ボクっ娘幼馴染に配信チャンネル乗っ取られたらバズり倒した   作:世嗣

14 / 23
一章最終話です。
二章からは少し『オリジンの世界』についても触れていくことになります。
まだ作中でオリジンの舞台となる世界の名前を言ってなかったのを覚えてるでしょうか。



仮面ライバー大戦2027(ただし仮面をつけてるのは一人とする) そして──

 

 

 すげえすげえすげえ!

 

「スイッチ、キバオウ!」

 

「あいよぉ!」

 

 コボルドロードの斧を受け止めたディアベルさんの声に合わせてキバオウさんが斬りこんでいく。

 コボルドロードの斧が跳ね上がったところに、周囲で待機していたほかのメンバーがコボルドロードに一発ずつ攻撃を当て離脱。

 

「おっと、お前はこっちを向いていてもらわないと困る」

 

 タゲが散りそうになる瞬間を見極めエイジさんは特大のスキルをお見舞いする。

 ダメージによってボスの視線を無理やり向かせ野太刀の広範囲ソードスキルを片っ端から発動前に止めていく。

 

 強いと思ってた。俺なんかじゃ及びもつかねえと思ってた。

 でも正直想像以上だ。

 この人たち、マジで上手い。

 

 俺たちが三人でコボルドロードのソードスキルを相殺するのに対し、ディアベルさんたちは二人で、エイジさんに至っては一人で潰してる。

 

 頼りになりすぎるぜ。

 

「グオオオオッ!」

 

 コボルドロードが吠え、近くの武器のいずれかに手を伸ばす。

 俺からはその武器の種類はわからないが、そのためにランには後ろにいてもらっている。

 

「タルワール! モーション下段!」

 

 下段……なら確か切り上げからの横薙ぎ二連撃、もしくは足払いだったはずだ。

 周囲のプレイヤーの配置的に足払いが有効な相手はいないし、恐らくやってくるのは―――。

 

こっち見ろこのデカブツ(スキル発動:挑発)っ!」

 

 切り上げからの連撃ソードスキル―――当たりぃ!

 

 軌道はわかってる。

 だから丁寧に、弾くことは意識せず、俺はソードスキルを丁寧にその道筋に『置けば』いい。あとはシステムに則って勝手にコボルドロードのタルワールは俺のバスタードソードのある場所に吸い込まれる。

 

 そして、あとは。

 

「はああああっ、ホリゾンタル!」

 

 こうして、ユウキが剣をはじいてくれるのを待てばいい。

 

「姉ちゃん!」

 

「任せて。この距離なら、見えれば当てれる―――!」

 

 一瞬のコボルドロードの関隙を縫うように後方からの援護射撃が飛んだ。

 弓の長大な射程からのソードスキルはまるであらかじめそうなることが定められていたように、コボルドロードの目に吸い込まれる。

 

 コボルドの王が武器から片手を離し片目を押えるモーションを見せる。

 

「ユウキ合わせろ!」

 

「もう! どう合わせるかもちゃんと言ってよ、ね―――っと!」

 

 俺が右から左に駆け抜け、ユウキが右から左に駆け抜け、剣を振るう。

 重なった剣閃のあとはボスの腹部できれいなバツ印を作り出していた。

 

 へへ、やっぱり言わなくたって大丈夫じゃねえか。

 

 ナイス連携!

 これで3回連続成功~

 体力もいい感じに削れてきたし、あと何回かループすれば勝てそう

 

 ……そうだな、確かに勝てるかもな、あと何回かループなんて余裕が俺たちにあるのなら。

 

 ちら、とユウキを盗み見る。

 額に浮かぶ汗、上気した頬。アバターはある程度リアルの状況を反映する以上、今ユウキは。

 

 ユウキちゃん結構疲れてる気がする

 疲労たまるとミスしやすくなるからな。心配だ

 だいじょうぶ?

 おみずのむ?

 

「はあ、ふう! だいじょうぶだよー団員さん! ボクまだやれるよっ、ぶいっ」

 

「はいはいわかったわかった。ほら今のうちにお茶飲んどけ。回復アイテム扱いだから体力もいくらか回復するぜ」

 

「わ、ありがと~……ねえ、ヒロなんかぬるいよ?」

 

「当たり前だろ。ポケットに入れてたんだから」

 

 いらないなら飲まなくてよろしい。

 

「のむよのむ! も~、ヒロってばさ~。ふう」

 

 やっぱり木綿季、ちょっと疲れてるな。まあ確かに今日はボス戦始まってから動き続けだ。

 いくら昔ほど体は弱くはないとはいえ、そろそろきっちいかもな。

 

 そろそろ制限時間も迫ってきた

 15分間制限残り5分

 あと五分で残りHP半分!いけるよー!

