ギアス世界に転生したら病弱な日本人女子だったんだが、俺はどうしたらいいだろうか   作:緑茶わいん

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白い魔女・リリィ 九

 少女達の歌声が響く中、戦場では無数の戦いが繰り広げられた。

 

 

 

 ナイトオブワン──ビスマルク・ヴァルトシュタインを討ち果たしたのは、枢木スザクとアーニャ・アールストレイムを中心とする面々だった。

 

『何度やっても無駄だ、私には未来が視えている!』

『だったら──!』

『視えてもどうしようもない攻撃をすればいいだけ』

 

 モルドレッドに装備された全ミサイルの一斉発射。

 気づいた時には逃げ場が無くなっているという、えげつないとしか言いようのない攻撃。アーニャはこの一撃のためだけに弾薬を温存していた。

 だが、ビスマルクはこれを凌いだ。

 ()()()()()()()()()()()()()という、なりふりを構わない防御手段にアーニャは驚愕、スザクは激昂したが、これによって両者の戦いは死闘へと移行した。

 

 結果的にスザクの『叢雲』は両腕を損壊、アーニャのモルドレッドは左手足を失いながら、辛くも『ギャラハッド』を撃墜した。

 アーニャのミサイル一斉発射によって他の敵機が一掃され、二対一の状況を作り出せたことが勝利の決め手となったと言っていいだろう。

 

 

 

 ルキアーノの親衛隊とコーネリアの戦いは皇女の勝利に終わった。

 

 数でこそ勝っていたヴァルキリエ隊だが、堅実かつ柔軟な戦い方を得意とするコーネリア、そしてギルフォードをはじめとする配下の者達の方が一枚上手だった。

 過酷な鍛錬の上と深い信頼の上に成り立った連携の前にヴァルキリエ隊の機体は一機ずつ確実に数を減らし、遂には全てが撃墜された。

 

『腕は良い。だが、まだまだだな』

『くっ……。私達の負けです。殺してください』

『馬鹿を言うな。お前達にはこれからのブリタニアを担ってもらわねばならん』

『ですが……!』

 

 戦いに負けておいておめおめと生き残るわけにはいかない、何よりも(ルキアーノ)が許さないと言う彼女達だったが、そのルキアーノもまた敗れたこと、生存したまま捕縛されたことを伝えられると投降した。

 

『奴を支えてやれ。それから、男の我が儘を諫めるのも女の甲斐性だぞ?』

 

 コーネリアの助言、あるいは忠告がどの程度影響を与えたかは、後になってみなければわからない。

 

 

 

 ナイトオブスリー──ジノ・ヴァインベルグとはカレン、ナオトの部隊が交戦した。

 

『裏切り者と負け犬の群れが、陛下にどこまで迷惑をかければ気が済むんだ!』

『迷惑を受けたのがそっちだけだと思ってるわけ!?』

 

 決戦において、カレンは特派製の『ランスロット』ではなく(広い意味で)日本系の流れを汲む『紅蓮』に搭乗した。

 近接戦闘において真価を発揮するカレンとオールラウンダーのスザク、それぞれの適性を鑑みた結果、機体を交換することになったからだ。

 「ウチのパイロットが乗るなら」と、ラクシャータが嫌がるのに構わず手と口を出したロイドによって更なる改造が施された『紅蓮』はカレン以外には扱えない尖った機体と化したが、それでもなお、ナイトオブスリーの実力は易々と超えられるものではなかった。

 

『カレン・シュタットフェルト! シュタットフェルト家の女は、どこまでも私達の邪魔をする!』

『わからないわね! あの義姉さんに暴力で挑もうなんて!』

 

 ジノの乗騎『トリスタン』には原作で備わっていた可変機能はなかったものの、それでも変幻自在の戦法は変わらない。

 豊富な武装を用いて手を変え品を変え、同じ攻撃を二度繰り返すことなく、それでいて手は緩まない。

 さすがのカレンも武装を一つずつ潰され、だんだんと追い詰められていく。

 そして、

 

『妹を……やらせるか!』

『何!?』

 

 トドメを刺されるという瞬間、ナオトの乗る量産試作型『紅蓮』が割って入った。

 コクピット付近を大きく損壊して崩れ落ちるナオト機。だが、これがジノにとって大きな隙を生んだ。

 

『よくも!』

 

 付近に落ちたナオトの武器を拾い上げてジノに逆襲。

 勝利を収めた彼女は荒くなった呼吸を整えながらジノに告げた。

 

『大事な人なら、間違ったことした時は間違ってるって言ってやりなさいよ。うちの兄姉は聞いてくれるけど、あんたの大切な人はそうじゃないわけ?』

 

 なお、ナオトはなんとか無事だったが、心配を怒りに変えたカレンにひっぱたかれて頬に大きな腫れを作ったとか。

 

 

 

