シスコンな双子の兄が姉になりたい妹のために弟になった話   作:名も無き二次創作家

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リハビリ二日目。
まあまあ感覚取り戻せて来たんじゃないかな。


雨の日の帰路

「私の友達に傘を貸してくれたんだってね。ありがと、ジュンくん」

「ああ、うん。困っていたみたいだったから」

 

つい先日、かなり強い雨が降った。

その日は平日で学校があったが、天気予報によって殆どの生徒は朝からそうなることを知っていた。

だからその生徒達は傘を持参していた。

 

逆に言うと。

一部の生徒達は傘を持ってきていなかった。

というのも、その日の朝は雲一つ無い快晴だったのだ。

その暖かな日差しに騙されて、「今日は晴れだ」と思い込んでしまった者達が確認作業の大切さを身に沁みさせたという。

 

「それに、肝心な時に持っていないんじゃあどうしようもないし」

「今日も雨だったなんてねぇ……」

 

天気予報はあくまで予報であって予知ではない。

毎朝こまめに確認したとて、逆を付かれることは希にある。

 

現在、下校時刻。

場所は下駄箱の先にあるエントランス。

双子の眼前にはしとしとと天から落ちる雫群。

手には鞄のみで、傘は無し。

薄暗い外の景色をボーゼンと眺めながら、ジュンはこの窮地をどう乗り越えるか思考を巡らせていた。

 

「(今日もラビットハウスの手伝いがある。あまり遅れるわけにはいかない。……けど、姉さんを雨に打たせるわけにはもっといかない。どうすれば……)」

「あ、ココア。弟と一緒なんだ」

「(鞄を傘代わりにして走って帰る? でもここからラビットハウスまでの距離じゃあそれも意味無いくらい濡れるだろうし……)」

「今日も喫茶店のお手伝いか?」

「(今日は体育があった。僕のジャージを姉さんに被せて……いや、それだと僕が濡れる。姉さんは優しいから僕が濡れるのを嫌がるはずだ)」

「そうなの! でも、傘忘れちゃって……」

「じゃあ私の貸すよ。この前のお礼」

「え、いいの?」

「友達と待ち合わせしてるから。そいつの傘に入れてもらうわ。弟くんもこの前はありがとねっ! じゃあまた明日!」

「(まず一番は姉さんが濡れないようにすることが大事だけど、だからといって自分を疎かにするわけにもいかない。どうすれば……)」

「やったね、ジュンくん……ジュンくん?」

「え、ああ、なに? 姉さん」

「傘貸してもらえて良かったねって」

「……いつの間に」

「もしかしてまたボーッとしてたの?」

「すみません姉さん」

「もー、お姉ちゃんがいないと全然駄目なんだから」

「そうだね。僕は姉さんがいないと生きていけないかもしれない」

「生きて……て、それはちょっと大袈裟だよ」

「それぐらい姉さんが頼りになるってことだよ」

「なにそれ」

 

くすくすと口に手を当てて笑う姉。

それを見た弟は困った顔になって、「別に大袈裟じゃあないんだけどね」と聞こえないように呟いた。

 

姉離れできそうにないという点で、ジュンは本当に困っていたりする。

モカという上の姉が実例として身近に居る分、余計に。

 

 

 

ところで。

傘一つで人間2人が濡れずに帰るには工夫が必要だ。

 

 

 

◇◇

 

 

 

とある高校付近の道にて、一つの傘に無理矢理入るため肩を寄せ合わせている男女がいた。

 

「ジュンくん、濡れてない?」

「……まあ、少し濡れてるけど。でもこれ以上は詰められないよ」

 

少女は既に少年の左腕を抱きしめて、少しでも非密着部分を減らそうと試みている。

だがそれでも男の肩は傘から少しだけはみ出していた。

少女用の傘だったので、サイズも控えめなのだ。

 

少女の胸は高校生らしからぬほど豊かで、服の上から見て分かるくらい膨らんでいる。

そんな彼女に抱きしめられている少年の腕は、当然その胸に押し当てられていた。

衣服の中でも硬い部類の制服と、硬いブラ。

それらを容易に貫通して少年の触覚を刺激する柔らかさ。

勿論腕も、いや全身が柔らかいのだが、それと比較してもなお異次元の触り心地を発揮する少女の胸に、少年は悶々としていた。

だが彼は、自分に対してこの少女を性的な目で見ることを許していない。

あくまで家族として愛しているのであって、情欲を向けることなどあり得てはならないのだ。

幸い雨が降っていると言うことで外気温が低く、勃つのを抑えるには向いている環境ではある。

あと、少女が楽しそうというのもある。

少年の肩が少し濡れている事には少し申し訳なさそうにしているが、それ以上に引っ付いて下校できていることが嬉しいのだ。

その様子を見て、「このまま我慢しきるぞ」と内心で決意を新たにした。

 

