シスコンな双子の兄が姉になりたい妹のために弟になった話   作:名も無き二次創作家

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お待たせしました。


サニーサイドアップ、ぷるんぷるん

季節は春の暮れ。

今日も大人は労働に勤しみ、子どもは学び舎に通う。

 

学び舎と言えば、双子の通っている高校の方針には特殊な方針がある。

それは「下宿している者は下宿先に奉公するべき」というものだ。

ジュンもその姉も、放課後はいつも下宿先であるここラビットハウスでバイトをしている。

普段は上がる時間も全員同時なのだが、たまに豆の袋を物置から持って来る等の力仕事でジュンだけ遅くなることがある。

ちょうど今日もそんな感じで、ジュンだけ上がるのが遅くなった。

そしてそんな時は決まって姉のココアに「チノと先にお風呂はいっちゃって」と伝えるのだ。

 

つまり、ジュンは今姉と別々に入浴をしていた。

 

「……」

 

彼にとって、姉がいなければ風呂でゆっくりする意味も無し。

無言で素早く身体を洗って拭き、湯船に浸かる間もなく脱衣所に戻りパジャマを着る。

彼は双子の姉であるココアの世話をするのが生きがいなのだ。

別に自分のことに頓着がないとは言わないが、疲れているときには扱いもテキトーになる。

 

「(これからパパッと宿題片づけて早く寝て、明日の朝に最高のコンディションで朝食を作ろう)」

 

食事は姉の身体を内側から作り整える大事な要素なので、ジュンにとって優先度はそこそこ高い。

なんにせよ先ずは宿題を片付ける必要がある。

そう思いながら自室の扉を開けると────

 

「Zzzzzz」

 

ココアが寝ていた。

この光景は、ジュンにとって珍しいことではない。

 

「(実家でもこんなだったなあ)」

 

双子だったというのもあり、彼等は実家では相部屋だった。

当然一部屋にベッドを二つも置けるわけがなく、「二段ベッドを買うか」という両親の提案も「別にいいや」の一言で撥ねられ、小さい頃から寝床は1つだけだった。

言っておくが、彼等がお金の面で苦労したことはない。

家が貧乏というわけではないのだ。

だが、兄2人と姉2人、そしてジュン本人。

合わせて5人。

5人の子どもになんでもかんでも買い与えていては流石に家計が破綻することはジュン達も子どもながらに理解していた。

……というのは理由の半分にすぎないだろうが。

 

子どもにとって同じ布団に入るということは、寝る時間になって部屋の電気を消しても一緒にいるという事だ。

小学生の頃は親に隠れて夜更かしをして、くだらない話で笑い合った。

中学の頃はジュンが姉の健康面を気にして夜更かしこそしなくなったものの、互いの手を握らないと寝られない癖が付いてしまっていた。

その癖が直ったのも実はこの街に来る直前だったりする。

 

あの頃(と言ってもほんの数ヶ月前だが)を懐かしみながら、物音を立てないように入室する。

そのまま彼はベッドに近寄り——

 

「……姉さん、可愛い」

 

頬を(つつ)いた。

サニーサイドアップの黄身を、膜を破らないように触るかのような手つきで。

人間は単純作業を繰り返しすぎると精神が壊れるという。

だが、彼にはこの「姉の頬を(つつ)く」という単純作業を10年だろうが100年だろうが笑顔で続けられる自身があった。

 

ふにゃふにゃとだらしなく表情を緩めているココア。

実は彼女は、寝る前に少しだけ弟と雑談をしにここへ来ていたのだ。

話したいことが沢山あったのに、バイトを上がる時間がズレて話す機会が無くなったのが不満だったのだろう。

だが、待つ間に弟の匂いが染みこんだ布団に誘われて、つい身を委ねてしまったのだ。

その後は見ての通り。

完全に寝落ちしてしまっていた。

 

愛する姉の幸せそうな寝顔を眼球と脳髄に刻み込んでから、女性の寝顔をまじまじと見るわけにもいかないと思い、そろそろ宿題に取りかかろうと手を離そうとする。

 

「あっ」

 

布団の下からの伸びてきた手に、引っ込めようとしていた彼の手が取られた。

 

「ジュンくぅん……チノちゃん……えへへ」

「姉さん……」

 

あまりにも幸せそうに笑うココア。

こうなると、ジュンは姉の手を振り払えなくなる。

明日提出するべき白紙の課題が入った学校指定の鞄。

机にもたれ掛かるようにして床に置かれたそれに伸ばしていた掴まれていない方の手を、諦めて降ろす。

 

「あーあ。先生に怒られちゃうなあ」

 

そう呟いた彼の顔には、台詞とは裏腹に「この世で一番幸せです」と書いてあった。

季節的にも気温が安定して暖かいため、彼も彼女もこのまま夜を越して問題は無い。

風邪を引く心配はしなくて良いだろう。

ただ、このまま夜を越すには前言を撤回する必要がある。

彼は先ほど、「女性の寝顔をまじまじと見てはいけない」といった。

だから宿題に移ろうとしていたのだが、それが出来ない状況になってしまった。

この体勢のまま手に取れる物は特にない。

このままでは彼は、寝るまで手ぶらで過ごさなければならない。

ココアはリラックスして寝落ちしているようだが、高校生が寝るにはまだ早い時間だ。

あと2時間ほど経てば日付も変わって眠れるだろうが……。

 

「(ごめんね、姉さん)」

 

というわけで、大義名分を得た弟は姉の綺麗な顔を眺め直すのだった。

床に膝をつき、ベッドに頬杖をつき、じっくりと。

 

 

 

 

翌日

身体がガッタガタになった優等生が変な挙動で、しかし緩みきった顔で宿題忘れを告白するという珍現象が起こってしまい、担任教師を困惑させたという。

 

 

 

 

 




久々だから短めになったしまった。許してください。
使えそうなネタをメモしてたんですが、時間が経ちすぎてそのメモ見ても全然情景が浮かばなくなって、全て使えなくなりました。
なので逆に1つのネタを膨らませる練習。
今回は「風呂から出たらベッドで姉が寝てた」というだけの話です。
本当は弟のジャージも姉に着せたかったけどネタの割りにはダシが薄くなりそうで勿体なかったので違うシチュエーションの時まで取っておくことになりました。
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