ボクっ娘幼馴染に配信チャンネル乗っ取られたらバズり倒した   作:世嗣

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紺野姉妹誕生日記念更新です。


それが君のユウキ

 

 

 

 

「あー、あー」

 

 おはじまた

 お前を待ってたんだよ!

 バイトから滑り込み

 

「あえーと、こほん、聞こえてる? 音量とか大きくない?」

 

 ユウキちゃんのきょろきょろおめめ

 ちょっと大きいかも

 もう少し小さくてもよい

 

 あいあい少し大きいね、じゃあこんなもんかね。

 

「ラーン、お前もちょっと話してみてくれー」

 

「うん。こほん、団員のみなさんこんにちはー、聞こえてますかー」

 

 聞こえてるよー

 副団長!大丈夫です!

 やさしいお声

 癒される……

 ラン姉ちゃんASMRとかしない?

 

「えー、えす……?」

 

「あ、知ってるよボク! ヒロが前ユナちゃんの」

 

「それ以上の答えはノーサンキューだユウキ」

 

 お、団長

 今日はブレイブのお面じゃん

 ブレイブってなんだっけ。橘さんが出てるやつ?

 え、ちがうくない?

 

「いやそれはブレイドだな。剣って書く平成5作目。不死生物アンデッドと戦う仮面ライダーの話」

 

 安定の早口オタク

 セイバー坂の……

 ルナーーーーーッ!

 突然現れた小説家!

 

「や、そっちはブレイズ。セイバー坂で覚えられてるのは、なんというなんとも言えんが……。俺は好きだけどね、氷獣戦記覚醒回とか」

 

「えっとユウ、ブレイブって何に出るやつだっけ……」

 

「ふふーん、姉ちゃんそんなことも忘れたの? ヒント! ブレイブは剣を使う青い仮面ライダーだよ!」

 

「ビビるくらいヒントになってねえなそれ」

 

 ブレイドもブレイブもブレイズも剣を使う青いライダーです。

 

「とと、まだ挨拶もしてないのに話題転がっちゃったな。これからもちょくちょくお面は変えるけど気にしないでくれよな」

 

 お面変えるんだ

 そういえば集めてるんだっけか

 

「まーな。あんまり人には言ってなかったけど、どっかの誰かが俺のお面のことバラしちゃったから隠す必要もないかと思って」

 

「ご、ごめんってば」

 

「別にお前のこととは言ってないんだけど心当たりがあるんだなぁ〜」

 

「うー、ごめんって謝ったじゃんかぁ〜」

 

「はいはい、ユウは私の影に隠れないの。あとヒロももう怒ってないならそんなにいじめないっ」

 

 また団長怒られてる

 会話の気安さに付き合いの長さを感じる

 ヒロランてえてえ……?

 ユウラン派です

 

 と、これ永遠に話が脱線するな。気を取り直してそろそろ挨拶しなきゃ。

 

「じゃあ、おっすおっす俺参上。スリーピングナイツ団長ことヒロです」

 

「やっほー、ボク参上! スリーピングナイツのユウキだよ! 今日もよろしくね!」

 

「えと、こんにちは、私も参上です。スリーピングナイツのランです。団員のみなさんも楽しんでいってくださいね」

 

 団員参上

 団員参上

 参上乙

 参上三連星も安定感出てきた

 アワアワしてた頃のランちゃんも好きだった

 団員参上

 

「今日はこの前の夜の雑談配信でも話した隠しクエストの攻略! 今はクエスト開始ポイントに向かってるとこです! いい天気で絶好の配信日和!」

 

 おー

 隠しクエ!

 オリジンはSAOと同じくカーディナルくんがいるから色々特色あっていいねぇ

 

「向かってる間は特にすることもないし、軽くクエストの説明とかしておこっか」

 

「だな。えーと、クエスト詳細ユウキがもってたよな」

 

「うん、クエスト名は『季節外れの贈り物』! フレーバーテキストもちょびっと載ってるから、音読するね! じゃあボク苦手だからヒロよろしく!」

 

「ノーサンキューだ。ランよろしく」

 

「え、やだ。ユウがやってよ」

 

「ボクにバトンが帰ってきた……?!」

 

「ユウも上手いからいけるよー」

 

「姉ちゃんは中学生の時校内スピーチコンテストで代表だったのに〜」

 

 へえ、うまいんだなぁ

 声落ち着いてて聞いてて気持ちいいもんな

 そう言われるとラン姉ちゃんの音読も聴きたくなってくる

 

 ……。

 

「まあいいじゃん。お前もたまには綺麗に音読、してみようぜ」

 

