ボクっ娘幼馴染に配信チャンネル乗っ取られたらバズり倒した   作:世嗣

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スリーピングナイツ[公式]/@hero-sannjyou
 明日ウチのユウキと血盟騎士団のとある方とのPvP配信します。
 「胸を借りるつもりで頑張ってきます!」by ユウキ
#スリーピングナイツ #スリーピングナイツ冒険譚
 
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Reply to @hero-sannjyou






ボク、参上

 

 

 

 ユウキとアスナさんのPvPの日がやってきた。

 

「おっすおっす俺参上。スリーピングナイツ団長のヒロだぜ」

 

「同じくランです。みなさんこんにちは。今日はまず二人でご挨拶させてもらいますね」

 

 団員参上

 団員参上

 ここ前ニコラスと戦った草原じゃん

 閃光切り抜きからきますた

 あららラン姉ちゃん参上なくない? 

 

 たしかに。

 

「ラン! 参上が抜けてるぞ!」

 

「わ、私はいいよ。今回はユウもいないんだし」

 

「いやダメだ。ここは俺のチャンネルなんだから俺の意思には従ってもらう」

 

 ぼ、暴君

 団長がやってること天国姉妹に比べたらあんまり……

 てかユウキちゃんいなくね? 

 そういうこと言うとまた団長がチャンネル燃やしちゃうよ

 

 じゃかしいわい! 

 

「まったく、困ったもんだな。()()()がいないと参上と()()()が出ないってか?」

 

 はい!!! 

 

「アルトじゃ〜〜〜〜〜〜ないとォッ!」

 

「……」

 

 ……

 ……

 ……

 

「……というわけで今日の配信も始めていきます。団員の皆さんよろしくお願いしますね」

 

「なんか言ってぇ?! イズみたいに解説とまでは言わないけどせめておもんないとか言っていじってぇ?!」

 

「あっ、うん。ごめん、あまりにもくだらなくてなんて反応すればいいのかわからなくて……」

 

「ギャグの投げっぱなしジャーマンは重罪なんだぞ。次からは秘書っぽく解説しといてくれ」

 

「秘書……?」

 

 イズはライダー史に残る最高ヒロインの一人だからな。

 

 ランちゃんは冷静だ

 団長の舵取りからの方向転換に慣れてる

 本当に幼馴染なんだな

 よろよろ

 へー、こんな感じなんだ眠騎士

 血盟騎士団の広報のツイから

 

「あ、初めての人も結構いるんだな」

 

「そうなんですね。概要欄には今までの配信のリンクなんかもあるので良ければ見てみてくださいね。ユウと……あと私もおやすみ配信してたりしますよ」

 

 ランちゃんもやってるよね

 やってるよ。この前星の話をしてた

 なんで小声なの

 

「だ、だって恥ずかしいじゃないですか……」

 

 かわいい

 かわいい

 アッ(胸抑え)

 赤面顔抑えは美味しすぎる

 このチャンネルの意義をここに見出しました

 

「このチャンネルは俺のなんだが?!」

 

 い つ も の

 信頼度安定のレス

 

「てめーらなァ!? いいか──」

 

「ヒロ?」

 

「はいというわけでね今日はウチのユウキがPvPをやらせていただく! ということでね!」

 

 画面外で藍子につつかれたので口をつぐんであらかじめ決めておいた流れに戻す。

 危ない。話題が脇に逸れすぎた。

 

「事前に公式アカウントで言っていた通り今日はユウキがPvPをすることになりました。今回はその配信っていう形になるのでよろしく」

 

「なので、今日は戦うユウには今少し待機してもらってます。もちろん、対戦相手の方も含めて」

 

 対戦相手ってやっぱあの人だよね

 血盟騎士団の公式もなんか呟いてたしな

 

 なんとなく察してる人もいるみたいだな。なら焦らす必要もないな。

 ならさっさと登場してもらおう。

 

「じゃあ、今日の主役のお二人に登場してもらいましょう! プリーズ!」

 

「やっほー! ボク参上!」

 

「こんにちはー」

 

 閃光キターーーー! 

 ユウキちゃん待ってた! 

 うわまじで閃光じゃん!! 

 配信に出るのめっちゃ珍しいな

 前キバオウが血盟騎士団とのコラボは断られたとか言ってた

 なんでや! 

