ボクっ娘幼馴染に配信チャンネル乗っ取られたらバズり倒した   作:世嗣

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仮面ライダーオーズ完結編とかいう情報に心を揺らがされたせいで完全に更新の予定が狂いました。
ボクっ娘は2027年の話だからヒロはもうオーズ完結編を見てるんですよね……あいつ作者より先にこんなもん見てたのか……。



その黒の剣士の噂、解放しろ

 

 

 

 

「じゃあお前ら羽目を外しすぎないように。以上!」

 

 一学期最後のホームルームが終わり教室の中が一気に騒がしくなる。

 

「んー、終わったなー。長かったわ、高校の一学期」

 

「楽しかったけどその分やることも増えた感じだよね。夏休みの宿題だってたんまりあったし」

 

「うげぇーやめろよ藍子、せっかく終わったのに宿題の話なんて。俺を苦しみから解放してくれ」

 

「もー、そうやって嫌なことから目をそらしてるとまた夏休みの最後の方に苦しむよ?」

 

「ふ、信じてるぜ、藍子」

 

「そんないい笑顔でサムズアップしても丸写しは絶対させないですからね」

 

 ご無体な。

 

 夏休み、夏期講習がある高校もあるらしいがウチは特にそういう制度はない。

 さすがに受験生の三年は毎日学校に来て勉強するらしいが、一年の俺たちには関係ない話だ。

 

 そういやしののんパイセンは今年受験だよな。インターンするとかも言ってたし、今年の夏は忙しくなるんだろうなぁ。

 

 残りの荷物片づけるとするか。

 たしか後ろのロッカーの方に……。

 

「藍子~、助けてよ~」

 

「佳代ちゃん、どうかしたの?」

 

「もう佳代ったら! ほら山本君帰っちゃうよ! 藍子からも言ってあげてよ!」

 

「私? というか今どういう状況なの?」

 

「佳代が山本くんに連絡先聞きに行く勇気が出ないとか言ってるの!」

 

「ああ、佳代ちゃんと山本くん最近いい感じだもんね」

 

「わー言わないで! 相手がどう考えてるかわからないし、それに迷惑だったらと思うと……」

 

「でもこの夏逃したら次会えるの二学期かもだよ? それは嫌じゃない?」

 

「そ、それは……」

 

「藍子の言う通り! 夏は気になる人と近づける季節なんだから! 高校生の夏って一生の記憶に残るらしいし!」

 

「い、一生!? わ、わかった! 私行ってくる!」

 

「いってらっしゃい、頑張ってね」

 

「じゃああたしも帰るね。緋彩との仲邪魔しちゃ悪いし」

 

「もう、私たちはただの幼なじみだって何度言ったら……」

 

「わかってますとも、お弁当を毎日作ってあげる程度の仲ですよねー」

 

「もう!」

 

 小中学生の頃はこの日はいつも絵具やら習字道具やらシューズやら持って帰るものが多くて木綿季と二人で苦しんだものだが、今ではこの俺も高校生。

 足取りも軽ければ荷物も軽い。これが大人になるってことだよ。

 

 まあホントは藍子が持って帰るタイミングに合わせて俺も荷物持って帰ってただけなんだが。

 

 ええと、一応机の中に忘れ物がないか確認、と。……よしないな。

 

「一生の記憶、かあ」

 

「藍子ー、友達との話終わったかー。木綿季も待ってるだろうし帰ろうぜ」

 

「へ、あ、ああ、そうだね。帰ろっか」

 

 学校指定のカバンを肩にひっかけると藍子とそろって教室を後にした。

 途中クラスメートの声に適当に返答しつつ、下駄箱へ。

 

 さて木綿季は……お、いたいた。そわそわしながら俺たちが来るのを待ってるが、たびたび友人らしき人たちに声をかけられている。

 

「じゃあね紺野さん!」

 

「うんまたねーハルちゃん」

 

「ばいばーい。あ、木綿季ちゃん夏いっしょに遊びに行こうね。海とか!」

 

「あ、由美ちゃん。海かーいいねー。あ、でも彼氏と別れた腹いせにナンパ待ちとかだったらボクは付き合わないからね」

 

「えー、ケチー」

 

 あいつ友だち多いなー。

 まあころころ表情変わってかわいいし、人当たりもよければ運動もできて、地頭いいから勉強もちょっとやればいろいろ教えてくれるしな。

 

「ヒロどうしたの?」

 

「ううん、俺の幼なじみが無敵すぎるとな」

 

「ああ、木綿季。すごいよね、本当に友だち百人くらいいそう」

 

 そりゃあの小学時代を知ってる側からすると嬉しいもんだ。

 

 おろ、なんか男と話してる。

 

「藍子いま木綿季と話してるの誰か知ってるか?」

 

「サッカー部の加藤君だよ。木綿季と同じ二組」

 

「へー」

 

「身長高くて優しいから結構女子に人気らしいよ。たしか身長182センチくらいあるとか。ユウも時々話題に出してたでしょ?」

 

「ふーーーん」

 

 まあ、木綿季は友だちが多いからな。ああやって男子とだって……。

 

「紺野、オマエ夏休みどっか暇あるか?」

 

「ボク? うーん、いろいろ予定はあるけど、さすがにまだ埋まり切ってはないかなー。どうして?」

 

「いやその、来週夏祭りがあるなと思ってさ」

 

「あ、そっか来週夏祭りだ! いいよね、ボク毎年姉ちゃんとヒロと行ってるんだ! 今年は姉ちゃんもヒロも何食べるつもりなのかなあ。姉ちゃんくいしんぼだからボクにちょびーっとしかくれないんだよ? 加藤君は誰かと行くの?」

 

「あ、まあ……」

 

「ならあっちで会えたらいいね! 加藤君は体もおっきいからたくさん食べるんだろうね」

 

「ハア……そうだな……」

 

「?」

 

「いや何もないよ。じゃあまたな、紺野」

 

「うん、またね?」

 

 ……モテんだな、やっぱ。

 なんだかこっちは嬉しいような、いやなような、何とも言えない気持ちだ。

 いやまあ俺みたいなやつに比べたらあの加藤君なんかは百倍いい人だとは思うんだが……ええい、こんなこと考えても仕方ない。カットだカット。

 

 べつに、こんなの今考えることでもない。

 

「あ、ヒロー! 姉ちゃーん! おそいよー!」

 

 あいあい呼ばなくてもいくっての。

 

「ついに夏休みかー。う~、やりたいことだらけでボク困っちゃうよ~!」

 

 三人で並んで家へと向かう。いつも通り俺、藍子、木綿季の順。

 そこまで近くは通らんがいちおうバックは藍子側に向けとくか。車に引っかけたらやだし。

 

「海でしょー、プールでしょー、夏祭りでしょー、あとどこか旅行にだって行きたいな~」

 

「素敵だね。私もやりたいことたくさんだなあ、かき氷に流しそうめんに、お祭りのりんご飴に、ベビーカステラ……」

 

「なんだよ藍子は食い物ばっかじゃねえか」

 

「い、いいじゃん。どれも夏がシーズンだよ!」

 

「いやそりゃいいけどあんまり食べるとまた太ったーって夏の終わりに泣きそうな顔で―――あいたたたたっ!」

 

 脇腹! 脇腹つねるのノウ!