 

 ランが武器を見て、俺が止めて、ユウキが弾く。

 簡単に聞こえるかもしれないが、これはなかなか体力を削る。

 俺たちが一回でもミスればそのまま戦線は崩壊して、俺たちの負けだ。

 

 弾いて、止めて、また弾いて。

 それを何度か繰り返すうちに、偶然エイジさんが隣にやってくる。

 エイジさんは刀のソードスキルを相殺してディアベルさんにつなげつつ、こちらに声をかけてくる。

 

「スリーピングナイツ、余裕はあるか」

 

「ボクらはだいじょぶです! エイジさんの方こそ一人で大丈夫ですか!」

 

「問題ないさ。僕には筋肉がある!」

 

 また刀を相殺―――曲刀今度は俺らだ!

 

「彼らも限界が近いか……スリーピングナイツ! 時間がない! 僕らが道を開くから君たちはコボルドロードの弱点を突いて終わらせろ!」

 

「弱点……っておっとと! ユウキ!」

 

「任せて! はああっ!」

 

「弱点ってなんすか! 俺らそんなの知りませんよ!」

 

 ユウキが弾いたタルワールからコボルドロードが刀に持ち替えると、エイジさんはそのソードスキルをあえて受け流して時間を稼ぐ。

 

「喉だ! コボルドロードは厚い肉と鎧で体を守っているが、のどは唯一守りが薄い! 攻撃が直撃(クリティカル)すればまず削り切れる! もし体力が残っても少なくともダウンが取れるはずだ!」

 

 そうか、クリティカルで最低ダウンさえ取れれば残りのプレイヤーで囲んで削り切れるってわけか。

 

「でも喉とか届くかな……3メートルくらいあるよ? ボクじゃジャンプしても届かない気がするよ」

 

「ユウキチビだもんな」

 

「まだ伸びるもん! そーいうヒロだってジャンプしても絶対届かないでしょ!」

 

「いや俺はいける! 見てろ俺は夢に向かって……跳ぶ! リアライジングホッパー!」

 

「むりでしょ! ヒロ高いところ無理って自分で言ってたんだよ!?」

 

「なあにワーワーいうとるんや! コボルドロードには下段の沈み込みモーションがあるやろがい!」

 

 沈み込み……確かにあのタイミングで喉を狙えれば俺らの身長でもコボルドロードの喉は突ける。

 

「それなら……」

 

「なんか、いける気がする! だね!」

 

「俺のセリフを取るんじゃねえ!」

 

「ふっふーん」

 

「いつまで話してる! タルワールの受け持ちは僕が少しの間引き受ける! だから急げ!」

 

「助かります師匠!」

 

「だから……! くっ、攻撃が、くそ!」

 

「師匠!! 大丈夫ですか!!」

 

「ああもううるさい! 僕は大丈夫だ! 早くいけ!」

 

 何をキレてるんだろう。

 でも今はチャンスだ。今なら、いや今だからこそコボルドロードを落としきれる。

 

 ユウキと目を合わせる。

 行くぞ、俺たちで決めるんだ。

 

 ソードスキルはエイジさんとディアベルさんたちに任せて走り出す。

 俺たちとコボルドロードの距離は凡そ50メートルといったところ。

 コボルドロードの武器は刃渡りだけでも俺たちの身長に迫るほどのサイズ。防御の時は相手の間合いで弾きだけを意識すればいいが、こちらが攻撃するとなればそうもいかない。

 

 しかも俺たちはソードスキルの発動中にコボルドロードに近づいて攻撃しなきゃいけないんだ。

 

 今までと同じ方針ではやっていけない。

 

「ヒロ、方針は!」

 

「ギリギリまでは師匠たちに任せる! で、俺たちの攻撃が届く距離になったら挑発でこっちに気を引いて、それで下段の攻撃を誘う! 俺は防御! ユウキは攻撃に専念だ!」

 

「おっけー! でも誘うって……どうやって?」

 

「ランの射撃だ。コボルドロードが下段に構えるのはそこに武器があるとき、つまり腕が下がってる時だ」

 

「なら姉ちゃんの射撃で腕を攻撃してあらかじめ下げててもらえれば!」

 

 ああ、間違いなくコボルドロードは体を沈み込ませるソードスキルを使う!

 

 どうだユウキ、俺の完璧な作戦!

