ボクっ娘幼馴染に配信チャンネル乗っ取られたらバズり倒した 作:世嗣
「なるほど、はぐれた幼なじみと合流したい、と」
「そうなんすよ。いちおう連絡は取って落ち合う場所は決めたんすけど……なんかそこまで案内してもらっちゃうことになってすんません」
「あはは、気にしないでよ。今日は非番だけど、こういったことは僕の仕事だって前にも言っただろう?」
うお、騎士サン爽やかだな~。
いまはこの前見た騎士鎧じゃなくてザ木こりみたいな服装だけど、『騎士の笑顔のイメージ』として教科書とかに乗ってていいレベル。
「へえ~、騎士様にも幼なじみがいらっしゃるんですね。お兄ちゃんと同じですね」
「そうなんだね。僕の方は二人なんだ」
「あ、なおさら奇遇っすね。こっちも二人、双子の女子っす」
「こっち男子と女子と一人ずつだ。一人はいたずらっぽくても頼りになるやつで、もう一人は生真面目だけど少しいたずらっぽい……んん、これじゃあ紹介がかぶっちゃってるかな?」
「はは、なんとなく関係性が見えてきましたよ。大方騎士サンが幼なじみ二人にめちゃくちゃからかわれてるポジでしょ」
「参ったな。僕そんなにわかりやすい?」
「騎士様はすごく優しそうですから、なんとなくそんな雰囲気がします」
「だな。騎士サンはニチアサだったら2クール目くらいに仲間になって周囲に引っ張られてレオタードとか着せられるポジだ」
「どういうポジ?」
騎士サンが苦笑いしつつ頭をかく。
「というかその『騎士サン』『騎士様』って呼び方やめないかい? なんとなくさっきからむずがゆくて仕方ないんだ」
「でも騎士様は整合騎士団の騎士長なんですよね? 本来は私たちがこうして話すのも難しいNPC―――立場の方のはずです」
まあ、だよな。
騎士長がどのくらい偉いのか俺は知らないが、『騎士長』ってことは騎士の中で一番強くて偉いってことなんだろうし、それをなれなれしくってのもなあ。
「やめておくれよ。僕は騎士長といっても今年に入ってから任されたばかりの新参だし、それにいまは非番だ。気軽にユージオ、と呼んでほしいな」
「代わりに僕もきみたちのことは名前で呼ばせてもらうから」と微笑む騎士サン。
「あくまでもそこで知り合った友だちのつもりで、ね?」
友だち。
へへ、まあそれなら悪くないか。
アンダーワールドでの友だちか。なんか嬉しい。
「じゃあ、ユージオさんってこっちは呼ばせてもらうっす。ユイもそれでいいよな?」
「はい。私はユイです。ユージオさんの呼びやすいように呼んでくださって構いません」
「そして俺はスリーピングナイツのヒロ! アンダーワールドみんなとダチになる男です!」
「お兄ちゃんにはそんな壮大な目的があったんですね。知りませんでした」
「ああ、今思いついたからな」
ドンドンカッ!
「あ、ちなみにさっきのは仮面ライダーフォーゼ如月弦太朗の口癖ですね。彼は学校にいる人みんなと友だちになることを目標にする人で、いつも握手をすることで友情を結んだ証にするんです」
「はは、アンダーワールドの人みんなと友だちとは大きく出たね、ヒロ君」
「気持ちはそれくらい大きいってことっすよ、ユージオさん」
というわけで、俺のアンダーワールドの友だち一号はユージオさんっすね。
ヘイヘイ、握手っすよ。
「君は不思議な人だな。放浪者なのに僕と握手か」
「別にこのくらい普通でしょっと」
ガシギュッドンドンカッ、と。
おろ、どうしたんだろう。ユージオさんが目を細めてる。
「ユージオさん?」
「いや、なんとなくヒロ君がさっき話した幼なじみのひとりに似ててさ」
「俺が?」
「なんとなく雰囲気がね。放浪者なのに君は僕らを対等に見てるって言うか、変に立場を気にしてないって言うか」
対等。
それは……そうだろうか。
もしかしたらユイと出会ったおかげかもしれねーな。
ユイは実体がないだけで思考のレベルや話してる感じにほとんど違和感がない。
それはユージオさんもそうで、ここまで俺と話しててつっかかることなんてほどんどない。
たぶん俺NPCカーソルがなかったらユージオさんのことプレイヤーって勘違いしたレベル。
まあ、だからこれはユイのおかげというかなんというか、つーかそもそも同じ人の姿をしてる人と仲良くしたいって思うのってそんなに不自然なことか?
