ボクっ娘幼馴染に配信チャンネル乗っ取られたらバズり倒した   作:世嗣

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だが信用できないのはヒロだ。あいつは炎上の力を楽しんでいる。(後編)

 その後、話を聞くとやはり藍子の予想した通りこの家の子どもはいま病気であり、彼女はそのための薬を作っているところだったらしい。薬の完成のためには「リトルネペントの胚珠」というアイテムがいるのだが、この先の深い森の中にしかリトルネペントというモンスターは出てこず、しかもそいつは村の人間じゃ勝てないほど強いらしい。さらにはその胚珠を落とすのは「花付き」と呼ばれるレア個体だけなんだそう。

 そういうわけでほとほと困り果てていた時に、俺たちが尋ねてきた、というわけなんだと。

 

 そういうわけで今の俺たちは「リトルネペント」のいる森―――リアルで言えばハイキングコースのあたり―――に来ていた。

 

「削りきれなかったか。ユウキラストアタック!」

 

「おっけー! スイッチ!」

 

「間、カバーするよ!」

 

 突っ込んでくるネペントの一体に剣を叩きつけ、すかさず後ろに下がる。

 逃がすまいと触手をのばしてくるが、後方からのランの矢に押しとどめられ、次の瞬間には片手剣のユウキが剣を振りかぶっている。

 

「とーどめっ!」

 

 おーきれいな一撃

 ソードスキルなしでこれか

 だいぶ形になってきた

 もうスライムに負けたりはしなさそう

 何気にラン姉ちゃんさっきから弓一回も外してなくね?

 PSたっけ

 

「ふふ、褒めてもお礼くらいしか出てきませんよ」

 

「あ、ボクはボクは? スイッチうまくなってたでしょ?」

 

 どっちも上手かった

 スライムに負けてた子とは思えない

 かわいいしつよいしえらい

 

「スライムには負けてないですけど!」

 

「負けてたのはイノシシだもんな」

 

「むー、ヒロだってワーワー言いながら逃げてたじゃん。おあいこだよ」

 

「三回に一回は剣が空ぶってこけそうになるユウキとおあいこはねーわ」

 

「もお、それは忘れてよ!」

 

「1000%不可能だ」

 

「もう、ヒロあんまりユウに意地悪言っちゃだめだよ」

 

「いやここで上下関係を染みつかせとかなきゃダメって俺の心が叫んでて」

 

「マウント取ることに命かけすぎだよ」

 

「むーー、ヒロよりボクの方が足は速いのに……」

 

「ククク、恐ろしいのは私自身の才能さぁ! ユウキィ! 君は私の最高のモルモットだぁ! ヴェハハハハハハ」

 

「……今日の撃破数ゼロ

 

「あてめっちょっと人がひそかに気にしてたことを!」

 

 ©ZAIA エンタープライズ

 社長のダブルパンチやめろ

 さっきからなんかパッとしないよな

 二人のサポートに回ってるせいかもナ

 てかちらちらコメント見てるせいだろ

 フッ!ハッ!ヒロ!なぜ集中しない!

 

「うるせえ~~~家でクーラーの中モニタにかじりついているお前らと違って俺はだな」

 

「んんっ」

 

「うん、団員の言う通りですねやはり俺もユウキやランを見習って一戦一戦に集中していきたいと思いますよ」

 

 恐ろしく速い手のひら返し……俺でなきゃ見逃しちゃうね

 ランちゃんのカバーリングが光る

 戦闘時は後衛から弓で普段は言葉でカバーしていくお姉ちゃん

 

 っと、どうしてもついつい口が滑る。気をつけなきゃな。

 

「中々でないねー花付きのリトルネペント」

 

「だなぁ。割と戦うの自体はなれて来たけど、長引くと集中力が切れそうだ」

 

 あと配信的に絵面も地味になる。

 ユウキが自然にわちゃわちゃ会話を振ってくれるから黙り込む時間こそないのは助かるんだけども。

 

「あ、次のネペントいたよ。ほら、あそこの木の陰」

 

「ほんとだ。次ってどっちが前衛の番だっけ」

 

「さっきユウキだったから俺だな」

 

 あれ、なんかランがじっとモンスターみてる。

 

「どうかした、姉ちゃん?」

 

「あー、うん。あの見た目でネペントだから、元ネタはネペンテスなのかなーって」

 

「ねぺんてす……」

 

「ネインベス……」

 

「ネペンテスね」

 

「ああ、ネペンテスな。わかるわかる、昨日の夕飯でも俺食べたわ」

 

「え? とんかつってネペンテスっていうの!?」

 

「とんかつってネペンテスっていうのか!?」

 

「ヒロが言ったんだよ!?」

 

 この二人もしかしてば、ばか・・・

 それ以上言うな

 ニャメローン

 

「はあ、二人とも全然わかってないみたいだから教えるけど、ネペンテスって食虫植物なの。ほら、ああいうふたの部分を開けて中に虫とかを閉じ込めるの。時々相手が酸みたいなのを吐き出すのもそこら辺が目的かな」

 

「へー」

 

「ウツボカズラっていったら二人も一度くらいは聞いたことあるんじゃない?」

 

 ああ、言われてみればそんな怪人いたなあ。

 

「うつぼかつら……」

 

「うん、ウツボカズラね。うつぼの髪がないみたいになっちゃってるから」

 

 知能指数低くない????