 

「うんいいと思う! ……けど姉ちゃんにどうやってそれ頼むの?」

 

「えっ」

 

 それは……どうやって、頼むんでしょうね……さっきまでならともかく今の距離だと声も届きにくいだろうし。

 

「えっ、考えてないの?!」

 

「やかましい! お前だってさっき何も考えなしで勝てるよ!って言ってたじゃん! ほれいいからランに伝えてみろ! 俺らに合わせて腕攻撃してくれって!」

 

「うぇええっ!? ボクぅ!?」

 

「安心しろお前の大声は近所のおばさんのお墨付きだ! 風呂で歌ってたEXCITEけっこううまかったって褒めてた!」

 

「それボク初耳なんだけどぉ! もー、ねえちゃ―――ん! ボクらが近づいて攻撃したタイミングで弓撃ってぇーーーー!」

 

「……? あんみつわらびー?」

 

「違う! 今日の夜祝賀会で食べたいスイーツは聞いてない!」

 

「ならジェスチャーだよ! 行こうヒロ! ヒロのジェスチャーのうまさはこの前ボランティアで行った子どもたちがほめてたよ! 変身ポーズキレキレだったって!」

 

 それはまたジェスチャーとは違う気がするが、ええい、コボルドロードとの距離的にもう悩んでる時間はない! これがランに何かを伝えるラストチャンスだ。

 

 しゅばばっ! ばばっ!

 

「……?? が、がんばれがんばれっ」

 

「あっだめあれ困惑してとりあえず応援しちゃったよ」

 

 がんばれがんばれいただきました

 切り抜き確定

 わちゃわちゃしてるといつものスリーピングナイツ感じる

 団長はボスが腕を上げないように威嚇射撃してくれっていってんだヨ

 

「ええい伝わらないなら仕方ない! ユウキ俺らにできることは一つだけだ!」

 

「い、いちおーきくけどそれは……」

 

祈れ!

 

「あああもおおおおそうだとおもったああああ!」

 

 半泣きのユウキと俺は、ついにコボルドロードの武器の射程、その内に入る。

 ここから俺たちの武器がコボルドロードに届くようになるまで、あと3歩ってところだろう。

 

 ならまずは―――タゲを俺に引く!

 

「グルルル……」

 

「タゲが移った、スリーピングナイツが射程に入ったか!」

 

 ディアベルさんの声が響く中、俺たちは走る。

 コボルドロードの手に取った武器は……よしタルワール。運がよかったな。

 

 あとは腕を上段に構えないことを祈って―――。

 

「ソードスキル、弓単発技《スパークルシュート》」

 

 俺とユウキの間を、紺碧の光線が駆け抜けていく。

 それがランの援護だと気づいたのは、ボスが今まさに上げようとしていた腕を矢をよけて武器を下段に構えた時だった。

 

「なんで、ランが」

 

 その時、ふと視界内の団員たちのコメント欄が目に入る。

 

 フフン、書いておいたゼ、団長の指示

 さすがラン姉ちゃん。俺たちのことも見てくれてる

 狙い通り下段が来る!

 いっけー!

 

 そうか文字!

 藍子のやつオーグマーで表示される団員たちのコメントを拾って俺の指示を理解したんだ!

 機械音痴のくせにやるじゃん。あと、団員達もありがとうよ!

 

「ヒロ!」

 

 へへ、なんだよユウキ。そんな嬉しそうに笑いやがって。でも、俺も今同じ気持ちだぜ!

 

「ユウキ、下段が来る! 俺のあとに続け! これで終わらせるぞ!」

 

「おっけー! とっておきの一撃、準備しとく!」

 

 とっておき……あ、もしかして最近練習してたあれかあ。

 なら俺も、おっと、足元に段差が、あっ。

 

「あっちょヒロ急に止まらな―――うわっ」

 

 あっ

 あっ

 

「何をやってるんだあいつは……」

 

 団長がこけたあ!?

 そしてそのままユウキちゃんが突っ込んできて一緒にごろごろ転がっていく……

 とまったのボスの足元で草

 

 いてて……ユウキが突っ込んできたせいでしこたま体を打つ羽目になった。

 

「なんでヒロ急に止まるのさ! ボクまで巻き込まれちゃったじゃん!」

 

「馬鹿突っ込んできたのはお前だろ! 俺だって急に段差とか出てきたらつまずくのも仕方ないだろ!」

 

「ボクならそんなことないもーん!」

 

「うそつく―――あん、ユウキなんか息荒くね?」

 

「そういうヒロこそなんか唸ってない?」

 

 違う違う上見て上ー!

 こんな時までわちゃわちゃやるな!!

 

 上……もしかして、うん、このらんらんと輝く瞳って、もしかするやつ?

 

「グルワオオオオオオ!」

 

「「 わああああああああっ! 」」

 

 ボスだわこれ!!! しかも俺らいるのボスの足元ですねこれ!!!