 藤堂鏡志朗は旧日本軍を中心とした部隊を率いて戦いを繰り広げた。

 原作における名ありキャラとは当たらなかったようだが、未登場の人物が全員『特筆することのないモブ』というわけでもない。

 ブリタニアの兵士自体、一人一人が十分な練度を持っており、それを大量に相手するというのはエース同士の一騎討ちとはまた違った緊張を強いられる。

 

『ブリタニアの犬が! 俺達の味わった痛みを思い知れ!』

『馬鹿者! 我らは反乱軍ではあるが、悪の軍勢ではない! 敵味方問わず一つでも多くの命を残せという、スザク殿や神楽耶様のご意思を忘れたか!』

 

 共同戦線を張っていたとはいえ、日本人とブリタニア人の間の確執がなくなったわけではない。

 個人レベルで打ち解けた者は多かったが、それでも、恨みを募らせる者はいる。そうした者を時に叱りつけ、作戦目的に立ち戻らせる必要もあった。

 

『隊長は、これでいいんですか!? こっちについた奴らだってブリタニアです。また同じことの繰り返しになるだけじゃ──』

『信じるしかあるまい。あの、ブリタニアの象徴と言うべき皇帝を否定してみせた若い力を』

 

 なお、この作戦には藤堂を慕い、それとない(それとなさすぎる)アプローチを続けるとある女性も参加していた。

 

『……千葉。この戦いが終わったら話がある。生き残れよ』

『っ。はいっ、必ず!』

 

 幸いなことに、この会話はフラグにならず、二人ともきっちり生き延びた。

 藤堂は「あの藤堂さんもついに年貢の納め時ですか」などとさんざんからかわれたらしいが。

 

 

 

 

『前に出すぎだぞヴィレッタ、戻れ!』

『申し訳ありません。ですが、私はこの戦いで一つでも撃墜数を稼ぎたいのです!』

 

 ジェレミアとヴィレッタは元エリア11駐留軍の中心で戦った。

 日本という土地に慣れていることもあってか、彼らの挙げた戦果も目ざましいものがあった。

 

『だが、命を落としては元も子もなかろう。何事もバランスが重要だ』

『それはそうですが、私もジェレミア卿のように出世をしたいと──』

 

 ヴィレッタ・ヌゥは貴族への憧れを強く持っている。

 生まれが低かった彼女にとっていい暮らしをするには手柄を立てるしかない。身近で一番の出世頭であるジェレミアを羨み、自分もと願うのは当然ともいえる。

 だが。

 ジェレミアは息を吐いて部下を窘めた。

 

『貴公とて、同僚から見れば十分に羨望の対象だろう?』

『まさか、そのような……』

『ユーフェミア様の護衛を務めていたではないか。あの方はまだ騎士を決めていない。同性ということもある。剣を捧げさせてくれ、と言えば案外すんなり受け入れてくれるかもしれんぞ?』

『そう、でしょうか』

 

 だが、この言葉はヴィレッタにとって一つの救いとなった。

 彼女は部隊においてジェレミアに次ぐ戦果を挙げ、戦いの功労者の一人として大きく名を残すことになった。

 

 

 

 ノネット・エニアグラムとモニカ・クルシェフスキーはナイトオブフォー──ドロテア・エルンストと交戦した。

 女性としては最高位のラウンズであるドロテアはノネットとモニカにとって格上。

 

『ドロテア様! 皇帝陛下は乱心されています! どうか剣を収めてください!』

『悪いが、それはできない。私はナイトオブラウンズとして最後まで忠義を尽くす』

『ここで死ぬとしても、か?』

『……命がけで来い。ここは戦場。死んだのなら、その者の運と実力がなかっただけのこと』

『ならば!』

 

 なおもラウンズとして在ろうとするドロテアは、己の正義を貫くことを決めたノネットとモニカにとって超えなければならない壁だった。

 ビスマルク、ジノに次ぐ実力者と彼女の駆る『パロミデス』は強敵だったが、勝ったのはノネット達の方だった。

 

『見事だ。トドメを刺すがいい』

『申し訳ありませんが、それはできません』

『救える命は救えというのが、我が主の命令なのでな』

『そうか。命令ならば仕方がないな』

 

 ドロテアはそう言っておかしそうに笑ったという。

 

 

 

 

 

 神聖ブリタニア帝国本国軍は主力部隊の半壊およびナイトオブラウンズの全滅をもって降伏を宣言した。

 本国にいる皇帝シャルルは断固とした戦闘継続を命じていたが、ラウンズらの敗北によって指揮権限を得ることになった男はそれに従わなかった。

 

「安全な場所で非道な命令を出す者と、戦場に出ながら理想を説く者、どちらが王に相応しいかは瞭然でしょう」

 

 なんでも皇帝は戦時徴集による兵力の増加と、自爆装置だけを積んだKMFとも言えないKMFの量産、それによる特攻まで計画していたらしい。

 撤退ではその計画が実行に移されてしまう。

 だからこそ、ここで降伏するしかないのだという。

 

