ボクっ娘幼馴染に配信チャンネル乗っ取られたらバズり倒した 作:世嗣
主人公がバスタードソードを使ってる理由は僕がバスターを好きだから以外の理由はありません。
「スリーピングナイツ、前回起きた三つの出来事!」
特オタ隠すのやめてて草
この前の配信まではすごく強いクールな男を演じていたんですが
ダディ因子やめろ
クールなキャラどこ行った
「るせいわい!」
もうこんなお面付けてんだ俺はもう好きにやらせてもらうぞ!
視界の端で流れるコメントに軽く目を通しつつ、手の中の硬質な感触を確かめる。
「んじゃあまあ、団員のやつらは大体わかってるのが多いと思うけど、一応軽ーくこのゲームのことを説明させてもらうぜ。俺は最初から最後までクライマックスだから振り落とされないよーに」
了解団長
わかったリーダー
続けてくれママ
呼び方統一しろや。
ソードアート:オリジン。
それは世界初の「ARMMORPG」であり、同時にあの伝説的ゲーム「ソードアート・オンライン」の正当続編である。
SAOは誰もが知る通り空に浮かぶ鋼鉄の城『アインクラッド』をその世界に生きる冒険者として踏破していくゲームだ。
そしてSA:Oはその数百年前、まだアインクラッドが大地にあったころが舞台になる。
大地は一つにつながっていて、SAOの頃にはすっかり消え失せていた『魔法』と呼ばれる技術の残滓がまだ残る、そんな時代。
「その世界で俺たちは「放浪者」と呼ばれる立場でこのオリジンの大地を自由に―――」
「わーーーーー、すごーーーーいっ」
「聞けや!」
というかまて一人で先に行くな、まだキャラメイクが終わってねえんだから!
「ほら見てヒロに姉ちゃん! イノシシ! かわいいっ、でもなんか青い! ってわ――! ちょっと触ったらこっちに来たんだけどぉ! ひろっひろぉおおお!」
あーあ、だから言わんんこっちゃねえ……。
「じゃあユウキも反省したようなので、気を取り直して、初戦闘と行こうか」
「おー」
「……おー」
がんばれ~
ちょっと涙目かわいい
この景色SAOを思い出すよね
そこらへんにいんのなんだっけ
フレンジーボア
それそれ
あれスライムレベルのモンスだぞw
スライム>ユウキ
「おうユウキ、言われてんぞ」
「え、あー、もうみんなひどいなぁ! あのイノシシさんほんとに怖かったんだからね! ぐわーっとくるし!」
「あのくらいならアミュスフィアのゲームにもいたんじゃないの?」
「いないいない! なんかこっちのめっちゃリアル! 息遣いとか感じるし!」
「ふうん、オーグマーとアミュスフィアってそんなに性能が違うのかなあ」
それはどっちかっていうとユウキの問題な気もするが。
「ま、とりあえず戦ってみようぜ」
「ええええっ!? い、いきなりやるのぉ!?」
「何のためにゲームやってると思ってんだ。ランも、大丈夫か」
「うーん、まあちょっと不安だけど、やるしかないよね」
「ままま、待って! あと五秒ちょうだい! 心の準備するから!」
「ユウそういって注射の時30分ぐらい時間かけるじゃない」
「ほらさっさと覚悟を決めろ。レッツゴーカクゴードキドキゴースト!」
「うええぇぇぇ……」
ヒロってラの話になったら途端に饒舌になるよな
テンションも高くなる
お、オタク……
えーと、じゃあ、手ごろな石でも探して……ん、これでいいか。じゃあ、ほいっと。
「あ、こっち向いた! こっち向いたよ!」
「カーソルも赤くなったね」
「おし、じゃあここからは俺たちのステージだ! 行くぞユウキ!」
「あーもうわかったよ! ボクだってアスカじゃいっぱしの侍なんだから!」
言うや否やぐっと、ユウキが体を沈み込ませ、弾けるように駆けた。
手には両刃の片手剣。
っと、こいつ細っこいくせにほんとに足はええな!
うお、足早くね?!
でもゲームだしこんなもんじゃ?
ARやぞ?
あーVRとちがってリアル肉体準拠か
「ンモーー!」
「おっとと、あぶないあぶない」
ユウキが紫のバトルドレスをはためかせ、突進してくるmob、
反応早いね
目がいいのかも
「こ、こわかった~。けど、ここだ!」
ユウキが地に這うように体を沈み込ませ、突進直後の隙だらけのイノシシに向けて剣を斬り上げる。
それはあまりにも鮮やかで、きっと教科書にお手本と載っててもいいくらいのもの。
「よし当たっ―――ありゃ?」
が、その瞬間、思いっきりユウキがずっこけた。
あっ
ドジっ子属性か
そりゃあんだけ体傾けりゃそーなる
「うわわわっ」
「おっと、あっぶね」
「わ、ヒロ!」
「ったく、何やってんだ」
ふう、なんとかコケる前に手を掴めたか。相変わらず危なっかしくてみちゃいられねえ。
手、やーらかいな……。
ユウキちゃんの手を揉むヒロ
もにもに
事案では?
離れろ!ドン!
