ボクっ娘幼馴染に配信チャンネル乗っ取られたらバズり倒した   作:世嗣

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少し長くなったので分割です。



プール、キターーーー!(前編)

 

 

 

「というわけで来たぞ、プール!」

 

「きました! プール!」

 

 週末、俺たちは先日の方針通りカムラアクアパークへ訪れていた。

 一足早く水着に着替えた俺は、濡れてもいい上着をひっかけて木綿季と藍子が来るのを待っていた。

 もちろん頭の側面にはいつも通りお面をつけてる。今日は水場なのでギャレンにした。

 ギャレンは水落ちから生還した代表的なライダーだからな。

 

「にしても、プールにオーグマー持ち込みできるのは驚いたな。防水用のカバーもタダでくれたし」

 

「今日はSA:Oとのタイアップ日ですからね。プレイヤーが憂いなく楽しめるように配慮されているのだと思われます。事前に告知も大きくされていたことから今日は平時の1.5倍の人口密度のようです、お兄ちゃん」

 

「たしかにちらほらプレイヤーっぽいのもいるな」

 

 夏休みというだけあってメインは家族連れや、恋人同士のようだが、ちらほらタッチペンをストラップで手にひっかけている人も見る。

 

 と、そんなことを考えていると、いまの自分を見せびらかすようにユイがくるりと回った。

 

 かわいい。まるで水辺の妖精みたいだ。

 

「お兄ちゃん私の水着どうですか? 似合いますか?」

 

「おー、似合う似合う。フリルがふりふりでかわいいな。妖精さんみたいだ。誰と選んだんだ?」

 

「ランちゃんと選びました! お姉ちゃん(ユウキ)は私に自分のおさがりを着せようとしてランちゃんに叱られてました」

 

「ちなみにどんなの?」

 

「お姉ちゃんの小学校の頃の学校指定水着です。いわゆるスクール水着というものかと」

 

「うん、それは藍子が正しいな。いや年齢的には正しいかもしれんが、まあ、俺はいまのその白のフリフリがかわいいと思うよ」

 

「ふふ、お兄ちゃんのために着たのでほめられてうれしいです!」

 

「そりゃ光栄だな。そのセリフどこでラーニングした?」

 

「ランちゃんの貸してくれた少女マンガです」

 

 あの姉妹そろってユイに与えてる影響がでかすぎねえか? 

 

 隣の椅子に座るユイの水着はユイが自前で用意したものだ。

 なんでも元になる水着の写真でもあればそこから再現して衣装にできちゃうんだと。

 

 別に俺が作ってもよかったのだが、まあさすがにな。

 ユイの裸を見るようなものだし、いくら俺を兄扱いしてくれるからと言ってしていいことと悪いことがある。

 

 ユイはイマイチそこらへんわかってなさそうだったけど。

 

「お姉ちゃんたち来ませんね」

 

「だなー。着替えに戸惑ってるのかもな」

 

「あ、なら私がお姉ちゃんたちを見てきましょうか? オーグマーがあるのでびゅーんと」

 

「はは、いいよいいよ。女子の準備は時間がかかるもんだし、そうでなくてもこれだけの人だ。更衣室から出るのも一苦労だろうさ」

 

「? 着替えって衣装を選択して変更するだけでは? 一分もかからないんじゃないですか?」

 

「そりゃあゲームならな。でもここは現実だ、そんな仮面ライダーの変身のようには着替えられんさ」

 

「でもお兄ちゃんはすごく着替えが速かったです」

 

「そりゃ俺は男だからな。すぱっと着替えるもんだ」

 

「そういうものなんですか?」

 

「そういうもんだ」

 

 覚えておきます、とユイが真剣な顔で頷く。真面目だなあ。

 

 ……にしても来ねえな。

 仕方ない。暇つぶしに動画サイトで仮面ライダーの戦闘シーン切り抜きでも見るとするか。

 

 こういうやつ隙間時間をつぶすのに死ぬほど便利だけど、全く何も生み出さないで時間だけ食うよな……。

 