 ラン姉ちゃん物知りやなあ

 完全に絵面が引率の先生と子供二人な件

 こんな調子でこの先大丈夫か

 花付きネペント割と手ごわいからなぁ

 てかソードスキル使えばいいんやない?

 

「そーどすきる?」

 

「それさっきも団員の皆さんが言ってたけど……」

 

 チュートリアルになかったっけ

 今回初見実況だから見てなかった

 団長解説はよ

 特定動作をすると次の攻撃の火力が上がる

 簡単に言うと必殺技

 

「必殺技……! ねえボクそんなのがあるなんて聞いてないよ!」

 

 まあ言ってねえからな。

 もうちょい二人が慣れるまでソードスキルは後回しにするつもりだったのに、ったく、団員の奴ら余計なことばっかりいいやがる。

 

 ……ネペントは、こっちには気づいてねえか。

 

「まあ団員も言ってたけど基本は必殺技って認識でいい。特定の動作によって起動、決められた通りに動くことによって次の一撃の火力を大幅に上げられる。俺とかユウキの武器だと基本技のスラントが最初から使えるソードスキルだな」

 

「すらんと……」

 

「それって私の弓にもあるの?」

 

「あるぜ。ソードスキルも何個か種類があってはスキル熟練度を上げていくと解放されるんだが……ま、聞くよりも一度見た方がいいだろ」

 

 剣を構えて、まだこちらに気づいていないネペントを見る。

 

「援護いる?」

 

「いや一人でいいよ。なんとなく感覚もつかめて来たし、二人はソードスキルの発動のとこだけ見ててくれ」

 

 じゃあ行くか―――じゃねえな。自分の意思じゃないとは言えせっかく電王のお面付けてんだ。セリフもそれっぽく、最初からクライマックスに行くとするかね!

 

「行くぜ、行くぜ行くぜ行くぜ!」

 

 無駄に物まね似てて草

 これ家でこっそり練習してたでしょ

 

 片手にタッチペンの硬質な感触を確かめながら、少し離れた木のかげにいるネペントに向けて走る。

 あいてっ、くそ山道は走りにくいな。さすがに三歩歩いて二回足をくじいたりはしないが。

 

 俺の接近に気づいたネペントがその細い触腕を揺らした。攻撃の合図ってところだろう。

 なら剣は片手で。選ぶのは片手剣初期ソードスキル、スラント。

 

 こいつを速攻でネペントの頭に叩きつけて―――。

 

「っと、ぶね!」

 

 思ったよりも攻撃がはええ! やべ、追撃! 剣で弾けるか? よしギリ!

 

「がんばれーヒロー!」

 

「あ、そこ右だよ! 危ない危ない!」

 

「あ、そこだよ! 剣で払って!」

 

 すげえドタバタしてる

 無駄に動きすぎなのがなんか草

 動きがやかましい

 これだからなんかイマイチぱっとしないんだよなw

 

「もーほらみんなもヒロ応援しよ! がんばれー!」

 

 がんばれー

 ひろきゅあがんばえー

 がんばえー

 ヒーローショーかな?

 ヒロだけにってか

 

「あーあー、応援サンキュ! おーらーよっと!」

 

 ツタの攻撃をかいくぐりつつ、ネペントの腹……たぶん腹に剣を叩きこむ。

 ネペントの頭上の体力ゲージが三分の一ほど削れ、ネペント本体も怯んだようにぐらりと体が揺れた。

 

 よし、今だ!

 

「俺の必殺技、パート、2!」

 

 肩に担ぐように剣を構えると、軽い剣の振動と共にほのかに刃がペールブルーに光る。

 そして次の瞬間には、刃の光と同じ色のラインが瞳の中に映し出される。

 

 それはSA:Oでソードスキルが発動したことの証。

 

「あとはこれを、なぞるッ!」

 

 目の前の青いラインを斜めに振り下ろすようになぞり、目の前のネペントの脳天に剣がぶち当たる。

 ど派手な音とライトエフェクトがぶちまけられ、剣にはタッチペンに仕込まれた電池により遠隔で強い振動が伝わる。

 

 俺は剣を振り下ろした勢いのまま、軽く反転、納刀。ポーズを決める。

 

 ……決まった、完璧だ。これがニチアサ番組なら俺の背後では大爆発が起こっていることだろう。たぶんDouble-actionとか流れてる。辛味噌でもいい。そしてCMの後にはみんなでダンスだ。それくらい完璧なムーブだった。

 

 フッ、どんなもんだい。

 

「すごーい! え、今のがソードスキル? 凄いかっこよかった! ヒロって強かったんだね!」

 

「よせよせ褒めるのは、これくらいできて当然だ。でも、これからはヒロさんと呼んでもいいんですよ?」

 

「光とか音とか、こう、ばーんって! ねね、ヒロあれボクにもできるの?」

 

 ヒロさん……まあ返答も意図せず完璧だったしいいか。

 

 きらきら目を輝かせながら早く教えてとせっついてくるユウキをなだめつつ、隣りのランに目を向ける。

 

「ランは? 一応弓のソードスキルについても教えられるけど」

 

「あー、私はもう少しちゃんと弓を当てられるようになあってからにしようかな。なんか、いまいち感覚がつかめなくて」

 

「あれで……?」

 

 君さっきから一回も弓外してないよね……?