 おお、白と赤のKobカラー

 

 うおっ、すごい勢いでコメントが流れていく。

 同接数もするする伸びていく……流石に木綿季が乱入してきた時ほどじゃないけど、これがSAOの知名度か。

 

 俺たちも最近は知名度を伸ばしてた方だったけど、やっぱ血盟騎士団のデカさには敵わないな。

 

「わー、コメントすごいね。これ全部今見てる人たちのやつなの?」

 

「はい。私たちスリーピングナイツの団員のみなさんと、あとはアスナさんの血盟騎士団のファンの方たちもいるみたいです」

 

「そうなんだ。SA:O(オリジン)の配信系には全然触れてなかったけど、こんな感じになってるのね」

 

「ふふーん! ボクは慣れっこですけどね!」

 

「なんでお前はちょっと偉そうなんだよ」

 

 藍子(ラン)に説明されて興味深そうにオーグマーの機能で視界に投影されているコメント欄をつんつんと触るアスナさん。

 

「まずは挨拶すればいいんだったかな」

 

「うっす。とりあえずは所属とお名前を教えていただければ」

 

「所属……そういえば私の今のアバターってオリジンを起動してないのに血盟騎士団のになってるけどこれってどういうことなの?」

 

「あ、俺が作りました。取り敢えずいるかなって」

 

 んん? 

 団長が自分で? 

 いちおう、全身の3Dモデルだよなこれ……

 いやいや流石に言い過ぎでしょ

 でもSAOのアバターコンバートとか容姿データの読み込みって基本できんし

 

「お前ら忘れてんのか知らんがユウキとランのアバター作ったの俺だからな」

 

「そういうのって結構時間かかったりするものじゃないの?」

 

「いやまあアスナさんのアバター再現しただけですからね。デザインの時間ない分割と楽でしたよ。確か2日くらいで終わりました」

 

 2日???? 

 団長ってさ、俺たちが思ってるよりすごいんでは

 なんで配信者なんかしてんだ

 もっと活かせる職場ありそう

 

「ふふーん、ヒロはすごいんだよ!」

 

「昔からこういう機械系は得意だったもんね。他は大して成績良くないのに美術は5だったし」

 

 あれ……今もしかして俺の評価上がってる? 

 

「なんだ、へへ、団員たちもようやく俺のありがたさに気づいたんだな」

 

 調子に乗るな

 23回炎上男がなんかいうてますね

 

 特に上がってなかった。

 まあそういうわけで気を取り直して挨拶とインタビューへと移る。

 

「じゃあまずボクからね!」

 

 ユウキが勢いよく手を上げる。

 

「ボク参上! スリーピングナイツの切り込み隊長ユウキです! 今日は頑張っちゃうから応援よろしく!」

 

 がんばれー

 応援してるよ! 

 閃光相手にどこまでいけるか

 

 ぴーすとユウキが指を立てる隣で、アスナさんがじゃあとゆっくり画面に入ってくる。

 

「血盟騎士団、一番隊長のアスナです。先日のご縁から今日はユウキちゃんと戦うことになりました。今日はよろしくお願いします」

 

 ほんとに閃光だ

 こんなに近くで見るの初めてかも

 顔出して大丈夫なん? 

 リアルと顔が違うアバターで何を今更……

 でもSAOって割とリアルに顔近い人多かった気がする

 SAOはシステムの問題で近い顔にはなってもリアルであって見分けられるほどの再現はしないヨ

 

 おー、おー、すげえな……アスナさんが話すだけでも露骨に差が出る。

 まあそりゃそうだろうけど、やっぱりユウキはあまり期待されてない感じがある。

 

 なんか腹立つ。

 いやまあアスナさんが強いのはそうなんだが、なんかユウキが過小評価されてる感じは苛立つ。

 

 ちぇっ。

 

「お二人とも意気込みはどうですか」

 

「やるからには負けないつもりです。私、これでもSAOの攻略組だったので」

 

「ボクだって負けませんから。絶対」

 

 ああ、そうか。

 俺は歯痒いんだ。

 

 今俺はユウキとアスナさんの戦いを見守るしかない。

 これは俺たちスリーピングナイツの今後に大きく左右することなのに、こうして見ることしかできないのが、悔しい。

 

 確かにこんなのじゃあ俺のチャンネルだなんて言えねえよな。

 

「ヒロ?」

 

「へ、ラン?」

 

「何ぼーっとしてるの、もう戦い始まっちゃうよ?」

 

「あ、ああワリ」

 

 いつの間にかユウキとアスナさんはタッチペンを手にし、5メートルほどの間を開けて構えていた。

 

 

「「 ソードアート・オリジン、起動! 」」

 

 

 

 

第八話 ボク、参上! 