「そういえば、お兄ちゃんたちは今日は配信しないんですか?」

 

「今日は一般の人もいるからここでは配信は禁止になってんだ。

 その代わりにイベントクライマックス、ボス攻略になって周囲にプレイヤーしかいない段階になると解禁されるって話だ。するならそこからだな」

 

「黒の剣士さんもそこに来るでしょうか」

 

「来てる、と、祈るしかねーな。

 ま、そこらへんはいま気にしても仕方ねーさ。ボス戦の配信の時に見つけられたら御の字だな。そっちはユイといっしょにやれないのが心残りだが」

 

「そんな申し訳なさそうな顔しなくても大丈夫ですよお兄ちゃん。私はお兄ちゃんたちを見ているだけだ楽しいです」

 

「そうか。いつかいっしょに配信やろうな」

 

「はい、楽しみにしてますっ」

 

 ほころぶように笑うユイの頭を撫でようとして、ふと周囲の視線が気になった。

 

「……そういえば、いまユイって俺たち以外の人たちにはどう見えてるんだ?」

 

「私ですか? そうですね……概ねはこの施設内にいるNPCの方々と同じように見えてるのではないでしょうか」

 

「というとオーグマーをつけてると見えて、つけてない人にはユイの姿は見えていない、と」

 

「あ、でも私には彼らと違ってカーソルがありませんから、案外オーグマーをつけている人からだとふつうの人と見分けがつかないかもしれません。

 なので、お兄ちゃんがこうして話していても不自然に思う人はいないのではないでしょうか」

 

 ほー、技術も発達したなあ。

 そのうちアニメとか特撮とかに出てくる通話相手がホログラムで浮き上がるみたいなのもできちゃうんじゃないだろうか。

 いや案外もうすでに技術的にはできることだったりすんのかね。

 

「ん、待てよ。オーグマーつけてる人にはッてことは、それってオーグマーつけてない人にはさ俺……」

 

「はい、お兄ちゃんはさっきからひとりでしゃべりまくっている人です!」

 

「さっきからひそひそ言われてたのそのせいかよ!」

 

 いや別にいいけどね? でもね「しっ。あのお兄ちゃん見ちゃいけません」されるのまあまあ心に来る。大丈夫だけどね。気にしてないけどね。

 

「お兄ちゃん、だいじょうぶですか? あたま撫でてあげますね」

 

「はは、ありがとう、ユイは優しいな……」

 

 ちゃんと髪を触られてる感触が……なんか、この撫でられ方覚えがあるような。

 なんだっけ。

 

「ひろーっ、まったー?」

 

 お、ようやく来たな。やれやれずいぶん待ったぞ。

 

「女子の方混んでたのか? 大丈夫だったか」

 

「ま、ちょっとね。待たせちゃってごめんね。その代わり~、じゃーん! ボクの水着を一番に見る権利をあげちゃいまーす!」

 

「たく、お前の水着なんて今まで何度、も……」

 

 木綿季の水着はリボンのあしらわれた薄紫のビキニだった。両手を広げてくるりと回ると腰元のシースルーのスカートがなびき、アクセントとの赤いリボンも動きに従いふわりと跳ねた。

 いつもは俺が昔作った赤いリボンをつけているが、今日は泳ぐことも考えてか花のようなカチューシャで髪を留めている。

 

 はっきり言おう。俺の幼なじみがかわいすぎる。

 

 やべ、なんか木綿季をまともに見れねえ。

 

「お姉ちゃんすごく似合ってます!」

 

「えへ。ユイちゃんも似合っててかわいーよ」

 

 ユイに褒められると木綿季はにっこりと笑い、そして、今度は俺に一歩近づいてにひっといたずらっぽく笑う。

 

「どう? かわいい? かわいい?」

 

「いいデザインだな。そのままアバターに使えそう。シースルーとかあんまデザインに組み込んだことなかったけど次の衣装の時は組んでみてもいいかもな」

 

「でしょー? これ一目見た時からかわいいって思っててさー……ってそうじゃなくて! ちゃんとボクに似合っててかわいいかどうか感想言ってよ!」

 

