エレノアは心の闇に呑まれた娘を見て、深い悲しみを募らせた。
子供達が暗黒面に踏み込まなくてもいいように、自ら破滅を選んだはずだった。しかしステファニーは両親に会えないと知り、あり得ない行動に出たのだ。結果的に恋人や家族までも巻き込み、彼女自身も闇に囚われてしまった。
ステファニーを呼ぶエレノアの声は、ひどく冷えていた。
「ママ…?どうしてそんな顔をするの……?」
『ステフ、ジェレクを蘇らせたのはなぜ?』
その言葉に、面々がショックを受ける。ユグノは予想していたが、信じたくなくて悲しげな表情を見せる。エドワードは姉の悪事に、怒りを覚える。
「ステフ!なんで…!!」
「そうでもしないとママに会えないでしょ!っ……エディは会えなくて良かったの!?」
「良いわけないだろ!死にかけてまで会いたいのか!?そんなんで母さんが喜ぶはずないだろ!!」
そう言って、エドワードは母親を見る。
エドワードが何よりショックだったのは、フレデリックを選んだのに、ステファニーは愛する人に悲しみを打ち明けなかったこと。生涯を誓い合ったのに、分かち合わなかったことが、エドワードの怒りを駆り立てた。
それが、エレノアの願いでもあったのだから。
「ステフ……」
「フレディ、」
「ステフ、辛いなら辛いって言ってくれ。」
「あんたに分かるわけない……」
『少し口を閉じなさい、私の娘よ。』
エレノアの鋭い声に、ステファニーは大人しく黙る。
「ママ…私に会えて喜んでくれないの……?」
『私は銀河と……家族の為に暗黒面を選んだ。正反対のことをされて、喜べるはずないでしょ。』
「そんなのおかしい!どうしてママとパパが苦しまなければいけないの!?全部パルパティーンが悪いんだよ!?」
『その元凶を作ったのは私なの。だから見張ってる。自分が蒔いた種を、自分で始末しただけ。』
エレノアはダース・シディアスを監視することで、子供達が平穏に暮らせると信じていた。もしもの場合に備えて、ユグノを置く以外は、何もかもが平和だった。
だが、それをステファニーが壊したのだ。
フォースのバランスは再び崩れ、ジェレクは強くなってしまった。
『あんたはどれだけのことをしたか分かってない。』
「で、でも、」
『ジェレクは復活した後、あんたが逃げ込んだ村を襲った。当然犠牲者が出てる。その後も、ジェレクは罪無き者達を殺している。一体誰のせい?』
「そんなの……許容範囲でしょ。ママの時は、」
『私はジェダイを裏切り、1万人もいたジェダイのほとんどがジオノーシスで死んだ。その後もシディアス卿の為に手を汚し、ジェダイだけでなく、多くの民に手を掛けた。これでも許容範囲と言える?』
その結果が今の自分だと、エレノアは言う。
『私はユグノも巻き込んだ。破滅は私だけじゃなく、親しい者にも訪れる。愛する相手なら尚更。』
犠牲者は、彼らだけじゃない。ステファニーが懐いたユグノもそうだ。彼はエレノアを助け、命が尽きた。
「ステフ」
ユグノが、優しく声をかける。
「エレノアが亡霊化したのは、自らへの罰なんだ。」
「罰……?」
「多くの命を奪い、銀河に手を加えたんだ。母親と同じ轍を踏むのか?」
「………」
「ステフ、まだ間に合う。帰ろう。」
ステファニーは、フレデリックに視線を向ける。
そんな娘を、エレノアは静かに見守っていた。
これからステファニーが下す決断で、全てが変わる。エレノアは自分と同じ選択をしないように祈った。間違った選択をすれば、破滅してしまう。
自分の苦痛を、子供達に受けてほしくなかったのだ。
「ステフ」
「フレディ……もう嫌いになっちゃった………?」
「ずっと一緒にいるって言っただろ。」
「本当に……?」
「ああ。愛している。」
ステファニーは、決断をする。
そして、フォースを使いフレデリック達を部屋から追い出した。
「ステフ!!!」
エドワードは姉を呼ぶが、ステファニーはそれを拒んだ。
「もう間違えない。」
ステファニーはシスの秘術を使い、地下室に残った力を一つ一つ消していく。エレノアから渡された力も使い、シスの秘術を解いていった。やがて部屋が崩壊を始め、ステファニーの身にも瓦礫が落ちていく。
エレノアは娘が下した決断に、目を臥せる。
このまま放置すれば、ステファニーは力尽きて瓦礫に潰される。