 

 

 

 

 起動ワードを認識したオーグマーによって、二人の衣装が変わっていく。

 

 片や、逢魔時の紫紺の剣士、ユウキ。

 片や、赤と白の細剣使い(フェンサー)、アスナさん。

 

「ルールは全損決着で、ありありでいいかな?」

 

「アリアリ?」

 

「アイテムありソードスキルありでいいかなってこと。まあ、私はこれ一つでやるんだけど」

 

 これ、の時にアスナさんは腰の細剣に触れて微笑んだ。

 正確にはアスナさんの腰には剣はなく、ARの中だけでオーグマーの見せるポリゴンでしかない。

 

 けど。

 

「すごいね、アスナさんのあの剣。ユウの剣(アニールブレード)とは全然違う」

 

「……だな。ありゃ相当な業物だな」

 

 当たり前だ。彼女を誰だと思っている

 アスナの武器って言ったらあれだろ、ランベントライト

 SAO時代から使ってるっていうあの? 

 流石に同じやつじゃないけどナ

 

「Lambent light、揺らぐ光……いやほのかに輝く閃光ってところかも」

 

「そりゃあ、アスナさんにぴったりの武器だな」

 

 ランベントライト。俺も聞いたことがある。

 たしか《閃光》の相棒で100層ボス攻略にも使われた名剣中の名剣だ。

 

 確かにそれだけの武器とアスナさんほどの技量があれば下手なアイテムなんかあっても邪魔なだけだろう。

 

 だが、ユウキはそれがどうやらプライドに触れたらしい。

 むっとしたように頬を膨らませて自分の腰の剣に触れた。

 

「ならボクも剣だけにします。正々堂々、やりたいから」

 

「そっか。ごめんね、ユウキちゃんを軽んじてるわけじゃなかったんだ」

 

「分かってます。アスナさんの武器はすごいし、アスナさんは強い人だ」

 

 だから、とユウキはタッチペンと腰の武器の位置をリンクさせ、鞘から抜いた。

 

「あとは、剣で示します」

 

 僅かに細まった赤色の瞳に応えるように、アスナさんはそれ以上何も言わず虚空で指を滑らせるデュエルを申請。

 ユウキはためらいなく申請を受理すると、二人の間に半透明のウィンドウが現れる。

 

 刻まれた文字は、10。その数字が、刻一刻と減っていく。

 

 ユウキの手には母と娘の想いの剣、黒鉄のアニールブレード+4。

 構えはやや前傾、おそらくカウントがゼロになったタイミングでアスナさんに突っ込むつもりだ。

 

 対してアスナさんは気負わない全くの自然体。

 だらりと下げられた手に握られる白金の刃は、それだけで芸術品だ。

 

「ユウ、勝てるかな」

 

「おいおいユウキが負けると思ってんのか。あいつ俺たち三人の中で一番強いんだぜ。心配することなんかねえって」

 

「そっか。じゃあさっきから掴んでる私の服の袖、離してくれると嬉しいな。しわになるし」

 

 袖? うおっ、なんかいつの間にか手が! 

 

 すまん藍子! 

 

「別にいーけど。強がってもバレバレだからね。ゲームなんだし、もう少し楽に見守ったら?」

 

「わりい、なんかユウキが真面目だから引っ張られちまって」

 

「緊張するなら声でも出したら? おーって、気がまぎれるよ」

 

「……やめとく。もう戦いは始まっちまった。俺たちにできるのは黙って行く末を見守る事だけだ」

 

 だから、頑張ってくれ、ユウキ。

 俺は最後までお前の戦いを見届けるから。

 

「―――」

 

「……」

 

 カウントが、ゼロになる。

 

「やああああっ!」

 

「さ、やろっか」

 

 黒鉄の剣と白金の剣が踊り、幻想の高音が甲高く響いた。

 

 

 

 

 

 

 強いと、そう思った。

 

「はああっ!」

 

「──っ」

 

 ふっ、と脇を掠めていくアスナの突きに一瞬息を吐きながら、反射的に反撃。

 体を沈み込ませ、アスナの腹部、鎧の隙間を狙う。

 

「狙いが目で見えてるよ」

 

 だが、当たらない。

 アスナはその攻撃を見切っていたようでユウキのアニールブレードの刃渡りギリギリの距離を取り、ユウキの剣を空振らせた。

 

 返す刀で刺突の4連撃。

 

「カドラプル・ペイン」

 