「ハイカワイイカワイイ」

 

「心がこもってない!」

 

 木綿季が右に回り込む。目を左にそらす。

 木綿季が左に回り込む。目を右にそらす。

 

「もーさっきから目をそらしてばっかじゃん!」

 

「いやちゃんと見たしかわいいって言っただろ、むぐっ」

 

 ぱちん、と木綿季が俺の顔を両手で挟み込むと、無理やり顔を自分に向けて視線を固定した。

 

「……あっちょんぶりけとでも言えばいいか」

 

「もー、ちゃんとこっち見なきゃダメだよ」

 

 そこまでされるともう目はそらすわけにはいかない。

 いや、もう逸らしたくても逸らせなかった。

 

 すらりと伸びた健康的な手足。大胆にさらけ出されているおなか。水着で強調された胸元。

 ぷくーっと膨らんだほっぺたががわずかに赤いのは、暑さのせいか、それとも俺の前にいるからなのか。

 

「あの、えと、はい、かわいいと思います。すごく」

 

 なんとかそれだけ絞り出すと、木綿季がぱっと太陽のように笑った。

 

「ならよかった! えへへ、ヒロに褒めてもらえるとうれしーな」

 

「……さよで。

 つーかほら、感想言ったんだからさっさと離れろよ……」

 

「それはもったいないな~。えいっ、もっと近づいちゃお~」

 

 ちょ木綿季なんで俺の腕に抱き着く!? あ、やーらかい……じゃねえ! 

 

「おま、ちょ、あたってんだよ、いろいろ!」

 

「あははっ、露骨に余裕のないヒロおもしろいね。そんなにボクにドキドキしちゃってるのかなぁ~」

 

「ああそうだよ悪いか! お前との距離が近くて気が気じゃねえんだよ! これで満足か!」

 

「お、おお、そんなにストレートだと、ちょっと照れちゃうね」

 

「そーかよ……」

 

「うん……」

 

 なんだよ。なんでそんなちょっとうるんだ目で見上げてくるんだよ。

 俺たちはただの幼なじみなのに、なんか、このままだとダメな気がする。

 

 でも、木綿季から目をそらせない。この距離だと普段より木綿季がよく見える。

 まつ毛長いなとか、ふくらんだ唇が柔らかそうだとか、なんだかそういうやつ。

 

 俺は―――。

 

「お兄ちゃんたち、私が邪魔なら言ってくださいね?」

 

「「 うわああああっ! 」」

 

「あ、離れちゃいました」

 

 うわあああ! あっぶね! なんだいまの! すげえ気の迷いがあった気がする! 

 

 俺たちは三人幼なじみ! OK!? 

 

「ふう、ふう、サンキューユイ、助かったよ」

 

「そうですか? てっきりいまからちゅうするから私はお邪魔だったかと」

 

「「 しないよ!? 」」

 

「そうなんですか? 仲良しの男女は普通にするものなのでは……」

 

「なんかユイの恋愛観ちょいちょい距離が近いんだよな」

 

 どっちかっていうと恋人とかより夫婦の距離感でものを語っているというか……。

 

 何はともあれいったん深呼吸だ。ふう。

 

 木綿季の方は……まだちょっと顔赤いけど大丈夫そうだな。

 よし、俺も大丈夫。

 

「コホン。で、藍子は? 木綿季と一緒に出てこなかったのか?」

 

「んーん? でるのは一緒に出てきたんだけど、そういえばいないね。姉ちゃーん?」

 

「あ、あそこの更衣室の前あたりでもじもじしてる人がいます! たぶんランちゃんです!」

 

 ナイスユイ! ちょっと連れてくるからここで待っててくれよ。

 

 ほら、何してんだ藍子。

 

「よっ、今日はお団子にしてるんだな。泳ぐ用か?」

 

「ひ、ひろっ?」

 

「あれ、なんだまだ上着着てるじゃん。水着にならねーのか」

 

「だ、だって、恥ずかしいし……」

 