「あはは、そういう風に真面目に悩むあたり、君は根が真面目だね」
「いやいや買いかぶりすぎですって。俺中々のクズでカスですから。あとめんどくさいラオタですから。ユージオさんも俺の本性知ったらびっくりしますよ」
「そんなことありません! お兄ちゃんはすごくいい人です! 私が保証します!」
「と、君の妹は言ってるみたいだけど?」
……どうにもやりにくい。
ガシガシ好意を向けられるのは慣れてないというか、なんとなくだましてる気持ちになるというか。
「姉ちゃんヒロ見つかった?」
「ごめんこっちからはあんまり。お面が見えれば一発だとは思うけど人も多いし……」
お、あれってもしかして。
「お兄ちゃんあれお姉ちゃんたちです!」
「だな。あんまり探し回らなくてよかった……ってあそこにあるの波のプールの入り口だな」
入り口付近にNPCの衛兵っぽい人もいるしたぶんスタンプを提出するのはあそこなんだろう。
「じゃあ僕はここまでだね」
「あれそうなんすか?」
せっかくだし木綿季と藍子に紹介しようと思ってたんだけど。
「あそこはこの周辺に出る海馬討伐の手続きをしてるんだろう?
僕にも立場があるから、こういうのには口をはさめないことになってるんだ。それに今日は非番だしね」
へー。
ユージオさんが騎士であの人たちが衛兵だから同じ組織ではないせいか。
結構指揮系統ちゃんとしてるなー。
「あと勝手に戦うと騎士長補佐にばれた時が怖い。厳しいんだ、彼女」
「……それが本音じゃないんすか?」
「はっはっはっは。まさか」
嘘つくのへっただなぁ……。
「ま、そういうことならこの先にいるモンスターの討伐は俺たちがドーンと任されました! ユージオさんはのんびりしててくださいよ!」
「うん、それは頼もしいな」
「うっす! 任せてくださいよ俺たち強いんすから!」
「……戦って守れる君たちがうらやましいよ」
ユージオさん?
「あ、あそこにいるのヒロじゃない? おーい!」
「ほんとだっ! ひろーーっ!」
木綿季と藍子が走ってくるのを感じながら、俺たちに背を向けたユージオさんが遠ざかっていく。
「ユイ、さっきユージオさんがなんて言ったかわかったか?」
「すみません、お兄ちゃんが聞き取れなかったことは私にも聞き取れなくて……」
そっか。ワリいな。
「い、いえ! でも声のトーンからどういう感情から言ったのかは類推されます」
ユイが少し考え込んだあと、恐らくですが、と前置きをして言葉をつづけた。
「あれは、羨望、でしょうか」
羨望。うらやましいってことか。ユージオさんが、俺を?