 

「ひろぉ逃げてぇ! 斬られる! 噛みつかれるし踏みつぶされる!」

 

「なら俺にしがみつくのやめろ!! 逃げるの遅れてるんだよ!」

 

「わー! 攻撃! いま服のすそかすった!」

 

 こんなことイノシシ相手にもしてたよなぁ

 なんでボス攻略会議でまで初配信と同じことしてんだよwww

 懐かしくなってきた

 成長してないのか変わってないのか

 

 

「すみませんダメでしたーっ!」

 

 ユウキを抱えて仲間の元まで戻ってくると、頭痛を抑えるようにこめかみに手を当てるエイジさんと、片や困ったように、片や爆笑して出迎えてくれるディアベルさんとキバオウさんが。

 

「ひーひー、ディアベルはん見たか? おむすび山みたいに、ころがって……アカン、思い出すだけでおもろいわ」

 

「きみはほんとに何をしてるんだ」

 

「サーセン! 次は! 次こそは!」

 

 師匠だからそんなに呆れた顔―――あれ、コボルドロードが手をこっちに向けてる。

 

 あんなモーション見たことない。

 いや違う、俺たちは一度だけ見たことがあるはずだ。

 

 あれは、そう()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「――っ、全員また武器が射出されるぞ! 防御姿勢をとれ!」

 

 ディアベルさんの声。

 そうだ守らないと、でも、距離的に俺は俺を守るので手いっぱいだ。

 

「GYAAAAAA!!」

 

 一拍置いて、周囲に刺さっていた武器が意志を持ったようにプレイヤーに襲い掛かってきた。

 やばい体力が一気に安全圏のグリーンからイエロー、うそだろ危険域のレッドまで!?

 

「はあ、はあ、ギリ、止まった」

 

 他は、幸い今のでゲームオーバーになった人は少ないな。ディアベルさんのおかげだ。

 じゃあコボルドロードは、おいまてよ、なんだあれ。

 

 コボルドロード疲れてない?

 首も下がってるしいまなら弱点狙い放題

 肩で息してるし、もしかしてチャンスじゃん

 

 やっぱり俺以外から見てもそうなんだ。

 

「ディアベルさん!」

 

「わかってるチャンスだヒロ君! こっちはさっきの攻撃で何人か麻痺して動けない君が行け!」

 

「っ、はい!」

 

「最初の動き見てる感じピヨってるのは一瞬や! ジブンやないと間にあわん! いけえっ!」

 

 俺が、行く。

 すげえ、この大舞台で俺たちにすげえ役割が回ってきた。

 責任重大だが、いけるはずだ。

 

 よし行こうぜユウキ俺たちで―――。

 

 

「いてっ」

 

 

 ユウキが、小さく声を漏らした。

 たぶん配信音声でも拾われない。そういう、小さな声。

 

 でも、ユウキは俺の数メートル後ろで、ほんの少し足を押えて顔をしかめていた。

 

 いやなに止まってんだユウキがちょっと痛がってるだけじゃんいやよくかんがえろよ今の流れ俺に任されてんだぞでもケガしてたらどうすんだよいやだとしてもいつのけがだよさっき転がったときほとんど何も無かったろ下になってたのも俺だしユウキがケガするタイミングなかったよならさ、べつに、後回しにしても、よくない?

 

「いいわけ、ねえだろッ!!」

 

 走った。コボルドロードに背を向けて。

 

 団長!?

 急にどうしたん!?

 

「――ユウキっ!」

 

 コボルドロード? 知るかそんなの。それ俺の宇宙一カワイイ幼馴染より大事なのかよ。

 

「ユウキどうしたケガか!? 足がいてえのか!? 見せてみろお前の怪我は俺なんかじゃ」

 

「わ、わ、だいじょうぶだよっ。それよりボス戦が」

 

「馬鹿か! なんかあったらどうすんだ! ゲームのことなんざほっとけ! いいからどんな怪我したか教えてみろ! 出血してたら」

 

「も、もー! 怪我とかないよ! ちょっといま武器の攻撃よけるときに尻もちついちゃっただけなんだから」

 

 ん?

 

「尻もち? 足は?」

 

「えっ、ああ、靴が汚れちゃってさ。転んだ拍子に打った時かな、払ってた」

 

 なんだよ、そりゃあ。

 

「あーーーーーー」

 

「ヒロ、その、お、怒ってる?」

 

「バーカ。んなわけあるか。安心してんだ」

 

 あーーーー、よかった。マジで安心した。

 

 団長ってユウキちゃんのことになったら結構過保護だよね

 おしりついた絶剣ちゃん

 なごんでる場合じゃないゾ! コボルドロードが来てる!