「そんなにいうならヒロがやればいいのに」

 

「うっ、で、できません……俺の仕事は団員を笑顔にすることだから……」

 

「普段は自分のチャンネルっていうくせにこういう時だけ調子いいのなんかイラっとするね」

 

「成長したなユウキ。

 幼い頃のお前はただ泣く事しか出来なかった。

 でも今のお前は心に怒りを宿している。

 それは配信者という力を手に入れお前が強くなったからだ。

 だが忘れるな、本当の強さとは力が強い事じゃない、心が強い事だ今のお前ならもうその意味が分かるはずだ」

 

「全然わかんないよ?!」

 

 またおちょくられてる

 特オタはさぁ

 でも絶剣ちゃんのちょっといいとこ見てみたい

 かわいいお声だからいけるよー

 がんばー

 

「だってよ」

 

「もー、えー」

 

 コメント欄と俺とランとの間でしばらくユウキは瞳をうろうろさせていたが、やがて「わかったよぉ」と頷いた。

 

「ボクそんなに自信ないからダメでも笑わないでよね?」

 

 すう、とユウキが深呼吸。

 

「『高らかにそれは鳴る。

 音はその存在を知らしめるように、だけれども些か早く。

 落とされたのは贈り物。拾い集めて届けてあげよう』……おわりっ」

 

 よいおこえ……

 がんばって読んでる感がかわいい

 じゃあクエストはこれからもユウキちゃんに読んでいただくということで……

 

「うぇぇぇえっ?!」

 

「じゃあそういうことで。これからもユウキの仕事なこれ」

 

「ヒロぉ?!」

 

「あはは、いいんじゃない。私ユウの読むトーン好きだよ」

 

「姉ちゃんまでぇ?! ね、持ち回りにしようよぉ〜」

 

「ええい、しつこいぞ褒められてまんざらでもなさそうににへへと頬を緩めてたやつの言うことか」

 

「けちけち〜」

 

 くっつくなくっつくな。お前は男人気が高いから俺との絡みは減らすべきなんだよ。

 ん、なんか脇腹つつかれてんな……藍子、俺今日は何もダメなことしてないよね……?

 

「お、俺何かしたかなラン……」

 

「もう、ちょっと触っただけでなに震えてるの! そろそろじゃないかな、クエスト開始地点」

 

「え、あ、マジだ」

 

 団員には住所特定が怖いから一応隠してるけど、うん、俺たちがゴミを拾った公園の、出口。

 情報が正しいならここでクエストがスタートするはずだけなんだが。

 

《 QUEST! 》

 

「お、出た」

 

 出たな

 オリジン起動してるからどこかはわかんないけど

 特定時間で解放されてるでかい町とかダンジョン以外はエリアちょいちょい入れ替わるんだよなー

 黒鉄宮ってまだ東京タワー周辺だっけ

 

「じゃあクエスト」

 

「じゅっりょーう! ぽちっと!」

 

「あ、こらてめこういうのは団長の俺の仕事だろ!」

 

「えー、細かいなー」

 

「こういうところで上下の差を思い知らせておかないと俺の立場が無くなるんだよ……!」

 

「ち、ちっさい、器……」

 

「まあまあ、ヒロがそういうどうでもいいことに拘るのは今に始まったことじゃないもんね、許してあげよユウ」

 

 お面かぶる前から細かい

 団長細かい

 団長だからセンターにいなきゃという意思で姉妹の間に挟まる男

 ブレイドとブレイブとブレイズの違いにうるさい男

 

 その三人は結構でかい違いだろうが……!

 

 

 

 

 

第6話 それが君のユウキ

 

 

 

 

 

 ソードアート・オリジンとしてのステージに変わった街を団員と話しながら歩く。

 どうやらクエストはフレーバーテキストにあった『誰か』の落とし物を探していくものらしい。

 何メートルがごとに地面が光っているので俺たちはそれを辿るようにして進んでいけばいつしか持ち主のところに辿り着くようになっているんだろう。

 

「モンスターでないねー」

 

「そりゃそうだろ。ここ歩道だぞ」

 

「でもゲーム中じゃんか。それならモンスターの一匹くらい……」

 

「でも、ここ歩道だし街中だよ? 車は馬車としてフィルターかかって見えるみたいだけど、それでもやっぱりいざという時が怖いもん」

 

「……たしかに! ボクらがモンスターと戦って道塞いじゃったら迷惑だもんね」

 

「そこら辺SA:Oの運営もわかってるからモンスが出てくるのは特定エリアにしてるんだろーよ」

 

 そういう面ではゲームエリアを作り出すゲンムの社長は有能だったのかね。

 