 

「ふーんだ」

 

「今のは全面的にヒロが悪い!」

 

 くそう。ワシは悪くない。この口が悪いんじゃ。

 

「でも、一番この夏にやらなきゃいけないことは、きまってるよね」

 

 ……だな。やっぱり一番は。

 

「ユイちゃんのために『黒の剣士』さん探し、だね!」

 

 にぱっと笑う木綿季を見て思い出したのか、藍子が髪を留めるシュシュを触りながら「そういえば」と切り出した。

 

「そのユイちゃんはいまはどうしてるの? ヒロのオーグマーにいるって話だったけど……」

 

 きょろきょろと藍子が俺の周囲とオーグマーあたりで視線をうろつかせる。

 

「いまは留守番だよ。さすがに学校に連れてくのは退屈だろうしな」

 

「留守番って、でもでもヒロのオーグマーはここにあるのに?」

 

「別にユイは常に俺のオーグマーにいなきゃいけないわけでもない。あくまでもユイのシステムがある場所が俺のオーグマーなだけで、別にユイがそこにいるのは必須じゃない。さすがに長時間離れて云々とかはメモリの問題から言って無理だろうけど」

 

「ええと、つまり?」

 

「ユイの家は俺のオーグマーだけど出歩く分には問題はないってこと。いまはたぶん俺の部屋でテレビ見たり本読んだりしてるんじゃないか」

 

「それなら今度私のおすすめの本とか貸してあげようかな。あ、でもヒロみたいに電子でそろえてないからダメかな……」

 

「ユイくらいになればぱーっとページめくるだけで完全に記憶残してあとで読み返したりできるんだと。だからおすすめの本は喜ぶと思うぜ」

 

「そっか。それはちょっと楽しみが増えちゃった。何貸してあげようかな~」

 

「あ、じゃボクも一緒に選ぶ! ボクの好きなマンガとか!」

 

「待て、あんまり貸しすぎるな。俺と仮面ライダーを見る時間が減る!」

 

「ユイちゃんのひとり占めは禁止でーす」

 

「私は三人幼なじみだしね。妹分だって三人でいっしょにかわいがらないと」

 

「おまえら、その言い方はズルだぞ……」

 

 正直俺としては暇なときはライダーでも見てくれてたらいいと思ったんだが、「仮面ライダーはお兄ちゃんといっしょにみるのじゃないとヤです!」と言われてしまっては仕方ない。

 

 俺の言い分をわかってくれたのを考えると、嬉しいやら気恥ずかしいやらだ。

 

 最近、ユイがめっちゃ可愛く見えるんだよな……俺実はシスコンだったのだろうか。

 

「で、ヒロは『黒の剣士』探しの方針とか決めてるの?」

 

 藍子を挟んだ向こう側、木綿季が髪を弾ませるように俺の顔を覗き込んで来る。

 

「SAOのプレイヤーなんだっけ、黒の剣士さん」

 

「だな。だからとりあえず昨日の夜シリカに心当たりないか聞いた」

 

「はやっ!?」

 

「俺は人探しでも頂点に立つ男……だが、正直空振りだな」

 

「ということは知らなかったの?」

 

「いちおう知り合いではあるらしいが、SAOがサービス終了してからはロクに連絡取れてないんだと。もちろんいま何してるかも情報ナシ。けっ、役に立たねーやつだぜ」

 

「もうヒロせっかく力になってくれたのにそういう言い方はダメだよ」

 

 めっ、と腰に手を当てて叱ってくる藍子。

 

 まあ、そうだな。反省します。ありがとうそろそろ無理ロリ。

 

「あ、じゃあ黒の剣士さんの消息は分からなくても知り合いだったんだよね? ならプレイヤーネームとか聞いてないの?」

 

「それもナシだ。いくらプレイヤーネームとはいえ第三者がほいほいと教えてもらっていいものでもねえだろ。そもそもそこまで突っ込んだ聞いたこと聞くとシリカもなんか勘ぐってくる」

 

 あくまでも『世間話』の範疇ならともかく、特定個人の特定だしな。

 

「なら元SAOのプレイヤーに手当たり次第に聞いてみるとかはどう? 私は詳しくないけど結構有名な人なんでしょ?」

 

「わりーけどそれもナシだ。そもそも元SAOプレイヤーなんて山ほどいるし、それにあんまり動き回ってカーディナルに察知されるとユイが危ないかもしれん」

 

「なんでここでカーディナル?」

 

 こてん、と木綿季と藍子が首をそろって傾げた。

 

「ほら覚えてるだろ、ユイが俺たちに説明してくれたカーディナルのアレコレ」

 

 カーディナルはSA:Oというゲームを管理するゲームマスター。

 それは自在にインターネットを行き来し、情報を集めて、管理する。バグなどを見つければ一人で勝手に直しちまう機能までついてるそうだ。

 

「もし万一、聞き込みの途中で怪しまれてカーディナルに報告されて、それがきっかけで俺のアカウントが調べられたりすりゃ最悪だ。一発でユイが見つかって最悪そのまま削除まで行くかもしれない」

 

 俺たちがやろうとしてるのストーカーみたいなもんだしな。怪しむ人だっているだろう。

 俺たちはユイの帰る場所探しもするが、やっぱり一番大切なのは彼女の安全だろうしな。

 

 だから師匠やユナさん、リズさんに、アスナさんなんかにももちろん秘密だ。情報ってのは知る人が増えれば増えるほど、漏れるリスクも高くなる。

 まあ俺が師匠以外の連絡先知らないのもあるんだけど。

 

 それに閃光(アスナさん)と黒の剣士仲悪いって噂だし。そんな死地に飛び込みたくない。

 

「だからひとまずは―――」

 

 って、なんだよ二人ともぼーっと俺の顔なんか見て。

 

「すごくヒロが普通の人みたい……」

 

「ケンカ売ってんのか?」

 

「ライダーネタで茶化したりしないしすごく普通の人だよヒロ!」

 

「おうやっぱお前らケンカ売ってんだな??????」

 

 俺は買うぞ高く。

 

「いやいやそういう意味じゃなくて、なんかさー、昔っぽいなーって」

 

 昔っぽい?