堪能してますねえ
「人聞きワリいこというな!」
「! ひ、ヒロ! 前! 目の前見て!」
こらコアラみたいに抱き着くな! それに目の前って、そんなの青いイノシシくらいしかいねえんだから自分で歩きなさいよ。
「ん? 青いイノシシ?」
「ブモオオォォオオ」
「「 わああああああっ! 」」
叫び声をあげながら突進してくるイノシシから二人で叫び声を上げて逃げる。
あ、ダメ。ユウキがしがみついてるから全然スピードでねえ。
「いたっ、あいてっ、おしり! なんか小突かれてる気がするんだけどぉ!」
「いくらオーグマーでも痛覚再現はしてない! だからこれは叩かれてちょっとびっくりしてるだけだ!」
「え? あ、ほんとだ……痛い気がするだけだ。でもいつまでも追ってくるよお!」
「なら早急に俺から降りろ!」
「やだよ! おりたらイノシシさんボク狙うでしょ!」
「安心しろ! 痛みは一瞬だ!」
「さっき痛みはないって言ったばっかりだよねえ!?」
なんで初モブと戦うだけでこんなわーきゃーなるんだよw
よくみりゃHPも大して減ってないのに気づきそうなのに
てかよくその体勢ではしれんなw
あーくそユウキのせいで武器が振れねえ! やべえマジで追いつかれる!
「はあ、仕方ないんだから」
その時、視界の端を一条の風が駆けた。
俺の背後から吹いたその風は、今まさに俺とユウキに襲い掛かろうとしていたイノシシの眉間に突き刺さる。
プピイ、と情けない声を上げてイノシシが消えていく。
これ矢だな。ということは。
「……なにしてるの、二人とも」
振り返ればチュートリアルでもらった弓を片手に呆れたように嘆息するラン。
「「 だってヒロ(ユウキ)が! 」」
「はいはいわかったから、早く立つ。いつまでくっついてるつもり?」
完全に子供二人とママ
というより姉と弟妹?
ラン姉ちゃんの普段の苦労がしのばれる
その後、俺に引っ付いていたユウキを引っぺがすと、三人で近くのイノシシで肩慣らししつつ、道を進んでいく。
「たあああっ――あれ?」
また外れたね
剣あってないんじゃない?
SA:Oはなれるまでがなあ
「あれれ、おっかしいなあ、イメージでは完璧なのに、なんでぇ……?」
心の眼で振るんだ
聖剣に選ばれてないんじゃろ(適当)
攻撃当てること考えすぎ。もっと自然体でいていい
狙いが甘い
リーチ把握してないのが問題に決まってんだろ。剣の長さくらい頭に入れるの常識
槍とかにしたら?
「え、え、えと、じゃ、じゃあ攻撃を当てることに意識を割きすぎず自然体で狙いをよくつけて、あ、あと剣の長さを……」
「こらユウキに勝手なこと言うなっての」
さっきから目ん玉ぐるぐるしてるぞ。
ういっす
ユウキちゃんかわいいからいろいろ言いたくなる
「まあ、気持ちはわかるけど、要は慣れだろ、慣れ」
「そういうもんかなあ」
「そういうもんそういうもん」
「ユウがあっちで使ってたの刀でしょう? それも関係してるのかも」
「そうなのかなあ」
ひゅんひゅんと軽く自分の片手剣を振ってみては首をかしげるユウキ。
「これってリアルでは僕らあの、なんか棒みたいなのもってるだけなんだよね?」
「棒て」
まあ確かに棒ではあるんだが。
「オーグマー付属のタッチペンだったっけ。それなのに、
びん、とランが弓の弦をはじいてみせる。
「わかるわかる。ボクもなんかこう、ピンとこなくてさー、重さ―――はそんなに違和感ないし、なんなんだろ」
「あー、それはな、えーと……」
……どうなってるんだっけ。教えてくれ団員のみんな。
そこら辺の違和感はオーグマーが直してくれる。SA:Oだと、触覚聴覚視覚くらいかな?
ほへー
武器とかは付属のタッチペン握っとくだけで勝手に武器所持判定してくれる。落としたりしたら武器も落下の判定受けるけど
あー、電池入ってて敵とぶつけたりしたら軽い衝撃くらいは来るんだっけ
せやな。痛みとかはないから子どもにも安心や
SAOの後継だけあって安心安全が売りだもんな
「……らしいぜ!」
「もう団員さんをいいように使わないの」
「へっへーん、いいんだよこいつらは俺たちからのレスに飢えてるんだから! いいように使ってやった方が」
「ヒロ?」
「はい、すみません、教えてくれてありがとうございます」
ww
お面で謝られると腹筋に悪い
モモの字が絶対言わなさそうなセリフ
いかんな、めちゃくちゃランの尻に敷かれてる気がする。
なんか団員の奴らからの扱いも雑だし……。
「仕方ねえ、俺もちょっと戦うとするか」
確かタッチペンを起動して、ホルダーの位置に合わせて抜けば。
「よいしょっと」
「へえー、ヒロの武器ってユウのより一回り大きいんだ。でも、両手で持つ武器、って感じではない……?」
「姉ちゃん、バスタード・ソードっていうんだよ。片手半剣ってやつ」
「片手半剣?」
「おっ、やっぱユウキはわかるか?」
「うん、アスカのとき野良で組んだ人が使っててさー、その人強かったから覚えてるんだよね」
「いいよな、時には片手剣! 時には両手剣! 必要に応じて使い分けられる剣! ロマンだぜ」
「わかるわかる! いいよね! ボクは振りやすさから片手剣選んだけど、やっぱおっきい武器って憧れちゃうなあ」
ライダーは基本片手剣が多いんだけどな、たまーにでかい剣両手で持ってるのがたまらなく好きなんだよな。火縄橙DJ銃とか!
