさーん」

 

「いやいやいやいや!? いきなりすぎて何から突っ込んでいいかすらわかりませんよ!」

 

「プロデューサー! 那珂ちゃんと世界を狙おうって約束したの忘れたの!」

 

「そう言う話でもないですよね! って言うかそんな話してたんですか、あとでインタビューさせてください!」

 

「……先輩、やはりちゃんと説明した方が」

 

「司令官、イタズラもほどほどにしないと41cm三連装砲と15.2cm連装砲、オマケで90mm単装高角砲背負って40km遠泳してもらうのです」

 

「それ絶対沈むじゃないですかヤダー!?」

 

 ・

 ・

 ・

 

「……広報部門、ですか?」

 

「うん。マシュとも話し合ってね、正式に立ち上げることにしたから青葉にはそっちに専念してもらおうかなって」

 

「青葉さんの記事は私も目を通させていただきました。写真やイラストをうまく活用することで“見てわかる”ものにすると同時に、噛み砕いて文章化することで気軽に読める内容になっていたかと」

 

「その分踏み込んだことはわからないけど、そこはまぁまずは“見てもらう”のが一番だからね。踏み込んだ話は、また別の方法で発信すればいいし」

 

「えっと、青葉それは大変恐縮なのですが……具体的には何をすれば?」

 

「基本的には今までやってたこととそう変わらないよ。鎮守府内で起こったこととか日頃の様子とか、そういうのを定期的にまとめて記事にしてくれればいい」

 

「これまでと違うのは、今までは身内限定だったのが外部にも発信していくということなのです」

 

「思いつく限りの発信方法で公開していく予定ですので、各種アカウントは取得済みです。そのあたりの管理も青葉さんに一任しようと思います」

 

「まぁ、流石にみんなのグラビアとかキワドイのはちょっと慎重にした方が良いと思うから、詳しい内容は改めて詰めて行こうか。今までは身内しか見なかったから“なぁなぁ”にしてたけど、対外的に発信していくなら本人の許諾は必須だしね」

 

「は、はぁ……」

 

「那珂さんに関しては、本格的に“アイドル”として売り出していくことになったのです。ただそうなると、艦隊行動に組み込むのは難しいということで“別行動”というお話になりました」

 

「え、那珂ちゃん、メジャーデビュー決定? マジで!?」

 

「あ、青葉には那珂の宣伝とかもやってもらうからそのつもりでね」

 

「……青葉が口を挟むのもアレですが…良いんですか、そんなことしちゃって?」

 

「今後のことを考えるとねぇ、動くなら早い方が良いだろうからさ」

 

「今後というと?」

 

「戦後のこと、ということになります」

 

「え、でも……」

 

「……勝てるかどうかすらわからない状況なのに、ですか?」

 

「気が早い、というのは電も思うのです。ただ、お二人の話を聞く限り今のうちから動き出しておかないと、たぶん間に合わないのです」

 

「色々と責任のある立場になっちゃったからね。なら、“どうやって勝つか”だけじゃなくて“どうやって終わらせるか”、そして……“終わった後”のことも考えないといけないでしょ」

 

「「終わった後?」」

 

「そう……例えば、明日この戦争が終わったとしたらどうなると思う?」

 

「えっ、いくらなんでもそれは……」

 

「まぁ、明日っていうのは極端な話だけど、とにかく終わったらどうなると思う?」

 

「海が平和になってみんなスマイル! ……で、終わらないってことですよね?」

 

「残念ながら。いえ、ある意味ではそうかもしれません。世界が平和になってめでたしめでたし…とはいかないまでも、深海棲艦が現れる以前の状況か、それに近い状態にはなるでしょう。ですがそれは、社会とそこに生きる人々の話です」

 

「この戦争が終わった時、君たち艦娘はどこで何をしているのか……想像できる?」

 

「「…………」」

 

「……電には、何も思い浮かべられませんでした。司令官やみんなと穏やかに暮らしたい、そう思ってはいるのです。でも……」

 