 

「うん。こういう時のヒロ、もっとたくさんの人に知ってもらえたらいいなって」

 

「なんだりゃ。普段の俺は人に知られたくないってことかよ」

 

「あはは、そうじゃないよ! もちろんボクはどんなヒロでも大好きだけどねっ!」

 

「……さよで」

 

 こんな往来でそんなこっぱずかしいこと言うなっての。

 

「ね、姉ちゃん?」

 

「私、は……」

 

 木綿季が藍子へと笑いかけると、藍子はくしくしとシュシュを触った。

 

「そういうヒロは、私たちさえ知っていればいいと、思うけど」

 

 目線は合わない。ただ、藍子の目はじっと並んで歩く三つの影に向けられている。

 けど、すぐに藍子は顔を上げて、いつものように微笑んだ。

 

「……なんてね。私もヒロのいいところをたくさんの人に知っていてほしいな」

 

「だよねだよね! ちゃーんとヒロのこと知る人が増えたら共感してくれる人も増えると思うんだけどな~」

 

「当の本人がいる横で何話してんだお前たちは」

 

「んー? 普段から変なヒロが好きだよって話?」

 

「やっぱケンカ売ってるな???」

 

 やはり俺とお前は戦うことでしか分かり合えない……!

 

 

 

第十二話 その黒の剣士の噂、解放しろ

 

 

 

「ただいまー」

 

 自室の扉を開けて声をかけると、それまで本を読んでいたユイがぱあっと表情を華やがせた。

 

「おかえりなさいお兄ちゃん!」

 

 そしてそのまま俺の腰に抱き着くとこっちを見上げにこーっと目を細めた。

 

「はいはいただいま。ずいぶん手厚いおかえりなさいだな」

 

「ちゅうもしますか?」

 

「なんで?????」

 

「? 私が調べた限りでは妹というのは帰ってきたお兄ちゃんにそうするのだとありましたよ?」

 

「なんで調べたんだ?」

 

「もちろんインターネットです!」

 

「ううん、そのインターネットに絶大な信頼を置いてるあたりが俺の妹っぽくなってきたな……」

 

「しますか?」

 

「いや俺はいいよ。うん、気持ちだけもらっとく」

 

 もしかして、インターネットって真実ばかりじゃないんじゃない? 怖いな、インターネット。

 

「ふー、やっぱネクタイ慣れねえな」

 

 これだけは一学期が終わった今となってもイマイチ慣れない。中学は学ランだったせいだろうな。

 

「お兄ちゃんたちは明日から夏休みなんですか?」

 

「というよりも、もういまは夏休みといってもいい。ここから二学期の始まる九月の頭まで学校に行くのは数回だ」

 

「つまり日数にするとだいたい40日ですね。なぜそんなに長いんでしょう?」

 

「確か夏は暑くて勉強に集中できないからだったと思うぜ」

 

「暑くて……?」

 

「はは、ユイにはわからねーかもな。俺たちはあんまり暑いと勉強する気も失せちまうのさ」

 

「でもお兄ちゃんの高校にはクーラーがついていましたよね。それを使えばある程度は快適に勉強できるのでは?」

 

 それは……確かに。

 思わずワイシャツを脱いでTシャツ(アルトじゃないと!とプリントされている)に着替える手が止まる。

 

「それにさすがに40日も休んでしまうと宿題があるとはいえ勉学がおろそかになってしまうので、わ、わわっ」

 

 わしわし。

 

「な、なんで頭を、撫でて、わわっ」

 

「妹の頭を撫でるのは兄の特権らしいぞ」

 

 決して答えに詰まる質問をされたからごまかしているとかではない。

 

「ま、いいじゃねえか。夏休みが長いおかげでこれからユイといられるし、黒の剣士探しにだって集中できるんだ」

 

「それはそうかもしれませんが……」

 

「安心しろ、俺はこれでも夏休みの宿題を出せなかったことはねえ! 藍子と木綿季がいるからな」

 

「その根拠の提示はお兄ちゃんだけでは終わらせきれないとカミングアウトしているようなものなのでは……」

 

 みなまで言うな! 今年はマジで計画的にやるから。マジで。

 

 しばらくすると俺の部屋に木綿季と藍子がやってくる。

 さっきの帰り道ではこれからのことを話し終わらなかったから打ち合わせをしようと言っておいたのだ。

 

「なんだよ制服のまま来たのか?」

 

「ヒロだってズボンは制服なのにそれ言うー?」

 

「ヒトの部屋にそういうゆるゆるの格好で来る木綿季の態度が問題だっていってんの。藍子を見習え、藍子を」

 

「あはは、私も着替えるのめんどくさくてそのまま来ちゃっただけだから」

 

 カーペットに正座を崩して座る藍子はきちんとリボンを結んだ制服で緩く笑む。

 

 対して俺のベットの上を陣取る木綿季はリボンと一つ目のボタンを外しているせいでちょっと、いやかなり目のやりどころに困る。

 

「えーなになにヒロ、もしかして女子高生になったボクの色気にくらくら来てたりするのー?」

 

「ハンッ、馬鹿か。俺がいまさら木綿季にドキドキするはずないだろ。何年の付き合いだと思ってんだ」

 

「むー、何さその言い方~」

 

「? でもオーグマーの計測するお兄ちゃんの心拍数は木綿季と藍子(おねえちゃん)たちが入ってきた時にわずかに揺らいで―――」

 

「おっけー余計なこと言わなくていいからなユイ」

 

 膝に座るユイの口を押えて黙らせる。ひょっとして俺この子に隠し事できない?

 

「もがもが。なんで口をふさぐんですか」

 

「俺に質問するな!!!」

 

「あっ、いまのは仮面ライダーWの二人目の仮面ライダーであるアクセル、照井竜の口癖ですね。お兄ちゃんに教えてもらったからわかります」

 

「そっか、ユイはいい子だな」

 

「えへへ~」

 

 ええい見るな藍子! なんだよその何か言いたげな目は! 俺は何もない! 何もないったらないんだ!