「わ、ととっ」

 

 ライトブルーの光を伴う剣戟をなんとか3発まではかわしたが、最後の一つはいなしきれずに肩へと命中する。

 視界に浮かぶグリーンの体力バーのじわりと削れた。

 

 オーグマーを通して疑似的に再現された衝撃に押されるように、そのまま距離を取って息を整える。

 

(やっぱり人と戦うと違う。テンポがモンスターよりも早い)

 

 打ち合った数合でわかる、経験値の差。

 アスナにはユウキの持っていない「対人経験」の深さがある。

 

 でもなんとなく気持ちでは負けたくなくてアスナをじっと睨んでみる。

 

 すると当のアスナはユウキをみてにっこりと微笑んだ。

 

「やっぱり強いね、ユウキちゃん。私の突きがかわせる人って血盟騎士団にも数えるくらいしかいないんだよ?」

 

「さっきからボクの攻撃全部かわしてる人に言われてもこまっちゃいますね」

 

「そこは年季が違うって事で。私、生還者(サバイバー)だから」

 

「さばいばー?」

 

「SAO経験者ってこと。あのゲームを最後までプレイして100層までクリアしたプレイヤーはそう呼ばれるの」

 

 100層。知っている、ヒロが木綿季に何度も聞かせてくれた。

 曰く、SAOは全100層からなる鉄の城だった、と。

 そこのプレイヤー、特にフロントランナーとも呼ばれる攻略組は他のゲームとは段違いの「濃い」経験を持っているんだと。

 

 特にオリジンではその経験値の差が顕著で、ソードスキルというシステムを覚えている生還者たちはとにかく技の出と、発動ラインのなぞりが上手いらしい。

 

「でも、それでもボクは!」

 

 

 

 

 

 

 アスナさんとユウキの戦闘が始まって2分が経過した。

 

 アスナ優勢ってとこか

 絶剣ちゃんも頑張ってる

 アスナ動きキレキレだなあ。リアルでもだいぶ動けるタイプ

 でもまあ常識の範囲内だよ

 本物の変態は歌姫の隣にいますからね・・・

 

「まだまだ二人の体力バーの色も変わってねえ。ここからだぜ、ここから」

 

「どちらもなかなか有効打が多い感じではないし……ねえヒロ、これってもしかして二人ともわざと回避を多用してる?」

 

「お、そこに気づくとはさすがだな」

 

 さっきからユウキもアスナさんも互いの攻撃をかわすことはあっても、剣で弾いてる場面はあまりない。

 弓がメイン武器だからで剣のことなんてよくわかんないだろうに、ほんとよく見てるな藍子は。

 

「ユウキにはあらかじめ教えておいたんだけど、ほら、SA:OってARゲームだろ?」

 

「そうだけどそれがどうかしたの?」

 

「ほら―――」

 

 オリジンのPvPは基本「回避」が主体なのだお嬢さん。なにせオリジンは少年が言う通りARゲームだからね。剣をそのまま振って相手の剣を受け止めようとすると「すり抜けて」しまうんだよ。相手がモンスターならいざ知らず実体のある人間だとどうしてもこうした現実に準拠するゆえの不自由さというのは出てきてしまうんだ。VRでは体は疲れないがARでは戦うと疲労するのはそうした不自由さの一端だと言えるだろう

 突然どうしたんだヨ

 長文解説ニキ!? 

 

「いや何何何何!? 突然どうした!?」

 

「そっか、剣を受け止めようとしてもARの中では止められてるのに現実では障壁がないという、私たちのアバターとリアルでの差異が出すぎてしまうんですね。だから二人は回避を……」

 

「ランも普通に流してるけど何いまの長文!? 今2回くらいに分けて送られてきてたよな!?」

 

 エクセレントだお嬢さん。ちなみにすり抜けが起きた時点で武器が持つ攻撃力が0になり、構えなおさないと戻らないようになっている。それは対人戦闘という極限空間においては明らかな隙となる。だから二人とも今は回避を主体にしているわけだね

 

「そうなんですね、団員さんありがとうございます」

 

「なんか団員に今からしようとした解説が取られてるんだけど、え? 何起きた今?」

 

 www

 一般通過長文解説ニキが団長の仕事を奪って言った瞬間

 元気出せよ

 

「おいこらぁ!? 慰めんな! おいてめえ今の長文解説団員出てこいコラァ! てめーの罪を数えろやァ!」

 

「ヒロ、せっかく親切で教えてくれたのにそんな言い方しちゃだめだよ」

 

「俺今過去一カブトゼクター寝取られた加賀美の気持ち理解してるよ」

 

 いつかカブトゼクターに認めてもらえるまで頑張ろうな

 12年後やんけ! 