「でもモンスターでないと緊張感ないって気持ちもわかるぜ。オリジンはARだけど最近のVRMMOの流れに逆らわずデスペナあるからなあ。

 何しろオリジンはレベルがない分デスペナの……」

 

「あ、あったよ落とし物! はい、姉ちゃん持っておいて」

 

「はーい。いち、にー、さん、これで四つ目だね」

 

「さいきんおれのあつかいがざつなきがする」

 

 俺は悲しいよ……あ、落とし物。

 よっこら、たぶんこの光る宝箱みてえなホログラムに触れれば……ビンゴ。

 

「これ、なんだろーな。うーん、何かの小瓶か? ラン、なんだと思う」

 

「中に入ってるのは砂……かなぁ……。ユウの拾ったやつもなんかの皮袋に、果物ナイフとかで法則性も掴めないや」

 

 wiki見たけどなんか似たようなクエストはわかんないなあ

 見たのかよ……

 これクエストクリアしたら貰えるアイテムなのかね

 ワンチャンクエストクリアで武器もらえるかもよ

 

「武器、なあ」

 

 いまの俺のバスタードソードは初期選択武器の一つだがPS重視のオリジンの環境ではそんなに困ってない。たしかにそのうち強い武器は欲しいと思うが……。

 

「俺はそんなに困ってないなあ。ランは?」

 

「私? 私も今はそんなにかなぁ。攻撃力が低めなのは仕様なんだよね?」

 

「だな。弓に限らずチャクラムとかの遠距離武器は割と攻撃力の設定は低めだな」

 

 じゃあ残るのはユウキだけど……。

 

「ボクは武器変える気はないからね! このアニールブレード初配信のクエストクリア記念なんだから!」

 

「そんなに抱きしめてなくたってとりゃしねえよ……」

 

 信頼の欠如ww

 幼なじみなんですよね?

 ちっちゃい体でおっきめの剣抱きしめるの可愛すぎる件

 団長信じてあげようよ

 

「だめだめみんなヒロのことわかってないんだから。昔一緒にゲームしてた時にボクの当てたキラカード欲しいからってこっそりモガモガ」

 

「よしユウキお前がこれ以上喋るのはノーサンキューだ。俺の株が落ちるからね」

 

「もがが」

 

 仮面の男がいたいけな少女の口を……

 もしもしポリスメン?

 一年で23回炎上した男がなんか言ってますねぇ!

 今更落ちる株ありゅ?

 

「やっかましいわい!! 団員たちがネタにしたせいで俺の今のあだ名『自分で本能寺に火をつける織田信長』なんだぞ!!!!」

 

 草

 wwwww

 草不可避ですねえ!

 でも森を焼き討ちしてたし文句言うなら自分の行動見返してもろて

 何やってんだよ団長ォ!

 

「お前らのせいじゃーーい! あークソ腹立ってきたあの切り抜き物申す系Vのカクタスオルフェノク頭のキ──」

 

「ヒロ?」

 

「はい」

 

 突然素に戻るなw

 おかしい……仮面つけてるのに真顔なのがわかる

 名ブリーダーランとチワワユウキと躾の行き届いた大型犬団長

 

 その後、ユウキの拘束を俺が解き、落とし物を拾いつつ先に進む。

 落とし物の数は既に二十を越えている。もうかれこれ歩き始めて三十分は経ったことを考えると、1〜2分に一個は拾ってる計算になる。

 

「……そろそろクエストも佳境かもな」

 

「へ?」

 

 あ、やべ口に出てた。

 突然言ったもんだからよくわからないユウキがポカンとしてる。

 えーとなんと言ったもんかな。

 

「あ、ヒロもやっぱりそう思うんだ」

 

「てことはランも?」

 

「そろそろいい時間だからね。この前のネペントのクエストもクリアまでにはそれなりの時間はかかったけど、戦闘自体は長くなかったしね。そう考えるとオリジンのクエストは基本30〜60分程度でクリアできるように作られてるんじゃないかなー、とか」

 

「おお、そこまで考えてたのか。俺は正直エリアのことから考えてたな」

 

「エリア?」

 

「クエスト開始地点のエリアだな。基本オリジンのクエストは子どもやお年寄りの負担になりすぎない徒歩圏内に収まるようになってる。

 そうすっと、たぶんマップに今出てるこの『一本松の平原』ってとこが終着点かなー、とか」

 

 現実だと公園から一番近い河川敷だ。

 歩いてだいたい30分程度。

 人がある程度集まっても平気で、武器を振り回しても、声を出しても目立ちにくい。

 俺が製作サイドなら選ぶならここ一択だな。

 

 ……と、思うんだけど団員諸君はどうかしら。

 

 団長が、賢いことを話してる……?