 

 コホン、とりあえず本題に入るぞ。

 

「ではこれよりスリーピングナイツによる第一回『黒の剣士』捜索会議を始めます」

 

「おー」

 

「はーい」

 

「はいっ」

 

 全員が返事をしたな。ノリがよくて助かる。

 

「つっても方針自体は帰り道で話した通りだ。表立って聞き込みなんかはできないし、ネットの信頼できねー情報を鵜呑みにもできない」

 

「おお、ヒロがまともっぽいことを……」

 

「出会って七年にしてようやくネットが信頼できないことを悟ったんだね。あ、私なんか感動で涙出ちゃうかも。何があったの?」

 

「まあ、インターネットの信頼性のなさを思い知ったというかね」

 

「?」

 

 首をかしげるユイ。うん、あとでいろいろ変なこと覚えてないか確認しておこう。

 

 それはさておき。

 

「基本は俺たち自身が足で探すしかなさそうだ。W的に言うとフィリップではなく翔太郎スタイルだな。情報は足で稼ぐ探偵だ」

 

「でもお兄ちゃん、探すってどうやるつもりなんですか? 近所の犬や猫を探すのとはわけが違うでしょうし」

 

「どうって、俺たちはスリーピングナイツだぞ? ならできることは一つだろ」

 

「一つ?」

 

 なぜそこで三人とも首をかしげる。俺そんなにおかしいこと言ったか?

 

「……もしかして、配信?」

 

「ビンゴ!」

 

 さっすが藍子わかってるな~!

 

「でもさっきヒロは『ユイちゃんのことが大人数に察知されかねないことはダメだ』って言ってたよね。配信とかめちゃくちゃ危ないものの一つなんじゃないの」

 

「ちっちっち、わかってねえな木綿季。ことカーディナルっていうソードアート・オリジンのシステムなら配信中より安全な空間はこの世にはねえよ」

 

「安全?

 でも配信って不特定多数に見られるものだよね。ユウの心配は最もというか……」

 

「いえヒロさんの言うことは正しいです。確かにカーディナルに察知されないということを視野に入れると、配信サイトという場所はもっとも動きやすい場所かもしれません」

 

「ユイちゃん?」

 

 おお、こっちは真面目モード、というかAI寄りのモードのユイだな。

 

「お二人はあの配信サイトで、他にどのような実況活動が行われているか把握していますか?」

 

「ええと、ごめん、私あんまり配信とかみないから……」

 

「あ、ボクはちょっとはわかるよ!」

 

 ビッと木綿季が手を上げると指折りいくつかのチャンネル名を挙げていく。

 

「まずはやっぱり時々ボス攻略をギルドだけでやってるアスナさんの『血盟騎士団』でしょー。次にシリカさんとリズさんの『ドラゴンアイドルシリカ』に、あとはキバオウさんがやってる『キバオウなんでやチャンネル』!」

 

「へ~、キバオウさんってそういう活動もしてるんだ」

 

「どっちかっつーと、配信ではそっちがメインだな。視聴者から投稿されたプレイヤーの問題行動とか、日常のもやもやにキバオウさんがずばっと『なんでや!』と突っ込んでくれるのは結構気持ちいいと評判だ」

 

 指をついついと滑らせて、みんなに見える形で『キバオウなんでやチャンネル』の最新回を表示する。

 

 中世の談話室っぽい背景の前にはさわやかな笑顔を浮かべたディアベルさんと、おなじみのトゲトゲ頭が並んでいる。

 

 

『では続いてのお便りだ! ペンネーム護衛騎士の鑑さんから。なになに、『私はとある一流ギルドのトッププレイヤーで、ギルドの華であるA様の護衛を任されていたのですが、最近では近づくだけで気持ち悪がられてしまいます。私はただA様の安全を守るためにギルド以外の時も常に気づかれぬようにそばでお守りしていただけなのに。なにか誤解を解ける方法があれば教えていただきたいです。追伸、ナンバーワンギルドは我々血盟騎士団だ』……だそうだ』

 

『なんでや!』

 

 早速出た

 これを待ってた

 

『いや嫌われた理由明確やろ! ジブンの距離感が近すぎるせいや! 気を付けぇ! いくらギルドの仕事といえどそれはあくまでもゲームの中のことや、特定個人に入れ込みすぎたらアカン』

 

『ああ。その人に嫌われたくないならまずは品行方正にすることから始めるのがいいだろう。オレと一緒に気持ち的にナイト、始めようぜ!』

 

『あともう一ついうとくとナンバーワンギルドはディアベルはん率いるアインクラッド軍や! 忘れるんやないで!』

 

 ディアベルはんを好きすぎる件

 でもディアベルはん頼りになるし・・・

 コボルドロード討伐かっこよかったですー!

 

 

「あ、物申す系というよりはお悩み相談みたいな面もある感じなんだね」

 

「ああ! 要はスカっとのパクリだ!」

 

「ヒロの言い方ぁ!」

 

 事実だろ。見てるやつらもそういうものだとして見てるし、おもしろいならそんなものは些事だ。

 

「それにこういうのだってSA:Oだけがやってるわけじゃない。GGOだと『LPFMの撃ちまくりチャンネル』とか人気だし、木綿季もやってるアスカだと『三ツ葉探偵社 おしえて探偵さん!』とか俺は好きだな」

 

 指を滑らせながら今言った二つのチャンネルをそれぞれ表示した。

 

 

『あは、あはははっ、やばいよやばいよレンちゃん! 私たち死んじゃうよ! あは、みてあれどう見ても複数スコードロンで討伐するやつだよ!』

 

『見ればわかりますよピトさん! ああ、もうやってやるぅぅぅうう!』

 

『おお、レンがキレたあ! これは今日もなんとかなったかなあ』

 

『……チャンネル登録、評価、よろしく頼む』

 

 い つ も の

 ひえ、レンさんこわ

 また嫁の貰い手がいなくなる

 ピトがいるから安心だね♡

 フカ次郎ちゃーーーーーん!

 レンさんがだいたいなんとかした

 

 

『やれやれ、今日も見に来てくれてありがとう、というべきか。それともこんな胡散臭い自称探偵のチャンネルなんかを見に来る人が多いことを嘆くべきなのか』

 

『探偵さん、そういういい方はよくないです。みなさん探偵さんのことを信じて来てくださってるんですから。精一杯やらなきゃ』

 

『ナユタ、君はヤクモに似てほんとに融通が利かないな……』

 

『お兄ちゃんに任されてますから。さあ今日も依頼がいろいろ来てますよ。コヨミさん、依頼紹介お願いします』

 

『前から思ってたけど私これいるのかな……いちゃつきを見せられてるだけというか……』

 

『馬鹿なことを言ってないで早く依頼の紹介を、コヨミ嬢』

 

『はいはい、じゃあ一つ目のこれは……VR世界に出てくる幽霊の正体を突き止めてほしい? うぇえええ! なにこれ! オカルト!? アストラル系のモンスターじゃなくて?』

 

『なんだそれは。そんなうさんくさいの私は絶対受けないぞ。申し訳ないね』

 

 といいつつ巨乳年下妻に頼まれてまた奔走する探偵なのであった

 探偵さんいつも依頼受けちゃうもんね・・・

 アスカエンパイアの良心

 ステ振りが運しかなくて戦闘ではちょっと頭のいい狐なのしか問題がない

 ヒモじゃん

 

 

 一通り映像を見てしまうと木綿季が感心したように声を漏らす。

 

「へぇ~、ほんっとにいろいろあるんだね~。ボクも勉強はしたつもりだったけど全然知らなかったや」

 

「私なんかもう知らないことだらけで目が回りそうだよ。どれだけ勉強してもこれじゃあ追いつかなさそう」

 

「それだよ藍子、それがカーディナルの目から逃れるのに最適な理由なんだ」

 

「あ……!」

 

 くく、木綿季も藍子もなんとなくわかったみたいだな。

 

「そっか! ()()()()()()()()んだ!