 

「まだ慣れてないだけだと思うから木に向かってでも撃ってるよ。先にユウに教えてあげて」

 

 そういって薄く笑むラン。

 

 まあランがそういうなら。

 

 じゃあユウキ、剣持って。スラントは一応自由の利くソードスキルではあるけど、まあとりあえず基本の右肩に背負う形で。

 

「こう?」

 

 ユウキが片手剣を構えると先ほどの俺と同じライトエフェクトが剣を包む。

 

「わ、目の前になんか線が出てきた!」

 

「それがソードスキルの射程範囲だな。その範囲の中、線をあんまズレないようになぞれ」

 

「ズレないように? 攻撃がかわされそうなときは剣の軌道を修正したらダメなの?」

 

「してもいいが、それもこの光のラインがある範囲内だな。それを超えるとソードスキルの不発動。さらにはペナでしばらく攻撃力が三分の一くらいになる」

 

「なるほど―――ねっ!」

 

 ユウキの剣が虚空を斬った。足元の草が何本か吹き飛びぱらぱらと目の前を散っていく。

 

「ふうん、この範囲だと頭狙いの攻撃を胴体狙いに変えるくらいがギリギリかな」

 

「だな。だからソードスキルは奥の手に近いわけだ」

 

 きちんと当たる場面を見極めて、なおかつそれを状況に応じて使い分ける。難しいけど実践あるのみだぜ。

 

 むむ、と眉を寄せて唸っていたユウキの頭をポンポンとたたく。

 

「ま、よく見ることだな。このゲームリアルに寄せてはあるけど理不尽なゲームじゃないからな」

 

「むむむ、そう言われると、確かに視界もすっきりしてるし、攻撃の予兆も大きめだし……」

 

 ぶつぶつと唸り始めるユウキ。まあこうやっていろいろ考えてる間は大丈夫だろ。

 

「理不尽さを、排して……そっか、重視してるところが……」

 

「ラン? どうかしたか?」

 

 もしいいなら戦闘再開するけど。

 

「あ、ううん、私もなんとなくこの武器のことわかってきたからいけるよー」

 

「じゃああそこにいるネペントに矢で気を引いてくれるか?」

 

「あそこの半分くらい木に隠れてる子?」

 

 どれ?

 もしかしてあの頭の先が出てるやつ?

 何mあるんだよ

 トッププレイヤーでもむずいよ

 ヒロ加減を知れ

 

「うん、まあ難しいだろうから命中させなくても近くに当てるだけでいいよ。見えるか?」

 

「うん、OK。ちゃんと見えてるし、それになんか今なら弓、外す気がしないんだよね」

 

「なんか突然我が王みたいなこと言い出した」

 

「私、弓だから構えとかに意識を割いてたんだけど、でもそれじゃあ弓道やってる人にしか上手く使えない武器になっちゃうよね。だから、たぶん」

 

 ランがじっと木陰にいるネペントを見据え、矢を番る。

 

「大事なのは見えてることなんじゃないかなって」

 

 そう言って、矢が放たれる。

 

 え?

 命中!

 マジで?あれネペント頭の先ちょびっとしか見えてなかったぞ

 あれ見えてるってめっちゃ目がいいな

 

「お、おお、なんつーか、流石というかなんというか」

 

 マジで当てちまうとはな。昔から要領のいい奴だったけどそれにしてもだ。

 

「ふふん、褒めてくれてもいいんだよ?」

 

「さすがだ、恐れ入ったよ」

 

「素直でよろしい」

 

「むむ、いいなぁ。よーし姉ちゃんに負けてられないや! ボクも行ってくる!」

 

「あ、ユウキは待て」

 

「ぐえーっ」

 

 あ、勢いで服引っ張ったら首が絞まってしまった。すまん。

 

「何するのさあ!」

 

「3!」

 

「え、突然何……」

 

「あ、すまん。3じゃなくて0.3秒。多分『イメージのお前』と、『リアルのお前』がズレてる」

 

「へ?」

 

 お前の反射神経は大したもんだよ。俺にはねえ天性のもんだ。

 でも、ここはAR、見かけこそVRと似てるが、その本質はリアルに近い。

 

 どんなに反射神経がよくだって俺たちの体がついていかなきゃ意味がない。

 

「だからな、お前ちょっとイメージと実際の体の動かし方の差異、修正しとけ」

 

 なんでそんなことわかるんだ

 さあ・・・・・

 アバター作ったママだからとか

 アミュスフィアとオーグマーの反応時間の差異とかダロ

 

「れ、れいてんさんびょう……もうちょいわかりやすい例えないかな」

 

「照井がシュラウドとの特訓でトライアル獲得の目標の十秒に足りてなかった時間くらい」

 

「わかりにくいよ! これ以上なくわかりにくくてびっくりしちゃったよ!」

 

「えー、じゃあ瞬き一回分」

 

「できるなら最初からそう言ってよ。まったくもう、まったくもう」

 

 頬を膨らましたユウキが剣のグリップを確かめるように何回か握り直し、ぶつぶつ呟く。

 

「まばたき一回分ズレてる……まばたき一回分、ボクの体の反応が遅い……」

 

「ユウ! もうネペントがすぐそこまで来てるよ!」

 

「あ、ほんとだ……うん、でも、そっか、そうだったのかー」

 

 剣を抜いたユウキに無数の触手が襲いかかってくる。

 

 触手多い!

