ボクっ娘幼馴染に配信チャンネル乗っ取られたらバズり倒した   作:世嗣

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アンケートは区切りがいい時に時折すると思われるので、気軽に答えていただいていいやつです。


プール、キターーーー!(中編)

 

 

「うわー! ヒローほんとに流れてるよー!」

 

「ふ、俺も一気に行くぜ!」

 

「もー、二人とも準備運動しなくて平気なの?」

 

「ギャレンの加護を信じろ! ダディは全てを解決する!」

 

「でもギャレンの橘さんって肝心なとき以外役に立たないとか言われてなかったっけ……」

 

「お、お兄ちゃん! ほんとに水が流れてます! こ、こんなにたくさん!」

 

「はは、ユイ怖がってちゃもったいねえって。ほれほれ、こっちこいよ」

 

「で、でも、私こういうの初めてで……」

 

「ならユイちゃんは私と一緒に浮き輪に乗る? ぷかぷか浮いてて楽しいよ」

 

「は、はい、ありがとうございますランちゃん」

 

「ていうかランはまだ上着脱がねーの?」

 

「そういうヒロだってまだ上着たままじゃん。いろいろ言われる筋合いはないよ」

 

「ん……ねえ、ヒロヒロなんかあそこの底の方光ってない?」

 

「あん? ほんとだ。落とし物か?」

 

「うーん、それにしては周囲の人が気にしてない……はっ! もしかしてあれがシスターさんの言っていたスタンプなんじゃ!?」

 

「なにっ! ということはあれを見つければとりあえず一個目はクリアってことか?」

 

「きっとそうだよ! いけヒロチュウ!」

 

「ピッピカチュウ! ……よし、取れたぞ!」

 

「わあすごいですお兄ちゃん!」

 

「ええと、マップは確かアイテムストレージに入れたから、あった。おーい、ヒロー、こっちだよー」

 

「おー今行く……はうっ!」

 

「ヒロ?」

 

「あしが、攣った……俺は……ここまでだ……」

 

「お、お兄ちゃんが流されていきます!」

 

「ひ、ひろーーーっ!」

 

 

 

第十三話 プール、キターーーーーー! 

 

 

 

 

「ひどいめにあった」

 

「だから準備運動しようって言ったのに」

 

「足が攣る。急激な寒暖差や、急な運動、栄養失調、水分不足などから起こることもある。別名こむら返り。なるほど、足が攣る、についての検索を終了しました。人体は不思議なことが起こりますね。やっぱり痛いんですか?」

 

「痛いのもあるけど足が動かせなくなるのがなー。水の中であれは死を覚悟するレベル」

 

「近くのバンダナのおじさんが手を貸してくれてよかったよねえ」

 

「それな。マジでいい人だったなあの人……」

 

 流されていく俺を「大丈夫かボウズ」って助けてくれた人には感謝してもし足りねえ。

 おじさんっていわれてめちゃくちゃショック受けてたけど。

 

 クラインさんだったっけか。お礼に見つけたスタンプを渡しておいたし、うまくいけばまたボス戦で会えるだろう。

 

「このあとはどうしよっか。いちおう予定じゃ噴水プールの方に行ってスタンプを探すようにしてたけど……」

 

「いいんじゃない? ボクも早めに探しに行きたいし」

 

「ああでも先に飯にするってのもありか? 俺は正直まだ大丈夫だが……」

 

 ぐううう。

 

「……なんだよ木綿季腹減ったなら腹じゃなくて口で言えよ」

 

「ええっ、ボクじゃないよ! そーいうヒロこそこんなタイミングでアピールしなくてもいいから」

 

「あん? 木綿季じゃねえの?」

 

「ヒロでもないんだ」

 

 ……ということは、だ。

 

「……」

 

「―――」

 

「ふ~む」

 

「お兄ちゃんいまの音なんですか? ランちゃんのお腹から聞えてきたように思われます」

 

「ユイちゃん無慈悲だね! 姉ちゃんいま必死にすました顔して『私じゃないよ?』みたいな無駄な努力してたのに!」

 

「ゆ、ユウ! ひ、ひろ〜」

 

 ふ、そんな恥ずかしそうな顔でこっちを見るな。任せとけよ。

 

 いいか、ユイ覚えておけよ。

 

「いまのは藍子の腹の虫がはやく昼飯を食いたくて仕方がないと訴えた音だ」

 

「そうなんですね。ランちゃんは食いしん坊さんなんですね」

 

「うう、いじわる! ヒロとユウのいじわる!」

 

 そんなぽかぽかされてもいたくないぞー。

 藍子はおっとりしてるように見えて俺らの中では一番食べるのが好きだからな。

 コンビニスイーツとかにも目がないし、冷蔵庫の藍子のスイーツ勝手に食ったら二、三日はねちねち言ってくる。

 そのめんどくささたるや俺と木綿季の中でTwitterのリツイートするとお金がもらえるツイートと藍子のお菓子には手を出すなという取り決めができているくらいだ。

 

 ちなみに俺は物は試しにリツイートしてみるし木綿季はぼんやりしてお菓子を食べる。そういうことなんですね。

 

「まあつーわけで飯にすっか。スタンプ探しはあとでいいだろ」

 

「さんせーい!」

 

「はい! ランちゃんのお腹の虫さんをこれ以上泣かせるのはかわいそうです」

 

