○○を教えるスネイプ先生 作:ギャグなんてこりごりだ
「ああ、左様。ハリー・ポッター。我らがお馴染みの――不死鳥に愛された子だ」
薄暗がりのようにじっとりとした声がハリーの名を呼んだ。まるで愛した女と大嫌いな男の間に生まれた唯一の子どもで、その親が二人とも自分のせいで死んでおり、その事実を子どものほうは知らないのに一人で勝手に複雑な感情を抱いているかのようだった。
「このクラスでは、休載の悲しい事情と、残酷な未来を学ぶ。ここでは事情を詮索するような馬鹿げたことはやらん。これでも連載作品かと思う諸君が多いかもしれん。ふつふつと沸く続きへの期待、ゆらゆらと立ち昇る打ち切りへの不安、作家の繊細な力、心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力……」
褒めているのか貶しているのかわからない。ハリーとロンはハーマイオニーにちらりと目をやった。ハーマイオニーはロックハートの作品を真に受けるほど本を信じているのだ。
「諸君がこの見事さを真に理解するとは期待しておらん。我輩が教えるのは、休暇を充実した時間にし、気力を充足し、スランプにさえ蓋をする方法である。――ただし、我輩がこれまで担当してきたウスノロどもより諸君らがまだ自己管理に意識を向けているのであればの話だが」
大演説のあとはクラス中が一層静まり返った。体調不良、冠婚葬祭、その他もろもろが活動スケジュールにのしかかってくる。それに、どんなに書くのが好きでも疲れるときはある。人間だもの。
「ポッター! 週刊連載に1週間の休みを加えると何になるか?」
毎週の楽しみであり、ひとによっては曜日感覚の基準でもある連載に月の1/4もの休みを加えると何になるって?
ハリーはロンにちらりと目をやったが、ハリーと同じように「待ちきれなくて死にそうだ」という顔をしていた。ハーマイオニーは業界のニュースまでチェックしているので空中に高々と手を挙げた。
「わかりません」
スネイプは口元でせせら笑った。唇をめくりあげたりはしなかった。
「名主人公なだけではどうにもならんらしい。ポッター、もう一つ訊こう。長期休載から更新再開をするきっかけを探してこいと言われたら、どこを探すかね?」
ハーマイオニーが思いっきり高く、椅子に座ったままで挙げられる限界まで高く手を伸ばした。ハリーには更新再開のきっかけが一体何なのか見当もつかない。更新できない作品には相応の理由があり、それが解決してようやく更新を検討できるのだ。もちろん、相応の理由がない場合もあるが。
マルフォイ、クラッブ、ゴイルが身をよじって笑っているのを、ハリーはなるべく見ないようにした。後に落ち着きのある仲間として成長するマルフォイにとっては黒歴史になる振る舞いだし、クラッブは死ぬ。
「わかりません」
「クラスに来る前に過去作をチェックしようとは思わなかったわけだな、ポッター?」
ハリーは頑張って、冷たい目をまっすぐに見つめ続けた。ダーズリーの家にいたころ、打ち切りアニメの続きを探しにレンタルショップをダドリーと二人でさまよったことならある。スネイプは完結すればなんでもいいとでも思っているのだろうか。
スネイプはハーマイオニーの手がぷるぷる震えているのをまだ無視していた。
「ポッター、休載と未完結の違いは何だね?」
この質問でとうとう未完の名作について語らせるとうるさいハーマイオニーは椅子から立ち上がり、地下牢の天井に届かんばかりに手を伸ばした。
「わかりません。ハーマイオニーがわかっていると思いますから、彼女に質問してみたらどうでしょう?」
生徒が数人笑い声をあげた。ハリーとシェーマスの目が合い、シェーマスがウィンクした。もしシェーマスがハリー・ポッターシリーズの主人公だったら、爆発についてのアイデアが尽きた瞬間に未完となっていただろう。
しかし、スネイプは不快そうだった。
「座りなさい。……教えてやろう、ポッター。週刊連載の場合、公開をずらすと全体のスケジュールに問題が発生することもあるため、週単位での休みになることもある。その場合、雑誌などでは休み明けを合併号と題して少しだけボリュームを足し、読者を満足させている。無論、趣味で書いているならそのような気を使う必要はない。長期休載作品を更新再開するきっかけはどこにあるかわからない。催促されて書きはじめる作家もいるし、催促されると書きたくなくなる作家もいる。しかし、ただ待てば活動自体を終える作家もいる……。休載と未完結はどちらも更新がない状態だが、休載は今後がわからないのに対して、未完結は続きがないことを公式に明言されている。どうだ? 諸君、なぜ今のを全部ノートに書きとらんのだ?」
一斉に羽根ペンと羊皮紙を取り出す音がした。その音に被せるように、スネイプが言った。
「ポッター、君の無礼な態度で、グリフィンドールは1点減点」
たまらずロンが叫んだ。
「でも先生! クラピカが船に乗っている間に鬼滅の刃が始まって終わりました!」
「だまらっしゃい!」