シスコンな双子の兄が姉になりたい妹のために弟になった話 作:名も無き二次創作家
暇つぶし程度に読んでってね。
「まって、姉さん」
昼下がり。
木組みの家と石畳の街の一角。
少年の慌てた、しかし透き通った心地よい声音が響く。
「はやくはやく~!」
少年に『姉さん』と呼ばれた少女は回転し、花のような笑顔で振り返る。
そのまま伸ばした手で少年の腕を掴み、あゆみを止めずに呟いた。
「これからはじまるんだ。私たちの新しい生活が……!」
◇◇
春休みも後半に差し迫った、多くの新入生が期待に胸を膨らませる季節。
街中を物珍しげに歩く双子の
それもそのはず。
彼女たちは昔この街を気に入り、山を越えてはるばるやってきた訪問者なのだ。
そして高校生活という貴重な3年間を過ごす新たな住人でもある。
「綺麗な街並みだね~」
双子の姉が感嘆の吐息を漏らす。
小さい頃に訪れたこの街を気に入ったのも、そしてこの街の高校に通いたいと言いだしたのも彼女だ。
大好きになった街の相変わらずな景観にはテンションがあがるのもしかたないだろう。
記憶のとおりだ~!と、純粋に喜んでいた。
「そうだね、姉さん。とても絵になるよ」
対してこちらは姉が心配でついてきた双子の弟だ。
この街にもたいした思い入れはなく、あったとしても“姉と来たことのある場所”くらいだろう。
証拠に、この綺麗な街並みを“姉の背景”として指フレームに収めひとり頷いている。
絵になるとはつまり、姉の背景として相応しいということだった。
「姉さん。長旅で疲れてない?駅からもけっこう歩いてきたしそろそろ休憩する?」
「だいじょーぶ! まだまだ元気だよ。あ、うさぎ!」
弟からの心配などなんのその。
野良うさぎを追いかけようとする姉。
「ちょ、まってよ姉さん!」
そのままあっちを曲がり、こっちを曲がり、坂を下って上ってぐるぐる回り、最終的にうさぎを見失った。
「はあ、はぁ……、疲れた」
「でも、おかげで地理がだいたい把握できたね。さすが姉さん」
「え? で、でしょー」
弟はすべて姉の計算通りだと思っているが、無論そんなことはない。
ただの偶然。
姉はうさぎに夢中で地理など確認していない。
そんな彼女の気を引く物が再び視界に飛び込む。
カフェの看板だ。
「喫茶店……『ラビットハウス』……」
またもやうさぎ。
彼女は猫カフェならぬうさぎカフェを頭の中で思い描き、興味を完全に持って行かれた。
「そこの喫茶店で少し休んでいこう」
姉の視線にめざとく気付いた弟。
もちろん入る気満々だった姉は快諾し、2名様ご来店。
「うっさぎ~うっさぎ~♪」
「すみません、空いてますかね」
店内はシンプルで落ち着いており、ターゲットは双子のような若者じゃないことがうかがえた。
イメージ的にはダンディーで渋いマスターが黙って注文通りに動くだけの、静かで隠れ家的な喫茶店といったところだろうか。
すわ場違いか?という弟の危惧も杞憂に終わり、予想を360度裏切る幼い少女の声が聞こえた。
正確には180度だがいいたいことは理解してくれたと思う。
「いらっしゃいませ。空いてますので席にご案内します」
内装のシンプルさからは到底考えられないというか、最も遠い存在のひとつだろう。
それは渋い内装のこの店のスタッフとしてはあまりにも幼すぎた。
小さく細く、そして美しかった。
それはまるで妖精だった。
「…………うさぎがいない!?」
しかしうさぎに気を取られていた彼女はその店員に気付かない。
うさぎと戯れながらコーヒーを飲めるものだと信じて疑わなかった彼女にとって、混乱するに充分な理由だった。
「(なんだこの客。)うさぎなら一応ここにいます」
「……もじゃもじゃ」