 

「そういうこと。なにせその多さったら同業者の俺たちですら細かいところは把握しきれない程なんだからよ」

 

 巡り合わせのおかげで知名度は上がってきたが、俺たちはまだまだ新人。

 ユナみたいな超有名どころならともかく、まだまだ中堅にようやく指がかかった程度だ。

 

 じゃあ、そんな山ほどいる配信者や動画なんかをいちいちカーディナルは精査しているのか?

 

「答えはノーだ。してない。なにせ俺たちの配信はSA:Oにとってはオマケだ。いちいち細かく監視したりしねえよ」

 

 つーかそもそも配信サイト自体他者のモンだしめんどくせー権利が絡みかねないあれこれは避けるんじゃねえかな。これはオレの勝手な想像だけど。

 

「でも、カーディナルは自動でクエストを作るときにいろんなものを参考にするんでしょ? なら監視じゃなくても勉強のために見てることもあるんじゃないの?」

 

「それはないですね。私も昨日ひととおりアップロードされている動画を確認しましたがどれも根拠となる情報が乏しすぎます。あれでは全く役に立たないのでカーディナルが参考にする可能性は絶無でしょう」

 

「そっちのほうがメインの理由なんじゃない?」

 

 というわけで、俺たちがカーディナルの役に立たない『配信』という形をとる限り、ユイは見つかることはない。

 

 まあそれもあくまでも「ユイが消されない」ためにできることで、根本的な問題解決にはならないんだけど。

 いくら安全とは言えさすがにユイをそのまま配信に出すとかは危険だろうし。

 

「理想としてはここら辺も『黒の剣士』が万事解決してくれることなんだよなー」

 

 ユイの記憶問題、それに帰る場所、あとはカーディナルから隠れなくてもよくなる方法。

 そういうものを探し当てた黒の剣士に何とかしてもらえればこれ以上はないんだが、今考えても答えは出ない。

 

 未来のことを考えても仕方ない。とりあえずは目先のことだ。

 

「まあじゃあ、さっそく今夜あたりに聞いてみるとするか」

 

「聞くって……誰に?」

 

 誰かなんてそんなの選択肢は一つしかないだろ。

 

「俺たちの頼りになる団員たちに、だよ」

 

 

 

 

 

「なぜなに教えてヒロ先生! 俺の解説パートワン! 『ソードアート』シリーズ~!」

 

 なにかはじまった

 いつもの発作か?

 コボルドロード攻略動画から来ますた

 アスナ様の推薦したギルドとあらば見ないのは無作法というもの……

 アクティブも増えたナー

 ほお、これがスリーピングナイツか

 

「というわけでおっすおっす俺参上! スリーピングナイツ団長、そして今日はユウキとランに授業を行うヒロ先生でもある! 団員のみんなは今日は団長じゃなくて先生と呼んでもいいぞ!」

 

「やっほー、ボク参上! スリーピングナイツのユウキです! 団員のみんな今日はいっしょに勉強していこー!」

 

「こんばんは、私も参上です。スリーピングナイツのランです。いつもの団員さんも、初めて見に来てくださったっ方も楽しんでいってくださいね」

 

 団員参上

 団員参上

 おは本能寺

 先生だからフォーゼのお面というわけね

 今日の背景教室なのもおんなじ理由か

 ほお、これはアスナ様に並ぶかもしれないな

 血盟騎士団のオタクがいる……

 絶剣ちゃんも蒼弓ちゃんもよく似てるなあ。双子なんだっけ

 

 

「ボクと姉ちゃんは双子だよ~。それでヒロは幼なじみ!」

 

 リアル幼なじみとは驚いたなあ

 ボクっ子双子幼なじみ……アリだな

 今日はじゃあ戦闘とかはないんだ

 

「今日は最初にも言った通り二人にソードアートシリーズのことを紹介していこうと思う。

 

「どちらかというと雑談に近いものになると思うので、初めての人も軽い気持ちで見ていってくださいね」

 

 はーい、姉ちゃん

 は?ラン姉ちゃんはお前のお姉ちゃんじゃないんだが?

 がんばれがんばれの切り抜き最高でした

 絵本の読み聞かせとか今度してほしい

 ソードアートかあ。SAOしてないから楽しみだな

 もう一年前のゲームだしそういう人もいるかあ

 

 ちなみにこの案を提案してくれたのはユイだ。いきなり黒の剣士のことを話し出すのはあまりにも不自然、でもこうして黒の剣士のことを聞きやすい土台を作っておけば別だ。

 

 せっかく案を出してくれたのにいっしょに配信に出してやれないのが残念でならない。

 いつかカーディナルのことなんか気にせずにユイといっしょに冒険できる日がくればいいな。

 

「まあ、つーわけだけど、二人はこの『ソードアート』ってシリーズについてどの程度知ってる?」

 

「シリカさんに聞いたからなんとなく覚えてるよ。たしか『ソードアート・オンライン』はアーガスっていう会社が作ってて、『ソードアート・オリジン』はカムラって会社が作ってるんだったよね。もう、ソードアート・オンラインのサービスは終了しちゃったけど」

 

「あとSAOの舞台は『アインクラッド』っていう鉄の城で、SA:Oの舞台は『アンダーワールド』!」

 

「おう、どっちも正解だ。ちゃあんと覚えてるな」

 

 補足するならばアインクラッドとは遥か太古の昔にあった『大地断絶』と呼ばれる現象によって作られた城だ。アインクラッドの百層すべてかつては一つの大地だったのだ。しかしある日何らかの意思によって大地は切り裂かれ空に浮かび全百層からなる鋼鉄の城となった。魔法とは『大地』に宿る加護だ。ゆえに大地から切り裂かれたアインクラッドでは魔法は存在しえない。ゆえにこそソードアート・オンラインは剣の世界となるに至ったと言える

 あ、ニキちーす

 安定

 

「解説ドーモ。お前にもずいぶん慣れてきたよ、俺」

 