「深海棲艦の脅威がなくなった後、世界はみなさん“艦娘”を排斥する方向に動く可能性が高いそうです。各国中枢や軍部での艦娘の扱いは、基本的に“兵器”に準ずるというのも大きいでしょう。魔術協会も、神秘に近い存在であるあなた方が社会に溶け込むことを良しとしないことは容易に想像できます。

もちろん、皆さんの意思や権利を尊重する方々もいらっしゃいます。ですが、一番の問題は圧倒的多数派である“民間”の方々にとって、あなた方が“遠い存在”であることです」

 

「深海棲艦を君たちが撃退したと情報では知っていても実感がないんだ。むしろ、“大きな力を持った存在”という認識が先行して“恐怖”の対象にすらなりかねない。そうなれば、この世界に君たちの居場所はない。

 人間は君たちに比べればずっと脆弱だけど、なんだかんだでこの星の霊長の座に治まった種だからね。魔術協会とか聖堂教会が裏から手を回せば、君たちを闇に葬っていくことも不可能じゃない。

 だからそうなる前に、この世界に君たちが生きるための“土台”を作る必要がある」

 

「それが、今回の青葉たちの人事につながると?」

 

「各国上層部や軍部、ましてや神秘側の存在について私たちができることは非常に少ないのです。でも、民間の人たちを味方につけることはできます。積極的にこちらの情報を発信し、交流を持ち、そうやって互いの距離を縮めて“親近感”を持ってもらうのが目的なのです」

 

「幸い、と言えばいいのでしょうか。皆さんは年頃の女性ですから、直接的な接点を持つ機会が多くあれば悪感情を抱きにくくなるはずです。場合によっては、その境遇に同情的な空気を作り出すこともできるでしょう。政府機関はもちろんですが、“秘匿”を第一とする魔術協会や聖堂教会としても、世論に守られた存在に手を出すのは非常に難しいのです」

 

「なにしろ、不審な失踪が続けばそれこそ“秘匿”どころじゃなくなるからね」

 

「……なるほど。そういうことでしたら、確かに“勝ってから”では間に合いませんね」

 

「そういうこと」

 

「つまり、那珂ちゃんと青葉ちゃんが頑張れば、戦争が終わった後もみんなが元気に暮らしていけるってことだね!」

 

「まぁ、あくまでも最初のステップとしてね」

 

「流石にお二人だけに任せきりにするのは負担が大きいので、施設開放や外部との交流会なども企画していく予定です。ただ、そのためにはこちらに興味を持って足を運んでくださる方を増やし、逆に私たちを受け入れてくださる環境を作る必要があります。お二人には、そのためのイメージ向上をお願いしたいのです」

 

「概要はわかりましたが、私たち二人だけでですか?」

 

「そこは大丈夫。まずは二人からのスタートだけど、みんなの興味とか展望とかを鑑みて人手は増やしていくつもりだから」

 

「例えば、舞風さんにダンスの大会などに出ていただこうかと考えています。もちろん、承諾していただければですが」

 

「あと、国連からスタッフを派遣してもらえるよう交渉済みだし、俺たちの個人的なコネもあるから。何人か集まれば上々だと思ってたんだけどなぁ……」

 

「クスッ、みなさんノリノリでしたね」

 

「そんなわけで、那珂をプロデュースする専門チームとか、メディア関係に強いイメージ対策チームとか作っていくことになる。ただ、那珂と違って青葉にはチームリーダーもやってもらうことになるし、しばらくは研修とか目白押しだよ。で、間を開けながらにはなるけど最終的に“少佐相当艦”まで昇格するからそのつもりでね」

 

「す、既に大変そうな予感が……!」

 

「他にも、これからは外からどんどん人を受け入れて行くことになる。その辺の様子なんかも発信していきたいし、人の使い方と動かし方を大急ぎで身に着けてもらう」

 

「外の人たちも受け入れて行くの?」

 

「たくさんの人たちにみんなのことを知ってもらわなきゃいけないし、みんなも“外の人間”と触れ合っていかなきゃいけないからね。なんなら、“個人的な仲”なるのも全然ありだ」