いったい、ユージオさんは俺の何がうらやましかったんだろうな。
木綿季と藍子と合流するとスランプが全種揃うこととなった。
二人は合流する前に遊具のプールのエリアで偶然スタンプを見つけたらしい。
遊具のアスレチックの上の方にあるのを藍子が見つけて、そしたらそのまま木綿季がしゅたたたーっととってきてしまったんだそうだ。優秀。
それで衛兵さんから許可をもらって波のプールのエリアに入ってこれたのはいいんだが……。
「けっこう人いるねー」
「もう13:30だもんね。順調に集められた人はもう入場できるだろうし」
「オーグマーをつけてる人がプレイヤーだと考えると、ひーふーみー、40人いないくらいか。この分だと最終的に40人くらいは集まりそうだな」
フルレイドには足りないが、おそらくコボルドロードほど強くはないだろうし大丈夫だろう。
コボルドロードは一帯のフロアを統治する強力なボスだったが、カムラアクアパークの中のボスならフィールドボスがせいぜいだ。基本ボスの強さはダンジョンになってるエリアの大きさに比例するものだし、フルレイドに足りなくても戦えるだろう。
「じゃあ私はそろそろですね」
「……と、そうだな。さすがにボスが出てくるようになるとカーディナルも監視するだろうしな。悪いな」
ごめんな、と頭を撫でると、ふるふるとユイが首を振る。
「いえ、こちらこそお願いします。私にはもう応援することしかできませんから……」
「みなまで言うな。まかせろ! 俺が何とかする!」
「ふふ、はい! じゃあオーグマーから応援してますから、お兄ちゃん!」
ユイがしゅわっと小さな音を立てて俺たちの前から掻き消えた。たぶん俺のオーグマーに戻ったんだろう。
話すことはできないが、こっちからの声とか映像とかは伝わってるはずだし退屈はしないんじゃないかな。
「そういえばボクよくわかってないんだけど、今日このあとのボス討伐で黒の剣士が見つかったらどうするの? ユイちゃんといきなり合わせるの?」
うーん。
「とりあえず事情を話してユイと話せる状況を作る……かな」
「慎重だねえ」
「仕方ないよ。私たちはユイちゃんの記憶にある言葉を追いかけてるだけで本当に『黒の剣士』さんがユイちゃんの知り合いの確証なんてないんだし」
そうなんだよなー。
ユイの記憶がないこと、カーディナルに見つかると消されそうなこと。
理想は黒の剣士がそこら辺の問題についての答えを知ってて、解決するための手段を持ってることなんだが……こればっかりは現状じゃ何もわからない。
いま俺たちができることは『黒の剣士』を見つける。それだけだ。
「まあとりあえず配信始めるか。時間的にもあとちょいでボス戦開始だろ」
「なら私たちもSA:Oをちゃんと起動しなきゃ……あれ、でもここ他の人もいるけど大丈夫なの?」
「オーグマーの設定上全員アバターだし、それにアバターじゃない人にはオリジンのシステムがフィルターをかけることになってんだ。全体の雰囲気はわかっても特定個人がわかるような情報はオリジンの配信からは読み取れねえよ」
「全体の雰囲気ってどんな?」
「んー、木綿季とかなら髪の色くらいしか残らないんじゃねーの? もっと個性的な髪形してたら違うだろうけど」
キバオウさんみたいな。
「じゃあヒロはアバターでもアバターじゃなくてもお面の不審者ってことかだね。特だね」
「デメリットしかない気がするけど……あ、でもどっちにしろ評判がかわらないなら口を滑らせないようにしてる緊張感のある今の方が得……?」
「きみたち俺に厳しくない?」
なんでかな。俺のせいだしいつも通り? そう……。
まあ配信の準備でもするか。いちおうSNSでつぶやいて、と。
…………よし、これであとは14時になれば配信が開始できるはずだ。
少し時間もあるし一周囲の地形でも確認しておこう。
波のプールは緩やかに弧を描いたような形をした半円で、中心に近づくほど深く、波も強くなる。
オーグマーを起動してみると、プールは深めの湖になっていているようで、周囲にはうっそうと茂る木々が広がっている。
森の中のオアシスとでもいったとこだろう。斧とか投げ込んだら女神が出てきそう。
なーんかボス戦で利用できそうなもんないかなー。
周囲にいるのは衛兵っぽいNPCに、シスター服っぽい人が何人かいる救護院っぽいとこ。あそこで怪我を治してくれたりするんだろうか。
「あら、そこにいるの今朝の放浪者さんたちじゃない?」
通りがかったシスターさんのひとりから話しかけられた。