 

 コボルドロード? しまった忘れてた。時間的にもう普通の状態に戻ってる。

 しかも、いまあいつ見てるの一番近くにいる俺たちじゃねえか!

 

 狼の獣人王は疾走する。

 

 その速さはとてもじゃないが俺たちが今から立ち上がってかわせるものではない。

 

「ユウキっ!」

 

 ならせめて、こいつだけは守る。

 俺は死ぬだろうが俺のアバターが盾になってユウキは守れるはずだ。

 

 コボルドロードの攻撃は速い。きっと一秒も待たず俺はゲームオーバーになり、きれいなポリゴン片になることだろう。

 いやまあアバターだから俺の意識は消えたりしないけど、先に散っていった仲間たちのように幽霊みたいに道の隅っこで大人しくすることになる。

 

 団長なのにかっこ悪すぎる。あーあ、せめてデスペナがそんなに重くないといいなあ。

 

 いやそれにしても、攻撃来るの遅いな。

 コボルドロードもこけたのか? 一体何が背後で―――。

 

「―――え」

 

 そこには、大剣を盾にする黒紫の騎士がいた。

 

「えいじ、さん……なんで……?」

 

 ユウキがぽつりとつぶやく。

 

 そうだ、なんで、俺たちを助けに。

 

 だがエイジさんは質問には答えない。

 ただぎりぎりとコボルドロードの武器と競り合い、俺たちを守る。

 けれどしばらくして、ようやく口を開いた。

 

「守ったのか、幼馴染を」

 

 事実を確認するような淡々とした言葉だった。

 そうか、俺はディアベルさんたちに任された大チャンスを、ユウキのところに来てふいにしたんだ。

 

「―――っ、すみま」

 

「謝るな。きみはなにも間違ってない」

 

「え……」

 

 ぎぃん、とエイジさんが大剣を体ごと振り回して、ボスを吹き飛ばした。

 そして大剣を片手剣に持ち替えると、顔だけをこちらに向けた。

 

 

「まだやれるな、()()

 

「~~~~ッ、当たり前っすッ! 師匠ォ!」

 

 

 いつまでも座ってなんかいられない! ほらユウキも立って、行くぞ!

 ふ、とエイジさんが顔をほころばせる。

 

繋ぐ確かな願い、重なり合って―――」

 

 歌が聞こえる。バフがかかる。

 はるか後ろで、ユナの歌うメロディが俺たちの背中を押す風となる。

 

 

「2ラウンド目だ」

 

 

 走り出した。今度は二人じゃなくて、三人で。

 

 おおおお師弟共闘~~~!

 スリーピングナイツとエイジが!

 でも制限時間もきちいぞ!

 ギリ……いけるか?

 

「GYAAAAAAAA!」

 

「──ふっ!」

 

 コボルドロードが吠え、またもや無数に武器が飛んでくるが、エイジさんがそれをことごとく撃ち落としていく。

 

「す、すご……ボクらあんなのできないよ……」

 

「気にするな、露払いは全部僕がやる。君たちは前に進め」

 

「頼りになりすぎる……師匠ちょっとすごすぎません?」

 

「無駄口をたたく暇があったら最後に備えろ。ボスの挙動に想定にない行動が多くなってきている」

 

 確かに、時間的にもさっきみたいな全方面への一斉射出を行われればもうチャンスはない。

 

「次で決めるぞ」

 

「ウス!」

 

「りょーかいっ!」

 

 師匠が加速する。

 誰よりも早く、誰よりも強く。

 いつもはユナを守るためだけに使われるその力が、今は俺たちを導くことに使われる。

 

 すべては、勝利のために。

 

「グルオオオオッ!」

 

 刀の連撃技。一発でも食らえばそのまま即死コースの初見殺し。

 だけど残念だったな、お前、その攻撃師匠に見せすぎたよ。

 

「―――は、片手剣単発技《ヴォーパルストライク》」

 

 ジェットエンジンのような音と赤い閃光が、コボルドロードの磨き上げられた刀と激突する。

 

「行けっ、スイッチ!」

 

 前へ、進む。

 

 俺とユウキは既にコボルドロードの武器の内側、片手剣の間合いまではあと2歩!

 

 だがここでボスはまたも俺らの知らない動きを見せる。突然武器を握らない手を俺とユウキに向けたのだ。

 

 あーもうここにきてまたかよ!

 

 なになに今度は何!

 AI挙動かなり進化してるなあ

 集まってるのは、炎か!

 

 火炎弾か! 馬鹿野郎これ仮にも『剣の世界(ソードアート)』だろうが! 魔法使うな!

