ボクっ娘幼馴染に配信チャンネル乗っ取られたらバズり倒した   作:世嗣

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タイトルは変わりましたがまだ10話の中ということでどうか一つ。
オールキャラ集合映画みたいなもんとでも思っていただければ……。



仮面ライバー大戦2027(なお仮面をつけてるのは一人とする)(前編)

 

 

 

 リズさんに「エイジとヒロは似てる」と言われたとき、どこかで納得した自分がいた。

 

 始めた時期の差はあれ幼なじみが配信者をしているという点。

 配信の準備は基本一人でしてるらしいこと。

 オリジンというゲームを舞台に選んで、この世界を冒険していること。

 

 そして、自分のことが嫌いらしいこと。

 

 僕は後沢鋭二という人間が好きでもなければ、ノーチラスというSAO時代の僕もまた好きではない。

 ユナ―――重村優菜が将来の夢に悩んでいるとき僕は何もできなかった。

 そしてSAOの中でも彼女の体力バーが減っていくのをただ見つめるしかなかった。

 ゲームの中だったからよかったものの、あれが現実でそのままユナが死んだらと思うと、僕は自分を死ぬまで許せないだろう。

 

 だから自分を鍛えた。何があってもユナを守れるように。

 その結果フルダイブ不適合は乗り越えたし、当時いた血盟騎士団でも一軍に入れるまでになった。オリジンになってからもユナを死なせたことなんて一度もない。

 

 それでもやっぱり僕は今でも自分のことを認めてやれない。

 

 これは変わらない。一度深く心についた傷は、そうやすやすとは乗り越えられない。

 きっと僕は死ぬまで自分のことを嫌い続ける。

 

 そしてそれはきっと『彼』もそう。

 

 こう言うと知り合いに引かれるが、僕はユナ相手に炎上した相手のことはだいたい覚えているし、そのあとの顛末も含めて調べている。

 いやだって仕方ないだろう。中にはそういう中からこじらせてユナに絡んでくるやつもいるんだから。

 

 彼もその中の一人。

 だから初めて見たときでも「ああこいつはユナ相手に炎上したやつだな」とすぐに思い出した。

 

 配信の中で時折彼は自分のことを「クズでカス」と笑いながら卑下する。

 正直ああいうのはマイナスでしかないからやる意味はないと思うが、まあ言わずにはいられないんだろうな。

 彼もまた、なぜかは知らないが自分のことが嫌いなんだ。

 言いたくなる気持ちは少しだけ、理解できた。

 

 ああ、でも僕を師匠という理由は全くわからない。

 大して仲良く話してもないのに、まったく僕の何がそんなに気に入ったのか。

 

 そういえば、でもユウキ君はアイドルのユナに、ラン君はリアルの優菜に似ている気がするな。

 そのせいかあの二人といるときは少し甘くなってしまう気がする。

 

 あの二人と話す彼に、昔の情けなかった自分を重ねてしまう。

 今ならもっとやれるのにという後悔が先立ち、彼を見るたびに厳しく当たってしまう。

 僕とユナの、もしかしての可能性がそこにある気がして。

 

 だからだろうかユナも含めたすべてのプレイヤーがあきらめかけている中、僕はスリーピングナイツを見ていた。

 ユナに似てる彼女たちが何を思うのか。そして、僕と同じ立場にいる彼がどうするのか。

 無力な自分のやりたかったこと、ユナが苦しむとき僕は力になってやれなかったが、彼はどうなのか、それを見極めたかった。

 

 このままじゃ終わってしまうぞ、君と君の幼なじみの大舞台が。

 

 どうする、君は。

 

 

 

 

 

「この人数であのコボルドロードオリジンを防ぎきるのは無理だ。

 指揮担当として、撤退、もしくは玉砕覚悟の特攻を提案する」

 

 撤退か特攻!? 