エレノアは娘の喉元を掴み、残りの力をその身に引き受けた。
「ママっ……!?」
ステファニーはかなりの時間を要するが、エレノアには造作もないことだった。
彼女はシスの秘術を自らのものにして、ステファニーを地下室から叩き出した。
「ママ!待って!」
『私の可愛い娘………』
「っ!!」
『二度と戻らないで。』
低い声で警告され、ステファニーは何も言えなかった。
やがて、地下室は完成に埋もれてしまった。
叩き出されたステファニーは、地下室を振り返る。だがそこにはもう入口などなく、ただの瓦礫の山しかなかった。暗黒面の力も消え、何事もなかったかのように、静けさが広がっていた。
「ステフ………」
「ママが助けてくれた………」
憔悴するステファニーを、フレデリックが抱き締める。
「守ってくれたんだ。ちゃんと見てるんだ。」
「帰ろう。」
「うん……」
ステファニーはフレデリックに手を引かれ、エドワードの後に連れられていく。
だが、ユグノはそこで立ち止まった。
「ユグノ……?」
「お前達で帰れ。僕はまだやることがある。」
「でも、」
「ステフ、また会える。僕は死ぬまでいなくならない。約束する。」
ステファニーはフレデリックから手を離し、ユグノに駆け寄る。
そして、子供のように彼を抱き締めた。
「来てくれてありがとう……」
「また会おう、ステファニー。」
ユグノは彼女から離れると、3人を見送った。
エドワード達が乗ったシャトルが発つと、ユグノの隣に“ダース・ルシル”の亡霊が現れる。
更に闇を深めたダース・ルシルは禍々しく、フードの中から覗く顔はひどく歪んでいる。ユグノは彼女が隣にいても慄くことはなく、それが当たり前のように立っていた。
先に口を開いたのは、ユグノだった。
「もう自分を許しているんだろ?」
『許すも何も、自分を咎めていない。だから自分に罰を与え続けている。永遠の務めを……』
「言っておくが、僕を殺したのは僕だ。僕が自分で間に入ったんだ。誰も責められるべきじゃない。」
『………』
“ダース・ルシル”の亡霊は、徐々に人型を形成する。完全な人型になると、彼女はフードを下ろした。その瞳は、金色に染まっていた。
『エレノア・クラウドは、取り返しのつかないことをした。行動して、良くない結果が出た。それだけ。』
「だが、皇帝と違って心がある。良心を痛めて、家族の為に自分を犠牲にした。あんたは幼い僕を助けた時のままだ。」
『私はそうは思わない。』
「本当に心がないなら、ステフやエディを助けることはない。」
ユグノはそう言って、彼女に手を伸ばす。
「またな、エレノア。」
『……フォースと共にあらんことを。』
ダース・ルシルがユグノの手に触れると、その身体は崩壊する。崩壊した身体は空へ昇り、やがて塵となって消えてしまった。
その後、ユグノは一度だけステファニーの下へ訪れ、それ以降現れることはなかった。
それから、あらゆることが変わった。
ステファニーはレイの組織とは別に行動して、フレデリックと共に旅をした。力を欲するフォース感応者と話し、受け入れ、道を示した。誰もが簡単に受け入れるわけではないが、多くの者はステファニーを尊んだ。
ベンとエドワードはレイと共に過ごし、新共和国と友好な関係を築いた。
それは、エレノアにはできなかったことだ。
レイアは新しい銀河を見て、ようやく平穏が訪れたのだと安堵する。
時が経ち、人々は帝国やファースト・オーダーのことを忘れていった。
しかし、ある人物のことは忘れられなかった。なぜなら、その者はジェダイでもシスでもなく、唯一無二の存在だからだ。彼女の本当の姿だけが、後世に伝わっていった。
その者の名は、エレノア・クラウド。
またの通り名は、理想主義者。
彼女は理想を追う者である。
Fin.
《あとがき》
皆さん、お久しぶりです。
新章、終わりました………
何が書きたかったかって?
エレノアにも良心が残ってるところを見せたかっただけですw
リアルの知り合いに「ネルさん、クズすぎん?w」って言われてw
ガッツリ悪役は初めてだったので、調子に乗りました泣
大切な人は突き放しちゃあかんですよ(大事)
そんなこんなで、今度こそ完結です。
皆様、お付き合いありがとうございましたm(_ _)m
フォースと共にあらんことを。