ギアス世界に転生したら病弱な日本人女子だったんだが、俺はどうしたらいいだろうか   作:緑茶わいん

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※入院期間は基準がよくわからなかったので適当です。


皇女の友人・リリィ 三

 結局、俺は三週間ほどの入院を余儀なくされた。

 弾の摘出も問題なく済み、費用はユーフェミアの実家持ちで行われた最先端医療の結果、身体にも痕は残らないで済んだ。

 ただ、養父と養母は必要以上に心配してくれて、退院後も一週間ほど家から出してもらえなかった。

 どうせ激しい運動なんて元からできないからって早めに退院できただけで、もっと入院していてもいいくらいなんだから、とのこと。

 

 一月ぶりに学園へ顔を出すと珍獣のような扱いを受けたが……これは元からか。

 

 事件のお陰でユーフェミアと内緒話がしにくくなったのと、ルルーシュ達に会いに行きにくくなったのも少々困りもの。

 後者に関しては「早めに家を購入し、人に貸して家賃収入を得る」とあらかじめ説明してある(実際給料から幾らか引いている)のでさほど違和感は持たれないだろうが、あまり頻繁に行くと怪しまれてしまうかもしれない。

 とはいえ、快復報告に立ち寄らないわけにはいかない。

 見舞いの品の整理も兼ねてと言い訳しつつ顔を出すと、主にナナリーと咲世子から飛びつかんばかりの勢いで迎えられた。

 ルルーシュからは烈火のごとく怒られ、C.C.からは嫌味を言われた。

 咲世子に抱きしめられ耳元で怒られながらルルーシュとC.C.の相手をするのは正直辛かったが、俺が無茶したのは完全なる事実なので重く受け止めるよりほかになかった。

 まあ、一番効いたのは、

 

「リリィさんが死んでしまったら私は悲しいです。ですから、どうか……」

 

 という、ナナリーの一言だったのだが。

 

 お説教の後は、なおも離してくれない咲世子に抱きしめられながら作戦会議。

 ここからはルルーシュが主導するというので、基本的には任せることにした。隠し事がほとんどなくなったので相談事がしやすくなったのはいいことだ。ルルーシュの頭の良さは俺なんかとは格が違う。彼が効率優先で非道な方法を取らないかを俺やナナリーがチェックし、時々疑問を挟む感じで上手く回った。

 結果、ひとまず行うべきことは、ユーフェミアに依頼しようとしていた内容と同じということになった。

 ロロに邪魔をされたせいで遅くなってしまったが、お陰で巡ってきたチャンスもある。

 

 ユーフェミアとはお互いお風呂タイム中に電話をかけることで相談して、なんとか了承を得た。

 そして、俺はクロヴィスとの対面を果たした。

 

 

 

 

 

「まずは礼を言おう。我が妹、ユーフェミアを守ってくれてありがとう」

「そんな、当然のことをしたまでです」

 

 さすが皇族というべきか、食事会で出されたメニューはどれも手が込んでいて、かつ美味だった。

 俺に出された料理は野菜多めのヘルシーなものになっているのも嬉しい。なお、当のクロヴィスは厚いステーキを美味そうに食べている。

 

「リリィ様には感謝してもしきれません。わたくしにできることがあったらなんでも仰ってくださいね」

「ありがとうございます。ですが、お気持ちだけで十分です」

 

 なんでもする、とか軽々しく言わないで欲しい。

 まあ、既にユーフェミアには無理を聞いてもらっているので、これ以上お願いをする気はないが。

 

「リリィには聞きたいことがあったのだ」

「? なんでしょう?」

「君の会社で作っているゲームのことだ」

 

 どうしてブリタニア皇族は我が社のゲームへそんなに注目したがるのか。

 ユーフェミアの護衛として来ているジノまで「これはいい」とばかりに目を輝かせている。

 妙な展開になったと思いつつ、クロヴィスからの質問に笑顔で答えた。

 

「まずは一作目だが、神話をモチーフにしつつ、ファンシーな絵柄で女性や子供を取り込み、かつ、コレクション要素や幻獣を育てる要素を加えることで長く遊べるようにと工夫もされている。いったいどのようにしてこのようなアイデアが出てきたのか聞かせて欲しい」

「下敷きとしてアイデアを出したのは私です。コレクション要素と育成要素を取り入れつつ、可愛らしいキャラクターを、といった部分は初期段階からありました。細部に関してはスタッフと会議を重ねてアイデアを出し、より面白そうなものを採用していった形です」

「ほう。会議というと、どのような形で行ったのかな?」

「我が社ではできる限り多くの人間の意見を聞き、全員で検討することを重視しております。新しいものを生み出すために先入観は邪魔ですから」

「それは素晴らしいな」

 

 クロヴィスは思いのほか細かく突っ込んできた。

 