 思い切りよすぎて草

 でも残りのボスの体力的にワンチャンみんなで囲んじゃえば倒せるかも

 でもあれに攻撃当てるのは厳しいだろ

 いやでもエイジいるんだぞ? ワンチャンあるって

 厳しいだろ。ここは撤退。コボルドロードのギミックわかったから次は確実に倒せるし

 面白くなってたのになあ

 頑張ってほしいけど無理は言えないかー

 

 団員たちは盛り上がってるけど、攻略の場にいればわかることもある。

 おそらく俺たちがこのまま特攻してもイルファングには勝てない。

 まず間違いなく全員ゲームオーバー、奇跡的に生き残れても二、三人が限界だろう。

 

 ならば、もうあとは『どうしたほうが配信的に映えるか』を、このレイドのリーダーであるユナに決めてもらうだけだ。

 

「……」

 

 ユナが瞳を閉じて、薄く息を吐いた。

 考える時間はそれだけで十分だったようだ。

 

「ごめんみんな、今回のレイドは撤退―――」

 

 ああ、やっぱり撤退か。

 そりゃそうか。優しいユナちゃんが俺たちに死ねなんて言えるはずもない。

 でも、みんな納得してた。それが一番現実的なのがわかってた。

 

 コボルドロードを見て、あんなのに勝てる方法を今すぐ思いつけはしなかったから。

 

 

「まだあきらめるには早いよ」

 

 

 だからこそ、その拍子抜けするほど無邪気な声はよく響いた。

 そして、その声は俺のすぐ隣のユウキから発されたものだった。

 

 ディアベルさんたちがユウキの方を見る。申し訳なさそうに、諦めをはらんだ目で。

 

 ディアベルさんが口を開けかけ、だがそれより早くユウキは口を開いた。

 

「まだ視聴者のみんな、応援してくれてるよ」

 

 あ。

 

 がんばれ! 

 まだ行ける行ける

 団長はネペントの大群も燃やしてなんとかしたし

 あと一ゲージがんばれー! 

 踏ん張りどころだよ~

 

 ……ああ、ほんとうにユウキはさ。

 

 ずっと、どこかを見てると思ってた。

 俺たちがこれからについて話してる時、もう諦めるしかないというムードになっていた時も、ユウキはどこかをじっと見ていた。

 それはきっと前線で耐えてくれてるキバオウさんや、いままで必死に戦ってきた仲間たち、そして何より応援してくれてる団員の──視聴者の声だった。

 

 俺たちは配信者。

 いつだって、俺たちを見てくれてる誰かの声に背中を押してもらってる。

 

 だけど俺たちはコボルドロードに負けそうでそれを見て見ぬ振りしようとした。

 せめて、どう綺麗に落ち着けるかを考えて撤退と玉砕とを天秤にかけようとしたのだった。

 

 ああ、こっちの方が賢い考えだ。

 俺たち以外はみんな熟練の人たちばかりで、だからこそそういう綺麗な終わり方や次につながる終わりってのをわかってる。

 

 でも、いまは誰もがルーキーの、何もわかってない無邪気なユウキの言葉こそ、正しいんだと心を動かされた。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()。そんな当たり前が、いま必要なんだと。

 

 ユナが少し屈んでユウキに目線を合わせる。

 

「ユウキちゃんは、まだ私たちが勝てるって思う?」

 

「勝てますよ! だって―――」

 

 いまここにいる配信者、そして視聴者の気持ちを代弁した質問。

 ユナのその問いかけに、ユウキは満面の笑みで答えた。

 いつものように、太陽みたいに、あたたかく。

 

「ここにいる放浪者(プレイヤー)はみんな、この世界を自由に旅する『英雄の卵』なんでしょ?」

 

 覚えてたのかよ、それ。

 一番最初の『スリーピングナイツ』の配信の時、わざわざ説明したのにお前すぐフレンジーボアに戦いに行って、ぜってえ覚えてないって思ってたぞ。

 