 

「─RELEASE BURST ELEMENT

 

 コボルドロードの下手くそなバイオリンを張り合わせたような声をトリガーに炎は解き放たれた。

 だめだ、回避は間に合わない。こうなったら俺が盾になるしかねえ! ユウキ悪いがこのあとはひとりで行け!

 

「見えるなら当てられる。それがこの世界、教えてくれたのはヒロだよ」

 

 気まぐれな風が吹いた。それは、はるか後方にいる俺たちの大切な幼馴染の声を俺の元まで届けてくれる。

 

 コボルドロードの撃った灼熱の弾丸が、藍色の弓に撃ち落とされた。

 

「私の大切な人たちに手を出すのは許さない」

 

 ラン姉ちゃんかっけぇぇえぇ

 きたぞきたぞボスのことろまで!

 でも制限時間もヤバーイ

 

 確かに制限時間はやばい、でも、来たぞ、ここまで!

 

 一歩。

 

「ここは、俺たちの武器が届く距離だぜッ!」

 

 ついにここまで

 でもボスの首は届かないよ~

 団長、飛べ!

 フライングスカーイ

 せめてここに足場でもあればジャンプできるのに

 

「足場ぁ!? いらねえよ、そんなの!」

 

 だってここには、あるだろうが十分なのが!

 

「ユウキ、()()()()!」

 

 昔、木綿季と試したことがあった。

 確かきっかけはライダーキックが現実にできるか試したときのこと。

 トランポリンのなかった俺たちは、互いを足場にしてジャンプするのを試してみた。

 

 結果、おろおろした藍子が母さんに報告して死ぬほど俺が怒られたんだが。

 

 でもその練習のかいあって、ユウキは俺を足場にしてめっちゃジャンプできるようになった。

 まあ危なくなったらお互いにしがみつくようにしてたせいで、いまでも木綿季は俺に抱き着く癖が抜けないんだけど。

 

 まあ、つまり、だ。

 

「俺の手を足場にして行け! そのまま『とっておき』コボルドロードに叩き込んで来い!」

 

 ユウキが笑う。

 いつものように、いや、いつもにもまして楽しくて仕方ないという風に、満面の笑みで。

 

 太陽のように、笑う。

 

 そして跳ぶ。俺たちのゴールに向けて、不安もすべて振り払って、高く。

 

「まかせてっ、ヒロっ!」

 

 ユウキがアニールブレードを構える。

 それはいつものように片手剣の特性を活かした『斬る』構えではなかった。

 もっと鋭利で、それでいて、弱点を狙い撃つ精密な一撃を放つための構えだった。

 

「はあああああっ」

 

 やーっぱりな、コソ練してたもんな、ユウキ。

 

「一閃―――リニア―ッ!」

 

 その一撃、まさしく『閃光』。

 

 なんとも俺たちのボス戦の終幕にふさわしい、一撃だった。

 

 

グ、ウ、オオオオオオオオオッ!

 

 

 喉元を突かれたはじまりの王が、すさまじい絶叫を上げて爆発する。

 

 うおっ

 ボスが爆発した!

 すっげー一撃

 うおおおおおおっ

 

 

《 Congratulation! 》

 

 

 や、や。

 

「や、ったぞユウ―――」

 

「ひろーーーっ!」

 

「ふげえっ」

 

 あいってぇ! 落ちてくるユウキ抱きとめようとしたらこの子そのままの勢いで抱き着いてきやがった! 潰されていてえ! 俺が受け止めなかったらどうするつもりだったんだ!

 

「やったやったやったやったぁああ! ねえヒロ見てた!? ボクすごかったでしょ! ヒロの期待に応えてたでしょ! ボクがいっちばんでしょー!?」

 

「ああ、わかったわかったお前が一番だよ。ったく」

 

 本当に頼りになるよ。こんなの、お前しかいないさ。

 うん、でも。

 

「最後リニアーって言ってたけどアニールブレード片手剣だしあれリニアー使えないよな」

 

「そ、それは黙っててよぉ!」

 

「気分で言いたくなっちゃった?」

 

「なっちゃった……」

 

 なっちゃったwww

 それなら……仕方ねえなあ

 なっちゃったかー

 赤い顔してうつむく絶剣ちゃんかわゆす

 お、ラン姉ちゃん

 

「お疲れさま、ヒロ、ユウ」

 

 いつのまにか俺たちの元までやってきたランがため息混じりに髪をくしくし。

 現実であれば髪を留めるシュシュのあるあたりを触る。

 

「もう、二人とも無茶するんだから。気が気じゃなかったよ」

 

「へへへ、ランがいてくれるからこそだよ。援護サンキュ、超助かったぜ」

 

「うんありがとうねーちゃん!」

 

「もう、そういえば私が許すと思ってるー」

 