「アンゴラうさぎっていう品種だよ、姉さん。どうやら店名にラビットと入っているだけでうさぎと戯れられる喫茶店ではないみたいだね」
「そんな~……」
「なるほど。お客様はウチを猫カフェの亜種だと思われていたのですね……」
姉と幼い店員2人同時に説明を果たせた弟は、うなだれる姉をエスコートしてカウンター席に並んで腰を下ろした。
「ご注文は」
「じゃあ、そのうさぎさん」
「非売品です」
「せめてモフモフさせて!」
どうしてもうさぎを堪能したかった姉が食い下がり、交渉の末コーヒー1杯につき1回モフれることになった。
「すみません、店員さん。姉は好奇心が強くって……」
「……なにごとにも無関心な人よりいいと思います」
「そうなんですよ!好奇心とはつまり探究心。それが強いことも姉さんの魅力の1つなんです。まあ、これは姉さんの魅力のほんの氷山の一角なんですがね!」
「(こっちも大概だった……)」
黙ってコーヒーを啜り、かと思えば急に見当違いな品名を答える。
きゃあきゃあと騒ぎながらうさぎをモフモフする双子の姉は、意図せずたった一人でこの喫茶店を賑やかにしていた。
弟にとってはいつもの光景で、店員にとっては異世界の光景だった。
ただ、どちらにとっても眩しいものであることに変わりは無かった。
コーヒーを飲み終わりうさぎもモフり終わった彼女は、窓の外をみながらそっと世間話を始める。
「私たち、春からこの町の高校に通うの」
「はあ」
「でも迷子……じゃないけど下宿先がどこかわからなくなっちゃって。香風さんの家って知ってる?」
「この近くのはずなんですが」
「…………香風はうちです」
「「え!?」」
偶然入ったお店が探していた下宿先だった。
双子にとっては嬉しいサプライズだ。
しかし店員にとっては微妙だった。
こう、なんというか。
悪い人達ではないのだろうがちょっと変わっているというか。
姉はうるさいし弟はシスコンだし。
端的に言って少し不安。
しかし拒否反応が出るほどでもない。
そんなこころ持ち。
「私はチノです。香風智乃。ここのマスターの孫です」
「私はココアだよ。保登心愛。よろしくねチノちゃん」
「僕はジュン。保登純。これからよろしくね」
客と店員の関係から同居人の関係に変わったため、彼の敬語が取れた。
「おふたりは双子、ですよね?」
髪や瞳の色、顔はもちろんのこと。
身長まで同じの男女がいれば誰だってそう思う。
「うん。私がお姉ちゃん!」
「僕が弟だよ」
元気な姉と静かな弟。
どちらが大人っぽいかというと。
「兄と妹の間違いじゃないんですか?」
喫茶店の店員改めチノが、つい口が滑らせてしまう。
慌てて口を押さえるチノだが、全く気にした様子のないジュンが口を開く。
「
「……?」
チノはなにもわかっていない。
ジュンの早とちりだ。
「戸籍上は僕が兄なんだよ」
「……え?」
チノの理解がまるで追いつかない。
若干無表情気味のその顔に“あなたが何を言っているのかわかりません”と書いてある。
「つまりね、双子の兄だった僕は姉になりたいと言ってきた妹のために弟になったんだよ」
「???????????????」
ごちうさではココアが最推しです。
三人称にしたけどオリ主の一人称も捨てがたいからそういう回もつくるかも。
ココアかわいい。
オリ主の名前の由来。
ココアパウダーには2種類ある。
調整ココアか純ココアかだ。
前者は砂糖やらなんやらが既に入っており既に甘い。
純ココアは入っていないためまだ苦い。
一見調整ココアの方がごちうさのココアに合っているように思うが、調整は既に甘さが決まってしまっている。成長の余地無し。
純ココアは入れる砂糖などの量によって甘さが自由自在。
また、純ココアの別名はピュア・ココア。
まさにココアちゃん。
よって純→ジュン。