 この世界において『放浪者(プレイヤー)』たちは世界を自由に旅する根なし草。

 彼らは時にギルドを作り、仲間と旅をし、現地の人々を助けていく。

 その過程はいつしか『英雄』への道へとつながり、この世界を救う存在と成長していく。

 故に村の人たちは放浪者たちを暖かく迎えてくれる。

 いつか英雄になるかもしれない彼らを、自分たちを守ってくれる英雄の雛たちを信じて。

 

 

「英雄ならこんな逆境らくしょーだよ!」

 

 

 ユウキは思ったことを言っただけだ。俺が教えたことを覚えていただけだ。

 でも、それなのにいまみんなが前を向き始めている。

 

「ふ、ふふふっ」

 

「ユナ?」

 

「すごいね、ユウキちゃん。こーんなまっすぐなセリフきいたら、私も諦めたくなくなっちゃった」

 

「……ま、能天気なのかおバカなのか、ユウキちゃんなら両方かもね」

 

「いいじゃないですかリズさん。私は好きですよー、こういう熱いの。ね、ピナ」

 

「きゅくるー!」

 

「オレたちはゲーマー。逆境を乗り越えるのも醍醐味かもな」

 

 わかる。いまレイドの全員から『撤退』という文字が消えているのを。

 

「さて、じゃあキバオウもそろそろ限界のはずだ。聞かせてくれユウキ君、どうやって勝つつもりなんだ?」

 

「えっ」

 

「えっ」

 

「……」

 

「……もしかしてユウ、考えなしに言っちゃった?」

 

 ユウキがたらたらと汗を流し始める。

 

 草

 絶剣ちゃん?! 

 いやまあユウキちゃんこういうとこあるよね

 そういうとこが可愛いんだけど

 

 じっとレイドメンバーの視線がユウキに集まる。

 

 ユウキが汗を流してわたわたと何かを考えてるのはあまりにも気の毒だ。

 せめて何か俺が変わってやれれば……けど、じゃああんなのにどうやって勝てばいいかなんて……。

 

「……君ならなんとかできるんじゃないのか」

 

 エイジさん。

 

「ユウキ君は君のギルドのメンバーだ。なら、いままでこういう彼女の発言に付き合ってきたんじゃないのか?」

 

「それは」

 

 たしかにユウキがこう言うことをいうのは初めてじゃない。俺だって少なくない数こういう無茶苦茶に付き合ってきたさ。

 だけど、じゃあ今この状況でコボルドロードに勝つ案をすぐに出せるかと言われるとノーだ。

 

 ……でも。

 

「ヒロ……?」

 

 ああ、くそ木綿季のあの目は裏切れねえよ。

 もしかしてって期待と、ごめんって気持ちと、俺ならって信頼が混じった目。

 あの時、あいつら以外全てを敵に回したあの日から、俺はこの目だけは裏切らないって決めたんだから。

 

 息を吸う。

 っし! 腹は決まった。

 

「俺が何とかします。今ここにいるメンバーであいつに勝つために」

 

 ぱあ、とユウキの顔が明るくなる。

 ええいわかったわかった。だからくっつくな。配信中なんだから。

 

「言ったな」

 

 うお、エイジさんがすげえ顔寄せてきた。

 

「本当になんとかできるんだな」

 

「し、しますっ! ……さ、3分くらいいただければ」

 

「だ、そうだがディアベルさん、3分稼げるか?」

 

「厳しいね。オレが前に出て稼げて一分ってところかな」

 

「なら僕も出ましょう。それで二分だ。だがユナは……」

 

「む、私なら平気だよ! いちおう護身用にダガーも使えるし」

 

 ユナちゃんが頬を膨らませたがエイジさんは「ダメだ」と首を振る。

 

「ユナのバフはこのバトルの生命線だ。君が万が一にでも落ちれば戦線が崩壊する」

 

「あたしたちが守るとしますかね。シリカはユナと顔見知りだしちょうどいいんじゃないかしら」

 