しかし、やっぱり、ユウキは俺のこと分かってんなあ。
「ふうん、片手剣より長くて、両手剣より短いから適宜使い分けられる、かぁ」
ん? どした?
「いやそれってつまり器用貧乏ってことじゃないの?」
「ぐあああああああああっ」
「わああああヒロがいきなり胸を抑えて崩れ落ちたぁ!」
「えっ、えっ?」
言っちゃったーーーーー!
wwwwwwww
真理を突いたな
だからバスタード、不人気なんだよな
みんなが黙ってたことを……
まあそれで言ったらラン姉ちゃんの弓も不遇武器だし
「え? 弓って不人気なんですか?」
不人気って程でもない
まあ弓使い珍しいよな
ランちゃん後衛の雰囲気あるし似合ってるよ
SAOに弓とか飛び道具あったか?
オリジンからの追加だナ
ARで遠距離ないのはきついっす
「ふうん、SAOにはなかった武器だからみんな使ってないってこと?」
「ってのもあるし、単純に威力が控えめってのもある。基本白兵戦だからさ、弓はそのままだとちょい強すぎる」
「そうかな……弓って当てにくいし……」
「いやいや弓は傑作武器だぞ! 遠くから攻撃できるってのはそれだけで強みってもんだ。困ったら弓で相手を斬りつけても良いしな」
「いや弓では斬れないでしょ……」
「なんだと!? 弓が刀になるのは常識だぞ!」
「それどこの世界の常識?」
ニチアサとか。
「ていうかヒロ、オリジン結構詳しいんだね。もしかしてボクらに隠れてこっそりやってたりした?」
いや。
「まあちょっと調べてたんだよ。全員初心者じゃ締まらねえし」
「そっか、じゃあ困ったことはヒロに聞いちゃおーっと! よろしく! 頼りにしてるよっ!」
「でも大丈夫? またいかがでしたブログとか鵜呑みにしてない?」
ヒロの信頼が死んでる
20回を超える炎上の貫禄
「信頼がなさすぎる。ふっ、じゃあいいだろう……俺がお前たちの疑問に答え、いかに頼りになるか教えてやろう。検索を始めよう……団員の諸君、キーワードは?」
「あ、そっちに聞くんだ」
キーワードは「ユウキ」
「イノシシ」
「勝ち方」
「近づいて斬れ」
「それが出来ないから苦労してるんですけど!?」
「じゃあスイッチ使え」
「すいっち……?」
「あー、うん、まあボス戦とかで戦うときのソードアートの基本技能っていうのか? まあまだいらないやつだ」
「ええ~、教えてよぉ~、あのイノシシさんはそれを使うのにふさわしい敵だよぉ~」
「何度も言うけどあいつらスライムレベルだからな」
「ええ~、実は中ボスとかだったりしない~?」
「まだ最初の町にすらたどり着いてないのにボスなんか出てきてたまるかよ」
「町? ねえ、ヒロ。そういえば私たちって今どこに向かってるの?」
「あれ、言ってなかったっけ」
言ってない
オリジンやってないからどこかわからん
はじまりの街じゃないように見える
首都とかでもねえな
なら田舎の方?
「まあはじまりの街はもう少ししたら『あの人』が配信はじめるからな」
「あの人?」
「あの人ってのは―――と、話してたら見えて来たぜ」
二人の前に出ていた俺は一足先に丘を登り切り、まだ半ばを登っていた二人に手を伸ばした。
「ん」
「ありがと」
「おう」
掴んだ手をぐいっと引き寄せて二人を丘を登り切らせると、三人で並んで目を向ける。
おおー、オリジンはまじで景色がいいな
いつものユウキちゃんのきらきらおめめ
ラン姉ちゃんもちょいワクワクしてない?
ここってもしかして
「ついたぜ、ここがこのエリアにある最初の村『ホルンカ』だ」
第四話 だが信用できないのはヒロだ。あいつは炎上の力を楽しんでいる。
「こんにちわーっ!」
「おっ、あんたら放浪者さんだね! こんな辺鄙な村までよくいらした!」
第一村人発見
挨拶元気で偉いね
自然公園のコース―――今はSA:Oのフィールドに変わっている道をしばらく歩くと着くのがホルンカの村。
ここはSAOの第一層にあるはじまりの街の次に行ける村として有名な場所である。
そしてその数千年前を描くオリジンにおいては、アインクラッドが成立する前の穏やかな只の片田舎のエリアとなっている。
NPCの数は多くないものの、初心者おすすめの場所の一つであり、こうして案内役も兼ねた門番がいるわけだ。
「こんにちは、私たちこの村に用事があってきたんですけど入ってもいいでしょうか?」
「おうさ! ウチは放浪者サンが見て楽しいものはないが、なあにごゆるりとしていかれたらいい! 宿屋……はないがそれも万事屋の隣の家のおかみに頼めば悪いようにはなるめえ」
「ご丁寧にありがとうございます」
「ははは、よかよか! 放浪者サンには何かと世話になることも多いからな!」
笑う門番のおっさんの腰には使い込まれた片手剣に、あせた布の服。
うむ、いかにも田舎の門番って感じ。たぶん剣を振るよりも農具をふるったことが多そう。
元気よく挨拶をしたユウキ、丁寧に頭を下げたランに続いて、俺も同じように頭を下げて中に入る。
まあ俺も普通の放浪者だしいけんだろ。
「ちょっとまったあんた何で顔にそんな変なモンをつけている」
肩掴んで呼び止められててくさ
お面付けた不審者だからな
「俺に何か?」
「何かじゃないが? よくその怪しさ満点の見た目で素通りできると思ったな。何者だアンタ?」
「俺か? 俺は通りすがりの仮面ライダーだ」
「は?」
「リアルな奴きたな。冗談です、通りすがりの放浪者です」
「あんたが放浪者、ねえ……?」
「何か言いたいことありげですね」
「正直不審者の方が納得できると思っとるな」
wwwww
確かに
やっぱここでヒロ追放で良くないか?