「うう、もう。ありがとうございます」

 

 なら噴水プールは素通りしてその奥の方の休憩スペースに行かなきゃな。

 

「とりあえず手分けして空いてる席を探すとしようぜ。一つくらい見つかるだろ」

 

 やっぱり食事時ということもあってかこの辺は割と混んでるか。

 

 まだ頼りない足取りの子どもとか、小学生未満くらいの子どもも多い。

 ああいう年頃の子の水着ってプリキュアとかアンパンマンとかそういうデザインが入ってるのがおおいよなー、お、あっちのは今年の仮面ライダーだな。

 お父さんの足にしがみついてかわいいもんだぜ。

 

 ほんとに、楽しそうだなあ。楽しいんだろうなあ。あんなに笑っちゃってまあ。

 

「お兄ちゃん、だいじょうぶですか?」

 

 あん? 

 

「気のせいかもしれないですが、なんだか、怒ってます?」

 

「……なんで?」

 

「いえ確証はないんですが、オーグマーをつけてるので私にはある程度お兄ちゃんの身体状況がわかるというか、あとは表情が、なんだか」

 

 ……。

 わしわしわし。

 

「わ、わわっ、なんで頭を撫でるんですかっ」

 

「話してわかることではない! そして見えているものが正しいとは限らない。お前は何もわからず私は真理に至る!」

 

「確かにお兄ちゃんの言うことは仮面ライダーを知らないと半分くらい何言ってるかわかりませんが……あ、もしかしてこれも仮面ライダーのセリフですね。待ってください少し検索します」

 

「ふっふっふ、まだまだだなユイ」

 

 いまのうちにお面をつけておくか。へーんしん、ってとこだぜ。

 

「二人ともー、何してるのー、席空いてるとこあったよー」

 

 と、わちゃついてたら木綿季たちが席を見つけてくれたみたいだな。ありがたい。

 

「席は見つかったのはいいけど、飯はどうするよ。オーグマーの電子マネーがあるから売店とかで買ってもいいと思うけど。たこ焼きとか」

 

 あらかじめコンビニでお金をいくらか電子に……ってうお! なんか突然木綿季に手を払われた。

 

「甘いよヒロ! ヒロは甘い! りんご飴にわたがしかき氷にベビーカステラたい焼きくらい甘い!」

 

「お前そこに見えてる出店のもの食いたくなってんだろ」

 

「えへへ、姉ちゃんと回ってたらなんかどれもおいしそうで……じゃなくて! お昼は準備する必要はありません! ねー、姉ちゃん?」

 

「う、うん……そう、だねー」

 

 藍子がパーカーのひもをいじいじと指で弄ぶ。

 

 何言ってんだ。昼飯食うなら準備しなきゃダメだろ。いま俺たちの手元には何も食うものないんだぞ。

 

「はっ! お兄ちゃんお兄ちゃんちょっと耳貸してください」

 

 ユイ? そんなに一生懸命背伸びしてどうしたんだ。耳打ち? このくらいしゃがめば届くか? 

 

「お兄ちゃん思い出してください。今日朝集まるときランちゃんなんか荷物多くなかったですか」

 

 ああ、確かに。着替えかと思ってたけど……今思い返せばにしては多いよな。移動の時もなんかゆっくり歩いてたし。

 

 あ、もしかして、そういうこと? 

 

「はい。たぶんランちゃんは今日おべんとうを作ってきていると考えられます……!」

 

 弁当! じゃあ今木綿季が言わんとしてることはそういうことか。

 

 だいたいわかった(いつものBGM)。

 

「藍子、今日弁当持ってきてくれてるのか?」

 

「うん、といってもいつものものとあんまり代わり映えしないシンプルなやつだけど……あ、でもおにぎりはユウが手伝ってくれたからそれだけは特別かも」

 

「ね、姉ちゃんそれは言わなくていいってばもう」

 

「はは、そうだったのか。今まで黙ってるなんて二人も人がわるいっての。言ってくれてたなら昼がもっと楽しみだったのに」

 

「ちょっとしたサプライズみたいなものだよ」

 

「まあそれにこっちについたら売店の方に目移りするかもなーとか思っちゃって、ね?」

 

「バァカ、お前らの作ってくれたのに比べたらすべては、ハイ豚の餌ぁ~~~!」

 

「い、言いすぎじゃないかな……」

 

「安心してくださいお姉ちゃん、ランちゃん! いまのは仮面ライダーカブト30話『味噌汁昇天』でのセリフです。ちなみにこの回は料理によって人の心を支配する悪の料理人が伝説の魔包丁である『黒包丁』を手にすることで悪虐を尽くそうとするのを主人公たちが止めるというというストーリーになっています。最終的には登場人物の8割が料理を食べて昇天しています」

 

「それ本当に仮面ライダーのあらすじ? 食戟のソーマとか美味しんぼとかじゃなくて?」

 

「この回ではハイパーフォームが先行登場してたりと地味に重要な回だぞ」

 

「えっ嘘でしょ!?」

 

 マジだぞ。

 

「と、話がずれたな。まあ弁当があるならそれ以上のことはねえ。どこに置いてるんだ? 女子の更衣室の方か?」

 

「うん。保冷材も一緒に入れてるから悪くはなってないとは思うけど、少し重いから一人じゃない方がいいなあ」

 