「名誉ブリタニア人のスタッフを多く雇用しているのは、多様性を尊重しているからなのかな?」

「ええ、その通りです。もちろん、より広い範囲から集める方が安価に、優秀な人材が集まるという意図もありますが」

「良い物を作るためには妥協をしないか。良い心がけだ」

 

 思いのほか上機嫌でワインを傾ける彼はこうも言った。

 

「当初、君達のゲームを見た時は子供向けのお遊びという印象を拭えなかった。だが、二作目を目にしてから考えが変わったよ。一作目とは美術面の雰囲気をがらりと変えてきた。ああ、彼らは遊びでやっているんじゃない、人々を遊ばせるために本気で取り組んでいるのだ、とね」

「勿体ないお言葉です」

 

 要するにクロヴィスの根っこの部分は芸術好きの気のいい兄ちゃんなのだ。

 自分が金持ちだという自覚と、自分のセンスへの自信があるせいで高慢な部分も多々あるものの、好きな絵画や彫刻を思う存分愛でていればそれで幸せな人間。

 原作ではクロヴィスの死後、純血のブリタニア人以外の芸術家が評価されない現実が描かれていたが、どうやらクロヴィスは「誰が作ろうと良い物は良い」という性質らしい。

 それはそれとして当の作者が生意気な口を利いたら即行で処罰しそうなあたりは怖いが。

 

 ゲームの話からクロヴィスの芸術話へと話題が移行し(日本の美術品も集めているらしい)、それが一段落する頃には食後のデザートとお茶を楽しむ段になっていた。

 

「クロヴィス兄様。話が戻りますが、わたくしを狙った殺し屋については何かお分かりになりまして?」

「あまりご婦人の耳に入れる話題でもないが……当の本人とあってはそうもいかないか」

 

 機密に触れる部分もあるので詳しくは言えないが、と前置きした上でクロヴィスは話してくれる。

 

「軍で拘束し、尋問を行っているものの、だんまりを決め込んでいる。どうせ助けが来る、そうしたらお前達は殺されるかもな、の一点張りらしい」

「恐れながら殿下、拘束は十分に行われておりますでしょうか。その、彼には怪しげな能力があるようですので……」

「ああ。人の無意識に滑り込んで気づかれずに殺す技法、か。にわかには信じがたいが……」

 

 ギアス云々まで話すことはできなかったので「対象に時が止まったような印象を与える変な能力」程度にしか伝えてはいないのだが、軍部では暗殺者独特の技法と解釈したらしい。

 

「私には効果が薄かった点から信憑性はあると考えております。その、私は人と心拍数等が異なるでしょうから……」

「なるほど、心臓のリズムか。そう言われるとありえそうに思える。バックにいる者を突き止めるためにも専門家に意見を聞いてみるべきか……?」

 

 小さく呟くクロヴィス。

 上手いことロロに興味を持ってくれたらしい。

 そこですかさずユーフェミアが、

 

「お兄様。わたくし、あの殺し屋の方を見てふと思ったことがあるのです」

「なんだい、ユーフェミア」

 

 何か手がかりか、とでも思ったのだろう。

 顔を上げたクロヴィスは、次のユーフェミアの言葉を聞いて固まった。

 

「正体不明の殺し屋。マリアンヌ様の事件と共通する部分がありませんでしょうか?」

「ユーフェミア、それは……」

 

 ちらりと、俺に視線が向けられる。

 

「リリィ様も関係者です。それに、彼女は枢木ゲンブ首相暗殺事件について調べていらっしゃったそうなのです。ですから……」

「職業柄、未解決事件などについても調べる機会があったのです。物語を作るヒントになるかもしれませんので」

「しかし……いや、枢木ゲンブ暗殺事件?」

「ええ。あの件もまた、姿なき殺し屋の仕業でしょう?」

 

 実際は別人の犯行なんだが、符号する点はある。

 ロロの年齢的にマリアンヌ殺害当時は若すぎるんじゃないかという話もあるものの、ならば同様の殺し屋を複数飼っている者がいるのでは、といった発想に至るのは難しい話ではないだろう。

 思案顔になったクロヴィスは思考を打ち切るようにため息をつき、

 

「あの件については緘口令が敷かれている。それを今更調べるなど──」

「ですが、お兄様。このままではマリアンヌ様が浮かばれません」

 

 食い下がるユーフェミア。

 そう。

 俺が、というか俺達が彼女にお願いしたのは、マリアンヌ殺害事件に関する調査を主導して欲しいということだった。

 あの件はユーフェミアにとっても悲しい思い出。

 簡単にはうんと言ってくれなかったが、逆に言えば彼女にとっても心残り。一度やると決めてからは俄然積極的になってくれた。

 

「ルルーシュやナナリーのためにも、彼らと親しかったわたくしが真相を突き止めなければいけないと思うのです」

 