 そういう藍子は少しオーバーサイズのパーカーで体をすっぽり覆ってる。

 同じ双子でも木綿季とはずいぶん違う。木綿季は結構ノリノリで水着見せてきたもんな。

 

 まあ、藍子も足はがっつり見えてるし首元から水着っぽいのがのぞいてるあたり着替えちゃいるんだろうが……あ、半目で睨まれた。

 

「どこみてるの」

 

「え、あー、上着、脱がねえの?」

 

 じっと藍子が俺を見ていたが、すぐに無言で上着のジッパーを一番上まで上げてしまう。

 

「誰かさんの目線がエッチだから脱がない」

 

「そりゃさすがに言いがかりすぎんだろ! じゃあ俺が見てなけりゃいいの!?」

 

「それは、その……」

 

 藍子の手がいつもはシュシュのあるあたりを空振った。代わりにパーカーのひもをくるくると指に巻き付け、口をもごもごさせる。

 

 ううん、藍子は人目に付くのもそんなに好きじゃないからほかの人の視線が気になるとかだろうな。あと木綿季に比べるとインドア派だし日焼けが気になるとかかな。

 なら別に今無理にパーカーを脱ぐように言うことでもねえか。

 

「ま、とりあえず行こうぜ、木綿季もユイも待ってる。せっかく来たんだし遊ばないのはもったいねえだろ?」

 

「う、うん」

 

 まだ何かを言いたげだけど、みんなでいたら緊張も取れるだろ。

 とりあえず藍子を連れて木綿季たちと合流するとオーグマーを起動しておく。

 

 さて、これからどうしたものか。

 

「おう、オメーら、全員揃ってるかー」

 

「ったりめえだぜリーダー。風林火山、一人残らず参上済みだ!」

 

「へへ、オメーらとこうしてSAO終わってからも一緒に攻略できるのは悪くねえ気分だな」

 

「いや正直大の男が七人集まってプールに集まってるのなかなかきつい絵面ではあるんだがよ」

 

「ばっかそれは言わねえ約束だろうが! そろそろ実家からの圧が辛くなってきてんだよ」

 

「リーダーでもそうか、俺もこの前弟が家に彼女連れて来てさ……」

 

「きっつ」

 

「馬鹿野郎! なにしょげてやがる! 漢クライン27歳独身! 今日こそオリジンで活躍してキレーな女の子といーい出会いをだな……」

 

「リーダーこういう夢見がちなところ直せばすぐ彼女できそうなのにな」

 

「んだとぉ!?」

 

 いろんな人がいるなあ。

 まあこんだけ広い施設だしくる人たちだって目的はそれぞれか。

 

 だがこれから動く方針くらいは決めておきたいものだが……おろ? 

 

「お兄さんたちさっきから立ち止まってどうしたの? もしかして放浪者さんたち?」

 

 シスター服の女の子に話しかけられた。年齢は、たぶん俺らと同じくらいか。

 あきらかにプールに来る服じゃないし、こりゃたぶんオリジンのNPCだな。

 この前コボルドロードの攻略会議の場所まで案内してくれた騎士サンと同じようなポジだろう。

 

「ええ、実はそうなんす。俺はヒロ、こっちは俺のツレです」

 

「どうもユウキです! ヒロとは幼なじみです!」

 

「私はええと、いまはラン、かな。この子のお姉ちゃんです」

 

「ユイです。いちおういまはお兄ちゃんの妹です」

 

 少しつり目がちのシスターさんが表情を和らげる。

 

「そうでしたか。ということは、みなさんも今日のスイリュウサイにいらっしゃったのかしら」

 

「すいりゅーさい?」

 

「水の流れ……いえ、水の龍の方でしょうか……」

 

 首をかしげる木綿季とユイにシスターさんが微笑んだ。

 

「前者の方が正解よ。水流祭。今日はこの水の都ロービアと、周辺のいくつかの村合同のお祭りの日なの。年に一度しかない大きなお祭りだからお兄さんたちのような放浪者さんたちもたくさんおいでになるわ」

 