 

「ホリゾンタル・スクエア!」

 

「片手剣4連撃! その軌道は知ってるよ!」

 

「む~~~ならっ!」

 

 そんなことを話していると、いつの間にかアスナさんとユウキの戦闘も佳境に入っていた。

 

「どちらも体力が半分を割ったな」

 

「アスナさんの方が1割くらい体力が多いかも。やっぱり、ソードスキルの知識量の差なのかな」

 

「だろうな。知識はイコールで……はっ!」

 

 コメント! どうだ! 

 

 長文ニキ警戒してて草

 いまはいないよ

 

 よし! 

 

「知識はイコールで強さにつながりやすいんだよ。特にオリジンだとソードスキルの軌道は決まってるし、スタート位置さえ覚えてればその後の剣の動きを見なくてもかわせちまう場合もある」

 

「……それって、攻撃にも言えるんじゃないの?」

 

 ランがちらりとアスナさんを見る。

 

「私たちってソードスキルを使う時、選択した後目で軌道をなぞって発動するよね。これがもし、見るまでもないくらい覚えてたらそれって……」

 

 ああ、うん。やっぱ藍子はかしけーわ。俺こんなのwikiで見るまで気づかなかったんだけどな。

 

「そこがユウキとアスナさんで差が出てる部分だ」

 

 ユウキは目で見てるが、アスナさんは体が覚えてる。

 この僅か一秒にも満たないであろう差が、二人の体力バーの多寡に出ている。

 

「でも、目で追ってるユウキの方が負けなきゃいけないなんて理由もない」

 

 二人の戦いを見守る。今の俺には、それしかできないから。

 黙って、行く末を見守るしかない。リーダーだから、俺にはその義務がある。

 

「そうだろ、ユウキ」

 

 

 

 

 

 

 戦いの中で、アスナが突然距離を取った。

 

 一瞬何をしているんだと眉をひそめた。

 次の一瞬で、なにかのソードスキルの予兆動作である可能性に思い至った。

 

 そして、1秒にも満たなかったその思考の間隙を縫って閃光の剣が駆け抜けた。

 

「フラッシングペネトレイター!」

 

「──っ」

 

 ヒロに「異常な反射神経」と言わせるユウキの動体視力で捉えられるギリギリの速度。

 回避は間に合わない。

 SAOの知識で迷いなくなぞられたその軌道をかわすことは不可能だ。

 

 ─アスナさんに勝つ方法? 

 

 ─そうだなあ。基本的に回避をして立ち回るのは当然だな。

 

 ─あとは、マジでどうしようもなくなったら思いっきり、ぶつかっちまえ。

 

 ─アスナさんも言ってたろ、ぶつからなきゃわからないこともあるってよ。

 

 ふ、とユウキが笑んだ。

 

「信じるよ、ヒロっ!」

 

 閃光の光芒。ユウキはそれに、()()()をぶち当てた。

 

 がちっと鈍い音がして、アスナの剣とユウキの剣の鍔―――正確にはリアルでのタッチペンの部分がかち合った。

 

「──やるね、ユウキちゃん。私のフラッシングペネトレイターをそう止められたのは、ユウキちゃんで二人目だよ」

 

「一人目じゃなかったのは残念だ、なっ!」

 

 オリジンでの戦闘は原則電池の内蔵されたタッチペンを手に持ち、それを武器に見立てて振るうのである。

 長さ15センチほどのタッチペンは片手で握ると少し余る程度で、対人において荒っぽいプレイヤーはそこを狙う。

 

 実体の武器がないARにおいて武器を止める唯一の方法、それがタッチペン同士を競り合わせることなのである。

 

 黒鉄と白金の剣が震える。

 

「負ける、もんか。ボクが、スリーピングナイツの代表で、ヒロの―――!」

 

 不意にアスナが口を開いた。

 配信で拾えるような音量ではない。ユウキにだけ聞こえる言葉。

 

「ユウキちゃんはすごく頑張れちゃう子なんだね」

 

「どういう、意味ですか?」

 

「だって、今私と戦ってるときもずっと一生懸命だった。この世界はゲームなのに、それでも」

 

 じっとアスナのお日様のような髪と同じ色の瞳がユウキを見つめる。

 

「きみが頑張れるのは、この前言ってたようにこの世界がもう一つの現実だからなの? それとも」

 