「ですね。ピナもいるからいざとなればユナちゃんの回復もできますし」

 

「きゅくるるー!」

 

「助かる。ありがとう」

 

 エイジさんが俺を見下ろした。

 

「わかったな。これは僕らが死ぬ気で絞り出す2分だ。きみが本当に半人前じゃないのなら、死ぬ気で何か案を出せ。できなければ全滅だ」

 

「ッス! 期待には応えてみせます師匠!」

 

「期待はしてないから気負う必要はない」

 

 とーん、とエイジさんが跳躍して、低く構えた。

 

「あと、僕は君の師匠じゃない」

 

 エイジさんが駆けると、ディアベルさんもまた走り出し、残っていた多くのプレイヤーもその背中を追った。

 

 エイジさんたちのことだ。二分は絶対に稼いでくれるはずだ。

 なら俺は絶対に考えを出さなきゃいけない。

 

 任せられたんだ。ユウキの言葉がみんなを動かした。なら、俺だって。

 

 せめて考えるんだ。起死回生の一手を。エイジさんを認めさせるような、何かを。

 

 何か何か何か何か何か何か何か何か。

 

 ―――ぽかり、と頭をたたかれた。

 

「今日、一人で抱え込みすぎだよ」

 

 いつの間にか、隣に藍子(ラン)がいた。

 

「私たち配信始める時約束したよね、三人で一緒だって」

 

 ―――私たち三人は幼馴染なんだもん。ならいっしょにやるのは当たり前でしょ。

 

「困ってるんでしょ? なら頼ってほしいよ」

 

 とんとん、と藍子が背中をさすってくれる。

 

「……で、ユウは何そわそわしてこっち見てるの。来るならおいでよ」

 

「うぇっ、だ、だってボクが言い出しちゃったことだし」

 

 藍子に声をかけられた木綿季が気まずそうに隣に並ぶ。

 

「あの、ありがとう、ヒロ。いつもボクのわがままに付き合ってくれて」

 

「別に、まあ俺だってノリで言ったことだし」

 

「わ、じゃあボクとおそろいじゃん」

 

 にししと笑うユウキに、少し毒気が抜かれてしまう。

 

「……お前、初配信の時の俺のオリジンの説明覚えてたんだな」

 

「あったりまえだよ。ボクがヒロとの思い出、忘れるわけないじゃん!」

 

「はは、おつかいの内容はよく忘れるのにな」

 

「まったくだよ。昨日だってコンビニに行くっていうからきれてた顆粒コンソメ頼んでたのに、忘れてお菓子をたーんまり買い込んじゃって」

 

「ね、姉ちゃんのためにわらびもち買ってきてあげたじゃん!」

 

「それはこれとは話がべつですよーだ」

 

「ずる! ずるだよ!」

 

 一人で始めた配信だった。

 そこに木綿季が乱入してきて、藍子が俺たちについてきてくれて。

 森の秘薬で三人でぎゃーぎゃー走り回って。

 そして、はじめてニコラスに勝てなくて。

 

 もう、ああいう失敗はしたくなくて、こいつらの前では頼りになる俺じゃないといけないって思ってて。

 エイジさんに認められるには俺の力を見せなきゃいけないと思ってた。

 

 全く俺は救いようがないクズでカスだぜ。

 こんな当たり前の、俺は、いや俺たちは『スリーピングナイツ』ってことが頭から抜け落ちてた。

 

「なんでヒロ笑ってるの?」

 

「いや、くく、お前らがあまりにも当たり前のこと言うもんだら、ちょっと笑えてた」

 

「えー! それはヒロが悪いでしょ! ボクらに頼らないでうんうんうなったりしてさ!」

 

「ふふ、頼りになるクールな男のキャラ抜けてないのかも」

 

「ありえる。ヒロってばすぐカッコつけるし。ボクらの前では今更なのに」

 

 はいはいそうかよ。

 

 右手と左手をそれぞれ挙げる。

 片方はユウキに、片方はランに。

 

「半分力かしてくれよ、相棒」

 

 ぽん、とランがやさしめに拳を合わせる。

 

「それをいうなら三分の一じゃない?」

 

 ぱしっとユウキが元気よく拳を合わせる。

 

「そーそー。ボクら三人幼なじみ! ずっと一緒なんだから! 楽しいことも、思い出も、頑張ることだって三等分だよ!」

 

 そうだな。そうだよな。

 

 俺たち三人……三等分? 