ヒロ先生の次の冒険にご期待ください
「あ、あのごめんなさい! この人私たちの幼馴染、じゃなくて仲間で!」
「仲間、ですかい」
「そうそう! ボクらいろんなところ旅しよーって話しててさ! それでヒロはボクのお願い聞いてくれて! ちょっと格好は変だけど悪い人じゃないから! 絶対!」
「ラン……ユウキ……」
これをつけるように言ったのがお前たちじゃなかったら俺マジで感動してた。
じろじろと俺を見る門番のおっさん。
「まあよく見りゃ服は割かし普通だな……そのみょうちきりんな面、外すわけにはいかんのか?」
「詳細を省くがこれを外すと俺は死ぬので」
社会的に。
「死ぬ? あー、もしかして呪いってやつかい? そういえば東の方にはそういう面を外さない騎士団があるって話には……」
「あー、通ってもいいっすか?」
「ああ、すまんすまん! 人の事情に突っ込むのも野暮だったな」
村にすらするっとはいれないのかこの三人は
だいたい団長のせい
「うるさいわい。ん? もしかして俺新しい町に入るたびこのやり取りしなきゃダメなのか?」
なんとか設定いじったら顔だけ認知されたりしなくなったりしねえかな。
これからどうすんの
順当に行けば装備品整えるとか
「いいね、装備品! さっきのおじさんもよろず屋があるって言ってたし!」
「でも私たちあんまりお金ないよ? それに私たちの今の見た目ってヒロの作ったアバターだし、装備とかつけちゃって大丈夫?」
「ああ、それは問題ねえよ。今俺らの見た目はアバタースキンーーー容姿固定の機能みたいなのが適用中だ。だから装備品とかつけても見た目は変わんねーぜ」
「はえ~、そうなんだ。なんかそれは珍しい機能って感じ」
「私たちみたいな顔とか覚えてもらわなきゃいけない配信者には喜ばれそうだけど、これ普通の人は使わないよねぇ」
「まあオリジンは配信推奨してるしなあ。ほら、俺さっきからカメラとか持ってないだろ?」
「そういえば、あれ、じゃあどうやって配信画面出てるの? もしかして、団員のみんな何も見えてなかったりする?」
みえてるで
ユウキちゃんがイノシシに追いかけまわされるところは切り抜いといた
「ちょ、ちょっとやめてよ! どうやってみてるのさぁ!」
「あー、今は見えてないけどエリア内にはそれなりの数のドローンが飛んでんだ。その情報をなんかいい感じに流してくれてる」
「へ~、すごいんだねえ。ドローン、あそこあたりかな、いえーい、ぴすぴす! ほら姉ちゃんも!」
「え、うぅ……ぴ、ぴーす」
そっち背中
「ユウ!」
「うぇぇぇえ?! ごめんって見えなかったんだもん!」
まあ今はARモードだからドローンは見えないもんな。
「すごいと言えば、さっきの門番の人も、すごかったね?」
「え? なにが?」
普通のおじさんでしょ?とでも言いたげな顔のユウキ。
「だってあれNPC……AIだよね?」
「えっ!? ウソ!? すごく話し方普通だったよ?!」
「すげえよなー、俺の顔見て即座に対応変えて来たし。普通のゲームじゃあこうはいかねえだろうな」
「ふうん、ユウは
「全然違うよ!」
「おんなじゲームなのに?」
「いやアスカのNPCはもっとこう、パターン化した答えしかないっていうか、うーん、あんな風にあっちから話しかけてくれる、みたいなのはなかった気がする」
せなんよなあ
なんでもオリジンはSAOの根幹システム一部引き継ぎらしい
だからNPCもハイスペックなんや
へー(無知)
村の中を歩きつつじろじろと周囲の人を見るユウキ。実に怪しさ満点だ。
「あ、あれよろず屋じゃない? せっかくだし少し見ていこうよ」
大丈夫? お金ありゅ?