 ユウキちゃん逃げてー

 これかわすのは無理

 ネペントの触手対応のセオリーは大きく回避かガードでダメージ少なくしてから攻撃終了後にソードスキル

 触手早すぎて目で追えんからな

 この前ユナの配信で避けてる奴おらんかったっけ

 あいつ変態だから

 

 ……一応、ユウキがミスったときのために剣抜いとくか。

 

「ヒロ」

 

「ん?」

 

「たぶん、もー大丈夫」

 

 ―――じゃあ、後ろから見させてもらうとしますかね。

 

「うん、もういける」

 

 そして、ユウキは目の前の無数の触手を、()()()()()()()()()()

 

 は?

 は?

 は?

 は?

 は?

 

 おーおー、団員どもが戸惑っとるわ。

 当たり前だ、キッチリイメージが噛み合ったユウキはこんくらいやるさ。

 

 ほら、言ってる間にラスト一撃だ。

 

「これで、終わりだよっ!」

 

 放たれるスラント。その剣閃は今までのような当たるか当たらないかのような危なっかしさは微塵も存在せず、ただ当然の如くネペントの胴体を上と下に泣き別れにした。

 

「いえーい、はじめての単独撃破ー! やったー!」

 

「すごいねユウ。さっきまでとは全然違った」

 

「へへーん、やーっと、身体の動かし方がわかってきたんだー。今までぜーんぜん本調子じゃなくてさー」

 

 あれ剣当てられるの……?

 リアル剣道少女とかなの?

 いや剣の振り方は普通だろ

 次に来る攻撃を見切るのがクッソはええ

 どうやってんだ?

 

「どう? 普通に見て斬るだけだよ?」

 

 いやまず攻撃が見えないって話なんですが……

 ユウキ「ボクまた何かやっちゃいました?」

 ↑完全にこれ

 なろう主人公

 

「なろう主人公……? 意味はわからないけどなんかちょっとバカにされてる気がする!」

 

「まあユウキカリスマのない我が王みたいなとこあるからなぁ」

 

「ヒロもヒロで何言ってるかわかんないよ!」

 

「お前の好きなエグゼイドで言うとお前は人を殺さなくて人に好かれるパラド」

 

「すごい暴言だよ!」

 

 ぷんすかと怒りながら抗議するユウキ。

 だってお前本当にそんな感じなんだもん……ランと二人でマイティシスターズXXだし。

 

 そんなことを話してたらランがじっとどこかを見てた。

 

「ラン?」

 

「……ヒロ、気づいてる?」

 

「──! 悪いな、ユウキがパラドならランは永夢ってことになっちまうんもんな……チベスナは嫌だよな」

 

「何言ってるの」

 

 チベスナ顔でランが俺を見る。訂正。やっぱ永夢であってたみたい。

 

「あそこの影と、私たちの背中の方、あとちょっと見にくいけどあそこの草むらに紛れてるの、たぶんネペントだよ。私たちにも気付いてる」

 

「……ほんとだ。花付きはいないけどにー、さん、しー、五体かな」

 

 え? マジ? 言われても俺全然見えねえんだけど。

 

 でも話聞いてる限りそれって。

 

「囲まれてるってことか」

 

 ネペントは基本花付きを中心に群れる……と聞いた気がする。俺たちは三人パーティだからたぶん一気に出てくるモンスターの上限は六体くらい?

 

 少し一箇所に留まって狩りをやりすぎたのか、それともこれは一定数のネペントを狩ったことによるなんらかの……。

 

「ラン、俺とユウキの間に。ユウキ、目の前のネペントから目はそらさずに下がってこい」

 

「おっけー」

 

「ん」

 

 ユウキと背中合わせの俺。そしてその間にラン。

 

「これって、私たち逃げれるのかな」

 

 五分五分ってとこ

 オリジンは取り敢えずモンスター振り切ればいいよ

 でも逃げたらネペント狩りのカウンター振り出しになるよな

 そーなん?

 ネペントは狩れば狩るほど花付きが出やすくなるからナ。同時5体出現ともなれば花付きが出るまであと一歩ってとこじゃないカ?

 

「花付きまであと一歩……」

 

「ユウキ、クエストは今すぐクリアしなきゃいけないもんでもない。ここは一旦退いても」

 

「いややろう。早くお薬の材料持って帰らなきゃ、そうでしょ?」

 

 違う?とニッと笑うユウキ。

 

 そうだな、そうだよな。ヒーローはそういうのだよな。

 

 すぅー、はぁー。

 

 よっし!

 

「手前の方の2体はユウキに任せた。俺は奥の2体をやる」

 

「おっけー!」

 

「私は?」

 

「残りの一体を弓で牽制しつつ俺らのカバーを頼む。ネペントに近くに寄られたら俺らに声かけてくれ。カバーに行く」

 

「うん、わかった」

 

 よし、打ち合わせはこれでよし。じゃああとは。

 

「声とかかけちゃう?」

 

 突然笑み混じりにユウキが口を開く。

 

「声?」

 

「ほら、騎士団とかは総員突撃! とかいうじゃん。ボクらもそれっぽいのとかいうと気合い入るかなーって」

 

「なんだよ、この機会にかこつけてやりたかっただけじゃねえの?」

 

「そ、そんなこと! ちょ、ちょーっとしかないよ?」

 

 あったんじゃねえか。かわいいやつめ。

 

 なら、こうだな。

 

 俺は視線をネペントに向けたまま空いた片手だけをユウキとランの方に向ける。

 

「ほら、協力して戦うなら、っぽいのあるだろ?」

 

「え、あー……なんか前ヒロに見せられた……」

 

「! アレだね! ほら、姉ちゃん一緒にヒロの手を叩いて……ごにょごにょ……」

 

 ユウキはわかってるみたいだな。

 じゃあランにも伝え終わったな? 行くぜ?