 

「ヒロ、どーしたのおなかいたい? もしかして拾い食いとか……」

 

「ユウキ! お前どれくらいセンチネルのソードスキル覚えてる!」

 

「うぇ、えーと、センチネルは曲刀だったから、たぶんほとんど頭には入ってると思うけど……」

 

「オッケー! ラン、この部屋にある武器何種類か覚えてる?」

 

「団員さんの言ったことと私の記憶が正しいなら、野太刀、骨斧、タルワールの三つかな。さすがにどれが何個とかはわかんないけど、ボスは心なし刀を選ぶことが多い気もする……かな。役に立つ?」

 

「十分すぎる、ありがとう!」

 

「ふふ、いえいえ」

 

 三つの武器。足りないタンク。高速で動き回るボス。

 

 繋がった。ドライブ風に言うなら脳細胞がトップギア、リバイス風に言うなら沸いてきたってとこだ。

 

「師匠!」

 

 前線に走る。

 ちょうどボスの攻撃をいなしたタイミングだった前線メンバーが息を整えているところみたいだ。ちょうどいい。

 

「21秒遅刻だぞ。あと僕は師匠じゃない」

 

「おう、来たかスリーピングナイツ! 待たせすぎや!」

 

「サーセン!」

 

「いいじゃないか、キバオウ、エイジさん。この顔だ、何かいいアイデア、浮かんだんだろう?」

 

 へへ、さすが。ディアベルさんだ。

 

 時間がない。手短に話しますよ、作戦は―――。

 

「……無茶苦茶だ。それでいて平均台の上から落ちずに100メートル走るような精密さと、そして何より運が必要だ。あまりにも現実的ではない」

 

「―――それはっ」

 

 話し合えると、いの一番にエイジさんに否定された。

 呆れたように額を抑えつつ、けれどそのあとに一言付け加えて俺を見下ろした。

 

 鳶色の瞳には、どこか侮蔑ではない、何か不思議な色が浮かんでいる。

 

「だが、面白い。やる価値はある」

 

「師匠!」

 

「寄るな。あと師匠じゃない」

 

 つれねえなあ。

 

「この案なら、そうだな。一度部隊を分けよう。キバオウ、できるか?」

 

「おうもちろんや! まかせときや!」

 

「あとユナさんにも連絡を……」

 

「それは僕が行く。ついでにそのまま前線まで連れて来よう。この案は臨機応変な歌い分けならそっちの方がいいだろう」

 

「よし、じゃああとは……」

 

 ディアベルさんが俺たちの方を向いたとき地響きが伝わってきた。

 

 コボルドロードが動いた! 

 集まってる分狙いも正確だ~

 

 クソ、まだこっちは最後の打ち合わせが終わってねえんだぞ! 

 肩をたたかれ……師匠? 

 

「もう悩む暇はない。まずはスリーピングナイツ、任せる」

 

 短い言葉だった。

 けどそれは、エイジさんが初めて俺に向けてくれた信頼だったように思う。

 そんなの、そんなの、期待に応えたくねえわけねえ!

 

「任せてください! 師匠!」

 

「ふ、だから僕は師匠じゃない」

 

「あれいま笑いました? 笑いましたよね師匠! ねえ!」

 

「気のせいだ。ほらさっさと行け」

 

 なんだか今日だけでも、しつこいくらいこのやり取りやった気がするぜ。

 

 師匠とは認めてもらえないけど、それならせめて、その信頼には応えさせてもらいますよ!