「そうか、ならみんなで行くか? 木綿季は大丈夫か?」

 

「ボクは全然姉ちゃんに付き合うけど、そうなると席とられちゃわないかな。ほら、いま混んでるし」

 

「ならユイでも残していくか? それなら席とっておけるだろ」

 

「ええっ、ダメだよ子ども一人残すなんて! ユイちゃんがかわいそうだよ!」

 

 え、あー、確かに。いまのは俺の明らかな失言だったな。

 仮面ライダー剣斬的に言うなら、『いまのはマジないわ』、だわ。

 

「? 私は別に残っても―――残っても……オーグマーをつけてない人には私の姿は見えないですから意味ないかもしれないですね……」

 

「ああ、ああ、露骨にしゅんっとすんなって。いまのは俺がそもそもクズでカスすぎたからユイは気にすんな」

 

 けど、どうしたもんか。

 

 俺だけだと女子更衣室には入れないから俺だけで取りに行くわけにもいかないし、かといって藍子を一人にするのもだめだ。でも三人で行くとなると席が空き、ユイを一人残しても席は取っておけない、か。まあそもそも子どもを一人残していくこと自体が論外なので俺は反省すべきなんだが。

 

「あ、そっか」

 

 ぽん、と手を打った木綿季がにひっといたずらっぽい笑顔を浮かべた。

 

「姉ちゃんとヒロの二人でとってきてよ、おべんとう」

 

「私と?」

 

「俺で?」

 

 いや別にいいけど、木綿季とユイは? 

 

「ボクとユイちゃんでここ席とっておくよ。それならいろいろだいじょーぶでしょ?」

 

「私もですか?」

 

「うん。ボク一人だと退屈だし暇つぶしに付き合ってほしーんだ」

 

 ぱちっとウインクする木綿季はなんだか楽しそうだ。

 

 こういう時の木綿季はたいてい何か企んでいるんだが、まあ、こいつの出した案に特に問題はない。

 

「じゃあ俺と藍子で行くか」

 

「え、ええっ!?」

 

「嫌なら俺と木綿季を反対にするけど……」

 

「嫌じゃない! 嫌じゃない! じゃ、ないけど……」

 

 ちら、と藍子がユウキを見ると、木綿季は楽しそうに笑いつつ藍子の耳に顔を寄せた。

 

「いーじゃん、二人っきりで行ってきなよ。せっかく、今年の夏はヒロの思い出に残すために頑張るって決めたんでしょ~?」

 

「ゆ、ユウ!」

 

 何話してるんだろ、あ、藍子が頬膨らましてこっちに来た。

 

 って、うおお、いきなり袖掴まれて引っ張られ、倒れる倒れる! 

 

「あ、藍子?」

 

「行こうヒロ! ユウがここで席は取ってくれてるらしいし!」

 

「お、おお」

 

 ずんずんと歩いていく藍子に引きずられないように、足を速めると、まだいたずらっぽい笑みの木綿季が一言。

 

「あ、少しくらいは待てるけど、ボクもご飯は食べたいからあんまり寄り道とかはしないでね~」

 

「知りません! もう!」

 

 藍子に袖をつかまれたまましばらく歩く。

 

 なんだろう、藍子さっきからなんかぶつぶつ言ってるし、お、怒ってるのか? 

 

 いやでも藍子が怒ってる時は感情表に出さず静かに怒るし……わ、わからない! 

 いまの藍子の気持ちがどういうものなのかさっぱりだ! 

 

 あのー、藍子さーん? 

 

「……だって……いつもユウは……からかって……でも今年だけ、今年だけは……」

 

 ううん、ダメだな。俺の声が聞こえてない。なんかこういう藍子は珍しいな。

 

 あ、あそこのお姉さん綺麗だな。髪もそうだし、つーか、胸でけえ……。

 アスナさんもおねーさんって感じできれいで胸もデカかったが、アイテテテッ! 

 

「……スケベ。知らない人の水着なんかじろじろ見て」

 

「べ、別に見ちゃいねえよ! 見てたのはーー、空だ! あの雲の形が仮面ライダーデカイドの変身ベルトに似てたんだ!」

 

「デカイド?」

 

「ディケイドでーーーーーーす!」

 

 しまったさっきのお姉さんのデカパイに引っ張られて謎の仮面ライダーを捏造してしまった。一生の不覚過ぎる。

 

「ヒロは、さ、やっぱり、好きなの、女の人の水着」

 

「え、な、なんだよその質問。それ俺がどう答えてもちょっとこう、セクハラっぽくなりませんかね」

 

「いいから、答えてよ」

 

 藍子は俺の前を歩いてるせいで顔は見えない。

 だからこれがどういう意図なのか推し量る手段はないし、ああもういいや。正直に答えてやれ。

 

「ああ好きだよ好き。木綿季とかユイとかが見せてくれた時は『いま俺はこの人に信頼されてるんだな』とか思ってうれしくなった。あと純粋に肌とか胸とか普段隠されてるところが見えてるとめっちゃドキドキする」

 

「ヒロのえっち」

 

「理不尽じゃねえ?」

 

 やっぱ正直に答えなきゃ……うおっ!? 