 水流祭。なるほど今日のコラボイベントはオリジンの世界―――つまりアンダーワールドのNPCにとってはそういう認識になってるのか。

 

「俺ら今日はちょっと人探しに来ててさ、たぶん放浪者なんだけど、『黒の剣士』ってひと、知らないかな?」

 

「くろのけんし? うーん、聞いたことないわ……」

 

「そっか。すげー強い片手剣士って噂なんだが、そっちも聞いたことないか?」

 

「ごめんなさい、私はシスターだからそういうのはわからなくて……ああ、でももしそんなに強い剣士様なら午後の海馬討伐にはいらっしゃるんじゃないかしら」

 

「海馬討伐、ですか」

 

「ええ。この町の北の方に大きな湖があってね、そこに少し前からとても大きな馬のようなモンスターが住み着いているの。いまのところ大きな害はないんだけど近くの街の飲み水はあそこから引いてるものだからそのままにするわけにもいかなくて」

 

「ああ、それで放浪者に討伐のお願いをしているってことっすか」

 

「そうなの。でもまだ人は集まり切ってなくて村長たちも頭を抱えていて……」

 

 なるほど、これはもしかすると……ちょっと待ってくださいねシスターさん。

 

 ユイ、どうだろう、これってやっぱそう? 

 

「間違いありません。レイドボスのクエストフラグですね。カムラアクアパークでは今日の午後からSA:Oのレイドボスのイベントがあることが公式サイトに掲載されています」

 

「参加方法は? 私たちがしなきゃいけないこととか」

 

「ええと……会場NPCに聞いてください、とありますね。なんだか非効率的ですね」

 

「まあまあそれもゲームの醍醐味だろ。つーことはあのシスターさんに……」

 

 あれ、木綿季がいつの間にか隣にいない。

 

「シスターさんボクらモンスター討伐手伝います! 困ってる人がいるなら放っておけませんし!」

 

「ほんとうっ? ありがとう、心強いわ!」

 

 あっという間にシスターさんのところに行ってた。行動はえーな。木綿季らしいというかなんというか。

 

 まあでも手伝うのは同意だ。黒の剣士探しもそうだが、困ってるっていうなら助けないわけにはいかないよな。

 

 それで、俺たちは何をすればいいんだ? 

 

「とりあえずは力試しからですね。じゃあお兄さんたち、これどうぞ」

 

 あ、どうも。

 

 これは……周辺マップか。

 あ、でもアイテムストレージに入ったからゲームアイテム扱いだ。

 

 カムラアクアパークはだいたい正方形のような形をしていて、主に左上の遊具エリア、左下の流れるプールエリア、右下に子ども用の噴水プールの併設された食堂と休憩エリア、右上の波のプールエリアに分かれていて、中心には三つのエリアにつながるウォータースライダーがあるようだ。ウォータースライダーは波のプール以外にそのまま滑って移動できるのか。

 

 ふむ、いまいるのは流れるプールの入り口手前くらい、と。

 

「そのマップにあるとおりこの街は主に五つのエリアに分けられているわ。そしてその五つのエリアにはそれぞれスタンプが隠されているの」

 

 シスターさんがふふっといたずらっぽく笑う。

 

「ここまで話せばなんとなくわかってくれたかしら。

 力試しの内容は、さっき渡したマップに右上を除く4つのエリアそれぞれで見つけたスタンプ、計4個を押印すること。

 そしてそのマップを次鐘が二つ鳴る(午後二時)までに街の北門にいる衛兵さんに見せることができれば討伐部隊に参加できるわ」

 

「もし間に合わなかったりスタンプが見つからなかった場合はどうなるんでしょうか」

 

「別にどうにもないわ。ただ討伐に参加する力は少し足りてないから衛兵さんは討伐には連れて行ってくれないとは思うかな」

 

「スタンプ集めて力を示す、か……沸いてきたぜ!」

 

「あ、いまのは令和三作目仮面ライダーリバイス主人公五十嵐一輝の口癖、実家が銭湯であることと気持ちが盛り上がることをかけた『沸いてきたぜ』ですね。リバイスは変身アイテムとしてスタンプを用いますから、なるほど、ぴったりのセリフです」