 まあ、ルルーシュもナナリーも生きているんだが。

 彼らのためであるのには変わりない。妹の真摯な表情から余計な情報を読み取るのはクロヴィスにも困難だっただろう。

 じっと見つめあう異母兄妹。

 やがて折れたのはクロヴィスの方だった。

 

「……負けたよ。私にできることなら協力しよう」

 

 よし、言質取った。

 

「本当ですか? でしたら、一つお願いしたいことがあるのですが」

「ああ」

「当時マリアンヌ様と接点があった方をどなたか紹介していただけないでしょうか」

「……そう来たか」

 

 クロヴィスの表情が真剣になる。

 

「その人物と会ってどうするつもりだい、ユーフェミア」

「お話を伺います」

 

 ユーフェミアはきっぱりと答える。

 

「それだけかい?」

「ええ。出版社に情報を売り込むですとか、お父様に直談判する、などというつもりはございません。少なくとも今のところは」

「今のところは、か。正直だな」

「大がかりな行動に出る前に、お兄様にご相談するとお約束します。もちろん、その方に危害を加えるようなこともございません」

 

 俺とユーフェミアじゃそもそも勝てるか怪しい。

 女性を紹介されたとしても俺が戦力にならない以上、単にユーフェミアとの一騎打ちである。

 危害を加えた後どうするんだって話もある。

 

「……もう一つ聞かせて欲しい。それはシュナイゼルの指示か?」

「いいえ」

 

 クロヴィスの視線がどちらかというとこっちに向いていたので俺が答える。

 

「私の婚約者は特派の主任ですし、私はシュナイゼル殿下とも面識がございます。ユーフェミアさまと仲良くするよう間接的にお願いされた立場でもありますが、直接指示を受けたことはございませんし、受けたとしてもユーフェミアさまを優先するでしょう」

「これはわたくし自身の意思です。お兄様、どうかお願いいたします」

 

 二人揃って頭を下げれば、皇子として紳士的に教育されているであろうクロヴィスは「敵わないな」と息を吐いた。

 そして、

 

「ジェレミア」

「はっ」

 

 控えていた青髪の若い軍人が進み出てくる。

 

「ならば、このジェレミア・ゴットバルトが良いだろう。この男はアリエス宮の護衛を務めていたのだ」

「まあ、そうなのですか?」

「はっ。その通りであります」

 

 敬礼するジェレミア。

 割と偉い地位にある人物のはずだが、よくこの場で警備をしていたものだ。皇族への忠誠心が高いものを選んだのか、あるいはマリアンヌの話になる可能性を予期して「こいつにも聞かせてやろう」と気を遣ったのか。

 いずれにせよ好都合。

 

「ありがとうございます、クロヴィス兄様。でしたら、ジェレミア卿を一日ほどお借りしても?」

「はっ。このジェレミア・ゴットバルト。可能な限りご協力することを誓います」

 

 

 

 

 

 マリアンヌやルルーシュ兄妹の話を出して情に訴えれば、クロヴィスは高確率で乗ってくると思っていた。

 皇妃の一人マリアンヌは庶民の出でありながら皇帝シャルルから唯一「本当に愛された」女性だった。また、なかなかに「いい性格」をしていたこともあって皇族・貴族からの印象はわりと真っ二つに分かれていたのだが、クロヴィスは大のマリアンヌ派だった。

 亡き彼女を慕い、総督府の屋上をルルーシュ達の住んでいた宮殿に似せているほど。

 

 ジェレミアもまた、皇族の中では特にマリアンヌへの思い入れが強い人物だ。

 護衛の任についていながら守り切れなかったことを後々まで悔いており、原作においてはそれを理由にルルーシュの味方についた。

 こちらもまた、話の持っていき方次第では味方につけやすい人物といえる。

 

 こうして、俺とユーフェミアはジェレミアという心強い協力者を得た。

 考えていた中でトップクラスに良い流れだ。

 協力者はジェレミアでなくとも、たとえば当時マリアンヌに仕えていたメイドで今は退職している人物とかでも良かったのだが、後のことを考えればこの流れはとても助かる。

 今日はもう寝るだけなので明日、ということで約束を取り付け、翌日、ジェレミアに俺の家まで来てもらった。

 

 ジェレミア自身が護衛になるということでジノには普通に授業へ出てもらい、申し訳ないもののメイドさんには部屋の外で待機してもらい、ジェレミアと()()を引き合わせる。

 

「ユーフェミア様、こちらでお話をすればよろしいのですか?」

「ええ。ただし、彼らと共に一つ作業をこなした後で」

「作業?」

 

 ルルーシュとナナリーに変装を解いてもらい、

 

「降霊術、ですわ」

 

 自信満々にユーフェミアが告げた。

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