 普通の時はマジ普通だな……

 良い見立て

 その予想は正しいゾ。公開されてるクエスト所要時間の平均は42分だからナ

 はへー

 私もクエストの終着点はそこだと見る。概ね間違ってないだろう

 なんかチラホラ有識者がいる

 

「お、合ってるみたいだな。流石ラン」

 

「私はなんとなくだし。ほんとにあってるかなんてまだわかんないしね」

 

「謙遜すんなって。冷静に状況をみれるのはランの長所だぜ」

 

「……もう、からかわないで」

 

「仕返し仕返し」

 

「いじわる」

 

 唇を尖らせて、くしくしと肩あたりの虚空を触るラン。

 また現実でシュシュ触ってるな。

 

「むー」

 

 ユウキちゃんご立腹

 頬を膨らませてるね

 あーあユウキちゃんは踊るのをやめてしまいました

 あ、間に割り込んだ

 突如として生えてくる絶剣

 くぉれは妹ムーブ

 

「うおっ、ユウキどしたんだよ」

 

「ゆ、ユウ?」

 

「ふたりだけずるい。イチャイチャしてる」

 

「いちゃ──っ、そ、そんなのしてないよっ?!」

 

「そうだぞ、こんくらい普通だろ」

 

 ランと俺の間に挟まったユウキが、じーっと半目で睨んでくる。

 

「じゃあ証明してよ」

 

「証明って、ユウ」

 

「ボクを甘やかして!」

 

「お前清々しい末っ子ムーブだな……いいけど別に」

 

 よしよしとランと二人で撫でてやると、むふーと満足げにユウキが頬を緩めた。

 猫っぽい。顎とか撫でちゃろ。

 

 妹というよりこれ完全に猫

 扱いがペットなんすねw

 

「ボクペットなんかじゃないんだけど!」

 

「! 確かにな、ごめんな……む、あそこに落とし物」

 

「マップを見る限りあそこが一本松の平原ってとこだよ。たぶん最後の落とし物じゃないかな」

 

「よし拾いに行けロリチュウ!」

 

「ボクと君同い年なんだけど! まったくもう、仕方ないなあ」

 

 ちゃんと拾いにいって草

 拾ってくることは拾ってくるんだ……

 

 とてて、と駆け出したユウキの背中をランと追いかけつつ、一足先に落とし物を拾っていたユウキに追いついた。

 

 どれどれ。

 

「ん〜〜? なんだこれ」

 

「あ、ユウユウ私にも見せてよ」

 

「ちょ押さないでよ姉ちゃん、んふふ、髪がくすぐったいって」

 

 ユウキが笑った拍子にぎゅむぎゅむと腕が頬に押しつけられる。

 ……近いな。画面にみんな映りやすいからいいけどさ。

 

「ボクこれ覚えてるよ。あれだよね。理科とかで使ってた」

 

「ああ、ライドウォッチだろう」

 

「どうみてもコンパスだと思うよ」

 

 理科でどうやってライドウォッチ使うんだよ!

 ラオタはさぁ……

 ボケなきゃ息できない生命?

 

 丸いしまわるし概ねライドウォッチで良くない? だめ? そう……。

 

 にしても、コンパスねぇ。

 

「にしてはデカくない?」

 

 これ両手で持たなきゃ持てないよ?

 コンパスの針だけでもたぶんDXソードライバー(全長380mm)くらいあるんじゃないか?

 

「コンパスって方角見るために使うものだよね。そう考えると……」

 

「これをみてどこかに行こうとしてた人がいるってこと?」

 

「いやいやこのサイズのコンパス使ってる人とかどんだけデカい人なんだよ。オリジンはエルフとかはぼちぼち居るけど基本は人間の世界なんだぜ?」

 

「それは、そうかもだけど……」

 

 ランが俺の持つコンパスを見て指を唇にあててううんと唸る。

 というかここが依頼の最後だよな、たぶん。落とし主いなくね?

 

 ん、袖引っ張られてる。

 ユウキ?

 

「ね、ねね、ヒロ」

 

「おう?」

 

「なんか聞こえない?」

 

「聞こえる?」

 

 ふむ…………ふむ?

 

「俺には何にも聞こえんが……」

 

「えぇ〜、じゃあ団員さん! 団員さん達ならなんか聞こえるでしょ?」

 

 聞こえない

 何も聞こえませんね

 バカ、俺には聞こえてるよ、お前の声がさ

 一人にだけ聞こえる音、まさかゴルゴム!

