幽波紋の奇妙な幻想 《Drifted Destiny》   作:右利き

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今までで最も内容がギッシリしていると思います。


10.東方花映塚②

「いいえ。私は関係ないわ」

 

「へ?」

 

 予想外の返答に素っ頓狂(すっとんきょう)な声を上げた射命丸。ハイエロファントも表情に表れてはいないが、「何だ、違うのか」と犯人の手掛かりがゼロとなって少し残念に思う。

 

「ち、違うんですか……? 幻想郷中の花たちが四季に関係なく咲き誇っているのは、幽香さんの"花を操る程度の能力"のはたらきなのでは……?」

 

「いいえ?」

 

 完全否定だ。表情には緊張も見られず、嘘をついているような気もしない。射命丸は「ハァ〜……」と露骨に残念がる。失礼なやつだ、とハイエロファントと幽香が呆れると、射命丸はハッとして顔を上げて幽香に再び質問をぶつけた。

 

「それじゃあ! この異変が起きた原因、もしくは起こした犯人はご存知ですか?」

 

 幽香は胸下に腕を組んで考え込む。がんばって思い出しているようだが、数秒で諦めて口を開いた。

 

「知ってたような……知ってたけど……忘れたわ」

 

「そ、そうですか……」

 

 ストーンッと音が鳴りそうな程、勢いよく射命丸の頭が落ちた。これは困った。こんな異常事態、原因も分からないまま終わってくれては、新聞の記事に載せようにも()えることはない。射命丸は完全に「詰み」状態となった。スペシャリストが知らないのでは、手掛かりをこれ以上探すのはかなり難しい。

 

「その……忘れてしまっていいんですか? 異変の原因を」

 

「……別にいいと思うわ。忘れるってことは、忘れてもいいぐらいどうでもいいことなのよ。メロンのスタンドさん」

 

(メロンのスタンドって……)

「……では、別に我々に害があるわけではないと?」

 

「ま、大丈夫よ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 花から?

 どういうことなのか。花の異変に便乗して悪事を働く者がいると言いたいのだろうか?項垂(うなだ)れていてもしっかりとフレーズを拾った射命丸の首は再び上を向き、目を輝かせだした。

 

「つまり! 別の何かからは何か影響があるかもってことですね!?」

 

 肉を与えられた飢えたライオンのように幽香の言葉に喰らい付く。ハイエロファントも興味を示していた。少し間を空けて「残念だけど」と前置きをし、幽香は言葉を紡いだ。

 

「あなたの喜ぶようなことではないわ。来てるのよ。閻魔様(えんまさま)が」

 

「……えんま?」

 

「え……な……何ですってェーッ!?」

 

 ハイエロファントは訳も分からず混乱するが、射命丸はこれ以上ない程取り乱した。もうすぐ夕方ではあるが、まだ外は暑い。それによる汗なのか、閻魔様とやらのための冷や汗なのか、射命丸の額とシャツはぐっしょりと濡れている。そんなに芳しくないことなのか?

 

「ちょっと待ってください。その閻魔様っていうのは……地獄の閻魔大王のことですか?」

 

「そうよ。彼女は非番の時、しょっちゅう幻想郷にやって来るのよ」

 

「ひ、非番……? それに「彼女」?」

 

 思っていた閻魔大王とは違う様子。花京院の記憶を辿(たど)り、閻魔大王とはどういう存在なのか。がんばって思い出そうとしているが、「非番」や女性を揶揄(やゆ)するようなワードは無い。実際は伝承とは異なっている姿をしているのだろうか?ハイエロファントはそう考える。

 

「まあ、お互いがんばりましょう。天狗さんも気をつけてお帰りになって。流石のあなたでも、閻魔様には頭が上がらないわよね? ……それじゃ〜ね」

 

 幽香は少し勝ち誇ったような表情とセリフを残して、低く浮かぶ太陽の光を浴びながら悠然と去っていった。一方、射命丸。彼女はかなり動揺している。閻魔大王に悪い思い出でもあるのだろうか?