 ちらとアスナの視線が横に滑る。

 ユウキもつられて視線の方向に目を向けると、そこにはじっとこちらを見る幼馴染の少年がいた。

 

「彼がいるから?」

 

 どきり、と胸が跳ねた。

 

「きみはずっと誰かのために頑張れちゃうの? ずっと、ずっと」

 

 タッチペンが汗で滑る。

 次第に押し込まれていく剣を必死に抑えるが、限界が近い。

 

「それでも、きみは、私を置いて―――」

 

 限界だ、アニールブレードが押し込まれる。

 

 

「がんばれユウっ!」

 

 

 声が届いた。

 自分とよく似た、でもほんの少し違う、一番近くて、一番違うことが分かる人の。

 

「ラン、俺らは黙ってみてようってさ」

 

「もーそれかっこいいって思ってるの! いまユウがピンチなんだから声出して応援するのは当然でしょ!」

 

「……確かに。 うおおおおおおユウキ負けるな! 挿入歌とか流すか!? 俺のおすすめはブレイドの覚醒だぜ!」

 

「あーもう勝手なことしない!  曲に関して慎重になれってヒロが言ってたことでしょ!?」

 

 まーたやってるよ団長

 がんばれーユウキちゃんー

 絶剣ちゃん~~

 

 いつも通りだ。いつも通り。

 

 ヒロが馬鹿なことをやって、藍子(ラン)が呆れ混じれに注意して、そして団員たちがそれを見て笑ってる。

 

 偶然始まったことだけど、いつの間にかこの光景は木綿季(ユウキ)にとってとても大切なものに変わっていた。

 

 ふっと、ユウキの体から無駄な力が抜けた。

 

「悪いですけど、たぶんアスナさんはボクのこと誤解してます。ボクは……」

 

 ユウキがにぱっとお日様のように笑った。

 

「ボクは、アスナさんの探している人じゃないよ。ボクは、ボクだ」

 

「―――」

 

 ユウキ―――木綿季が思い出す、泣いてる誰かに手を差し伸べたぶっきらぼうな男の子のことを。

 

「ボクはユウキ。剣士で、姉ちゃんの双子の妹で、ヒロの幼馴染」

 

 そして、ずっと隣にいて楽しい思い出も、つらい過去も二人で分け合ってきた、大切な姉を。

 

「スリーピングナイツのユウキ。ボクは、ボクらはいつだって他の二人のために戦ってる。そして、団員のみんなとこの世界を全力で冒険してる」

 

 ユウキがアスナの剣を押しのけ、再び剣を構えた。

 

「だから、今ここでアスナさんに勝って、さらに先にボクらは行くよ!」

 

 自分たちはきっとそれでいいと、そう思った。

 ヒロが木綿季と藍子のために一生懸命なように、藍子がヒロと木綿季を応援してくれるように、木綿季もまた、ヒロと藍子のために頑張る。

 

 それが、スリーピングナイツ。

 アスナの言う「みんなのために頑張れてしまう誰か」ではない、彼女たちの答え。

 

 その答えを聞いて、いままでぽかんとしていた表情だったアスナも、耐えきれないといったように笑いはじめた。

 

「気持ちいいなあ、きみたちは。―――今私が優勢だと思うけど、それでも勝てる?」

 

「あれれ、アスナさん知らないの?」

 

 ひゅんひゅん、とユウキが剣を振る。

 

「ヒロが言ってたよ、戦いはノリのいいほうが勝つんだって」

 

 そして自分の背後に一瞬だけ目を向ける。

 そこにいる自分の名前を叫ぶ二人の仲間と、無数の団員たちへ。

 

「みんなに応援されてるボクは、いまさいっこーにノリノリだよ!」

 

 ユウキがアニールブレードを構えると、ダークブルーのライトエフェクトが剣に集まっていく。

 

 アスナもまたランベントライトを構え、刃に白銀の光を満たしていく。

 

 残りのHPから考えてもこれが最後の攻防だった。故に、選ばれたのはどちらも使い慣れた技。

 

「―――スラントっ!」

 

「リニアーっ!」

 

 閃光が走り、絶えざる意志にて剣が駆ける。

 

「―――」

 

「……」

 

 互いの全力と、技術と思い、そのすべてをぶつけあったその戦いは、最後の最後でほとんど互角のレベルに至った。

 

 それ故に、出たのは「経験」の差。

 

「まさか、胸鎧に当てさせられちゃうなんてね」

 