 

 剣を抜き、左を見る。弓を手にしたランが頷いた。

 剣を握り、右を見る。剣を手にしたユウキが頷いた。

 

 いつも通りだ。

 

 なら、大丈夫。

 

「行くぞ! ユウキ! ラン!」

 

「おっけー!」

 

「まっかせて!」

 

 うおおおやるんだ

 がんばれー

 エイジにディアベル、キバオウにユナにシリカに……豪華すぎんな! 

 団長たちが向かっていった! 

 ラン姉ちゃんが後ろで援護、絶剣と団長が前で・・・

 つまりいつも通り!? 

 何か案があったんじゃ

 

「ふふ、じゃあ私も! せめて君たちを援護させてもらうよ!」

 

 ユナの歌が、聞こえる。

 

「歌はそう──《 crossing field 》」

 

 声は旋律となり、旋律は歌となり、歌は力となる。

 

 

認めてた臆病な過去、分からないままに──」

 

 

 コボルドロードがこちらに向かってくるのを迎え撃つため、ユウキを伴って走る。

 うお、はっええ! 遠くで見てた時と全然違う! 何の武器とったかもよく見えなかった。

 

 いやあわてるな。俺が目で追いきれないのは織り込み済みだ。

 そのために、ランを後ろに置いただろう。

 

「武器タルワール!」

 

「了解!」

 

 タルワール、なら初弾の攻撃はわかりきってる―――! 

 

怖がってた後ろの自分が現実に今を写す

 

 

「グ、オオオオオオッ!」

 

 縦切り―――ビンゴ! 

 

「ソードスキル、《サイクロン》!」

 

 コボルドロードの唐竹の斬撃と、俺の両手剣ソードスキルがぶつかり空気を弾けさせる。

 

「ぐ」

 

 だが弾くには至らない。

 知っている。このボス戦は相手の攻撃が強くただソードスキルをぶつけるのでは相殺できないのだ。

 

 だから俺は今日何度もつばぜり合いをさせられることになったし、ディアベルさんは相殺ではなく盾で防いでしまう道を選んだ。

 この中で唯一正面から互角に剣戟を交わせたのは、リアルスペックモンスターのエイジさんだけ。

 

 あの人に遠く及ばない俺だけじゃ、こいつの攻撃は防げない。

 

 だから、()()()()()()

 

 

夢で高く跳んだ ──」

 

 

「ぶちあてろ! ユウキッ!」

 

「ふふ、シンプルな指示は、大好きだよっ!」

 

 ユウキのアニールブレードがライトブルーの光に包まれ、加速。

 横薙ぎの一閃は、そのままコボルドロードの剣にぶち当たり、俺たちの身の丈にも迫る巨剣を吹き飛ばした。

 

「ぐ、オオオ」

 

 はじまりの王の進撃が、止まる。

 ソードスキルの中断による数秒の行動不能というオリジンにおいては()()()()()()()()()()()に従って。

 

「っしゃあ! ビンゴぉ!」

 

「ねえヒロいまボク言われたとおりにできてた! ね、ね!」

 

「おうばっちりだ! サンキュ」

 

「うぇへへ~」

 

 おおおおおおっ

 ユウキちゃんにっこにこだ

 ソードスキル二本当てで! 

 オリジンはARだしつばぜり合い起こるのめっちゃ短くないっけ・・・

 それ狙って当てに行ったってこと? 

 コワ~

 さすが絶剣

 これもしかして「ソードスキルを判断する役」と「ソードスキルを止める役」と「ソードスキルをはじく役」で分担してるのカ? 