 オーグマー本人の聴覚に依存するらしいしユウキちゃんにだけ聴こえる音もあるんかね

 

「ユウにだけ聞こえる音。

 ねえユウ、その音ってどんな感じの音かわかる?」

 

 あ、そっか木綿季に聞こえてるならそれ教えて貰えばいいのか。

 藍子は冴えてる、いや、クレバーだな。

 

「音……こう、リンリン? いや、シャンシャン……すざーっみたいな音もするかも」

 

「リンリン?」

 

「シャンシャン?」

 

 リンリン

 シャンシャン

 ずざー

 

「すまん団員……俺がユウキの語彙力を磨いておかなかったばっかりに……!」

 

「ちょっと!!!」

 

 もっと文豪にして剣豪の仮面ライダーセイバーを見せて語彙力向上に努めておくべきだった……!

 

「ボクの成績にとやかくいえる成績じゃないでしょヒロだってさ!」

 

「ほー、じゃあ今のこの微妙な曇り模様の気象を巧みな語彙で表現してみろよ」

 

「できるもんね! ボクだってそのくらい!」

 

「? ねえ、ヒロ、ユウ、曇りって今日すごい良いお天気じゃなかった?」

 

 何言ってんだランは。俺らの周りは真っ暗……真っ暗?

 たしかにさっきまで晴れてたような。

 

「曇り……?! ヒロ! 上! 上!」

 

「え? 上ぇぇぇぇええええええっ?!」

 

「あわわ、ヒロ下がるよ!!」

 

「いやそんな急にグエッ」

 

 な、なんか上からおちてきたー!?

 今ドロップキックされて逃がされたぞ団長

 絶剣の跳躍力エグすぎ

 というか何こいつ

 土煙でよく見えないな

 土煙のせいでユウキちゃんのスカートの中もよく見えなかった

 謎の土煙サン?!

 

「ヒロ大丈夫?」

 

「ら、ランか……だ、大丈夫。サムズアップもできてるだろ……」

 

「ご、ごめんヒロ、思ったよりいいの入っちゃった……」

 

「気にすんな……鍛えてるから……助けてくれてサンキュー……」

 

 うぎぎ、脇腹ぁ……。

 

「というか、何が起きた! 何が降ってきた!」

 

 ええい、土煙でよく見えんが……お、はれてきた……な……?

 

「え、姉ちゃんこの人って……」

 

「う、うん、もしかして……」

 

 ユウキとランが揃って互いを見合わせて首を傾げる。

 

 一本松の前に佇む巨体。

 その服は薄汚れているが、おそらく元の布地は赤。これまた汚れた巨大な帽子はずり落ちかけ。

 トレードマークの蓄えたヒゲにはなんだかゴミのようなものが絡みついているし、手に持った袋には穴が空いてるが、こいつの名前を聞かれれば十人中十人が「そう」答えることだろう。

 

「「 サンタさん? 」」

 

 うん、サンタクロースだよねコイツ。

 

 

《 MERY Xmas 》

 

 

「わ、しゃ、喋ったよ?!」

 

「サンタさんだし喋るのは普通なんじゃないかな……この人に落とし物渡したらいいのかな」

 

 どうだろうな……ん、コメント欄が少し騒がしいな。

 

 は?!

 うっそだろ

 こいつ……

 早く離れて!そいつやばい!

 えなになにどしたん

 SAOでサンタクロースは厄災の証なんだヨ

 

 厄災……?

 

「あれ、なんかそいつHPバー出てね?」

 

「ほんとだ、それにカーソルが、赤く……」

 

 赤……赤って敵対じゃねえか!!!

 

 やべえなんかコイツ腕振り上げてる!

 

「ユウキ! ラン! そいつ敵だ! モンスターだ!」

 

「え?」

 

「うそ、でもサンタさんだよ?」

 

 ああ、やべえこれ回避間に合わねえ。

 クソ、ならソードスキルで迎え撃つ!

 

間に合えやこの野郎(アバランシュ)!!」

 

 優に5メートルを超える巨体の拳と俺のソードスキルの威力をブーストしたバスタードソードとが激突する。

 

 アバランシュは突進系の両手剣の強スキル。だが、それでも威力は殺しきれなかったのか、俺の握るタッチペンに激しい振動が伝わる。

 

 こいつの攻撃重え……! 剣が、震える!