 

 急に藍子がつかんでいた俺の上着の袖を引っ張って、そばにあったシャワー室の物陰に俺を引き寄せた。

 

 そして、唇を薄くかんで、目線を下に落とす。

 

「藍子?」

 

「ヒロは、さ。見たい、私の水着」

 

 え? 

 

「だ、だから! 私の水着を、ヒロは見ることをしたいのですか、という、質問でして」

 

「そ、そうですね……お、俺は、藍子の水着を、みせてくれるのなら、みたいです。その、いいのですか」

 

 なんで英語の教科書の日本語訳みたいな話し方してるんだ藍子。いや俺もだけどさ。

 

「じゃあ、いいよ、ヒロになら。みせてあげる」

 

 周囲に人気はない。どこからか子どもの声が風に乗って聞こえてくるが、そんな喧噪すらも今はどこか遠い。

 きっと今俺たちを見ている人はいない。誰もこんな物陰のことなんて見向きもしない。

 

 藍子の細い指がパーカーのファスナーにかかる。

 小さな音を立てて、するすると指が下へと降りていき、その動きに従って今まで彼女の体を覆い隠していた帳がするりと滑り、俺の前に藍子の水着姿をあらわにした。

 

「ど、どう、かな」

 

 まず目に映ったのは黒。そして、大胆にこちらに見せられている胸、そして肩だった。

 それもそうだろう、なにせ肩へとつながる布地が左肩にしかない。右肩はそのままこっちに見えているのだ。

 いわゆる、ワンショルダービキニ、というものだと思う。ユイの水着のこととか工面するときに勉強したからわかる。

 

「な、なんか言ってよ……」

 

 赤い顔で薄く唇をかむ藍子の視線は俺とは合わない。

 ただ体を隠すようなことはせずに、じっとそこにいる。俺の言葉を、待つように。

 

「あ、その、綺麗だ。すごく、綺麗だ」

 

 ああ、これしか感想出てこないってマジ!? 

 

 なんかこう、気の利いたこととかさ! あー、いま俺に天道総司並みの語彙力があれば! 勉強しておけばよかった! 

 

「ふ、ふふっ」

 

 藍子? 

 

「そっか。綺麗か。それなら、良かった」

 

 藍子が口元に手を当てて、笑う。安心したように、楽しそうに。

 

「ありがとう、ヒロ」

 

 まるですべてを魅了する月のように、明るく微笑んだ。

 

 なんだろう、これ。今日はやたらと胸がうるさい日だ。

 

 俺たちは幼なじみなのに、なんでこんな。

 

「え、あー、そ、そのー、いい水着だな! 自分で選んだんだよな! はは、木綿季もそういってたもんな。はは、ユイなんか俺に見せるためとか言っててさ、ユイは時々びっくりするようなこと言うから困っちゃうよな」

 

「そうかな。好きな人に水着見てもらいたいって普通の気持ちだと思うけど」

 

「あ、あー、そうなんだ。そこらへん俺にはわかんないなあ。男だと動きやすさで選んじゃうからさー」

 

 ああ俺なに言ってんだろう。何かしゃべってないと普通を保てないとかなんか相当変だぞ今日の俺。

 

「……私も、そうだって言ったら、ヒロはどうする」

 

 へ? 

 

「私も、見てほしい人がいたから水着を選んでたら、どうする?」

 

 あの恥ずかしがり屋の藍子に水着を見てほしい人だって? 

 

 一体誰が。

 いや待て、藍子はずっとパーカーで水着を隠してて、それでその水着は今日のために選んだもので、いまその水着を見せてもらっているのは、一人しかいない。

 

「あ……」

 

 藍子が潤んだ瞳で俺を見つめている。

 

 なんだよその目、どういう気持ちなんだ。俺はどうしたらいいってんだよ。

 

「藍、子」

 

「ヒロ……」

 

 俺は藍子を目の前にして、どうしたいんだ。

 待てよ、そういうのはしないって決めただろ。俺みたいなクズでカスじゃあだめだって、でも、でも。

 

 足が進む。

 そして、俺の手はいつの間にか藍子が背にする壁に手をついて、そして―――。

 

 

《 おっめでとー! 隠しキーへのタッチの条件クリアで噴水プールエリアのシークレットスタンプ進呈ー! これ持ってたらいいことあるよー! 》

 

 

「「 うわああああああっ!! 」」

 

 ユナの声!? ユナの声なんで!? 

 

「って、びっくりした隠しアイテムゲットのアナウンスかよ! あの人イメージキャラクターだからこんなことまでしてんのかよ!」

 

「ああ、いまヒロが触った壁が隠しアイテムがあるところだったんだ、それでアナウンスが流れてきた、と……」

 

 いつの間にか俺の手の中にはきらきらと光る白いスタンプがある。

 

「……あー」

 

「えと……」

 

 もう、さっきまであったなんだかわからない気持ちはずいぶん薄れた。

 なんつーか、これは運がよかったのか悪かったのか、いやまあ、うん、とりあえず。

 

「おべんとう、とりにいこっか」

 

「だな。木綿季もユイも待ってるし」

 

 何はともあれ、昼飯だな。うん。

 

 

 

 

 ヒロと藍子が二人でわちゃわちゃとスタンプゲットの幸運に見舞われていること、木綿季とユイはだらだらととりとめもない雑談をして二人を待っていた。

 