スパチャおじさん登場
「まあ途中ちょいちょいイノシシ狩ったからな。消耗品補充するくらいはできるよ」
「体力回復ぽーしょん? とかだよね」
「そうだな、装備品とか整えるにはちょっと金が足りんし」
「あの人もNPC? じゃああの人……あ、ボクと同じ武器持ってるってことはプレイヤー……じゃああっちの持ってない人はNPC……」
「ユウキいつまでボケっとしてるつもりだ、なんかほしいものあるならパパっと買い物しちゃうぞ」
「あ、う、うん!」
俺とランが歩き出すとわたわたとその後ろをついてくるユウキ。
「さーせんおばちゃん、このポーションと、あと一応毒消しのも」
「はい、これでいいかい?」
少し金が足りんが、まあいいやリアルマネーからちょっと足しとこう。こんくらいなら許容範囲内。
初めての配信でいきなり死にました!じゃ締まらんからな。
安全、ダイジ。
俺が買い物を終え、ユウキに場所を譲ろうとすると、ユウキがえらく真剣な顔でショップのおばちゃんを見つめていた。
なにしてんの、まるでエクレオールショコラみる倫太郎だぞ。
「や、このおばちゃんもNPCなんだなって思って……」
「いや私は人間だよ」
「うわあああああしゃべったあああああ!」
「いやNPCもしゃべってたけどね?」
ユウキが叫び声をあげてしゅばっと俺の背中の後ろに隠れた。
キャアアアアアアシャベッタアアアアアアアアア
おばちゃんの扱いモンスター並みでくさ
「え、ここってARゲームだよね!? なのにお店の人は普通の人なの!?」
「いやNPCちゃんもいるわよ。ほら、あっちの店の鍛冶屋のおじさんとか、他にもあそこの井戸で水汲んでる女の子なんかもそうだね」
「私たち以外にもいろんな人がいるとは思ってたけど、割とNPCの人も多いんですね」
「そうそう、NPCっていってもこのゲーム、えーとオリジンだったかしら、はずいぶん高性能でね。店番の一部なんか任せていいところもあるのよ」
「え、じゃあなんでおばさんは自分で店番してるんですか?」
「おばちゃんはリアルにもお店があるからねえ」
「……????」
これわかってませんねえ
宇宙猫顔
スペースユウキ
まあ、これは見せた方がはええか。
「ユウキ、オーグマーはずしてみ?」
「オーグマーを?」
首を傾げつつ、ユウキが耳あたりに手をかけ―――ARワールド故に今は見えていない―――オーグマーを外した。
「え? え? どういうこと?」
ユウキがオーグマーを外したままきょろきょろとあたりを見渡した。
目は信じられない、とでも言いたげにまんまるだ。
「人が全然いない! というか店も半分くらいないよ?! どういうこと?!」
「なくなってるのはさっきの鍛冶屋に、あ、井戸とかも……それにさっきまで普通の中世風の田舎に見えてたけど、ここってただのコース途中の休憩スペースだ」
「て、てことはさっきまでボクらが見てた村はぜーんぶ作りものってこと!?」
ユウキにつられてオーグマーを外したランもまた感心したように息をもらしつつ首あたりを触っていた。
あ、あれ現実でシュシュいじってんな。ちょい違和感あるからあとで言っとこう。
「まあ、全部とは言わんさ。現にARだと宿屋扱いの民家もこっちでは軽食スペース。よろず屋のおばちゃんの店は……」
「この通り、現実では土産物屋ってわけだよ」
そういって棚から木を彫って作られたストラップを手に取って見せる。
ソードアート・オリジンの面白いところはこの『現実とのリンクの多さ』、これが中心になる。
さっきまで当たり前の、ありふれた世界がゲームに変わる。
普段なら人もほとんど来ないような自然公園が、ゲームの中の村に、どこにでもある土産物屋が武器屋に、カフェが酒場に、博物館がダンジョンになる。
世界を巻き込んだゲーム。
それが、ソードアート・オリジン。
いま最も熱いゲーム。
「すごい……これが、ソードアート・オリジンなんだね……」
いつものきらきらおめめいただきました
きらきらおめめカウント2
「さて、お嬢ちゃん達もこのあたりのことが分かったところで、買い物ついでに土産物もどうだい? リアルマネーでもゲーム通貨でも売ってるよ」
「土産って言っても俺たちの家ここからそんなに遠くないしなぁ」
「む、じゃあこっちはどうだい? 木彫りの動物シリーズ。ふくろうに、クマにいろいろだよ。小さいからつける場所にも困らないし、なんとゲームでも装備できるわよ。効果は動物ごとに違うから気を付けて買うんだよ」
「動物かぁ、あ、ねこだよ、かわいいなぁ」
「ねえねえこの猫なんだか姉ちゃんに似てない?」
「えー、じゃあこっちの犬はユウかな。この舌をだらーんとしてるのが寝起きっぽい」
「えぇ~、ボクこんなんじゃないよぉ~」
おばちゃんの商魂たくましさ
あー、ここの装備ボーナス初期はありがたかったなー
濃厚なユウランたすかる
ユウランてぇてぇ
「そっちのお面の変なお兄ちゃんは買わないのかい?」
「変なって言わないでくれません????」
変でしょ
変だゾ
変ですね
「うるさいわい、お前らの意見は求めん」
「気に入らないかい? ああ、男の子だしね、こっちの方が良かったかな? なんか金色の剣に竜がぐるぐる巻きついているストラップ」
「確かに男の子はそういうのが大好きだけども!!」
「ヒロ家にそれ五個くらいあるよね」
「お前俺の秘密ぽろぽろこぼすのやめないか???」
くさ
買うよね
なんか心とらわれてる時期がある
「ねね、ヒロも買わない? このうさぎなんかヒロに似てるし」
「え? 似てる?」
「似てるよ! ね、姉ちゃん?」
「うん。雰囲気かな、ヒロっぽい」
ほら、と俺に木彫りのうさぎを見せてくるユウキ。
……こいつ、めっちゃやる気なさそうな顔してるけどほんとに俺に似てるの?