 

「え~、那珂ちゃんはみんなのものなんだけどなぁ~♪」

 

「……つまり、私たちを“人と同じもの”と見てくれる人を増やすということですか?」

 

「個人的なことを言えば、そういう考え方はどうなのかなって思う。艦娘と人間は別のものだ。どれだけ外見が似ていて、よく似た心を持っていたとしても、やっぱり“違う部分”は確かにある。それに目を瞑って“近い”ところだけを見るのもいいけど、いつか目を逸らしてきた部分が軋轢を生むかもしれない」

 

「……そうですね。私たちには人間のような“幼少期”がありません。だからなのか、生まれたばかりの生き物に触れるのはちょっと怖いのです。もしかしたら、司令官たちと電とでは“生き物”というものへの考え方も少し違うのかもしれません。そういうこと、なのですよね?」

 

「「あ~……」」

 

「電さんのおっしゃる通りだと思います。目立たないだけで、価値観や考え方に違いがあるかもしれません。他にも、体質的なことなど特にでしょう。だからこそ“違う”こともまた理解し合わなければならないのだと思います」

 

「「「……」」」

 

「まぁ、そんな深刻に考えなくていいと思うよ。言ってしまえば、そんなの“当たり前”のことで、“誰もがそう”なんだから」

 

「「「え?」」」

 

「人間同士だって価値観や考え方が違って当たり前だし、体質も人それぞれ。他人っていうのは言わば“自分とは違う生き物”だからね。さっきは“人間と同じもの”として見るのはどうか、って言ったけど、人間の定義を広げるのだって別に間違ってはいないんだ。

 重要なのは、お互いが違う存在だということを理解して、それを尊重すること。相手に自分と同じであることを強制しない、同じじゃないからと拒絶しない…人間関係の基本でしょ?」

 

「そして、そのためにはお互いのことを知らなければなりませんし、場と機会がなければ知ること自体ができません。ですから、まずはそれを作ることが目下の課題になりますね」

 

「……なんというか、司令官たちが言うと説得力があり過ぎるのです」

 

「でもぉ、個人的な仲って……」

 

「青葉的には非常に興味深いので、ぜひ取材させてほしいですねぇ」

 

「大丈夫大丈夫。珍しくはあるけど、大抵どこの文化圏でも“異類婚姻譚”っていうのはあるから。なら、現代でそれがあっちゃいけない理由なんてないよ。

 人間と神様の間でもカップルは成立するんだから、艦娘とも全然オッケー。まぁ、決して楽な道じゃないのは確かだからね。その場合、全力でサポートするよ」

 

「まぁ、実際どうなるかはやってみないとわからないのです」

 

「ところで、どんな人たちが来る予定なんでしょう?」

 

「まずは工廠や庁舎で働くスタッフの他、適性のある“提督候補”の方々もですね。育成機関を兼ね、そこから発展して鎮守府の周囲に企業を誘致します。さらに、関係者の方々のための住居を用意して、同じ生活圏で暮らしていただき、順調にいけば必要と思われる設備や施設も充実させていくことになるでしょう」

 

「そんなに上手くいくのかな?」

 

「難しいのは承知の上だよ。でも、やらなきゃいけないなら知恵を絞ってやるしかない。

 まぁ、とりあえず人が増えればビジネスチャンスは生まれるから、企業の誘致が一つの節目になるかな」

 

「理想としては、この鎮守府を中心に一つの街を作ることになるのです。艦娘が生きていける街、そのためのモデルケースと考えてください」

 

「そ、壮大だねぇ……」

 

「やるからには徹底的に、ってね。まぁ、俺もマシュもそういう方面はからっきしだから、できれば頼りになるアドバイザーが欲しいんだけどさ」

 

「何か当てはないんですか?」

 

「なくはないというか、滅茶苦茶頼りになる人材に心当たりはあるというか……問題は“どうやって”と、“頼っていいのかな”ってところなんだけどねぇ」

 