淡い金髪……あのマップをくれた人だ。
「お兄さんたち、無事にこれたみたいね。おめでとう、そして、討伐を手伝ってくれてありがとう、と言わせてもらうわ」
「いえいえボクらはできることをやるだけなので」
シスターさんがほんの少し微笑む。
「この湖にいる海馬はもうじきここに現れるはずよ。二つの鐘が鳴るころになると衛兵さんが呼び出すためにエサをまくと言っていたから間違いないわ」
「湖なのに出るのは海馬なんだ……」
「馬鹿こういうのは様式美なんだからそういうこと言うなっての」
令和になって仮面ライダーがバイクに乗らなくなっていっても『仮面ライダー』と呼ばれ続ける……それと同じなんだ。
もっというとウィダーインゼリーはもうウィダーが手を引いてただのインゼリーだけどみんななんとなくウィダーと呼んじゃうあれ。
「それでシスターさんはなんでここに? 別にモンスターを倒しに来た、って感じではないっすよね?」
「ええ。私は討伐じゃなくて、あっち」
す、とシスターさんが湖の奥の方、救護施設の方を指さした。
「今日は私たちシスターはあそこでケガ人の治療よ。
あなたたち放浪者様には私たちのおまじないでの治療は効かないけど、その分ポーションはたくさん持ってきてるから怪我したらいつでも来てね」
「わあ、いいんですか!」
「ええ、もちろん。私たちはこれくらいしかできることがないから」
へえ、ポーションくれるんだ。
こういうのは基本SA:Oゲーム内の店売りか連携してるリアルの店の中の飲み物なりを買わなきゃいけないんだが、プールってことで回復アイテム配ってクリアしやすくしてるとかかな。
俺たち含めて結構若い人が多いし。
「って、あんまりおしゃべりしたばっかりしてちゃダメね。じゃあ応援してるから頑張って!」
救護施設の方へと走っていくシスターさんに手を振りつつ、視界の端に目を滑らせる。
時間は……14:00ぴったり。そろそろだな。
さてもし配信していいならオーグマーに連絡が……お、来たな。配信していいってことだろう。
「ユウキー、ランー、そろそろ配信するからタッチペン出して準備してくれなー」
はーいとユウキが気の抜けた声を出しつつ、俺の方に近づいてくる。
なんで?
「ちょ、なんだよユウキ俺の上着に手なんて、ちょ、やめろ近い!」
「はいはいちょっとじっとしててねヒロ」
ユウキがグイッと体を寄せ、そのまま俺の背中におぶさるように手を前に回してパーカーのポケットをごそごそ。
水にぬれた肌が上着越しに密着し、無防備な首元にユウキの吐息がかかる。短い髪先がさわさわと頬を撫でて、俺のポケットの中を動き回る右手も合わさって俺をからかっているようだ。
こいつ、だから、無防備なんだよ……!
高校生の男女の距離感じゃねえだろうが……!
「えーーーと、あったあった、ボクのタッチペン……え、なにどしたのヒロほっぺたそんなに引っ張って」
「気にするな、ちょっと気を引き締めてるだけだから。あといつ俺のポケットにタッチペン入れた」
「水着見せた時。ヒロは上着脱ぐ予定なさそうだからちょうどいいかなーって」
「したたかな奴め」
「幼なじみの特権だね。ヒロのポケットはボクのものだよ。その代わりゲームでのボクの力はヒロのものだね」
「力を担保に暴利を貪るの、劇場版ジャイアンが傭兵やってるみたいだな」
というか離れなさい。俺は鉄の男。背中に押し付けられるおっぱいの一つや二つで心乱されたりしないが人の目もあるので迅速かつ急速に離れなさい。
「……あれをどっちも嫌がらずにやるんだもんなあ」
藍子?
「んーん何でもない。私も準備おっけーだよ。配信する?」
何か言いたげみたいだったけど、まあ無理に聞くほどのことでもないか。
さて、団員たちの様子は、と。
祝 水 着 回
だがアバターだと見えないんだよなあ……
かなしみ
団長のお面予想しようぜ。俺バイオライダー
シャウタの代わりのオーズ
まさかのギャレン説を推す
カムラアクアパークか~。プール最近行ってないなー
うん、いつも通りだな。時間的にも……お、十四時ぴったり。
もういいだろう。じゃあ配信スタート。ぽちっとな。
始まった
お面の答え合わせが!
「おっすおっす俺参上。スリーピングナイツ団長ヒロだぜ」
団員参上
団員参上
海ではなく河原とかのフィールドかな
お面ギャレンじゃん
的中した奴いて草
「ふ、ギャレンは崖から海に落ちたけど生還したという水回りに強いライダーだからな」
でもあの人戦績めっちゃ悪くない?