「うーん、さっきポーションも買っちゃったしなぁ……」
「だめ、かな……」
あー、やめろって俺お前のそういうしおらしい顔には弱いんだから。
ん、肩叩かれた、えーと、藍子? どうしたんだ?
「えーと、そのですね。私も、初配信の記念に欲しいなー、とかいってみたり」
「む、むむむ」
「ほら、武器を使うときにつかうタッチペンなら付けられそうじゃない? あれ三つ並べてると誰のかわかりにくいし……」
「そうそう! ボク配信がんばるから! おねがいっ!」
買ってやれよ
男の甲斐性の見せ所
先行投資だと思えばいい
君の力はこの程度……ということでいいのかな?
何ためらってんだよ団長ォ!
はい、わかった俺の負け俺の負け。
「ユウキ、手ぇだしな」
ほらよ、あんま多くないけどストラップ三つくらいは余裕で買えるだろ。
「やったー! 買ってくるね!」
「はいはい、こけんなよ」
店の奥のおばちゃんのところに走ってストラップを持っていくユウキを見つつ、顔のお面の位置をただす。
「お願いしといてだけど、よかったの?」
「あー、いいよ、記念だ記念。代金分はこのあとモンスとやりあって稼いでもらうからな。後衛、任せたぜ?」
「はあい、任されました」
くすっと笑みを漏らすラン。
「おーい、ヒローねえちゃーん買ってきたよー!」
「わー、ありがとー……って、ユウが明らかにストラップが入ってるよりはるかに大きそうな布袋持ってきたよ」
「うん、まあいろいろ面白そうなもの売ってあったけどさぁ……」
はじめてのおつかい ゆうきちゃん
竜の巻き付いた剣の可能性にかける
あれ首都の方に行けば武器として加工してくれるらしい
ジャンルは鈍器だけどナ
それは草超えて森
「みてみてヒロ! これさっきお店の品物の一覧のおすすめのとこにあったんだ!」
「ほー、俺に渡されたお金で何を買ったんですか、ユウキ君」
「う、か、勝手に使っちゃったのは悪かったけど、でもこれはすごいから!」
「すごい? ふつうの布バックに見えるけど」
自信満々だな
これは期待できるかも
なんかあったっけ
「じゃーん! 冒険者セット! これがあればこれからの冒険困ることなしだよ!」
あっ
あっ
あっ
「え? なんで団員のみんな黙ってるの、あれヒロも? なんで頭抱えちゃったのー!?」
そっかぁ、冒険者セットかぁ、買っちゃったかー。
思わず遠い空を見つめてしまう俺の横で、ひょっこりとランがユウキの手の冒険者セットの中を覗き込む。
「これ何が入ってるの? いっぱい入っててよく見えないけど……」
「そ、そうだよ! みんなまだ何が入ってるのか見てないのに判断なんてできないでしょ!」
「まあ、うん、そうだね。何が入ってるんだいユウキ君?」
「ヒロの声がウィザードの最終回を見終えた後よりも優しい……」
まあ優しくもなるわな
ユウキちゃんの目が眩しい
「もう、見てみたらみんな変わるからね! まずは、じゃーん水袋! 喉が渇いたらまずが飲めるよ!」
「でもそれARのだよな?」
「え」
オーグマー外してみろ。ほら、お前手に何も持ってないじゃん。
うん、まあオーグマー、触覚も再現してくれるから分かんないのも無理ないんだけどさ。
「じゃ、じゃあこれ! ロープ! やっぱ冒険だからね! 崖とかあったらこれで登れるよ!」
「でもそれもARのなんだよね」
「…………………こ、これならどう?! ナイフ! 何かに使えるかも!」
「俺たち剣持ってるじゃん」
「あ、あとは、火打ち石とたいまつとか……」
「まあ今昼だけどな」
「……」
あ、黙り込んだ。
「ねえ、ヒロ……この冒険者セットって実は、めちゃくちゃ使えないハズレアイテムだったり……する?」
「(イエスともノーとも言わない顔)」
「そ、そんなぁ……」
初心者が時々引っかかる奴
SAOのころなら割と使えたんだけどなあ
感動的だな。だが無意味だ
ユウキがしょぼんと肩を落とす。
……ちょっと気の毒になってくるな。
なんでユウキに一言言わなかったんだよ、と少し恨みがましく店の奥に目を向けると、おばちゃんは申し訳なさそうに笑う。
「ごめんね、おばちゃんそういうのに詳しくなくてね。あまり使えないアイテムだったんだねえ。返品できたらいいんだけど、ゲームアイテムだからね……」
まあ、知らなかったならあんま責めれないか。
「いえ、こちらこそなんだかすみません。買ったものに文句言っちゃうみたいで」
申し訳なさそうに謝るランにおばちゃんは笑いながら、少し腕を組み考え込んだ。
「じゃあお詫びと言っちゃなんだが少しいいこと教えたげよう」
「いいこと?」
「そ。おばちゃん、それなりにこのお店で店番やってるんだけどね、ここで買い物した子、かなりの確率で隣に行くわよ」
「隣って、普通のおうちなんじゃ……」
「いや、そーいや門番のおっちゃんもなんか言ってたな。なんだっけ」
「『宿屋はないけど万事屋のとなりの家のおかみに話しをすれば悪いようにはならない』……だったと思う」
さすがランちゃん
ブレーンだ
ホルンカでのクエスト何があったっけ
「クエスト、いや普通に休息か?」
「さあてね、おばちゃんはそこまではわからないからね」
でも、とおばちゃんが言葉を付け足す。
「あそこから出てきた子はみんな、なんだかすごく強そうな武器を持って出てきてたよ」
「すごくつよそうな武器……!」
強そうな武器
ホルンカみたいな序盤でなんか武器あったか
店売りは鉄系だった気がする
アニクエでしょ
ああ、それがあったか
アニクエ?