 

「超キョウリョクプレーで!」

 

「クリアして!」

 

「えっ、あっ、や、やるぜっ」

 

「そういうこと!」

 

 パン、と三人の手が重なり俺はその音を合図に目の前のネペントに走り出した。

 

 行くぜ! リトルネペント攻略開始!

 

 なんか最終決戦みたいな空気だけどこれ最初の村のおつかいクエストしてるだけだよな?

 

 やかましいわい。

 

「俺たちは最初から最後までクライマックス! ゆーえーにっ!」

 

 こちらに触手を向けようとしていたネペントの顔を両手で握った剣をかちあげる。

 

「今だって気持ちだけは最終決戦だぜ!!」

 

 ものはいいよう

 バカとハサミはなんとやら

 

 触手と時折吐かれる溶液をよく見てかわす。

 俺にユウキのような超反射神経はないから全てを叩き切ったりとかのすげーことはできんが、それでも丁寧にやればそんなに見れねえもんでもねえはずだ。

 

「これで、一体目!」

 

 両手剣初期ソードスキルカスケードでネペントの一体を撃破する。

 

「ヒロ! 横!」

 

「っと」

 

 ランの言葉のままに視線を横に向けた直後横合いからネペントの体での突撃をくらった。

 なんとか直前で剣を差し込めたが、それでも体力ゲージの何割かが削れる。

 

 痛い……わけじゃないがちょっとした叩かれた感覚がオーグマーの信号によって体に伝わった気がする。

 

「頭下げて!」

 

 聞こえたランの声のままに頭を下げると、俺にタックルしていたネペントに矢が突き刺さる。

 

「すまん助かった!」

 

 ランに声をかけてネペントに一撃当ててぶっ飛ばして、さらに追撃のソードスキルを──。

 

「ヒロー! こっちは後少しで終わりそうだよ!」

 

 後ろからの声、ランと似てて紛らわしいけど、たぶんユウキだな。

 てか、はええ! っんとに、さっきまで空ぶりまくってたのに、ズレに気づいたとたんにこれだ。

 

「──って、ぶねえ!」

 

 ユウキを気にする余裕は俺にはないぞ。

 

 こうなりゃソードスキルで一気にカタをつける。

 俺のバスタードソードは両手剣扱いにすりゃ射程も伸びる。

 そして、ユウキにはまだ教えてないが、ソードスキルには連撃技……つまり何発も連続して攻撃できる技がある。

 

 フッ、悪いなユウキ。戦闘の見せ場は俺がもらう。

 

「もう、ぱっとしねえとは言わせねえーー!」

 

 草、気にしてたんだ

 これの構えは!

 知ってるのか!

 いやしらん

 

俺の必殺技、パート3(両手剣二連撃ソードスキル カタラクト)!」

 

 技名を叫ぶのは基本

 なんか変なルビ振ってるだろこいつ

 

 剣が赤色の光に包まれ視界に二本の太いラインが現れる。

 

 まずは一撃! どうだ団員は見てるか?

 

 そろそろ実付きがこわいな

 実付きってなんだっけ

 花の代わりに果実がついてるやーつ。実をこわしたら大量に仲間を呼ぶ

 何匹くらい?

 数はわからんけど七人パーティが壊滅した話はよく聞く

 ヒエッ

 初心者は即死レベル

 

 見てねえ!

 

 いや待て実付き? そういやさっき奥さんも花付きと一緒になんか気を付けてくださいって言ってたな。

 これ以上mobが増えたら俺らには対応できねえ。声かけとこう。

 

「えーん、もうはやく花付きのでてきてよ~!」

 

「待ってあれって―――」

 

 おら背中にいたやつに二撃目!

 ふん、見えてなくても音と足元の影で位置はわかるから当てられる。

 よし今のうちに。

 

「ユウキ! ラン! 花付き探すのもいいけどなんか実がついてるやつらには気をつけろ!」

 

「実付き?」

 

「花の代わりに実がついてるネペントらしい!」

 

「花じゃなくて実……」

 

「ああ、奥さんも言ってたろ! なんか厄介な奴がいるってさ! 気をつけろよ!」

 

「えーと、わかった。ねえ、ヒロちょっと聞きたいんだけど」

 

「どうしたラン!」

 

「実付きってさ―――今ヒロが斬ったみたいなの?」

 

「ああ、俺が今斬ったみたいな―――ん???」

 

 え、俺が斬った??????

 

 ま、まさか、そんな……わあ、ほんとだ影だけ見て斬ったらこいつ実付きじゃん。

 しかも俺が上段斬りしたからめっちゃ実割れてんじゃん。

 

 ちらっと、コメント欄を見る。

 

 ねえ、これ?