 

「だ、らっしゃーーーい!」

 

 だが、虚像のデータとの激突はなんとか俺のソードスキルに分があったらしく、サンタの拳の勢いが死んだ。

 

「なんとか、セーフか……」

 

 まだ手がビリビリしてる。

 

「ヒロありがと! たすかったよ!」

 

「手、大丈夫だった?」

 

「おう、そこは平気だが……」

 

 目の前で、俺に攻撃を防がれたサンタがギョロリ、と目を上下左右に動かし、軽く肩を回す。すると、サンタの頭上のカーソルの横にぎゅんぎゅんとHPバーが表示されていく。

 

 その数、一、二、三本。

 

 そして、最後にモンスターとしてのそいつの名前が浮かびあがる。

 

 

殉教者ニコラス(Nicholas the martyr)

 

 

 

「ニコラス……マーズ……なんとか!」

 

「違うよユウそれだと火星のニコラスさん。あれはNicholas the martyrだから……日本語訳するなら殉教者ニコラスかな」

 

「ニコラスって、確かサンタクロースのモチーフだろ? なんで夏に出てきてんだ?」

 

「ほら、フレーバーテキストにあったでしょ、『音はその存在を知らしめるように、だけれども些か早く』って、だからたぶん……」

 

「あ、あわてんぼうのサンタクロース!」

 

「些か早くってそういうことかよ!」

 

 え? じゃあ落とし物って目の前のこの殉教者ニコラスがそそっかしかったってこと?! コンパス持ってたのも道に迷ってたからなの?!

 

 って、いやそれはいいんだよ。問題はコイツがそんな橘さん並みにそそっかしくて困ったそんなことじゃねえ。

 

 3本、ですかぁ……

 こんなことある?????????

 あっ(察し)

 初デスペナ来ちゃったかー……

 カーディナルくん時々こういうことする

 殉教者ニコラス……SAOのクリスマスに出てた『背教者ニコラス』と同タイプカ?

 団長達やっぱ"持ってる"よね

 まあ洒落にならんけど

 燃やせ!団長!

 お疲れ様でした

 スリーピングナイツ逃げてー

 いやさっきフィールド区切れてたし中から外にはもう行けない

 そ、そんな……

 

 そうだ、問題はコイツのHPバーが3本あること。

 

 くそタッチペンに握る手に汗かいてきた。

 

「ヒロ?」

 

 ああ、ランが俺のこと不安そうに見てる。

 やめやめ、あんまり焦んなフラットにいろ。

 

「ユウ、ラン、ソードアートシリーズで『the』がついてるモンスターが何を意味するか知ってるか?」

 

 その顔は、まあ知らねえか。

 

「ソードアートにおいてtheがつくモンスターは()()()()()()()だけだ」

 

「それって……」

 

 ああ、そうだよクソ、完全に騙された。

 俺たちは今ただの落とし物拾いのクエストと思って、7()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 クソクソクソクソクソ。どこで騙された? あのクエストをもっと疑うべきだったのか? いや落とし物拾いだけのクエストとかあるわけねえだろ。いやでもあんなゴミ拾いからこんなクソみてえなボスの出るとか想像できねえじゃん。あーもうこれだから嫌なんだよ。デスペナ覚悟で戦うか? いやでもオリジンのデスペナは……ユウキ?

 

「ヒロ」

 

 ユウキに、手を握られてる。

 俺の作ったアバターの真っ赤な瞳が見つめてくる。

 

 何をすればいいか、問いかけてる。

 

 ……ったく、カッコ悪いな、俺。

 

 いつもコイツは前を向いてる。

 

「ワリ、落ち着いた」

 

 ふう、んん、なんかお面触られてる。

 

「ズレてたよ。トレードマークなんだしちゃんと直さなきゃね」

 

「……ラン、俺はこれをトレードマークにしたくはないんだけどな」

 

「あはは、いーじゃんいーじゃん! ブレイブ! 今日はヒロが勇者ってことで!」

 

「好きにいうなあ、お前」

 

 敵は強い。OK。

 俺たちは3人。OK。

 勝ち目はほとんどない。OK。

 死んだらデスペナがある。OK。

 だから、三人全員で生還する。

 

「ふー、OK」

 

 じゃあ、勝つか。

 

 え、戦うの?

 むりくね

 ニコラスってSAOだとフルレイドで倒してなかった?