アニールだよ
ん、ちょいコメント欄が盛り上がってきたな。ユウキとランは目がいかないように誘導しなきゃな。
「じゃあ、とりあえず行ってみるか。ランもそれでいいか?」
「うん、せっかく教えてもらったしね」
「よーし、じゃあ今から行ってみよう! あ、ありがとうおばちゃん!」
じゃあ頑張ってね、と手を振るおばちゃんにみんなで手を振り返し、店の外へ。
「ヒロー、ねえちゃーん! おばちゃんが言ってたのってあのおうちじゃなーい?」
「もう、ユウ先に行かないのー!」
「はっはっは、まったく落ち着きがねえ……って、足早っ! え? ユウキもランもさっきまで俺の隣にいたよな!?」
「ヒロー、おっそーい!」
「お前らが早いんだって!」
女の子に足の速さで負けて恥ずかしくないんですか?
生 き 恥
「やかましいわい!」
てか思い出した。ここってアニクエだろ。あの森の秘薬の
あー確かネペント狩りの
こらこらあんまり情報出すもんじゃないゾ
オリジンってあんまりクエストの旨味ないんだよなあ
まあさっさと最前線の店解放した方が強い武器取れるしな
効率で考えると無視安定
「効率、なあ。まあ、みんなが楽しんでワーワーいうのは俺嫌いじゃねえけど、ネタバレとかはなるべくやめてくれよ?」
まあ俺なら別に良いけどさ。
「最低ユウキやランの前では気を付けてくれ。あいつら俺ほど団員のコメント追えてないからまだ気づいてないけど、やっぱ二人にはちゃんとゲームを楽しんでもらいたいからな」
スマソ
分かったよ団長
なんかヒロがまともなこと言ってたら腹立つ
いいだろたまにはまともなこと言ったって。
跳ねるように走っていくユウキとそれを追いかけるランの背中を必死について行く。
あいつらほんとに病弱だったのかって思っちゃうくらい運動神経いいよな。もう高校生なのに俺より足が速くていやがる。
「はあ、はあ、ここって確かリアルじゃ休憩スペースだったところか」
「そうだねえ。オーグマーつけてたらすっかり変わっちゃうの、何度見ても慣れないな」
「じゃあ、行くよ! ごめんくださーい!」
とんとん、とユウキが軽くノックをすると扉の向こうから声が。
「……」
「……もし扉開くの待ってるなら俺らが開けないと開かねえぞ、ARだし」
「あ、そっか! ちょっとVRの癖が抜け切れてないみたい」
そこら辺はちょっとユウキの「あたりまえ」の価値観が邪魔しているところなのかもな。
さて、扉を開けて……おお、凄いRPGの民家って感じ。机には椅子が四つに、奥の部屋は寝室とかか?
そして、部屋には女性のNPCが一人、ね。
さて、どうにもここらへんで武器がもらえそうな雰囲気はしないが。
「ようこそ、お客様。それほど見どころもない村ですがようこそいらっしゃいました。私の家に何用でしょうか」
「え? よ、用? え、えーと……」
あ、ユウキがこっち見てきた。
「用とか言われてもボクらおばちゃんに言われたから来ただけだよ! ど、どーしよ」
「おい俺かよ!? え、えーと……俺に質問するな!」
「あ、ずる! 困ったときそれ言うのやめてよ!」
「はあ、何やってるの、二人とも。―――すみません、私たち旅の途中で、あなたに頼めば宿屋の代わりをしてくれるって聞いたんですが」
「ああ、そうだったんですね。ええ、うちでよろしければ一時の仮宿としてお使いください」
「す、すみません突然訪ねちゃって! ボクたち―――」
「放浪者様でしょう? その装備を見ればわかりますよ。そちらの方は、その、すこしお顔が見えませんけれど」
室内でも外せないお面
休ませてもらうんだから顔出してお礼を言おう
誰得だよそれ
「あー、すみません。その、俺ちょっといろいろあって」
「……構いませんよ。放浪者様にはいろいろある事はわかってますから。さ、いつまでもたっていないでお座りください。お水くらいしか用意できませんが、ごゆっくりされてください」
「すみませんボクたち突然押しかけたのに」
「いえいいんですよ。以前放浪者様たちに助けられてからこの村では放浪者様にできることはなんでもする、と決まっていますから」
勧められるまま席に腰かけると、目の前に置かれたのは先ほど言った通りグラスに入ったただの水。
NPCの奥さんはそれを俺たち全員分を用意すると、台所に行ってしまう。
「ね、ヒロちょっとそっち詰めてボク右に座るから」
「じゃあ私は左かな。ヒロは間でいいよね?」
「え、一人反対側で良くない?」
「すみませーん、椅子動かしても大丈夫ですかー?」
了承を得たユウキが反対側から椅子を持ってきて俺の右隣に腰かける。
……狭いんだが。
「わ、お水本当に冷たい……気がする!」
「これ飲めないんだよね、どう戴いたら……」
「あ、姉ちゃんこれなんかそのまま飲めるよ! すごい何も持ってないのにコップの感触がする!」
「わあ、ほんとうだ……」
まあ、楽しそうだしいいか。
百合の間に男を!?