「なんだかいつもありがとうございます」

 

 ランが目を細めて微笑みお礼を言うが、コメント欄では特に返答などはない。

 実にいつも通りだ。

 

「アインクラッドに関してはさっきの団員の言うとおりだ。いまのオリジンの世界が『アンダーワールド』って呼ばれるのはそこら辺のアインクラッドの関係が大きそうだな」

 

「空に浮かぶ前の下の世界ってこと?」

 

「だな。アンダーワールドではまだ魔法が消え切ってない。

 なぜなら魔法は大地の加護で、アンダーワールドはこの大地に存在する。だからまだこの世界ではアインクラッドと違って魔法が消え切ってないってわけだ」

 

「もしかしてそれってボクらも使えたり!?」

 

「残念。俺たちは放浪者だからな。この大地にやってきた旅人、残念ながら火を出したりする魔法は使えないんだ。モンスターやNPCだとまた別なんだけどな」

 

「ちぇー」

 

「まあそういうなソードスキルだって魔法みたいなもんだろ」

 

「そりゃそうかもしれないけどさー」

 

 すねちゃった!

 でもファンタジー世界で魔法ナシって強気だよなあ

 時々NPCが魔法使って助けてくれたりするのみると使いたくなる

 たしか俺たちのシステムウインドウとかアンダーワールドじゃ魔法扱いらしいぜ

 へえー

 

 おろ、ランが虚空で指を動かしてる。

 ……と、いうことはリアルでシュシュ触ってるんだろうな。

 アバターはショートカットだからこういう動きの差が出やすいんだが、さて、どうしたのか。

 

「姉ちゃんどうかした?」

 

「いや、アンダーワールドってほんとにそういう意味なのかなあって思って」

 

「どういうことだ?」

 

「だってアンダーワールドって『不思議の国のアリス』の中の言葉だもん。二人とも読んだことあるでしょ?」

 

「へ、そりゃああるけど。アンダーワールドなんて出てきたっけ」

 

「私たちは『不思議の国のアリス』っていうのが一番なじみ深いけど、その原型となった物語では『地下の国のアリス』―――Alice’s adventures Under Groudって名前だったの。そこから転じてアリスの行った地下の世界を『アンダーワールド』という人もいた……はずだよ」

 

「「 へえ~ 」」

 

 へえ、嬢ちゃん物知りなんだな

 さすがラン姉ちゃん

 

「た、たまたまですから。ちょっとむかし本で見ただけです」

 

 ぱたぱたと手うちわであおぐラン。

 

「じゃあそこら辺の意味も入れたダブルミーニングだったのかもな。まあこの世界はアリスほどかわいい世界ではない……いやアリスの世界もまあまああれだった気がしてくるな……」

 

「うん、全体的には夢がある気がするんだけど……ふとした時にちょーっと、ね」

 

「そうだっけ?」

 

「まあユウキは本をこれ以上ない入眠素材に使うもんな」

 

「ママが私たちに読み聞かせしてくれた時も私は話の続きが聞きたくて起きてたけど、ユウは秒で寝てたし」

 

「ね、姉ちゃん!」

 

 ユウキちゃんらしいなあ

( ˘ω˘)スヤァ

 仲いいなこの三人w

 幼なじみでしか出てこない会話

 ソードアートシリーズをこういう初心者の視点で聞くのも面白い

 だいたいみんな何かしらで触れてるしナー

 

「ふふ、皆さんが楽しいならうれしいです」

 

「最近はオリジンのプレイヤーも増えてるしこういう話をするのは新鮮でおもしれーかもな」

 

「ユナちゃんの人気とかもすごいもんね。この前ミュージックステーション出てたし!」

 

「さいっこうだったよなあ! あれはVRアイドルというユナだけの利点を生かした最高の演出でもちろん既に海馬に焼き付いて離れないくらいがっつりリピート済みだ」

 

 いきなりオタク出てて草

 団長隠せてないですよ

 団長さんはユナが好きなんだな

 

「は? 好きじゃないが?」

 

「それまだ言い張るんだ……」

 

 言い張ってない。俺はユナのファンじゃない。ちょーっと昔の熱が再燃してるだけ。

 

「ユナちゃんといえばエイジさんは? 連絡先交換してもらったーとかはしゃいでたけど」

 

「師匠も忙しそうだ。既読ついたまま三日くらい返信がない」

 

 それは既読スルーされてるのでは?

 師匠?

 歌姫の騎士のエイジ。この前のボス攻略動画スリーピングナイツのやつ見ればわかるよ

 へえ、あのエイジがな

 弟子(自称)

 

「自称じゃないが!? この前新しい武器だってくれたし! 今度のオリジン実況みとけよ!」

 

 へー、武器新しくしたんだ

 なんだかんだ仲いいじゃん

 そういやユウキちゃんはまだアニールなんだね

 そろそろ乗り換えの時期かぁ~?

 

「ぼ、ボクはまだアニールブレードで行くからね! まだ火力とか不安ないし! ぜんぜんこの子は頑張れるから!」

 

「わーってるよ。でもずっとアニールで行くのは難しいのはわかっとけよ?」

 

「そ、それで言ったら姉ちゃんだってまだ店売りのやつじゃん!」

 

「あ、実は私はリズさんに弓もらっちゃったんだよね。昔知り合いに作ったやつが余ってるからって。だから次の配信の時は私は新武器かな」

 

「うそぉ!?」

 

 ユウキが裏切られたようにランにすがる。

 

「うう、姉ちゃんがボクを置いていくなんて……」

 

「大げさだなあ、武器一つ変えただけで」

 

 やれやれ、とランが肩をすくめた。

 

「それで? どうなんだ新しい弓の使い心地は」

 

「すこし試し撃ちしてみたんですけど前よりもすごくも狙いやすいし、すごーく遠くまで届いて、プレイヤーメイドってどれもこんな性能なんですか?」

 

 まあリズはSAOでも指折りの鍛冶屋だからナー

 SAOの道具屋はあいつの武器が流れたら目の色変えて確保しにいったもんだ

 そも鍛冶師自体が少ない

 

「え、私これタダでいただいちゃったんですけど良かったんでしょうか。『なんか他人の気がしない』って言われて……」

 

 そりゃあ得したナー

 新人育成は先人の責務みたいな面もある

 リズベットは数は作らないが質がいい。SAOwikiのオリジナル武器リストの一ページはほとんどあいつ一人で埋めちまったくらいだ

 オリジンでも武器作ったら売れそうなのに

 鍛冶スキル、気になってくる

 リズベット姐さんってあれだよな、SAOの時黒の剣士の武器作った人

 そうそう。ほかにも閃光とかのも作ってたらしい

 

 ! ()()

 

 ユウキもランもこくりと頷いた。

 

 もし話題が出なけちゃこっちから振るつもりだったが運がよかった。

 いまの流れなら『黒の剣士』のことを尋ねても自然だろう。

 

 いくぞユウキ話し合い通りお前が口火を切るんだ!