「あ、そうだ。いいこと思いついた」

「なに? ジュンくん」

「僕が姉さんをおんぶするよ」

「え」

「その代わり姉さんが傘持ってね」

「え、」

「片手で傘持って、反対の手でしっかり僕に掴まって。ちゃんと腕回さないと危ないから」

「え、え、」

「安全性を考えてジャージでおんぶ紐的な何かを作ろう。勿論それだけじゃ危ないから右手でも支えるよ。失礼します、姉さん」

「え……あっ」

「左手で鞄持つよ。姉さんのも貸して」

「あ、うん」

 

彼にしては珍しく、少女の意見も訊かずに勝手に決めてしまった。

そしてあっという間に少女をおんぶして縦……というか上下に並び、小さい傘の下に高校生二人が入ることに成功させた。

少年は「こういうこともあろうかと!」精神で日頃から鍛えているし、少女は少女で羽のように軽いため成立したのだが、本来高校生の男女でやっても家まで保たない荒技だ。

それに雨で地面が濡れているのも端から見たら不安だ。

だが、とうの少年は慎重な足運びで確実に帰路を歩んでいた。

足を上から下に真っ直ぐ降ろし、上げるときも地面を蹴るのではなく泥濘(ぬかるみ)から足を引き抜くように上げる。

摩擦に頼らないように、重心にも気をつけて。

確かに濡れた地面は滑りやすいが、歩き方に気をつければそう簡単に転びはしないのだ。

 

ところで。

ジャージを紐代わりに使っているとはいえ、それだけで人間一人を支えきれるものでは無い。

当然少年が背後に手を回して少女を支えているのだが。

或いは両手でなら少女の背や腰に手を回せば良かっただろう。

だが、片手でずり落ちないように支えるにはおぶさっている少女のお尻を下から支えるより他にない。

衣服の中でも薄い部類に入るパンツ、普通のスカート、柔らかい素材のジャージ。

それらを貫通して少年の腕に伝わるのは、重力によってこれでもかと押しつけてくる少女のお尻の感触だ。

 

彼にとって、先ほどの胸が押しつけられている状況と変わっていなかった。

いや、寧ろ若干悪くなったといってもいい。

先程も述べたが、生地が全体的に薄くなって重力も加わっている。

そして何より、お尻に手を回したときに少女が「あっ」と軽く声を漏らしており、その声が妙に色っぽかったのも良くない。

少年の情動が色欲に殴られて、そのままお尻を揉みしだくてたまらなくなった。

咄嗟に自己分析でそれを察知した彼は、早口で彼女に声をかけて鞄を預かり、できるだけ其方に意識を割いた。

お尻の方の手はセメントと化した想像をして神経を鈍らせて、封印処置を行った。

……効果は「やらないよりマシ」程度だったが。

 

「ねえ」

「なに? 姉さん」

「お姉ちゃんでエッチなこと考えてる?」

「ブフォッ!?」

 

唐突な図星に噴いてしまう。

そんな少年を見て、「自分が性的な目で見られている」という確信を抱いた少女が顔を赤くしながら、しかし努めて姉らしく振る舞おうとする。

 

「お姉ちゃんを誤魔化せると思ったのかな? ……なんとなく、イヤらしい雰囲気を感じたよ」

「…………その、すみません」

 

姉に軽蔑されたら死ぬ。

距離を置かれたら生きていけない。

ジュンが心の中でそう叫びながら、しかし姉に言い訳することなど出来ずに即謝罪する。

そんな少年の姿を見て、姉は──

 

「ジュンくんだったら、いいよ?」

 

爆弾を放った。

 

「……っ!!!?」

「そういうお年頃なんだよね。……その、お姉ちゃん分かってるから。だからジュンくんの“そういうの”も、()()()()受け止めるよ……!」

「(あ、ああ。姉としてね……。)いや、姉さん。そういうのは良くないと思うんだ」

「そ、そうだよね。姉弟ですることじゃないよね」

 

つい口を滑らせて本音を言ってしまい、慌てて誤魔化したのか。

それともはじめから姉として言っていたのか。

それは少女にすら分からない。

ただ一つ言えることがあるとすれば、それは——

 

「僕にとって、姉さんは大事な姉さんだから」

「私だって、ジュンくんは私の大事な弟だよ」

 

お互いが実の姉弟(きょうだい)として思い合っているということだ。

互いの思いを、姉弟愛を意図せず再確認できて嬉しくなった二人。

少女は少年の背にもたれ掛かる形で身を寄せ、少年もそれを心地よく受け入れ——

 

「あ、ジュンくんまたいやらしいこと考えてる」

「……すみません」

 

少年の後頭部が、高校生離れした少女の豊かな胸に包み込まれた。

追撃として少女の髪の毛が少年のうなじを(くすぐ)りながら、女の子特有のいい匂いをまき散らしていた。

家族といっても思春期男子。

そして下宿先の諸事情によりマスターベーションも出来ない身。

まあ、人間は多面的な生き物だ。

そして世の中白黒ハッキリ分けられるほど単純でもない。

 

だが、台詞とは裏腹に。

二人は少し困った顔をしつつも、優しく微笑んでいたのだった。

 

両者の頬は朱色だった。

 

 

 

 

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