 天気は快晴。さんさんと太陽はてっぺんで光り輝く中、にぎやかな声があたりに響く。

 

「そのあとヒロがさー、ご飯にざばーっとかけちゃって」

 

「それはびっくりですね。ネットを検索しても類似の例はあまり見られませんし」

 

「だよねー。あー、おかし」

 

 ユイは木綿季のことを「お姉ちゃん」と呼び。木綿季もまたユイのことを妹のように扱う。

 木綿季は元来社交的で、おしゃべりで、そのうえ聞き上手の側面も併せ持つというパーフェクトコミュ強である。

 ユイはメモリーがほとんどなく、経験こそ少ないものの人間の心をいやすことを目的として作られたAI。故に木綿季と同程度、場合によってはそれ以上の聞き上手。

 

 したがって二人の話のテーマは自然と『お互いが好きなこと』が中心となり、そして会話の中には一人の少年がたびたび登場することになっていた。

 

 ちなみにその少年の方は熱くなると話し上手でも聞き上手でもなくなり好きなことをマシンガンのようにオタク語りをするタイプである。めんどくせえ。

 

「そういえば、なんで二人に行ってもらったんですか、お姉ちゃん」

 

「お弁当のこと?」

 

 はい、とユイが頷く。

 

「確かにお姉ちゃんの提案は効率的でした。

 でもあの時のお姉ちゃんはどちらかというとお兄ちゃんとランちゃんを()()()()()()()()()()()()()気がしたんです」

 

「あ、あははー、そればれちゃったんだー……」

 

「私、壊れちゃったけどこれでもメンタルヘルスカウンセリングプログラムですから。えへん」

 

 胸を張るユイに、木綿季は降参とでも言いたげにほほ笑んだ。

 

 そして、机の腕にべたーっと体を寝そべらせると、とつとつと語り始める。

 

「姉ちゃんさ、ヒロのこと好きなんだよね」

 

「好き、ですか?」

 

「うん、そう。ボクにそうだって一度も言ったことはないけど、わかるよ、姉妹だもん」

 

 簡単な言葉だ。でも、いま言葉にするとやっぱり間違いないな、という気持ちになってくる。

 

「『好き』って、私もお兄ちゃんのことは好きですけど、それがランちゃんの場合だと何か変わるんですか?」

 

「あはは、全然違うよ、きっと。

 だって、ユイちゃんはヒロのことを『お兄ちゃん』として好きでしょ? 頭を撫でてくれたり、一緒にテレビを見てくれたり、肩車をしてくれたり。

 それで胸の奥の方がほわほわ~っとするの。この人と一緒にいると楽しいな、とかそういうことを思う」

 

「な、なんでわかるんですか!?」

 

「にひひ、お姉ちゃんだから、かな」

 

 目を真ん丸にするユイは年相応でかわいらしい。

 生まれてこの方16年、ずっと妹をしていた木綿季としては、かわいがりたくなる身近な子、というのは新鮮なのだ。

 

「でもきっと、姉ちゃんのはそうじゃないんだ。

 姉ちゃんはヒロにね、『恋』してるんだよ」

 

「こい……?」

 

「うん、そ。

 ……ボクたちがちょっと厄介な病気を患ってるの、ユイちゃんには話したよね」

 

「え、あ、はい。いまは小康状態だと」

 

 木綿季と藍子は不治の病を患っている。

 幼いころはずいぶん苦しめられたし、この病のせいで悲しい別れも経験した。

 けれど今は一日に数回の薬を休まず飲むことで発症を抑え、他の人と変わらない日常を送ることができるようになっている。

 でもそれはずっと綱渡りを続けていくようなものであると、心のどこかで彼女たちは思っている。

 彼女たちはほとんど普通の人と変わらない生活ができる。

 

 でも、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「だからかな、姉ちゃんは小学校のころは誰かと過度に仲良くするのを怖がってた。ボクはクラスの友だちの家に行ったり、連れてきたりとか時々してたけど、姉ちゃんはそういうのあんまりなかったみたいだし」

 

 いまは普通に友だちと遊びに行ったりしてるけど、と木綿季が付け加える。

 

「でもね、そういう中で姉ちゃんはヒロを好きになって、すっごく大切な人にしてる。水着とか、ヒロにだけ見てほしい! とか思っちゃってるんじゃないかな。

 ちょっとわがままに聞こえるかもしれないけど、そういうの、ボクからしたら結構うれしくてさ、応援したくなっちゃうんだよね」

 

 木綿季にとって藍子はずっとお姉ちゃんだった。

 いつも気丈な姉に憧れていて、自分のことを守ろうとしてくれることがうれしくて、そして、一緒に泣けないことがさみしかった。

 

 だからこそ、あの姉が誰かの前で『お姉ちゃん』でいないことが、木綿季は嬉しい。

 

「恋。誰かを好きになるって好きってどういう気持ちなんでしょうか」

 

「うーん、その人だけが欲しいとか、そばにいられないと寂しいとか、えっと、あとは、スキンシップしたいとか、一緒の名字になりたいとか、そういう感情……なのかな?」

 

「曖昧ですね……」

 

「ごめんね、ボクそういうのあんまりわからなくて。

 告白もしたこともされたことないし、友達には『おこちゃまのユウキにはわからない世界よ』なんてからかわれるし」

 

 別に恋バナが嫌いとかではないし、恋愛マンガなんかを読めばドキドキづることもあるけど、イマイチ自分のことに当てはめられない。

 

 たぶん、自分にはまだ早いんだろうな、と木綿季は思っていた。

 

 けど、そんな話を聞いてユイがこてんと首を傾けた。

 

「お姉ちゃんはお兄ちゃんが好きなんじゃないですか?」

 

 不意に頬を撫でた風が、木綿季の吐息と混ざる。

 

「好き? ボクが? アハハないない! だってボクとヒロだよ? 