 

「さすがだユイ……パーフェクトハーモニー……」

 

「あ、今のは平成七作目仮面ライダーカブトに出てくる……」

 

「たんまたんまそれ永遠に続いちゃう気がする! ボクらはともかくシスターさんおいてかれてるから!」

 

「ええと、こ、個性的なご兄妹ですね?」

 

「すみません変な人ですみません。私の幼なじみが変な事教え込んでてごめんなさい」

 

 その後、シスターさんと別れると、四人でもらったマップを覗き込む。

 

「探さなきゃいけないのは、『遊具エリア』とー、『流れるプール』とー……」

 

「『噴水プールと食堂のエリア』、『ウォータースライダー』だね。波のプールは入ってなかったけどなんでだろう」

 

「そこがボス戦に使われるからだろ。さすがにボスのいるとこにスタンプ探しに行くのは締まんねーよ」

 

「あ、確かに」

 

「情報を整理すると、このカムラアクアパークを使ったスタンプラリーのようです。そして集めた四つのスタンプを指定の場所まで持って行くとレイドボス攻略の受付が完了する、という解釈でいいと思います、お兄ちゃん」

 

 ならとりあえず俺たちがするべきことはプールをめぐってスタンプを見つけることってわけだな。

 

「なんか昔こんな感じのやつやったよな。ほら、中一の宿泊研修でのやつ」

 

「ああ、ユウが間違えてヒロのジャージを着てた時の」

 

「そうそう荷造りの時に紛れてたの気づかないでそのまま着たんだよ。そのせいで入学早々こいつしばらく緋彩ちゃんって呼ばれてたんだぜ」

 

「そんな昔のこと掘り返さないでよ! いーじゃんしばらくしたらみんな忘れたし!」

 

「ばあか! お前のせいで俺の呼び名が『緋彩ちゃんじゃない方』になったんだよ! 緋彩は俺だってのに!」

 

「じゃーボクも言わせてもらうけどヒロが落とし物一緒に探してあげた後輩の女の子に気の迷いから告白されたとき『俺、幼なじみがいるからさ』とかいって断ったせいで、そのあとボク後輩の子に『緋彩先輩とずっと仲良くいてくださいね』とか涙目で言われたんだからね! ヒロだってボクに迷惑かけてるんだからおあいこでしょー!」

 

「それは……申し訳ないが! でもそれを言うなら―――!」

 

「ふにゃっ! そ、それならヒロだって―――!」

 

「―――!」

 

「! ~~~!」

 

「どうしてお二人はお互いに黒歴史を暴露しあってるんでしょう。仲良さの証明? いえ無意識みたいですし……どちらかというとお互いとの思い出を忘れてないと再確認してる? ああ、わかりました! これがケンカップル、というものですね! 私本物は初めて見ました」

 

「「 いやそれは絶対違うから! 」」

 

「わあ、声ぴったり。やっぱり仲良しさんです」

 

「うん、ごめんねー、ユイちゃん。確かにボクとヒロは仲良しだけどカップルではないっていうかそれは姉ちゃんに悪いっていうかー、ね?」

 

「ゆ、ユウは余計なこと言わなくていいから……!」

 

「えー、ほんとにいいのかなー。せーっかくの水着も……」

 

「わー! わー!」

 

「何やってんだお前らは。

 なあユイ、その、お前の言葉の覚え方変な気がするっていうか……どこで覚えた?」

 

「もちろんインターネットです!」

 

「わーすごくヒロの妹ー」

 

 えへんと胸を張るユイの隣で半目を向けてくる藍子。

 

 これは俺悪くねーだろ。

 

「まあいいや。とりあえず最初に行くところ決めよーぜ」

 

「はいはいボクウォータースライダーがいいなー!」

 

「う、ウォータースライダーか~~。そ、それはちょっと最初からクライマックスすぎやしねえか?」

 

「? ヒロ普段から俺は最初からクライマックスだぜって言ってるのにそれ言う?」

 