大事な時しか勝ってないというか・・・
肝心な時しか頼りにならない男
「肝心な時に頼りになりゃ十分だろうが……!」
ちょっと団長っぽいナ
ああ……
ああ……
「どういう意味……もしかして俺が普段頼りにならないって言ってんのか」
うん
うん
うん
「うんじゃないが」
「はいはいいつまでモダモダやってるのさ。やっほーボク参上! スリーピングナイツのユウキだよー! 団員のみんなはアバターしか見えてないだろうけどいまは水着でーす」
絶剣ちゃんの水着……だと……?
俺たちから見るといつものアバターなんだけど!
団長位これはいったいどういうことなのかしら?!
まさか水着姿をひとり占めする気で!
「え、こう、だっていくらアバターとはいえ水着って、ほら、こう、裸見るような気持ちになるというか……そういうの、悪いじゃん」
思ったよりかわいい理由だった
お面の向こうで赤面してるのがわかる
男の子だなあ
やーまし。
正直なところ木綿季と藍子の体のデータはなんとなくわかるし作れなくもなかったんだけど、まあそう不特定多数に晒すもんでもないだろ。
あと純粋に時間がなかった。カムラアクアパークに行くと決まってから今日まで一週間なかったからね。
「ふふ、SA:Oの配信はこの前のボス戦以来だからなんだかお久しぶりって感じですね。こんにちは、スリーピングナイツのランです。最近暑いですが団員のみなさんは夏バテとかしてないですか?」
だいじょーぶでーす
クーラーに頼り切りでやってます
最近めんどくなってそうめんばっかになってる
「ダメですよちゃーんと食べなきゃ。夏バテはビタミンB1を取るといいって言われてますからお茶漬けに梅干しなんか入れて食べたりとか、あとはお肉も……これは冷しゃぶとかがいいかもですね。少し検索かけたらいろいろレシピが出ると思いますよ」
「冷しゃぶ……ボク食べたことないかも……」
「あん? 去年食わなかったっけ。俺ランに作ってもらったの覚えてるぞ」
「えなにそれボク知らない」
「ああ、そういえばあの時ユウは友だちと外に食べに行ってたっけ」
「えーずるいボクも食べたい! 今度作ってよぉ~」
だだっこかわいい
イイナー
ついでに料理の配信とかしてくれ
ラン姉ちゃんが作り方教えてくれるなら俺たちも作るよ
「え、ええっ! わ、私別にそんな上手とかじゃないですし、そんな畏れ多くて……」
「あははいーじゃん。姉ちゃんがおしゃべりしつつ~とかで」
「も、もうユウは他人事だからって。ヒロもなんとか言ってよ」
「いーんじゃねえの」
「……ヒロの裏切り者」
大げさだなあ。
見たとこ少し興味はあるだろランは。ならいいじゃんやってみれば。
まあそれも今のもろもろ片付いて落ち着いてからにはなりそうだが。
「つーわけで前置きはここまで。今日はタイトル通りカムラアクアパークのSA:Oコラボイベントに来てるぜ。土日ってこともあって人は多めだが……まあこの前のコボルドロードほどじゃねえな」
森林の中の湖ステージかー
ボスが出てくるんだっけ?
「そうそう! 今日はこの辺り……あ、
「なんでもこの湖と奥の方にある滝から飲み水を引いてる人も多いらしくてここにモンスターがいるのは困るみたいです」
プレイヤー全員参加?
にしては数が少なくね?
「ああ、誰でもボス討伐にこれるってわけじゃねえんだよ」
かくかくしかじか。
へー4エリアでスタンプ集め
楽しそう
バトらなくてもボス戦来れるのおもろいな
「ふっふっふ、たーいへんだったんだぜー? どれも一筋縄ではいかないところに隠してあって手に汗握る大冒険を繰り広げたんだ。みせてやれないのが残念だ」
「うんうん。ヒロなんか流れるプールで足がつって桃太郎みたいに流されていったもんね」
「途中で気のいいおじさんが助けてくれてよかったよ、まったく。私は準備運動した方がいいって言ったのに」
「そういうのは水に流しておけ」
「流されたのはヒロじゃない?」
「いまの俺はギャレンのお面をつけてるので水系の失態は全て無効でーす」
「給食のお替りじゃんけんで負けた後に『今の練習だから無効ね』って言ってくるくらいの無法だよ!」
ギャレンの有効活用
準備運動せずに入って後悔するの、小学生の失敗例なんよ
どんなボスとかわかってるんだろうか
「ああ、それは案内してくれたシスターさんから……」
「お、お前さっきおぼれてたボウズじゃねえか!」
ん? この声さっきの……。
「よおボウズ! ボウズもここに来れたんだな!」
誰だ?