 

 そうだゾ

 これ以上なく実付き

 

「………………うん、そう、俺が斬ったみたいなやつみたいですね」

 

 wwww

 かっこつけてノールック斬撃とかするから

 何やってんだよ団長ォ!

 

「……あのさ、ヒロ、一応聞くけどさ、それ斬ったら、どうなるんだっけ」

 

「えーと、ものすげえ数の仲間を呼ぶ……」

 

「ものすごい数……」

 

「なんか七人パーティが壊滅するくらいの……」

 

「ななにん……」

 

「私たち三人だよ……?」

 

「うん、三人だね……」

 

 一瞬、三人の中に沈黙が訪れるが、やがてその沈黙が遠くからやってくる草のこすれ合う音で塗り替えられていく。

 思わず顔を見合わせ、おそるおそる背後を見る。

 

 そこには―――

 

「シュシュ「シュ「シュシュシュシュ「シュシュ「シュ「シュシュシュ「シュシュシュシュシュ「シュシュ「シュシュシュシュシュ「シュ「シュシュ」

 

 ―――視界を覆いつくす、大量のネペントが。

 

「「「 わああああああああ! 」」」

 

 う わ あ

 逃げて逃げてー

 多すぎんだろ・・・

 これ10人いても無理

 今日だけでこの絵面二回目なんだよな

 でもこれ森の奥に行ってるんですよねえ

 あっ(察し)

 

「そーなんだよなああ! なんでこんなことになってんだ!」

 

「はあ、はあ、ヒロがかっこつけて攻撃なんてするせいだよぉ!」

 

「いやカッコつけるのは仕方ないじゃん! 必殺技なんだしさ!」

 

「はあ、はあ、でもいつまでも走って逃げるわけには、いかないよね」

 

 それはそうなんだが。

 

 ん? あの群れの真ん中あたりにいるリトルネペント花ついてね?

 

「見ろユウキラン! 花付きだ! 花付きがいるぞ!」

 

「ほ、ほんとだ。はあ、はあ、あれがあれば薬が作れるよ!」

 

「はあ、はあ、だからって、はあ、はあ、今の私たちにはどうにもできないよ」

 

「でも、なんとかあいつだけでも倒せれば……」

 

「じゃあ何かすごい技とか。ネペントって植物だよね? ソードスキルに火をおこしたりするのとかないの?」

 

「そっか! そんなのがあれば一気にドカーンって!」

 

「すまん! ソードスキルは技術だ! だから基本はそういうマジカルなことはできねえんだ!」

 

「じゃあもう逃げるしかないってこと!?」

 

「そうなる!」

 

 うーん、困った。ワンチャン死を覚悟すればなんとか胚珠は取れるかもしれないが、でも生きて帰られる保証がない。

 かといってクエストをあきらめて病気の子を見捨てるってのも寝覚めが悪い。

 

 それに、あんまり木綿季と藍子には過度に走らせたりはしたくねえ。

 

 いまは小康状態を保っている二人だが、それでもあまり体が強い方ではないのだ。

 

 ……仕方ねえ、ここは俺がリトルネペントの注意を引き付けつつ花付きだけ速攻で倒して、二人に胚珠を渡す。

 まあもしかしたら、二人も後でネペントに追いつかれるかもしれないが、その時は三人で笑えばいい。

 

 配信的には、失敗になるが、まあそれもいいさ。

 

「ふー」

 

 じゃあ、そろそろ俺の生き様見せてやるってな。

 

「ユウキ、ラン今から俺が―――」

 

 ―――――――誰かが、いた。

 

「え?」

 

 森の中に白い少女がいた。

 彼女は一瞬こちらを見たかと思えば、今度はどこか遠くを指さした。

 

 それを見て、先ほどまでの思考が一気に吹っ飛ぶ。

 

「ユウキ! ラン! こっちに行くぞ!」

 

「こっちって、ここ道じゃないよ?」

 

「いやいける! 何なら俺が背負ってく!」

 

「え? でも、そっちになにがあるの?」

 

「俺に質問するな!!!」

 

「うええぇぇぇぇえ!?」

 

 俺だってなんか答えがある訳じゃねえ! でも、なんかこっちに行った方がいい気がするんだよ!

 

 道なら俺が作るから!

 

「頼む、もう少しだけ俺についてきてくれるか?」

 

 一瞬二人が互いに目を合わせてそして、くすっと笑みをこぼす。

 

「うん、いいよ」

 

「わかった。ついてく」

 

 ……助かるぜ、マジで。

 

 しばらくネペントの群れの迫る音を背中で受けつつ、獣道をかき分ける。

 すると、ネペントの群れが後10mといったところで、少し開けた場所に出た。

 

 そこには何か今の事態を好転させるようなものすごい武器―――が、あったりすることはなく、普通の空き地だった。

 

 隅の方にはこんもりと干し草が積んであるだけであることを見ると、もしかしたら近くには牧場があったりする設定なのかもしれない。

 

「で、ど、どうするの……?」

 

「なんか自信満々にここに出たから何か策はあるんだよね……?」

 

「モチロンダヨ」

 

「カタコトやめてよ。ねえ、ほんとはなんかあるんだよね?」

 

「アタリマエダロ」

 

「あ、だめこれヒロが凄いごまかすときの雰囲気だ。ユウ、ヒロ何も考えてないよ」

 

「うえええぇぇぇえええっ!? ヒロ! もうネペントすぐそこだよぉ!?」

 