「方法論に関しては、一応目途はたっています。ただ……もう一押しが足りていない、というのが実情なのですが」

 

「「はぁ……」」

 

 ・

 ・

 ・

 

「さて……とりあえず、初めの一歩を踏み出せたか」

 

「そうですね。まだまだ不安要素と不確定要素ばかりですが、やらなければ始まりませんので」

 

「………………………最悪、戦争を長引かせることも視野に入れないとかな」

 

「先輩……」

 

「まぁ、そもそもまだ勝つと決まったわけでもないから、それこそ“捕らぬ狸のなんとやら”なんだけどさ。

 でも、できるだけたくさんの選択肢をみんなには用意したいんだ」

 

「……はい。私も、同じ気持ちです」

 

「流石に、この人数を閻魔亭とかで受け入れてもらうのは無理だろうからなぁ……」

 

「ふふっ、紅閻魔さんでも困ってしまうでしょうね。でも……」

 

「ん?」

 

「先輩は凄いです。青葉さんや那珂さんのこともそうですが、この日を見越して皆さんに色々な経験を?」

 

「それは買い被りだよ。はじめは、ただみんなに“充実した時間”を過ごしてほしかっただけさ」

 

「ですが、それが結果的に今回の件に繋がっています。お二人がそれぞれ磨き上げてきたスキルがあるからこそ、企画してすぐに動き出すことができました。

 第二艦隊の皆さんは、流石にまだそこまでは……」

 

「俺とマシュじゃ状況も違ったから、単純に比較はできないよ。こっちはああいう立地だったから好き放題出来ただけだし、マシュの方は国連の目があったんでしょ。こっちほど自由にやれなくて当然だよ。それに……」

 

「それに?」

 

「まだまだ、何もかもがこれからだ。なら、今から始めたって遅くないと思う。

 青葉と那珂のことを知って興味を持つ娘だっているだろうし、別の方向に進む可能性もある。なら俺たちは、みんなの可能性をできる限り保証していけばいい。違う?」

 

「……いえ、その通りですね。第一艦隊の皆さんをお手本に、皆さんにもいろいろなことに挑戦してもらいたいです」

 

「暴走癖もあるから、あんまりマネし過ぎない方が良い気もするけどねぇ」




~鎮守府裏日誌~

「艦位」

新体制を取るにあたり、この艦隊では独自に艦娘たちにも階級を与えることになったんだ。とはいえ、この艦隊は一応国連直轄だし、制度自体は国連が認可した正式なものじゃあない。あくまでも“艦隊内における便宜上の階級”でしかないわけさ。
そんなわけだから「〇〇相当艦」という呼び方になっているわけだね。でも、実はこれも提督たちの“艦娘がこの世界で生きて行くための土台作り”の一環だ。現状、どこの国でも艦娘は兵器かそれに準ずる扱いになっている。そこで、“階級”を与えることで有名無実化の第一歩としたわけだ。
所詮言葉でしかないけれど、その言葉で印象が変わるのが人間というモノだからね。人々の認識なんてものはそう簡単には変わらないし、無理に変えようとするとむしろ歪みが大きくなる。そう考えたからこそ、地道に、そして気付きにくい場所から変えていく方針を取ったわけだ。

ちなみに、与えられる階級は下は“兵卒”から上は“佐官”相当まで。六隻編成を基準に、一個艦隊の旗艦を務められるなら“下士官”相当、数個艦隊なら“尉官”、青葉のように何かしらの部門を統括するなら“佐官”、というのが目安かな。
そして、ぶっちゃけ佐官相当の階級にいる艦娘は十人に満たない。つまり、“少佐相当艦”になる予定の青葉は艦娘の中ではトップクラスに偉くなるのさ。

まぁ、その代わり今後彼女が戦場に出ることはほとんどないだろうけど。広報部門で頑張るというのももちろんあるけど、社会適応のモデルケースという意味合いもあるからね。

ネタバレ上等の設定集、いる?

  • いる
  • いらない
  • そんなことより続きはよっ
  • 全部晒してしまえwww
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