「ぷ、プールには順序ってもんがあるだろ! なあユイ!」

 

「え、確かにこのマップを見る限り流れるプールか、噴水、食堂のエリアに最初に行くことが想定されているようですが……正直どこから行ってもいいのでは?」

 

「なん……だと……?」

 

 ええい、こうなれば、あん、なんだよ木綿季その物言いたげな目は。

 

「いやさー、ヒロ高いところ怖いからウォータースライダー行きたくないだけなんじゃないの?」

 

「そ、そそそそそそそんなわけあるか!」

 

「お兄ちゃんの目が外に飛び出しそうなくらい泳いでます!」

 

「わかりやすいなあ」

 

 ええいうるさいわい! こうなれば、藍子! なんとか言ってくれ! 

 

「えー、私に振るのー」

 

「お前だけが頼りだ! せめて、こう、ウォータースライダーが最初以外のルートを!」

 

「……調子いいんだから、もう。

 まあとりあえず食堂とかのエリアはお昼ごはんの時に回ればよさそうだし、そこは除いて考えていいと思う。

 それでエリアを移動するにはウォータスライダーを使えばいいみたいだし、それなら流れるプールから回って、お昼ごはん、そのあとにウォータースライダーを使って遊具に行く、が一番効率的じゃないかな」

 

「じゃあそれで!」

 

「迷いないなあ」

 

 ウォータースライダーを後回しにするためならなんだってしてやるわい。

 いや全然怖くなんかないですけどね? そのために橘さんのお面にしたわけだし。

 

「じゃあまずは流れるプールからだな。ユイ、道案内まかせていいか?」

 

「もちろんです……と言いたいところですが、すみませんこの辺りは人が多くて地形データと視覚データの参照ができなくて」

 

「ああ、ユイちゃんの身長だとあんまり周囲が見えないのかな」

 

「お力になれずすみません……」

 

 ふうん、なら……よいしょっと。

 

「わ、わわっ、なにするんですかお兄ちゃん!?」

 

「肩車。これなら見やすいだろ」

 

「見やすいですけどこれはちょっと、恥ずかしいというか、私周囲から見たら不自然じゃありませんか?」

 

「大丈夫だって。そういったのはユイじゃねえか」

 

 な、木綿季、藍子。

 

「うん、オーグマーつけてる人にはヒロもユイちゃんも仲いい兄妹に見えるんじゃないかな」

 

「うんうん。それにヒロはもともとちょっと変だから失うものはないと思うし!」

 

「それは確かに……」

 

「ユイ? 何が確かになんだ?」

 

 つーか触った感触はするし持ち上げられるけど重さがないってかなり不思議な感じだなー。

 

「まいーや。ユイ、とりあえずまっすぐでいいんだよな?」

 

「あ、ですね。順路に従って進んで一番最初に見えるのが流れるプール──って、きゃあああ!」

 

「目的地まで、振り切るぜ! アクセル!」

 

「あ、まってよボクもいく! あと肩車ボクもあとでやってよー!」

 

「ちょっと二人ともプールで走らないでって、ああもう! ほかの人見てるから!」

 




 
《ヒロ》
長袖の濡れてもいいパーカーに黒のシンプルな水着。
シンプルだがいつも通りつけてる安っぽいお面(ギャレン)が印象を破壊している。
幼なじみと付き合うとかナイナイ。

《ユイ》
白のフリル付きのワンピースタイプの水着。
藍子の「悩むなら自分の水着を誰に見て欲しいか考えるといいかも」との言葉から悩んだ末に今のものをチョイスした。

《ユウキ》
シースルー生地の組み合わされた紫のビキニタイプ。
店を藍子とユイの三人で回ってるときにほとんど一目惚れで買ってしまった。
恥ずかしさよりもいまの元気な姿で歩き回れることが嬉しさが勝ってる。
なんだかヒロに見られると顔が熱い気がするが、きっと夏のせい。

《ラン》
まだダメ。

ヒロインの中でいまのところ誰が好き?

  • ユウキ
  • ラン
  • ユイ
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