「し、仕方ねえだろ! 俺は天才ゲーマーじゃねえんだ! できねえことだってある!」

 

「あー言い訳! かがみせんせーだって天才じゃなくても頑張ってたよ!」

 

「うるさーい! カガミなんてテーマ曲流しながら死ぬやつじゃないか!」

 

「たぶん違うカガミの話してるよ!」

 

 ん、ああ、カガミってブレイブか? あのタドルファンタジー覚醒回はよかったよなあ。周りのものを使って攻略してさー。

 

「ユウ、ヒロが逃避してる! 起こして!」

 

「ヒロ! 敵そこまで来てるよ!」

 

「はっ、うっかり記憶の中に―――周りのものを使って?」

 

 あたりを見渡す、近くにあるのは大量の干し草。そして、その向こうからやってくるネペントの集団。

 

 なんか、いける気がする。

 

「ユウキ冒険者セット! 買ってたやつ早く出せ!」

 

「え、な、なんで」

 

「俺に質問するな!!!!!!!」

 

「は、はい、冒険者セットです!」

 

「よし!」

 

 これじゃない。これでもない。これでもない。くそ、みつかんねえ!

 

 もし俺の記憶が正しければこの中にたしか―――。

 

「あったぁ!」

 

「ヒロ、ネペントがもうそこまで」

 

 問題ねえよ、ラン。たぶんな! うおおおおお、なんとかなれ!

 

ライダー爆熱シュゥゥトッ(火打ち石)! 燃えろォ! 本能寺ィ!」

 

 なんて?

 なんて?

 なんて?

 なんて?

 

「本能寺だ!!!!! くさにほのおはこうかばつぐんって教科書にも書いてあるぜ!!!!!!!」

 

 そして、ユウキがミスって買った冒険者セットから取り出した火打ち石を、半ば叩きつけるようにぶつけ合わせた火種を、全力で目の前の干し草に叩き込んだ。

 

 この干し草はARの干し草。なら、同じくARの火打ち石なら火をつけられると踏んだ。もし火が付くならきっとあたりの草に燃え移るだろう。そして、次は―――。

 

「俺たちを追ってくる森の中のネペントに燃え移る、だろ?」

 

「「「「「 ジュアアアアアアッ! 」」」」」

 

 ハッハァー! ビンゴォ! もりもりネペントの体力バーが減ってる!

 

 ただの放火魔

 火をつけられる側からつける側に回っただけやんけ

 AR本能寺の変

 こんなネペントの攻略法ある????

 こんなに犯罪者くさい団長オイラ嫌だ

 お暇をいただきます

 これでクリアすんのかよww

 ひどすぎるww

 はらいたい

 みろよランちゃんもユウキちゃんも固まってるよ

 

 グッと、二人にサムズアップを見せて、炎をバックに笑って見せる。

 見てたか二人とも、俺のクールでスタイリッシュな解決方法。

 

「正義は勝つ」

 

「いやこれはどっちかっていうと悪役の行動だと思うよ」

 

「は?」

 

「うん、今のヒロどうみてもヒーローではないよ」

 

「は?」

 

 控えめに言っても魔王側

 悪の幹部

 これがドラクエならネペントの中から勇者生まれてた

 

 は?

 

「というか、この火事どうするの? 森燃えちゃわない?」

 

 ……。

 

 ――――――。

 

「ユウキ、冒険者セットから水袋出して消すぞ!」

 

 消えるわけねえだろ

 

 

 ※全部のネペントの体力が全損したあたりで自動的に消えてくれました。

 

 

 

 

 

 その後、俺たちは燃え尽きたネペントからのドロップアイテム(これは焼けてなかった。ゲームでよかった)にリトルネペントの胚珠がある事を確認すると、ホルンカの村の奥さんの元に戻った。

 胚珠を渡したときに、干し草を燃やしてしまったことも伝えたのだが、なんでもあれは近隣に住む人たちの草捨て場のようなものだったらしく、気にしなくていいとも言ってくれた。ありがたい。

 

「ほんとうにありがとうございます。おかげで娘の熱も引きました。きっと明日にはまた元気に歩くことができると思います。ほんとうに、ありがとうございます……!」

 

「いえ、気にしないでください。私たちの好きでやったことですから」

 

「うんうん! ボクらもお礼、貰っちゃったしね」

 

 そういうユウキの腰では手入れの行き届いた剣が揺れている。奥さんがお礼にとくれた「アニールブレード」という片手剣だ。

 

「ですが……」

 

「いいんですよ奥さん。ライダーは助け合いだ。なら人間だって助け合いですよ」

 

「らい、だあ?」

 

「あー、まあそこは気になさらず」

 

 配信時間は……そろそろいい時間だな、切り上げ時だ。

 

「じゃあ俺たちはここらで帰ろうか。娘さんもお母さんのそばにいたいだろ」

 

 よっこいせっと。じゃあ俺たちはここで。お邪魔しました。

 

「あの、おねーさんたちが、たすけて、くれたんですか?」

 

「ルシィ!」

 

 俺が家の扉に手をかけたのとその声が聞こえたのはほとんど同時だった。

 見れば、いつの間にか開かなかった扉が開いて、小さな女の子が姿を見せている。

 壁につかまりながら歩いてるしきっと本調子じゃなさそうだ。

 