 見たでしょさっきのヒロ、ボクを女の子として見ることなんかないんだよ。

 困っちゃうよねー、あそこまで近づかないと誉め言葉ひとつ言わないんだから」

 

「そう、なんですか?」

 

「そうなんですそうなんです。

 それに、ヒロには姉ちゃんみたいな人が似合ってるよ。姉ちゃんもヒロのことが好きだし、お似合いだよ」

 

 料理がうまくて、家事ができて、おしとやかで、頭がよくて、ついでに胸も木綿季より大きい。

 

 ボクが勝っているところなんて、身長が一センチ大きいだけだよ、なんて思ってしまう。

 

「でもっ、ヒロは手ごわいから姉ちゃんも苦労してそうだなー」

 

「お兄ちゃんが?」

 

「うん、だってヒロ『三人』でいることにすごくこだわるからさ」

 

「確かに、お兄ちゃんはことあるごとにみんな、いえ『三人』でという言い方をよくしますね。最近は私を気遣ってか四人で、と言う割合も増えているようですが」

 

 どうしてでしょう、とユイがまたまた首をかしげる。

 それに対して、木綿季は寝そべったまま、一瞬黙り込んで、けどほとんど考え込んだ様子なく言葉を続けた。

 

「たぶん、僕らの関係に何か変化があったら『二人と一人』になるのが怖いんと思う」

 

「怖い? あのお兄ちゃんが?」

 

「ふふ、ヒロ、ユイちゃんの前だとめっちゃくちゃカッコつけるからね。そう思っちゃうのも無理ないかもね」

 

 木綿季がん-っ、と伸びをして気持ちよさそうな声を漏らす。

 

「でもボクなら大丈夫だよ! あの二人が付き合ってもボクらが幼なじみなのは変わらないんだし! ぜーんぜん応援できるから!」

 

 今年の夏の藍子は見るからに張り切っている。

 きっとうまくいけばそう遠くない未来、ヒロと藍子がサクッと付き合っちゃう未来もあるんじゃないかな、などと木綿季は思ってたりする。

 

 木綿季は笑う。太陽みたいに、あたたかく、朗らかに。

 

「お姉ちゃんはそれでいいんですか?」

 

「あったりまえだよ。ボクは姉ちゃんが幸せなら嬉しい。ヒロが幸せなら嬉しい。そしてその二人が一緒に幸せになれることなんて、ダメなはずないよ!」

 

「そう、なんですね。はい、その気持ちはわかります。私もみなさんには楽しい気持ちでいてほしいですから」

 

「でしょー? あ、そういえばさ今日のお弁当は―――」

 

 話し上手で、聞き上手な二人の話は次へと移る。

 楽しげに弾む会話の中、大きな丸い太陽にどこからか現れた薄い雲がかかり、細い影を落とした。

 

 

 

 

 

「ま、マジで行くのか、ウォータースライダー、なあ、木綿季ぃ~」

 

「もー、おいしい昼ご飯も食べたしやる気は十分でしょ?」

 

「それでもなんだってこんな高いところから低いところに落ちるだけのものにのぼるんだよぉ~」

 

 藍子の作ってくれたおかずと、木綿季のちょっと不格好なおにぎりで腹を満たした俺たちは当初の予定通りウォータースライダーに来ていた。

 ちなみにもう藍子はさっきみたいにパーカーを着ていたりする。

 

「でもヒロ、私たちがさっき噴水エリアのスタンプは見つけちゃったんだし、次はウォータースライダーのスタンプ見つけないとボス討伐に行けないよ?」

 

「だけどさぁ~~」

 

「お兄ちゃんがすごい駄々っ子みたいになってます……」

 

「ほら、さっき言ったでしょ。ヒロはユイちゃんの前だとカッコつけてるって」

 

「やかましいわーい! 何が悲しくてこんな高いところ……!」

 

 高所恐怖症なのにもかかわらずクレーンで十メートルくらい吊り上げられてこの世の終わりみたいな顔になっていた仮面ライダーゼロワン主人公アルト役ふみやくん……同じく高所恐怖症なのに鳥種怪人だからやたらと木の上に登らされて震えてたオーズの相棒アンク役のりょんくん……いま俺は君たちの気持ちがわかる……。

 

 俺は悲しい。ポロロン。

 

「うわあ~、たっかいね~。うわー、ここから滑ったらすごい気持ちよさそうだなー!」

 

「滑るルートが三つもあるんだね。これがそれぞれのエリアにつながってるんだったかな」

 

「はい。右のスライダーが流れるプールへ、真ん中が噴水・休憩エリア、そして左が遊具のプールになります」

 

「ボクたちはこれから遊具のプールに行くから左のスライダーを滑っていけばいいってことだね」

 

「ああ、頑張ってくれ!」

 

「なんで他人事なのさ!?」

 

 やめろー! やめてくれー! 俺はマジで高いところは無理なんだよー! 