「ユウキちゃんの攻撃はよけれないってわかったから。だから、こうするしかなかった」

 

 そういったアスナの頭上のHPバーは赤色、それも指一本分残ってるかどうかという量。

 

 しかしユウキのHPバーは透明。つまりHPが1ポイントも残っていない。

 

「これだけの剣技に負けるなら、悔いはないや」

 

 ぺたん、とユウキが地面に尻もちをつく。

 

 

《 ASUNA WIN 》

 

 

 場にそぐわないほど陽気なファンファーレが流れはじめると、アスナが「これ何度聞いても慣れないなあ」とこぼす。

 アスナが地面に座り込むユウキに手を伸ばす。

 

「いい戦いだったね、ユウキちゃん」

 

「ユウキでいいよ、アスナさん。そう呼んでほしいんだ」

 

「……いいの?」

 

「もちろんっ! なにせアスナさんはボクの目標にしましたから!」

 

 アスナの手を借りて立ち上がったユウキが胸を張る。

 

「アスナさん本当に強くて、すっごくかっこよかった。ボクも、あなたくらい強くなりたいんだ。だから、目標」

 

「そ、それだったら私もアスナって呼んでいいけど」

 

「ダメダメ。アスナさんはボクにとっての超えるべき先輩なんだから。ヒロ風に言うとザンキさんみたいなものだから」

 

「ざん……何?」

 

「ボクはまだアスナさんを呼び捨てにできるほど強くないってこと!」

 

「その代わり」と前置きをして、ユウキが片眼を閉じてウインクする。

 

「ボクがアスナさんより強くなったら、ボクの方から頼むから。次は、()()()なしで本気でやろうね!」

 

「そこまでばれちゃったなら、仕方ないか。じゃあボス戦でたくさん経験値を積んで、早く私に追いついてもらわないとね?」

 

「うん―――って、ボス戦?」

 

「うん。推薦しておくから」

 

「で、でもアスナさんに僕勝てなかったし」

 

「? 私、勝てるくらい強いなら推薦するとは言ったけど、別に勝ったら推薦するとは言ってないよね?」

 

 ユウキが記憶を掘り起こしてみると、確かに「勝ったら推薦する」とは言われていない気もする。

 

「おつかれさまー、ユウ。惜しかったねー。アスナさんもありがとうございました」

 

「? ユウキどうかしたのか?」

 

 いつの間にかヒロとランがそばに来ている。

 ユウキが一先ず事の顛末を説明しようとすると、それよりも早くアスナが口を開いた。

 

「血盟騎士団とスリーピングナイツのみんな、この三人、次のフロアボス戦に参加するから応援してあげてね」

 

「はい?」

 

「へ?」

 

 マ? 

 おおお?! 

 Kob推薦枠……ってコト!? 

 マジかヨ

 

「そういうことだから、頑張ってね?」

 

「いや待ってェ! 俺らついていけてないんだけどぉ!」

 

 アスナの憂いのない笑顔のバックでヒロの悲痛な叫びが響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 アスナさんの推薦でフロアボス攻略会議への切符を手にした俺たちは都内の自然公園へ向かっていた。

 なんでも今日はここで会議の様子を配信しつつ、顔合わせもやるらしい。

 

 ただ問題は。

 

「ええと、ボス会議の場所ってこっちでいいんだっけ……」

 

「なんか目的地に行ける気がする!」

 

「待て、お前が我が魔王のように迷いなく進む時は8割で間違ってんだだから進むなユウキィ!」

 

 駆け出そうとしたユウキの襟首を掴んで止めると、むーと不機嫌そうに睨まれた。

 

「じゃあヒロはどーするのさ! 言っとくけど姉ちゃんは初めて行く場所だとあんま役に立たないからね!」

 

「ゆ、ユウ、私だって道くらい……」

 

「まあそれは知ってる。藍子方向音痴だしちょっと機械音痴気味だしで道に迷う要素しかないもんな」

 

「ひ、ひろぉ!」

 

 まあ問題はその藍子に頼り切りの俺たちなんだが。

 

「ま、そんな心配すんな。オーグマーはこういう時も優秀なんだ」

 

 ふふ、二人とも首を傾げてるな。まあみておれみておれ。

 こうしてオーグマーを起動して、と。

 

 ついでに二人とも視界を共有しておこう。

 あとは視界に……あ、いたいた。すんませーん。

 

「ん、君たちは放浪者だね。どうかしたのかな?」

 

「実はちょっと道に迷ってまして」

 