「とはいえ、民とて愚かではありません。殺されるとわかっているなら、殺してでも王を止めようと動くでしょう」

 

 彼の発言は事実となった。

 本国軍の降伏が発表され、シュナイゼルによる皇帝への降伏勧告が出されると、本土では民衆によるクーデターが起こった。

 鎮圧しようにも軍の主力はエリア11に送られており人手が足りない。

 ブリタニアは「怒る民衆を止められない」という、始まって以来の事態に直面した。

 

「放っておくわけにもいかない。我々で鎮圧部隊を出すとしよう」

 

 もちろん、俺達が鎮圧するのは皇帝派の残存勢力だったわけだが。

 ルルーシュとナナリー、ユーフェミア、それからまとめ役のクロヴィスを除く皇族が部隊を率いて本国へと赴く中、俺は当然ながら日本に残ることになった。

 皇帝が敗れるところを目撃できないというのは少々不安だが、十中八九、あの男は精神世界に逃げ込むはずだ。そんな場所にコードを持ってのこのこ出て行ったら「ラグナレクの接続をしてください」と言っているようなものである。

 よって、俺は安全なところにいるに限る。

 

「後のことはお願いいたします、シュナイゼル殿下」

「任せてくれ。さすがにこれ以上は君達の手を煩わせられないからね」

 

 もし皇帝が見つからないようなら古代の遺物を探して破壊してください、とお願いした上でシュナイゼル達を送り出し、ハラハラしながら待つこと約二週間。

 

『皇帝シャルルを捕らえ、我々反乱軍は勝利した。我々はここに、神聖ブリタニア帝国の再建を宣言する』

 

 無事に戦いが終わったという報が俺の元にも入ってきた。

 結局、皇帝は引きこもりを敢行していたものの、同行していたV.V.からの嘆願および助言もあって部隊が突入。

 不老不死ではあっても、単独では「単なるガタイのいいおっさん」でしかない皇帝は複数人がかりで拘束され目隠しをされ、遂に玉座から引きずり下ろされることとなったらしい。

 それでも、誰もこない世界で餓死と蘇生を繰り返す生活よりはだいぶマシに違いない。

 

 しばらくは国内がゴタゴタするだろうが、盛大な内輪もめをしたにしては人的被害はかなり少なかった。

 

 こちら側が「できるだけ殺さない」という戦いを徹底していたお陰だ。

 おかげで周辺諸国も簡単には手を出せない。じゃあ手薄になった日本を、とやるのもブリタニアが出てくることを考えれば同じことだ。

 

 新しい皇帝には、ちゃっかり生き残っていた第一皇子オデュッセウスが就くことになるようだ。

 内乱の前も最中も目立った動きは何もしていなかったに等しい彼だが、だからこそヘイトらしいヘイトも受けていない。

 ブリタニア皇族としては珍しい温厚な性格なので、前皇帝シャルルのイメージを払拭するのにも丁度いい。

 周囲から「是非王座に」と望まれていたシュナイゼルは「柄じゃないから」とあっさりとお断りしたらしい。確かに、シュナイゼルにはナンバーツーの方が合っているかもしれない。あの男に本気で国家運営されたら殆ど誰も勝てないし。

 

 で、唯一勝てそうな元皇子様はというと、

 

「いっそ王にならないか、という話もあったそうじゃないですか」

「ええ、まあ。でも、そんなの断るに決まっているでしょう? 柄じゃないというなら俺の方が柄じゃないんですから」

「みんなの前で演説するルルーシュさんはとても格好良かったですが」

「よしてください。俺はこっちでスザクのサポートでもしますよ」

 

 なんでシュナイゼルの誘いを断ったのか尋ねるとこんな感じだった。

 皇族に戻してくれる、という話も同じように断ったらしい。まあ、ブリタニアの皇族が継承権を持ったまま日本の重職についてたらいろいろおかしいから仕方ないんだが、一方、ナナリーは皇女の地位に戻してもらったという。

 

「人質は俺だけで十分ですからね」

「ナナリーさんを本国へ?」

「いいえ。ブリタニア系の学校なら日本にもあるでしょう?」

 

 留学という扱いでアッシュフォード学園に再び通うらしい。

 ユーフェミアも引き続きこっちにいるらしいので、ちょうどいいだろう。問題は皇女になった以上は護衛が必要なことだ。

 世話係と護衛を兼任できるうえ、旧知の仲である咲世子にナナリーはご執心らしく、咲世子としても全く無下にはしにくいとあって、どうしたものかと悩みの種になっている。

 

 もうすぐ俺は卒業なので二人いっぺんに世話してもらうのも難しいし、

 

「リリィの騎士なら私がいる」

「いえ、その。とても嬉しいのですが、元ラウンズを顎で使うのは周囲の目が気になるといいますか……」

 

 アーニャの立場をどうするのかも悩ましいところである。

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