 

「なんでお兄ちゃんはここまで高いところを怖がるんでしょう?」

 

「あー、まあ、小さいころにいろいろあったみたいなんだよね。本人も普段は直したい直したい言ってるんだけど、こういう場所になるといつもこうで……」

 

「あ、私たちの番みたいだよ。ほら」

 

「ひ、ひいい……」

 

「歩き方がおじいちゃんみたいです……」

 

 つ、ついに俺たちの番が来てしまった。あ、そうだスタンプ……スタンプさがそ……。

 

 ん、なんかぬっとでかいガチムチのおっさんがいる? 

 

「兄ちゃんこの村きっての度胸試しフットイキモの滝に来た度胸は褒めてやる。

 だがもしスタンプを探しているのなら、まず兄ちゃんたちはこの滝のコースを滑らなきゃならねえ。もしそれができたら下にいる俺の仲間がお前さんらにスタンプを押してやる手はずになっている」

 

「え? つまり俺たちはこれを滑らなきゃスタンプもらえないんですか?」

 

「そういうことになる」

 

「俺帰りまーす!!!」

 

「お兄ちゃん!?」

 

 だって無理だって! こんな高いんだぞ!? 滑っていくって、俺気を失うよ!? 

 

「もー、ヒロってば本当に意気地なしだななあ。そんな怖いならもう目つぶって滑ればいいじゃん」

 

「目をつぶったらいつ恐怖がやってくるかわからず余計怖いだろうが……!」

 

「めんどくさっ」

 

 ため息をするな、ジト目で見るな、呆れるな。怖いものは怖いんだよ。

 

「ま、いーや。ボクとりあえず行っちゃうから。先いい姉ちゃん」

 

「いーよ。じゃあ私はユウの次に滑るね」

 

「じゃあヒロは姉ちゃんのあとだね。ユイちゃんもヒロと一緒においでよ。ヒロのオーグマーにいるからそれがいいと思うし」

 

「はい、わかりましたっ」

 

「すごい勢いで俺の滑る順番が決まっていく……」

 

 おっさん助けて……だめだこのおっさん大胸筋をぴくぴくさせることに夢中で俺の話聞いてない……。

 

「じゃあいっちゃうね! また下で! やっほー!」

 

「お、いい勢いだなあ。姿勢も完璧……ナイスなフットイキモだな」

 

「あ、おじさん次は私が行ってもいいですか?」

 

「おう! 前の嬢ちゃんも、うむ、いま下についたようだ。では嬢ちゃんもいくといい」

 

「ヒロ先に行って待ってるからね。きゃっ、きゃああああっ!」

 

「これまたナイスなフットイキモだ! じゃあ次は兄ちゃんだが、早くいきな!」

 

「うう、このおっさん他人事だと思いやがって……あと筋肉ぴくぴくさせなくていいから」

 

 個性的すぎるだろ、NPCのくせに。

 

「ええいわかったわかった! 行けばいいんだろ行けば!」

 

「お、覚悟が決まったか。いいねえ、俺にお前のフットイキモを見せてくれ!」

 

 わかった、行くぞ! はい、行く。あと三秒、3、2、1、はい、覚悟の準備ができたー。変身の準備ってわけなんだよな。マジで次行くから、はい! このあと滑る! 

 

「あの、お兄ちゃん、滑らないんですか……?」

 

「待て話しかけるなユイ! いまの俺は覚悟をひとつずつ積み上げてる段階だ! 今話しかけられるとすべて台無しになる!」

 

「で、ですが、その、後ろの人がだんだん上ってきてて具体的に言うとあと2秒でお兄ちゃんが滑らなければかなり渋滞になるというか、お兄ちゃんがヒンシュクを買いそうです!」

 

「そんなこと言われても―――なんだ?」

 

 

《 WARNNING! 》

 

 

 なんだ? 急に目の前に赤いアラートと、これは……風? 

 

「この風の吹き方は……まさか、やつが来たのか!?」

 

「知ってるのかおっさん!」

 

「この風の吹き方はこのフットイキモの滝の向こうの森林、カエッテコンの森にいる主のが巻き起こすものだ! 奴は気まぐれにこの辺りに来ては度胸試しをする男を狙って襲ってくるんだ! そのせいで毎年一つの尊い命が犠牲になっている!」

 

「やめちまえそんなところでの度胸試しなんて!!!!」

 

「犠牲になっているのは主の方だ! 安心しろ!」

 

「あ、だから命の数え方が一つなんですね」

 

 っ、何かが飛んでくる。おそらくあれが主なんだろう。一体どんなモンスター―――っつ! 

 

「あ、あれは、ギラファノコギリクワガタ!?」

 

「……の、ようなモンスターです! 私の視認範囲では『サイクロン・ギラファード』と書いてるように見えます!」

 

「む! いかん兄ちゃん! やつが襲ってくる! 身を引くくしろー!」

 

 おっさんの言うとおりだ、とりあえずここはあいつがどこかに行くのを……あれ、あいつこのままの軌道で飛んだらユイに襲い掛かっていかないか? 

 

 いやオリジンのプレイヤーじゃないなら素通りしていくのか、いやでも、ユイは一応俺たちに見えてるわけで、ああ、いまユイに言えば避けてくれる―――ああもうめんどくせえ! 

