カレニーナが雑誌のようなものを熱中して見ている。任務が終わり、我々が帰還したことにも全く気づいていない様子だ。このような姿はとても珍しい。
何をそんなに食い入るように見ているのだろうか。気になった僕は、少し後ろめたさを感じつつも気づかれないようにそっと後ろに回り込み、覗いてみた。
『
なるほど、どうやらゴスロリの雑誌らしい。
真っ黒なドレスに特徴的なメイクを施した女性たちが載っている。その女性たちは人形のような可愛らしさに、どこか神秘的な印象を与えてくる。
どうやらカレニーナは、こういうものに興味があるらしい。意外な発見だ。
「何をやっているのですか、カレニーナ」
一緒に帰還したルシアだ。こちらに気づかないカレニーナに怪訝そうに尋ねた。
突然声をかけられたカレニーナはびくりと肩を揺らすと、勢いよく声のほうを向いた。次いでうしろの僕にも気づいたのか驚愕の表情を向けると、慌てて見ていた雑誌を閉じた。
「なっ……帰ってきたなら挨拶くらいしろよ! あと人の見てるものを勝手に覗くんじゃねえ!」
……いや、言ったが。
顔を真っ赤に染め上げて、こちらが何か言う前に猛ダッシュで奥へ駆けていった。
「挨拶は……ちゃんとしましたが……」
ルシアは呆気にとられたように、カレニーナが走り去って行った先を見ながら小声で呟いた。
◇◇◇◇
「で? 渡したいものってなんだよ」
後日、渡したいものがあると言ってカレニーナを指揮官室に呼び出した。
僕はラッピングをした包みをカレニーナに渡した。
「なんだこれ、開けてもいいのか?」
若干困惑したような様子で渡された包みを見つめている。
僕はそれは自室で開けるように言って、もう要件は終わりだと扉を示して見せた。
困惑の色が戻らないまま何かを口ごもり、結局了解の返事を残し指揮官室をあとにした。
……カレニーナは自室にいると、指揮官殿に伺いましたが……。
ノックをしても返事のない扉の前でビアンカは思案していた。もう一度ノックをするがやはり返事はなく、少しの逡巡のあとカレニーナならば問題はないと判断し返事のないまま扉を開けた。
「カレニーナ、います……か……」
そこにはゴスロリの衣装を着たカレニーナが、姿鏡の前でくるくると回っていた。満面の笑みで、鼻歌も交えながら、である。
ビアンカと目の合った途端、羞恥で顔を真っ赤に染め上げ、鋭い目つきで睨んだ。
「かっ……勝手に入ってくるんじゃねえよ!!」