この声は!
知ってるのか!
知らんけども
知らなかった
赤いバンダナと赤い鎧。腰に佩いた刀。
顔つきは少し荒っぽいが、こちらに向けられる笑顔は親しみがあって、どこか『気のいい親戚のおじさん』といった雰囲気がある。
さっきと違って水着ではないが、うん、間違いなくおぼれた俺を助けてくれたクラインさんだ。
「どもっすクラインさん。俺たちはなんとか。そちらは―――」
「こっちも見ての通り全員クリアよ! なあオメーら!」
おう、と野太い男の声が後ろの方でいくつか重なる。
「っと、まだちゃんとしたあいさつしてなかったな。俺ぁ風林火山のクライン! よろしくな」
手を差し出された。握手だな。気持ちいー人だなー。
風林火山のクライン!
これはまた有名どころが……
誰?
SAOの攻略組。それも
あの黒の剣士の74層の一件で一緒にいたって人か
「俺たちも改めまして、俺はヒロです。こっちは俺の幼なじみでギルドメンバーの」
「ユウキです! 片手剣士です!」
「ランです。いちおう武器は弓を。さっきはヒロを助けてくれてありがとうございます、クラインさん」
「オーケーオーケー、ヒロの字にユウキちゃんにランちゃん……ん?」
? どうかしましたクラインさん。そんな急に汗かいて頭抑えたりなんてして。
「待て待て待て待て待て。ヒロにユウキにランの幼なじみ三人組……って、オメーらまさか『スリーピングナイツ』か!?」
「あ、ボクたちのこと知っててくれるんだ。ありがとうございます!」
「いやいや俺はヒロの字たちがアニブレを取りに行ってた頃からの団員……いやそうではなくお前たちここにいるってことは配信しに来てるんだよな」
てことはまさか……と、俺を見て、近くをふよふよ飛んでいるカムラ製のドローンに目を向けた。
「いま、配信中?」
うん
うん
うん
「団員が『うん』って連打してる」
「やっぱりぃぃぃぃ!?」
頭抱えちゃった
まあそりゃそうとは知らずに配信に入ってきちゃったら、ネ?
こいつSAOのころから変わらねえなあ
「俺今すぐ消えるんで! はいすみませんでしたー!」
「あ、待ってよクラインの
「おじっ、ほっぐうーーっ!」
「あ、膝から崩れ落ちた」
「ど、どうしたんですかクラインおじさん」
「バッカユウキクラインさんが
「うぐっ」
「あっ、ご、ごめん……つ、ついうっかり……」
「いくら本当のことでも言っていいことと悪いことがあるだろ。まあ確かにクラインさんはアバターも老け顔でなんか落ち武者みたいだが……」
「はぐーーっ!」
「ストップストップヒロがトドメ刺してるこれ。クラインさんがさっきから陸に打ち上げられた魚みたいになっちゃってるから」
「まだ活きがいいからおじさんじゃないってこと?」
「ランもうまいこと言うなあ」
「そ、そんなこといってないからっ! 変な風に取らないで!」
「ダメだ俺はもう……キリの字……エギル……俺は先に行く……」
なにやってんだ……お前は
いつの間にか俺たちはおじさんに……うっ
いまの子どもはもうDSを知らない
それは俺たちもわかんないけど
いまは2027年でですよ?