 

「ク、『黒の剣士』ってナニー? ボクハジメテキイタナー」

 

 演技絶望的か? 終わりだ。終わった。

 

 あいつのことが知りたいのカ?

 

 お?

 

 黒の剣士か。あいつにはずいぶん振り回された

 ギルドに入らないソロの黒ずくめだろ?

 そういやあんまり最近噂聞かないね

 いやALOで見たってやつもいなかった?

 それ半年は前だろ。もうALOのイベント攻略にだって来てねえよ

 みんなよく知ってるな

 悪目立ちするやあるではあったし

 

 おお、結構食いつきがいい。思ったよりもみんな黒の剣士のこと知ってるんだな。

 もしかしてコボルドロード攻略でSAO生還者(サバイバー)*1が流れて来てたりしたんだろうか。

 

「有名な人だったんですね。どういう人だったんですか?」

 

 変態

 化け物

 黒づくめの変な奴

 LAボーナス最多獲得者

 だってあいつの二つ名のひとつ『二刀流』なんですよ?

 

「二刀流? そんなスキルあったっけ?」

 

「ユニークスキルだな。ううん、てことはまとめwikiにかいてあったことマジなのか……」

 

「ゆにーくすきる?」

 

 そりゃ聞き覚えないよな。SA:Oにはまだないシステムだし。

 

「ソードアートシリーズには武器の種類が山ほどある、がそれは別に最初からすべてが解放されてるわけではないんだよ」

 

 とくに有名なのは刀スキルだ。

 これは初期開放ではなく、曲刀カテゴリの熟練度を上げることで途中から派生させることができる。

 こうした発展形の武器スキルは「エクストラスキル」と呼ばれ、普通のスキルから分けて考えられる。

 上級者専用のスキル、とでも考えればいいだろう。

 

「そしてその中でも特に派生が難しいスキルがいくつかある。二刀流ってのはその一つなんだ」

 

「難しいって、どれくらい?」

 

「獲得のためには二刀流解放クエストを受けなきゃいけないんだが、まずそれを受ける条件として片手剣の熟練度マックス。その上片手剣一本で百体以上出てくるモブを一人で倒した後フィールドボスをソードスキルなしで倒さなきゃいけない。しかも一人で」

 

「ひえっ」

 

「それだけやってようやく使えるスキルなのに、その二刀流ってのがまたピーキーな性能しててさあ」

 

 そうなんだ。かっこよさげに聞こえる

 オサレ度高い。両手に片手剣もてるのアドでは?

 そう思うよナー。でも大した防御スキルがないんだなこれが

 はい?

 いや手数は多くて強いよ? 最上級スキルで27連撃とか超破格だよ? でも相手の攻撃に対して防御手段がPS頼りの回避だけはきついって

 あの、防御用のソードスキルとか……

 一個あるよ。十字に剣を組んで防御する

 それ持ってる意味あります?????

 正直盾使った方が安定するわあんなの

 

「あれ、聞く限りあんま強くないんじゃ……?」

 

「ああ、わかってきたろ、このめんどくせースキル使って最前線で常に一人だけでボス攻略してた『黒の剣士』の変態さが」

 

 まあ、その、はい……

 九個あるユニークスキルの中でも一番とがった性能してる

 しかも極め付きは74層フロアボスグリームアイズの1パーティ攻略

 直前にアインクラッド軍がフルレイドで挑んでボコだったのにさあ

 こわ……

 さすがに盛りすぎでは?

 事実なんだよなあ

 

「フロアボスって、あのイルファング・ザ・コボルドロードと同じ?」

 

「しかも74層って、相当強かったりするのでは……」

 

「単純には測れないけどだいたい階層+10がレベルの目安だったらしいし……コボルドロードの八倍くらいは強いんじゃないか?」

 

「は、ちっ――!?」

 

 改めて聞くととんでもないな

 SAOこわ

 オリジンにはユニークとかないのかなあ

 来ても使いこなせる気がしない件

 

「会ってみたいなあ、黒の剣士」

 

「あ、おいユウキ」

 

 あ、しまったという顔をするユウキ。

 

 今日はあくまでも噂を聞くだけで会いたいということは言わない予定―――。

 

 会えるかもしれないヨ、黒の剣士

 

「は?」

 

 最近黒の剣士の噂が出てるんだヨ

 マ?

 団長たちはさすがに知らねえカ? 

 ああ、もしかして超強い片手剣士の噂?

 

「それ、マジの情報か?」

 

 聞いたことある……気がする!

 なんでもいまオリジンのデカめのイベントにソロの片手剣士がボスのLAボーナス奪って回ってるーってナ

 

「―――」

 

 案外、イベントに顔出したら会えちまうかもナ

 

 

 

 しばらくして配信を終わらせると、俺と木綿季、藍子、そして配信に出ないながらも話は聞いていたユイとで額を突き合わせる。

 

「聞いたか、黒の剣士の噂」

 

「うん。オリジンのイベントに出て回ってるって。ほんと、なのかな?」

 

「でも聞いた感じ特徴自体はおおむね当てはまってる気がするかも」

 

「でも場所がわからねえ。探すとしてもどうすれば―――」

 

 言いかけて、止まる。

 じっとユイが俺たちを見上げていた。宝石みたいにきれいな瞳の中にはゆらゆらと不安そうな色が浮かんでいるような気がする。

 

 ……ま、いまうだうだ言っても仕方ねえか。

 

「そんな心配そうな顔すんなって。探しに行ってみようぜ、みんなで」

 

「うんうんもし見つかったら万々歳だしね!」

 

「うん。きっと見つかるよ、だから、ね?」

 

「ありがとうございます、みなさんっ」

 

 じゃあ問題は……。

 

「どこに行くか、だよね。オリジンのイベントって言ってもたくさんあるし」

 

「だなー、何かこれだっていうのがあればいいんだけど」

 

「夏休みに入ってオリジンも一気にイベント増えたもんね。フロアボスなんかもすごーく増えてるし」

 

 この前はついにユナちゃんと師匠がファンたちとだけでフロアボス倒して大層話題になったものだ。

 それどころか、別の場所にゲリラクエストで出てきたフロアボスはそこに居合わせたプレイヤーの寄せ集めで倒せちまったとかいう話も聞く。

 もっと言うなら週末には遊園地、テーマパーク、デパートなどとコラボして、施設まるまるダンジョンにしちまうなんてイベントもやってる始末だ。

 

 それだけイベントが乱立している今のSA:Oというゲームで一人のプレイヤーを見つけるっていうのは難しい。

 

 ん、ユイ? なんか目が光ってないか?