 

「はあああっ! くそ、てめえの相手は俺だあ!」

 

「兄ちゃんがやつを素手で受け止めただと!? いや、無謀だ離せ! そのままだと兄ちゃんの持ってるマップが引き裂かれちまうぞ!」

 

 おっさんが何か言ってるが、俺はもうこの距離になったら引けない。

 

 だって今の俺には―――仮面ライダーギャレンの加護がある! 

 

 せっかくのチャンスだしそれっぽいセリフも言わせてもらう! 

 

「俺はすべてを失った。信じるべき正義も組織も愛するものも……何もかも……」

 

「えっ、お兄ちゃん愛する人がいるんですか?」

 

「だから最後に残ったものだけは失いたくない!! 信じられる……仲間だけは!!」

 

「お兄ちゃんには仲間以外にも残ってるものはたくさんあると思います!」

 

 悪いユイ、俺はこいつと、落ちる! 

 

 付き合ってもらうぜ、ウォータースライダー(じごく)までな。

 

「うわあああああああああっ!!」

 

「お、お兄ちゃーーーーん!」

 

 

 

 

 

 

 

「ひ、ひどい目にあった……」

 

「お兄ちゃん大丈夫ですか?」

 

「え、ああ、俺のオーグマーにいるからユイはそばにいるのか」

 

 ええと、うん、ここはどうやらウォータースライダーの下みたいだな。

 

 でも木綿季たちがいないな。なんかいつの間にか手の中にはスタンプがあるけど。

 

「あ、スタンプならそれは恐らく先ほどのモンスターが変質したものだと思われます。さっきお兄ちゃんたちが持ってきたシークレットスタンプ、というものではないでしょうか」

 

 なるほど、いちおうあいつを倒してもクリア判定にしてくれるらしい。

 

「まあそれはともかく、ここどこだ? 木綿季たちは近くにいないみたいだけど……」

 

 ユイ、ここどこかわかる? 

 

「ここはどうやら先ほど私たちが昼食を食べたエリアの隣にある、散歩スペースの近くのようです、お兄ちゃん」

 

「てことは俺もしかして木綿季たちと違うスライダー滑っちゃったのか?」

 

「はい……私も教えようとしたのですがお兄ちゃんは上の方ではずいぶん焦っていましたから……ごめんなさい」

 

「いや謝るのはこっちの方だ。迷惑かけて悪いな」

 

 だがそうなると遊具のプールの方に行った木綿季たちとは反対だな。

 

 ううむ、とりあえずどの道を行けば早いか……ん? 

 

「ユイ、何か聞こえないか?」

 

「?」

 

「いや、なんか、あっちの散歩道の奥の方から、こーん、こーん、ってさ」

 

「あ、ほんとうですね。

 正確にはわかりかねますが……木を切る音、でしょうか?」

 

 木? 

 

 誰かいるのか? 

 プレイヤー、ではないだろうし、NPCかもしれないな。

 それなら道案内をしてくれるかもしれないな。

 とりあえず近くに……あ、いた。

 

「ん? こんなところに人なんて珍しい……あ、もしかして水流祭を見に来た放浪者さんたちかな」

 

「あっ!」

 

 その人は俺たちの姿を見るとにこやかに笑って、手に持っていた斧を傍らに置いた。

 

 今日はお祭りなのに仕事か? ん、ていうかこの人の顔どこかで……あ! 

 

「あれあなたもしかしてこの前の騎士サンじゃないすか?」

 

「え、僕らどこかで……ああ! この前迷宮区の主を倒しに言っていた迷子の放浪者の!?」

 

「そうっすそうっす! いやあ、騎士鎧じゃないんで気づかなかったですよ!」

 

「あはは、今日は非番でね。せっかくお祭りだし少し故郷に遊びに来てたんだ」

 

「あ、俺はスリーピングナイツってギルドの団長してます、放浪者のヒロです」

 

 俺が手を差し出すと騎士サンは、亜麻色の髪の汚れを払い、美しい翠の目を細めてこちらに手を差し出してくれた。

 

 

「僕は整合騎士長ユージオ・ハーレンツ・ワン。よろしくね」

 

 

 

 




《ヒロ》
高いところがマジでダメ。
今日はなんか変な感じが多い気がする。

《ユウキ》
恋愛感情とかはよくわからない、らしい。
大好きなお姉ちゃんと一番特別な人がうまくいけばいいと思っている。

《ラン》
ヒロに水着を見せたあとはまた鉄壁のパーカーが帰ってきたらしい。
めちゃくちゃ大胆な水着だったので顔から火が出るくらい恥ずかしかった。

《ユイ》
好きってなんだろう。

《ユージオ・ハーレンツ・ワン》
もとはルーリッドの村の苗字も持たぬ木こりだったが、当時の騎士団長『ベルクーリ・ハーレンツ・ワン』にその才能を見出され整合騎士見習いになるとともに養子に。
数年の修行の末決闘に打ち勝ち、『ワン』の位、つまり整合騎士団長の座を引き継いだ。
好物は央都セントリアにある跳ね鹿亭の糖蜜パイ。

ヒロインの中でいまのところ誰が好き?

  • ユウキ
  • ラン
  • ユイ
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