ソーシャルゲームもVRゲームの隆盛とともにあらかた消えたからな……
なん……だと……
とりあえず瀕死のクラインさんを蘇生させると、話はそのままボスのことに。
クラインさんはしきりに配信画面から出ようとしたが、ユウキが誘うとでまんざらでもなさそうにいろいろ教えてくれた。
「敵はSAO第四層のフロアボスだったやつと同じタイプのモンスターっちゅー話だな。あたりを水浸しにしてプレイヤーの動きを阻害してくる系だ。このエリアの街の名前も4層と同じで、特徴も同じ『海馬』ってんだから間違いねえだろうな」
四層ボス
ウィスゲー・ザ・ヒッポカンプだナ。SAO時代は水浸しになるたびに扉を開けて水抜きして倒したらしいゾ
ボコボコにメタられててくさ
ギリシャ神話の半馬半魚ヒッポカムポスが元ネタかな
「今回は外だから水抜き戦法はできなさそうだね。正面突破になりそうだけど、うまくいくかなあ」
「姉ちゃんは心配性だなあ。だいじょーぶだって、ボクだって頑張るし、クラインさんたち風林火山さんだっているしね! ね、クラインさん?」
「お、おお! あったりめえよ、任せてくれユウキ!」
ユウキとクラインさんが腕をぶつけ合わせる。相変わらず木綿季は打ち解けるのが早い。
……だいたい40人、か。さて、どの程度戦えるか。
それぞれの駒は結構優秀だと思う。
ユウキは類を見ない程に優れた反射神経から繰り出される卓越した剣技があるし、ランは視力の良さと持ち前の容量の良さから身に着けた高い援護技術と射撃の腕がある。
風林火山についてもリーダーのクラインさんはもちろん、他のメンバーもかなり安定してる。装備面もそうだが、たたずまいからかなり『できる』のを感じる。
ユウキですら少し緊張してそわそわしてるのに、彼らはいたって普通。気負った様子も、何もなくこれからのボス戦ことを話している。
その雰囲気はどこか
他のプレイヤーも初心者っぽい人はいるにはいるが、それも少数だ。全体的にプレイヤーのレベルは高いと思う。
でも連携に関しては未知数だ。
コボルドロードの時はディアベルさんとキバオウさんがいたけどなー。今回はいねーんだよなー。
む、ランが腕を引いて、顔を寄せてきた。
たぶん画面はユウキにいろいろSAO時代の話をしているクラインさんの方に行ってるからカメラからは見えていない角度だ。
こしょこしょとランがささやく。
「この中に《黒の剣士》さん、いそう?」
「わからん。見たとこそれっぽい人はいないが、そもそも俺が黒の剣士について知ってること二刀流で黒づくめの男ってくらいなんだわ」
「二刀流で黒づくめ……それってあんまりにもふわっとしてるというか……というかSA:Oじゃ二刀流スキルないしそんな人現れないんじゃ……」
わかってるよ。でもネットで調べてもそんくらいしかわからなかったんだよ。
でも何も探すための方針がないわけじゃない。
「《黒の剣士》はSAO時代からLAボーナス……つまりボスのとどめを刺しに来ることが多かったらしいんだ。そしてユイが調べてくれた限りそれはSA:Oでも変わってねえ」
「もしいるならここでもとどめを刺すタイミングで現れる可能性が高いってこと?」
「……と、信じるしかない」
さて、《黒の剣士》さんよ、アンタはいったいどこにいる?
そしてユイとはどんな関係なんだ?
この戦いのあと、それが分かってることを願いたいもんだな。
《ヒロ》
ずっとパーカーを着たままなのでユウキに勝手にタッチペンを入れられてた。
勝手にポケットを使ってきたことに不満はあるものの、ユウキのスキンシップ自体にそんなに思うところはない。
《ユウキ》
ボクのものはキミのものだからキミのものはボクのものでいいよね?
信頼がスキンシップに出る。仲良くなれば距離感が近くなる。
《ラン》
お料理配信をそのうちやる。
料理のレパートリーは洋食が多いがヒロの母親に習って和食もそれなりに作れるようになっている。
《ユイ》
スリーピングナイツのボス攻略配信を生で見るのは初めてなので少しワクワクしてる。
《ユージオ・ハーレンツ・ワン》
騎士長補佐の女性に頭が上がらないらしい。
《クライン》
風林火山のリーダー。
面倒見が良くて、ゲームの腕も確かで、顔もそこそこ広い漢の中の漢。
ただ彼女はいない。アラサー手前。
《団員たち》
水着は見れない。是非もなし。
SAOのプレイヤーと面識があるような人も何人かいるらしい。
ヒロインの中でいまのところ誰が好き?
-
ユウキ
-
ラン
-
ユイ