でも自ら挟みにいったぞ
これはギルティ……?
「にしても」
うーん、マジで水だけか。タッチしてみてアイテムの効果説明を見ても……うむ、まあこれただの水だな。一応飲めば宿屋で休息取った扱いで体力は回復するみたいだが。
「ねえ、ヒロ」
おん、どうした藍子。
左脇腹をつついて声をかけてきたランが俺の耳に顔を寄せてこそこそと囁く。
「あの人、何してると思う?」
何って、台所に行ってさっきから鍋混ぜてんだからそりゃ料理……料理?
料理してんのに俺たちには水だけ。
いや別に飯を出せとか図々しく言うわけではないけど、さっきなんでもするって言ったのに、なんかこう、矛盾してる?
「ね、ヒロヒロ」
今度はユウキか。いてて、こらこら引っ張る力が強いっての。
「さっきからなんか咳の声、聞こえない?」
「咳?」
……言われてみれば、なんかあっちの扉の向こうから聞こえる気がする。
「それにさ、なんかあの女の人、なんだかさっきから表情が暗い気がするんだ」
「暗い? そうか?」
「そうだよ。絶対に何か困ってると思う」
じっとユウキが澄んだ赤い色の瞳で見上げてくる。
その色はいたって真剣で、うっかりいまがゲームであることを忘れてしまいそうだった。
言われてみれば、少し、浮かない顔をしてる……か?
「……もしかして、誰かのための薬を作ってる、とかないかな」
「ああ、咳か。じゃああのドアの向こうには誰かが風邪なり病気で苦しんでて」
「あのお鍋の中でそれを治すための薬の材料を煮込んでるってこと?」
「それとこれはあんまり自信はないけど、たぶんあのドアの向こうにいるのは子ども、だと思う」
「なんで姉ちゃんはそう思うの?」
「食器棚の配置だよ。ほら、すごく手前の方に小さい器が並んでる。あれは普段から使ってないとああいう配置にはならないよ」
「つまり普段からあの小さい器を使うような人がこの家にいるってこと?」
こくり、と頷くラン。
まあ、普通に考えるとこれクエストだろうな。
このシチュエーションも、俺たちが違和感を持てるように設定されているであろうセリフもいかにもそれっぽい。
おばちゃんの言葉まで考えれば薬の材料をとってきてもらえれば武器と交換、ってとこか。
団員の「森の秘薬」って言葉拾うなら森の中でのクエストだろう。
「ねえヒロ」
「ん?」
「これってさ、ボクらがクエスト受けなかったらどうなるの?」
「どうって、一応俺らの立てたフラグはあるがこのままだと放棄になってなかったことになるんじゃないか?」
「それってここにいるかもしれない病気の子もそのままってことだよね」
「まあ、そうなるな」
そっか、とユウキがこぼして、じっと扉の向こうを見つめる。
さっきから咳の音は、止まることがない。
きっとユウキは……木綿季は助けたいと思っている。たぶん、藍子もおんなじだ。
でもなー、SA:O、あんまり武器クエストの旨味すくねーんだよなー。
SA:Oは完全なスキル型のARゲームであり、現実の世界をオリジンの世界に置き換えることで遊ぶのが基本だ。
それは日本全国に様々なオリジンの地域が振り当てられているということで、地域の個別のタイアップも多く、店にも様々なアイテムが存在する。
そして、アイテムはデータ上のものであれば一度訪れた店のものは、以後アップデートされどこの店でも買えるようになる。それは、武器も同様。
つまり、オリジンにおいてはクエストなんかせずさっさといろんな店に行って武器を解放した方が楽に強くなれるのだ。
もちろんスキル熟練度などもあるから強い武器があればいいというわけでもないが、さっきコメント欄が言ってたように、そっちの方が『効率がいい』のだ。
だから、このクエストは、正直受ける旨味はない。
大多数の他の配信者がやってるようにクエストは受けず次の街に進み、さっさとショップを解放する。王道に沿うなら俺だってそうすべきだ。
なん、だけど。
―――ねえ、きみは何でいっしょにいてくれるの?
……病気がちの子ども、か。
「ヒロ?」
「どうかしたの、考え込んで」
二人の眼が俺を見る。赤い色の瞳はまるで鏡だ。
どうしたらいいのか、どうするのが正しいか、俺に問いかけてくる。
ふう、うん、迷うまでもなかったな。
「ヒロ、ボク……」
「みなまで言うな。……わーってるよ、お前の言いたいことは」
効率。人気。視聴者の期待。どれも配信者なら大事だけどよ。
「助けてあげようぜ、この家の子ども」
俺はそのどれよりも、こいつらの気持ちを裏切りたくないんだから。
なんか4話書いてたら長くなったので分割です。
後編は書き終わってはいるので近いうちに更新があります。
コメント欄は基本ヒロの目で追えてるものが描写されてます。
ヒロが集中してる時はあんま映らず、ちらちら確認してる時は戦闘中でも色々出てきます。