 

「検索を終了しました」

 

「どうしたんだユイ? 星の本棚に行った?」

 

「いえ残念ながら私には『仮面ライダーW』に出てくる二人で一人の探偵である仮面ライダーWの頭脳担当フィリップのように地球の記憶にアクセスすることはできませんが、普通のインターネットならお兄ちゃんたちとは比較できないほどの速さで調べ物ができます」

 

「お、おう、そりゃすごいな?」

 

「そういうわけでひとまずソードアート・オリジンにおける『黒の剣士』の目撃情報を調べてきました。すべて、ひとつ残らず」

 

 すべて? いまユイすべてって言った? 調べたのってたぶんユイが黙り込んでからだから、二、三分とかだぞ?

 

「そ、そんなことできるの?!」

 

「いままでは『黒の剣士』の情報が少なすぎた余り絞り切れませんでしたが、SA:Oをやっているとなれば話は別です。

 あとはただSNSでオリジンのプレイヤーを抽出、その中から黒の剣士というワードを抜き出し、時間、場所、発言の信ぴょう性などを精査しながら、信頼できるものを精査していくだけです」

 

「す、すごいねユイちゃん……私なんかじゃ」

 

「ふふ、私から見るとお兄ちゃんが夢中になっちゃう料理を作れてしまうランちゃんの方がすごいと思います」

 

 口元を抑えて微笑むユイ。

 

 すげえな……この能力をぜひとも兄妹間での対応の方法を調べるときにも発揮してほしかった。

 

「お兄ちゃん聞いてますか?」

 

「ああ聞いてるぜ。とりあえずあとで一緒にインターネットとの付き合い方勉強しような……」

 

「? わかりました?」

 

 首をかしげるユイだったが、俺に話の続きを促されると先ほどのように淡々と話し始める。

 

「それで検索結果なのですが、どうやら黒の剣士の目撃情報はどれも一か所に集中しており、この噂自体の信ぴょう性は非常に高いもののように思われます、お兄ちゃん」

 

「! じゃ、じゃあそのうわさが集中している場所って―――」

 

「ここです。推定『黒の剣士』というプレイヤーは、この地域周辺のイベントに参加してくる可能性が高いと思われます」

 

 ユイがす、と腕を振ると先ほどまで虚空に浮かべていた配信画面の上に周辺の地域のマップが現れる。

 マップの上には今まで行われたイベント情報と、目撃情報があった時間と場所の情報が添えられている。

 

 しかもその二つは時間も場所も、おおよそ重なっているように見える。

 

「つまり、だよ。このマップの周辺で行われるイベントに参加すれば……」

 

「黒の剣士に会える! だよね?」

 

 ああ、すげえなユイは。協力するって言ってなんだが、ユイが優秀すぎる。

 

 とりあえず頭撫でておくか。なでなで。

 

「見つけような、黒の剣士」

 

「はいっ!」

 

 さて、じゃあ一番該当地域から近いイベントは、と。

 カムラアクアパークSA:Oコラボイベント……これみたいだな。

 

「アクアパーク、市民プールみたいだね」

 

「プール! いいね! ちょうど夏だし絶対楽しいよ!」

 

「もう、遊びに行くんじゃなんだよ?」

 

「いえ、せっかくですしみなさんで楽しみましょう。それに私、プールはインターネットの知識しかないので、楽しみです!」

 

「ユイちゃんがそういうなら……去年の水着まだ入るかな

 

 よし、方針は決まったな。

 

「今週末はカムラアクアパークで黒の剣士探しだ!」

 

 次回! 水着回! こうご期待!

 

 

*1
SAO攻略組の中で第百層まで踏破したプレイヤーたち。この称号はSAOが終わった現在もトッププレイヤーの証とされる。




《ヒロ》
この話でラネタをほとんど使ってない。真面目。
インターネットは真実ばかりを伝えてないのではという疑念に行きつく。ようやく?

《ユウキ》
好きな人の良いところはみんなに知って欲しいタイプ。

《ラン》
好きな人の良いところは自分さえ知っていれば良いタイプ。

《ユイ》
少しの情報から真実に行きつくスーパーAI。
だが時折露骨にポンコツになるかわいいヒロの妹分。
ヒロの膝に座ってテレビを見るのが最近のお気に入り。

《黒の剣士》
ユニークスキル『二刀流』使いの黒づくめ。
SAOにおいては二刀流最高の使い手であり、SAOにおいてはトップクラスの知名度を誇る。
ヒロはまとめwikiで『閃光とはたいそう仲が悪く、攻略会議では衝突が絶えなかった』という記述を見てアスナさんの前で黒の剣士の名前は出さんとこと思っている。

《ユニークスキル》
SAOに存在した()()の習得に難解な条件を必要とするエクストラスキル。
二刀流は特に習得、熟練に練習と先天性の才能が必要とされるため人気が低かった。
この世界では『神聖剣』とは血盟騎士団団長『ヒースクリフ』に与えられた称号であり、ユニークスキルとしての『神聖剣』は存在しない。

《LPFMの撃ちまくりチャンネル》
SAOオルタナティブGGOに登場するメンバーによる攻略動画……なのだが、大抵は攻略法が役に立たないともっぱらの噂。
だが視聴者にはそれはそれとして楽しまれており、レンに関しては畏怖されつつも可愛がられてもいる。
ガンアクションとしての見応えは非常に高く、気になる方はアニメがあるので是非見られたし。

《三ツ葉探偵社 おしえて探偵さん!》
SAOオルタナティブクローバーズリグレットのメンバーによるチャンネル。
狐顔の胡散臭い探偵と、巨乳の年下巫女服助手と、合法ロリおねーさん忍者によるお悩み相談の場。
だが、大抵はVR、ARに絡む素っ頓狂な依頼が投書として送られ探偵さんがぶつくさ言いつつ東奔西走する様子を眺めることになる。
原作既刊3巻。SAOの外伝として非常に高いクオリティを誇るのでおすすめです。



さて、いつもの後書きが終わりましたが、少しばかり紹介を。




【挿絵表示】

わーい! ボクっ娘の表紙絵だー! 
というわけであこさん(https://twitter.com/aco_bearchannel?s=21)に表紙絵を描いていただきました。
すごい……すごい……。Twitterやらでサムネイルが見れるような形だと見れるようになってます。ぜひぜひ読了報告など活用してご確認ください。


次回! 水着回!!

ヒロインの中でいまのところ誰が好き?

  • ユウキ
  • ラン
  • ユイ
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