 初心者には厳しい

 でもスリーピングナイツだともしかしたら……

 いやそれでも厳しいって

 いやでもこれ個人クエストだからもしかしたら少ない人数でも勝てるようになってる可能性あるよ

 だとしても初心者三人だろ

 いやいや絶剣蒼弓本能寺だしもしかしたらもしかするかもよ

 ひとつだけ建物ww

 盛り上がってまいりました

 

 右隣にユウキが並び、左拳を上げた。

 左隣にランが並び、右拳を上げた。

 

 俺は両拳を上げてそれにぶつけ合わせた。

 

「行くぞ、クライマックスに」

 

「うん!」

 

「おっけー!」

 

 ユウキが森の秘薬で手に入れた片手剣アニールブレードを、ランが背中に背負っていた弓を取り出す。

 

「ユウキは俺が指示したら前出て攻撃! 深追いはしなくていいなるべく連撃じゃなくて単発狙いで!」

 

「りょーかい!」

 

「ランは後続援護! 弱点探りつつ前が捌き切れなさそうな時うって!」

 

「任せて! でも、ヒロは?」

 

「俺は、前に出て、お前らを守る!」

 

 行くぞ、やるぞ、俺はあいつらの前ではずっとカッコよくないといけねえんだ。

 だから、ミスってくれるなよ俺。

 

「お、らぁっ!」

 

 まず一発剣を叩き込む。

 

「こっち見ろ迷子のサンタ! お前がクリスマスにいねえと貴利矢ショックは成り立たねえんだから早く来てんじゃねえ!」

 

 www

 よくわからない煽りしてる

 でもタゲ集まってるくない?

 もしかしてあれウォークライ???

 

 よし、こっち向いた。

 

 この調子で引き受けつつ、ユウキに攻撃をつなぐ。

 

「──っと、ぶね!」

 

 カスケード(単発上段ソードスキル)で相殺……し、きれねえ。

 

「うぎっ、重……」

 

 タッチペンの振動が洒落にならねえ、これ、もう持ってられねえ。

 つうか防御貫通して圧力だけで俺のHP削ってる。なんでこれだけで三割近く持って行こうとしてんだよ。

 

「ヒロ! 援護行くよ!」

 

 おお、矢をニコラスの腕に当てた!

 あの距離でヒロに当てずにピンポイント援護かよ!

 

「さん、キュ! ユウキ!」

 

「おっけー、スイッチ!」

 

 ニコラスの腕を弾いたタイミングで入れ替わるようにユウキが前に出る。

 

「ソードスキル、ソニックリープ」

 

 ペールブルーの光がユウキの剣を包み、その威力に大きくブーストをかける。

 

 完璧だ。

 

 無防備な腹への一撃。よく勢いも乗ったソードスキルだった。

 おそらく今の俺たちの使える攻撃の中では最大レベル。

 

 これでのダメージでニコラスと戦えるかどうかがわかるはずだ。

 一割とか甘えたこと言わねえ。せめてその半分でも減ってくれてれば……。

 

「うそ、でしょ……」

 

 この声、ランだ。ああ、やっぱそうなのか。

 

 いまの一撃でHPどれだけ減った……?

 わからん

 減ってるかHP?

 やっぱ厳しいよなあ

 

 あっという間に団員まで諦めムード。

 

「ヒロ! もっかいおなじやつ行こう! まだボクらは負けてない!」

 

「……っ、ああ。まだ諦めるには早いよな。ラン、俺のガードのタイミングでさっきの援護頼む」

 

「うん、わかった」

 

 ランの目もまだ死んでない。

 ユウキだって諦めてない。

 

 まだ、やれるはずだ。

 

 ガード、スイッチ、ガードスイッチ。ガードスイッチガードスイッチガードスイッチガードスイッチガードスイッチガードスイッチガードスイッチガードスイッチガードスイッチガードスイッチガードスイッチガードスイッチガードスイッチガードスイッチガードスイッチガードスイッチガードスイッチガードスイッチガードスイッチガードスイッチ。

 

 ただひたすらにそれを繰り返し、積み重ねた攻撃はニコラスのHPバーをじりじりと、けれど確かに減らしていき。

 

 

 

 そして5分後、ニコラスが突如として撃ってきたスタンブレスにユウキとランが巻き込まれて戦線は崩壊した。

 

 

 

 

「ぐ、あー、くそ攻撃重い!」

 

「ひ、ひろぉっ」

 

「バカ動くな! お前の体は動いてもアバターはスタン中だ! 停止指示に従わないとスタン延長するぞ!」

 

「ごめん、でも……」

 

「ユウ、私たちはじっとしておこう。今はヒロが持ち堪えてくれてる」

 

「でも三人でもギリギリだったのに。SA:Oのデスペナってしかも……」

 

 ぎゅっとユウキが近くに落ちていたアニールブレードを抱く。

 

 あー、オリジンのデスペナ熟練度低下だっけ

 あとごく稀にアイテムロスト

 ロスト?!クソじゃん!