「ああ、ここか。そういえばここで迷宮の主の討伐会議をしてるんだったね」

 

「そうなんすよ。騎士サン、道ご存知ですか?」

 

「ああ、まかせて。こうした案内も僕の役割だ」

 

 騎士さんが先導して歩き始めたので、取り敢えず俺と騎士さんの会話を目を丸くして見ていた二人にニヤッと笑っておく。

 

「な、ナイトさんだよねいまの! なんで、ここゲームエリアじゃないのに!」

 

「すごい……本物なの?」

 

「ふっふっふっ、オリジンはこうしたリアルとの連携が魅力って前に教えたろ。

 あの人に限らず騎士はオリジンの外でもこうして街の中でマップを案内してくれるんだよ」

 

 それぞれのキャラで担当する場所は限られてるけどマップを呼び出せば簡易的なAIを積んだNPCが案内してくれる。

 確か人気なのはクエスト関係で関わるダークエルフとかなんだけど、まあ今まで騎士が常駐するほどデカい街に行ったことなかったユウキたちには物珍しかったかもな。

 

 しばらくして目的地についた俺たちは、案内した騎士さんにお礼を言って待ち合わせ相手を探す。

 

「待ち合わせしてるのって、二人だっけ?」

 

「おう。攻略会議参加の最低ラインが5人だからあと2人いったんだよ」

 

「ヒロの知り合いの人、なんだっけ。私たち大丈夫かな」

 

「というかヒロにこういうゲームでの知り合いとかいたんだねー。ボク、そっちのが意外だったかも」

 

「そうか?」

 

「うん! ヒロ、炎上して周囲に煙たがられてるイメージしかなかったし!」

 

「やかましいわ」

 

 事実だから手に負えねえ。

 

「ったく、まあちょっとした古なじみだよ。俺が今の配信チャンネルを作ったくらいからの関係でな」

 

 お、噂をすれば。

 

「ほらあそこにいる奴だよ」

 

 俺が指差すと、木綿季と藍子の目線もまた俺と同じところへ。

 

 

ピナっピナっ! みんなのドラゴンアイドルシリカでーす! みんなー今日もよろしくね

 

「……あんたいつまでそのロリキャラやんの」

 

「キャラじゃない! キャラじゃないから! リズさん根も葉もない罵倒やめてください!」

 

「や、だってあんたと初めて会った時から考えると今の年齢じゅうな──」

 

「アアアアアア〜〜〜〜! 聞こえないですぅ〜! そろそろシリカのロリキャラ無理あるよなw、とかいう掲示板のコメントなんか知りません〜〜!」

 

「そう……あんたがそれでいいならあたしは何も言わないわ」

 

「やめてくださいそのお母さんみたいな目! え、ピナなんでリズさんの頭に乗るの?! ピナのご主人様私だよ〜っ?!」

 

 ……。

 

「えーと、あの人なの?」

 

「なんか、ヒロの知り合いって納得する感じの人だね」

 

 ……これ知らない人って今からでも言えたり、あ目あっちゃった。

 

「その変なお面、もしかしてヒロ? わー、久しぶりー!」

 

「いや人違いですね多分。さ、ユウキ、ラン、さっさと本当のシリカを探そうぜ」

 

「いや人違いじゃないからぁ! 私、シリカです! デビュー同期だったでしょー!?」

 

 知らん知らんお前のようなやつ! 

 




 
《ユウキ》
アスナを目標に据えて努力することを決めた。

《アスナ》
ユウキを誰かと重ねていたらしいが、ユウキの清々しいライバル宣言に色々な思考は吹き飛んだ。

《ラン》
ユウキが負けたあと好物のオムライスを夕食に振舞った。

《ヒロ》
アスナに「ユウキちゃんもランちゃんにもいつも頼ってるんだし、きみも頑張らないとね?」と言われて、臨時パーティとして昔馴染みに声をかけた。

《シリカ》
企業に属さない個人系配信者としてはかなり名が通っている。
SAOをやっていた経験と本人の愛嬌、トークの回し方のうまさからしばしばコラボの司会などに呼ばれたりする。
が、そろそろデビューした13歳の頃につくったキャラが厳しくなり始めている17歳。
ちなみにヒロたちの一つ上である。

《リズベット》
シリカのチャンネルに時折出てくる姉御系鍛冶屋。
配信者ではないが、シリカとのコントのような掛け合いから一定数のファンがいる。


《長文解説ニキ》
とてもゲームに詳しい。

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