 

 お、賢いやつがいるな。

 そうだ、俺が思いついたのはずばり、防御の役割の分担だ。

 

 コボルドロードは速い上にダメージは痛いし、ついでに武器も三種類で何をしてくるかわからない。

 だから、攻撃を相殺するときに必要な、攻撃の種類の判断、攻撃を止める、はじくという工程を三人で分けて行うようにした。

 

「俺たちは幼馴染だからな。役割だって三等分ってわけだ」

 

 ふっ、決まった。

 剣を振りぬいたまま言ったし、今回の配信でのベストシーンは決まったな。

 

 いやいや問題は解決してねえダロ! 

 すぐに刀と斧に持ち替えて攻撃してくるぞ!

 

「ああん、そんなの大丈夫に決まってんだろ」

 

 俺に攻撃をはじかれてコボルドロードがひるんでいたのは一瞬。

 すぐにタルワールを捨てて、近くの骨斧をつかんで襲い掛かってくる。

 

「俺たちが、誰と一緒に戦ってると思ってんだ」

 

 黒紫の死神と、青の騎士たちが俺たちの脇を駆け抜けた。

 

「はああっ! 受けたぞ、キバオウ!」

 

「任せとき! お、らああっ!」

 

 まず斧を盾で受け止めたのはディアベルさん。それをキバオウさんが片手剣のソードスキルで吹き飛ばす。

 

 ナイス連携! 

 でもまだ終わらないぞ

 今度は刀がキター! 

 

体はどんな不安纏っても、振り払ってく!

 

「―――甘い!」

 

 返す刀、コボルドの王から範囲攻撃の刀を振り回すが、エイジさんはその技の出の段階で、コボルドロードに追いつき、そのでたらめに速い剣で刀を吹き飛ばした。

 

 ……あの人は俺たちみたいな工夫しなくてもなんとかできちゃうんだけど。

 

「いやしかし、いい案だ。コボルドロードの武器それぞれの担当を三組作るなんて」

 

「ワイらにとっては相殺の分業っちゅーのも相性ええしな! ワイとディアベルはんは最強や!」

 

「確かに、自分は『刀だけの対応をする』と思っておけば、その分やりやすいな」

 

「お面の彼のおかげでできるんじゃないか、逆転勝利」

 

「それはさすがに過大評価だと思いますが、でも」

 

 ちらり、とエイジさんが俺を見た。

 

「希望は出てきた」

 

 ……! 師匠、ありがとうございます。

 

「僕は君の師匠じゃないけどな」

 

「な、なぜばれた……」 

 

「顔に書いてあった」

 

 コボルドロードが咆哮し、空気の振動がびりびりと肌を揺らす。

 その響きの中でユウキと俺、ディアベルさんとキバオウさん、そして師匠が構えた。

 

「オレたちで攻撃は防ぐぞ! 仲間が攻撃する隙を作るんだ!」

 

「ソードスキルの担当はさっきのを継続。受けてる間はほかの二人は回復だ」

 

「ウッス! がんばります!」

 

「君が見せた希望だ。ここまで来たら、ゴールまで走り切るぞ!」

 

「もちろんです師匠ォ!」

 

「……まったく。だから僕は師匠ではないがな」

 

 

長い夢見る心はそう、永遠で

 

 

 これ、いけるんじゃないか? 

 ここで三人並び立つのは激熱じゃん! 

 盛り上がってまいりました

 団長、これはもうぴったりの言葉、一つしかねえナ? 

 

 ああ、そうだ。この状況を表す言葉なんて、一つしかない。

 

 行くぜ言うぜ、今ここで!

 

「行きましょう! ここからが俺たちのクライマックスだッ!」

 




 
《ヒロ》
自分が嫌い、らしい。
でも裏切りたくない人がいる。

《エイジ》
自分が嫌い。
ヒロのことを遠い日のアルバムの自分を見るように見ている。
「もっとこうすればいいだろう」とか思うけど、わざわざそれを言うほどの仲ではない。
期待もしてない。だが、「もしかしたら」を捨てきれなかった。

そして、少年はそのもしかしたらに応えた。
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