「あなた、まだ寝てなくちゃ……」

 

「えへへ、ごめんね、ママ、でも、わたし、助けてくれたほーろーしゃさんに、おれい、いいたくて」

 

 女の子が近くにいたユウキとランのもとまで行くと、ほにゃりとほほを緩めた。

 

「ありがとう、むらさきのおねーちゃん、あおいおねーちゃん。おかげでわたし、げんきになりました」

 

 一瞬、二人が凄く懐かしそうな顔をして、直ぐに表情を優しいものへと変える。

 

「……ううん、がんばったのはあなただよ。私たちはそのお手伝いしただけだから」

 

「病気、つらかったよね。今日はたくさん寝て、ママのおいしいごはんを食べたら寝るんだよ? ボクと約束。ね?」

 

 女の子と指切りをかわすユウキとラン。

 

 あの女の子はNPCだ。俺たちがこの家をでればクエストリセットされて、またあの女の子は病気になって、奥さんはあと一つ材用が足りない薬の鍋を掻き混ぜ続ける。

 

 だから、あの二人の行為に意味がないという奴もいるだろう。

 

 でも、俺はそうは思わない。絶対に、意味がないなんてことはない。

 

「あかいおめんのおにーちゃんも、ありがとう」

 

 そうだ、この笑顔に意味がないなんて誰にも言わせねえよ。

 

「……おう、もうお嬢ちゃんも風邪ひかないようにな」

 

 お面越しだけど、軽く笑って見せると、いつの間にかユウキもランも隣にいた。

 

「あの、おにーちゃんたち、おなまえはなんていうんですか?」

 

 名前か。絶好の通りすがりチャンスなんだが、まあ、ここは、そうだな。

 

 

「俺たちはスリーピング・ナイツ。困ったらまた呼んでくれ、いつだって駆け付ける」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……って、せーっかく、気持ちよく終われたのにね」

 

「はあ、何でこうなっちゃうかなぁ……」

 

 初配信が終わってから数日後、俺の部屋で木綿季と藍子がやれやれとため息をついた。

 

 その眼の先には、オーグマーによって共有されたウインドウがあって、そこには『スリーピング・ナイツの炎上担当について語る』とタイトルがついていた。

 

「『自分も燃やして相手も燃やす配信者』、『汚いデスピサロ』、『自分で火をつける織田信長』、『名誉炎上配信者』……すごいね、あだ名がどんどん増えてってる」

 

「ヒロ見て切り抜きだよ! すごい、ヒロの炎上動画めちゃくちゃ再生されてるよ!」

 

「わ、ほんとだ。すごいねヒロ、今回は自分の力で人気出てるよ」

 

「ちげえええええええそれはネタにされてんだよぉぉおおおおおおお」

 

 なんでだよ! 俺いい感じに締めたじゃん! かっこよかっただろ最後! なのになんで俺の炎上シーンだけバズる!?!?!?!?!

 

「ま、まあまあ、ヒロが頑張ってたのボクらはちゃんとわかってるから……」

 

「ふーーーーーーーーーーーん」

 

「な、なに」

 

「知ってるぞ……お前のネペント戦、SNSで切り抜かれて死ぬほどバズってたよな」

 

「え?」

 

「しかも、つべでは? 【切り抜き】絶世の美少女剣士ユウキちゃん【スリーピングナイツ】とか言うタイトルで? 縮めて『絶剣』とかいうめちゃんこかっこいい二つ名まで作られてるよな?」

 

「絶剣!? そ、そんな、い、いいのかなぁ~」

 

 にへら、と木綿季がうれしそうに緩む頬を抑える。

 

「うおおおおおおおうらやましいぃぃ!」

 

「ま、まあほら私とかラン姉ちゃんとか言われてるし、ね?」

 

「いやランはもう既に密かにファンの間で有志のグルが作られて『蒼弓』とか呼ばれてるから……」

 

「ヒロなんで私たちのこと詳しいの?」

 

 五時間くらいエゴサして適当に作った垢でいろんなグルにこっそり入ってるからだが……。

 

「うおおおおおお俺もなんかかっこいい二つ名欲しい~~~~~~~~! くれよ~~~~~!」

 

「ヒロにも小学校の頃あったじゃん、二つ名」

 

 あったっけ……。

 

「ほら、アンパンマンってよくいわれてたじゃん」

 

「それは俺に友達が木綿季と藍子しかいなかったことをからかわれてたんだよ!!!!!」

 

 愛と勇気が友達、それが俺。

 

「あれ、ヒロ、なんか携帯震えてるよ」

 

 おん? 誰だろ。ユウキー、なんて書いてる?

 

「ええ、ボクみていいの? えーとね……」

 

 木綿季が枕元で充電してた俺の携帯を手に取る。

 

 

「朝田詩乃さんだって」

 

 




ヒロ 『本能寺に自分で火をつける信長』『団長』
使用武器はバスタードソード。取り回しのしやすい武器が好き。
尊敬する人は茅場昌彦。

ユウキ 『絶剣』『ユウキちゃん』
武器は片手剣。クエスト報酬でアニールブレードをメイン装備に。
尊敬する人はお母さん。

ラン 『蒼弓』『ラン姉ちゃん』
武器は弓。選定基準は二人が近接武器を選ぶだろうからカバーできるように。
尊敬する人はお母さん。
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