 じとっとした目と一緒に、ランが俺たちに手を差し出した。

 俺が右手を、ユウキが左手を握って立ち上がる。

 

「ん」

 

 す、と手を挙げると、ユウキとランも同じように手を上げた。

 

「「「 いえーい! 」」」

 

 ぱちん、と三人の手が重なった。

 

「へへ」

 

「あははっ」

 

「ふふっ」

 

 なんだよ、笑うなよ。なんだか口角が下がっちまうだろ。

 

 ええ話や・・・

 おじちゃんきみたちに飴あげよう

 団長がまともに見える

 やっぱこの三人仲いい

 

 団員達もこの勝利を祝ってくれてる。

 だけど、それに浸っていられるのもここまでっぽいな。

 

 ほら、だってもうキバオウさんたちがここまで来てる。

 

「うおっしゃー! ジブンらこっちこい! 今日のヒーローはスリーピングナイツや!」

 

「ははっ、ほらみんな集まろう! ゲームオーバーになった奴らも! 戦いは終わった! みんなで喜ぼう!」

 

「いいですねー! 行きますよリズさん! いまが一番配信でおいしいとこですよ!」

 

「あー行ってきなさいよ。あんた途中から空気だったものね」

 

「ちゃんとユナちゃん守ってましたけど!?!? おそいかかる武器に対して獅子奮迅の活躍だったんですけど!?」

 

きゅくるー(むりある)……」

 

「うわ、わわ、胴上げ!?」

 

「「「 わーっしょい! わーっしょい! 」」」

 

 宴会かな?

 これがオリジンのボス戦かあ

 ちょっと興味出てきた

 オーグマーかったけど遊んでなかったし今度やってみるわ

 

 よし、ユウキがかわいがられているうちに……と。

 

 ええと……あ、いたいた。

 

「師匠」

 

「ん、ああ君か。お疲れ」

 

 俺は、師匠(エイジさん)に挨拶をしなければなるまい。

 さっきのお礼と、いままでの非礼を。

 

「さっきはありがとうございました。すげえ助かりました。……あと、ユナちゃんのライブの時と、暴言はすみませんでした」

 

 頭を下げる。せめて、俺の気持ちが伝わるように。

 エイジさんはしばらく黙っていたけど、俺が頭を下げたままなのを見かねたように肩をたたいた。

 

「頭を上げてくれ。謝るのは僕の方だ」

 

 え、エイジさん!?

 

「僕の方こそ悪かった。君たちがいたからこそ、今日の結果があった。不要だなんて言って、すまない」

 

「やめてくださいよっ! もとはといえば俺しか悪くないんですし!」

 

「なら相子だな。僕が子どもだったからおきたことだ」

 

 なんつーか、この人頑固だな。なんとなくわかってたけど。

 まあ、いいか。頼りになるけど、ユナ至上主義で、頑固な、俺の師匠。

 うん、いいじゃん。

 

「じゃあ、戦闘も終わりましたし銭湯行って仲を深めますか! せっかく弟子入りしたんですし」

 

「は?」

 

「え? エイジさん俺がさっき師匠て言ったら否定しませんでしたよね。ならオッケーなのでは……?」

 

「そんなわけがあるか! どんな理論だ! ワンクリック詐欺でももう少し良心的だぞ!」

 

「くっ、そこまで言うなら仕方ありません……譲歩してザンキさんって呼びます……トドロキの師匠ですし」

 

「君の中で譲歩の定義はどうなってる」

 

「ならやっぱり師匠っすか?」

 

「それならまあ……って元に戻っただけだろ」

 

「よろしくお願いします師匠! とりあえず両手剣のアドバイスほしいんですけど、あと配信企画たてるときどうしてます? コラボとか経験なくって」

 

「だからッ距離の詰め方がおかしいんだよ君は!」

 

 そんなこと言わずに、師匠ー!

 

「ふふっ」

 

「ユナさん、お疲れ様です」

 

「あ、ランちゃん。お疲れさま、弓の援護助かっちゃった。危ないとき助けてくれてたでしょ?」

 

「いえ、ちょっと見えただけなので。それでうちのヒロが以前……どうかしましたか?」

 

「んーん。ただね、あんなに楽しそうなエーくんは久しぶりに見たなーって」

 

「楽しそう、ですか? ヒロといるエイジさんが」

 

「うん。あんなに楽しそうなの、なかなかないんだよ?」

 

「はあ……」

 

 

「師匠!!!」

 

「だから僕は師匠じゃない!! まったく、困ったやつだ」

 

 

 

 

 

 

「たーーのしかったーー!」

 

「もうユウったらさっきからそればっかりなんだから」

 