 いや流石に高レア装備だとねえよ?でもアニールブレードは正直ランク低いし……

 運が悪けりゃメインウェポン喪失と

 結局運頼みかー

 まあアニールブレードはまた取ればいいし……

 

 アイテムロスト。

 神ゲー評価受けてるのにそういう意地悪なことするからお前のサイト評価4.3とかなんだぞSA:O。

 

 ったく。

 

「大丈夫だよ、ユウキ。

 お前らがスタンで動けない間くらい俺が持ち堪えとく、それがタンクの役目だからな」

 

 お前のアニールブレードが万一にもロストするような状況にはしねえよ。

 だから、そんな泣きそうな顔するなよ。

 

「まあ、だからなるべく早くスタン回復してな? ランも。正直、今の攻撃も凌ぐだけで精一杯なんだわ」

 

「……ふふ、なにそれ、システムなんだからじっとしておけって言ったのはヒロじゃん」

 

「そーだった、なっと!」

 

 ニコラスの腕を弾いて、距離を取る。

 ええとポケットに、あ、あった回復ポーション。いまのうちに飲んどかないと。

 

 まだ戦うんだ

 厳しいと思うけどなぁ〜

 いやヒロも前よりは弾けるようになってるゾ

 でも団長でスタン回復の時間耐えれる?

 

「うわー、俺信頼ねえ〜」

 

 本能寺だし……

 団長だし……

 敵ボスだし……

 ラオタだし……

 

「こういう時には息ぴったりだなぁ!」

 

 コイツらに何度燃やされたことか。

 

「『覚悟を超えた先に希望はある』

 仮面ライダーセイバー、上條大地と神山飛羽真」

 

 は?

 突然どうした

 ポエム?

 

「いまの俺に希望が見えるのか、クライマックスに勝負と行こう!」

 

《 MERY Xmas!! 》

 

「やかましい! 今は夏だ!!!!」

 

 もう何度目かもわからない防御。

 微妙に長くて微妙に短い剣をだがまだ耐えてくれる。

 

 拳と剣が交錯し、その度にリアルの俺が握るタッチペンに激しい振動が伝わる。

 だがそれにもずいぶん慣れてきた。

 

「がんばれ、がんばれヒロー!」

 

「横から薙ぎ払いきてる! がんばって!」

 

 まさかいける……?

 復帰まで耐えれるのでは

 やるじゃん団長

 がんばれがんばれ

 コメント欄見ちゃダメだよ

 がんばれー!

 

「ごめんちょっと見ちゃった! 気になるから!」

 

 ちょっとww

 自分に正直

 あと二十秒

 

 あと少し──!

 

《 PRESENT FOR YOU! 》

 

 は?モーション変わった?!

 いや違う時々挟み込まれるランダム行動だ

 両手薙ぎ払い?!

 回避は無理だこれガード

 

「が、あ、どっ!」

 

 差し込んだ剣に拳がぶち当たるけど、問題ないこのまま……あ。

 

 あ

 あ

 あ

 

「しま、いまの衝撃で剣が」

 

 ヤバいこれがなきゃ俺はどうにもなんねえってのに!

 

 急いで拾っていやダメだ間に合わな────。

 

 

 

「──スイッチ」

 

 

 

 それは、極限の戦闘に響いた亜麻色の鈴の音だった。

 

 間違いなく木綿季の声じゃない。もちろん藍子の声でもない。

 

 でも俺の体は気付けばその声に従って、くるりと前線を入れ替えていた。

 まるで騎士団の団長の号令に従うように。

 

 

「──リニアー」

 

 

 何かが光った。そして次の瞬間にはニコラスの身体に剣が突き刺さっていた。

 剣戟は一つで終わらず、まるで流星群のように絶え間なく先ほどまで俺たちを苦しめていた巨体に吸い込まれていき、みるみるHPバーを削っていき、遂に0にした。

 

 ニコラスが断末魔を挙げてポリゴン片になって消えていく中、亜麻色の流星の乱入者が、座り込む俺と、ユウキとランとを順番に見た。

 

「あなた達、そういう危ない戦い方してると、死んじゃうよ」

 

「え?」

 

「……なんて、ちょっとかっこつけすぎかな。

 ふふ、三人とも、大丈夫?」

 

 長い亜麻色の髪。

 赤と白のコントラストの鮮やかな装備と、胸鎧についた赤い十字の団章。

 

 俺は知っている、この細剣使い(フェンサー)を。

 

「《閃光》、アスナ……」

 

 




 
結城明日奈19歳大学生。

今年は2021年なのでSAO換算するとユウキたちは今年10歳。
小学四年生くらいですね。めでたい。
機会があればそこら辺の昔のちっちゃい頃の三人も書いてみたいですね。
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