「だってたのしかったんだもーん。いろんな人と仲良くなれたし!」

 

 ったく、楽しそうだな。

 まあ、木綿季が楽しいなら俺も嬉しいんだけどさ。

 

「見て見て、ボクのボスドロップ! これLAぼーなす? って言うんだって!」

 

「LA……ああ、ラストアタックの略称なんだね。

 私もいくつかドロップ貰えてたよ。でも刀とかだし……あんまり私には使えないかなあ」

 

「でもま、溶かしてインゴットとかにすりゃ新しい弓とか作れるかもしれねーぜ。リズさんも武器作りたくなったら声かけてくれればいいって言ってくれたしよ」

 

 そう言ってくれたあとシリカにすごい目で見られてたけど、まあなんとかなるだろ……南無。

 

「そういえばヒロのドロップアイテムはどうだったの?」

 

「俺の?」

 

 そういえば確認してなかったな。なになに。

 

「うーん、まあ換金できそうなのとか素材系は色々あるけど、なーんか気になるものは特にはねえなあ」

 

「やっぱりユウのLAボーナスほど良いものじゃないんだね」

 

 だなー。

 SAOでLAボーナスって言ったらレアアイテム確定交換チケットみたいなもんらしいし。

 やっぱボーナスが一番になるように設定されてるんだろうな。

 

 お、これはなんかおもしろい名前だな。

 読み方は……ふりがながある。

 

世界の種子(ザ・シード)……?」

 

 なんだこれ、試しに出してみるか。

 

 ぽちっと。

 

「わ、わわわっ?! ヒロなにしたの? なんか光が出てきたよ!?」

 

「おれぇ?! いやわかんないけど! 俺はただこう、ものを出しただけで……」

 

「ええっ、う、ウイルスなのかな……た、叩いたら治らないかな……」

 

「ストーップ藍子ぉ! はるか昔のテレビじゃないからぁ!」

 

 あれ……なんか、光が()()()()()()()()()()

 

「あなたにお願いが、あるんです」

 

 光が収まっていく。

 鈴の音のような、どこかで聞いたことのある声が、聞こえる。

 

「この世界の──『アンダーワールド』を救うための、お願いです」

 

 アンダーワールド?

 それは、この()()()()()()()()()()()()()()()()()だろ?

 

 それを、救う? なんだクエストの合図か何かか?

 

「お願いです」

 

 俺の目の前に現れた人──いや、その黒髪の白い女の子は、目を開けて、言葉を続けた。

 

 

「―――《黒の剣士》を、探してください」

 

 

 黒の剣士……? なんで俺にというか君誰──いやそんなことより。

 

 

「……すまん、あのとりあえず、家に帰ってから話さないか。幼なじみが気を失っちゃった」

 

「オーグマーから人が……うーん」

 

「きゅう……」

 

「あ、ああああ! ど、どうしましょうっ!」

 

「とりあえず俺が連れて帰るから話はそれからでもいいか……ええと……」

 

 

()()です。よろしくお願いします」

 

 

 ユイちゃんな、取り敢えずよろしく。

 俺のオーグマーから出てきた謎の女の子ちゃん。

 

 

 

 

 

第十話 ██████

 

 

     

ジッ

 

 

第十話     

 

 

      

ジジジッ

 

 

第十話 世界の再生者

 

      

ジ……

 

 




 

《ヒロ》
追いかけ回した結果、渋々と言った様子でエイジから連絡先をもらった。

《ユウキ》
ヒロの家の倉庫にあった竹刀でこっそりリニアーの練習をしてた。
藍子は見てたけど黙ってたし、ヒロも気づいたけどそっとしてた。

《ラン》
機械音痴のケがある。
お化けは大丈夫だが、予想を超えたものはキャパが超えて思考が停止することもある。

《エイジ》
師匠じゃない。だが、まあそう呼ばれるのも悪くないかもしれない。

《ユナ》
エーくん楽しそう。

《ユイ》
ヒロのオーグマーから出てきた。
世界の種子(ザ・シード)というアイテムをオブジェクト化すると形になった白い服の黒髪の女の子。



アンダーワールド
この『ソードアート・オリジン』というゲームの舞台となる大地。
SAOでいう世界を表す「アインクラッド」と同じように扱われる。
アインクラッドが空に登る前の下の世界、という意味で名付けられたと運営は語る。




感想、評価、ここすきなどいつも励みになってます。
一章終了を機にいただけたりなんかしたら作者はすごく喜びます。

これにて、一章『双子とゲームと燃える俺』編終了となります。
次回からは二章『Kを探せ/眠れる騎士たち』編開始です。
一学期が終わり、彼らの忘れられない夏が始まります。

ではでは。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。