 

「閻魔大王か……あまり良いイメージは無いな。とりあえず、今日は帰らないか? 異変解決は明日でもできるだろう? 真実は逃げない」

 

 ハイエロファントは射命丸を()かして「帰ろう」と声を掛けた。すると、射命丸は突如スクッと立ち上がり、力強く羽ばたいてホバリングをし始める。彼女の顔には強い焦りの色が出ており、何かただならぬ雰囲気を醸し出している。

 

「ど、どうしたんだ? 急に飛んで……まさか、そんなに閻魔大王が怖いのか……?」

 

 ハイエロファントの問いに射命丸の左頬がピクピクと反応する。図星のようだ。だが、その視線はハイエロファントに向けられてはおらず、徐々に赤みの強くなっていくその背後を見つめていた。

 

「わ…私のジャーナリズムアンテナにビビッときました……()()()()…………」

 

「来てる? ……一体何が……?」

 

 ハイエロファントは怪訝(けげん)に思って射命丸から「来ているモノ」の正体を聞き出そうとするが、射命丸は答えずにハイエロファントに背を向ける。

 

「すみませんが、私はもう帰らせていただきますッ! 明日も早いですしねッ! それじゃあ、ハイエロファントさん! 失礼しましたァーッ!!」

 

「あっ、ちょっと待つんだ!」

 

 ギュン!!と空気を裂きながら高速で飛び出して行った。その風圧は(すさ)まじく、アスファルトで整備されていない人里の通りの砂を大量に巻き上げ、そばにある花屋の商品()や店主まであおられた程である。

 付近の人々は「うぎゃっ」「キャァーッ」と、突然のことのため仕方ないものの、情けない悲鳴を上げていた。

 

「うぐ……一体全体何があったと言うんだ……? 本当に……」

 

 ハイエロファントは咄嗟(とっさ)に顔面を(おお)った右腕を下げ、射命丸が飛び去っていった空に目をこらすが、既に彼女の姿は無かった。

 

 射命丸が行ってしまい、人里に独り取り残されたハイエロファントは再び周りの声に無意識に神経を研ぎ澄ませてしまう。しかし、「これではだめだ」と、「自らが動かなければ、何も無いのだ」と思い直していたハイエロファントは、射命丸がやったように花屋の店主の誤解を解こうと花屋へ向き直って足を踏み出した。

 

 

 

    人間讃歌は 勇気の讃歌

   人間の素晴らしさは 勇気の素晴らしさ

 

 

 ある男は言った。「「勇気」とは「怖さ」を知ること」だと。ハイエロファントにとって恐怖とは、自身の運命を分けた数十日の星屑のように輝く旅路の、それ以前の17年間の孤独。だが、今の彼には魔理沙や魔術師の赤(マジシャンズレッド)のように仲間がいる。それでも、彼には()()()()()()()()()()()がある。「恐怖」を我がものとし、この瞬間!その一歩を踏み出せたことは、"スタンド"(ハイエロファントグリーン)もまた気高き勇気のある人間の心を持っていることを示していた……

 

 

 

 と、腰を抜かしているままの花屋に話しかけようとした時、ハイエロファントは自身の背後から近づく者の気配を感じ取った。

 ザッ ザッ と、彼に対する恐怖など微塵も感じられず、ただ淡々とハイエロファントの方に歩を進めてきている。もちろん、ハイエロファントは振り返った。どのみち、彼は()()()()()()()()()()わけだが。

 彼が振り返った先にいたのは少女。いや、女性と言った方が正しいか。紺色の服に黒いミニスカートを履き、幽香のそれよりも深みのある緑髪。それらに加えて王冠を彷彿(ほうふつ)とさせる巨大で特徴的な帽子まで被っている。右手には……何だ? 文字の書かれた棒のような物を手にしている。

 

「あなたは……なるほど。あの天狗のようには逃げないのですね」

 

 ズシリと肩に乗り掛かるような、質量の存在を疑う声。160cm以上、十代後半程度にしか見えないその容姿からは想像できない、まるで巨石のような存在感。ハイエロファントは一瞬で(さと)った。彼女だ。射命丸が焦りに焦っていたのは、彼女が近くにいたからだ、と。

 

「あ……あなたが……幽香さんが言っていた"閻魔大王"か……ッ!」

 

「その通り。私の名は、四季映姫・ヤマザナドゥ。ヤマザナドゥは役職名です」

 

 彼女が閻魔大王。可愛らしい姿をしているが、もし死んでしまった時、あの世での己の行く末を決める者だ。そんな人がなぜハイエロファントの前に……?

 

法皇の緑(ハイエロファントグリーン)。ちょうど良かった。私は()()()()()()()()()()()()()()

 

「な、何ですって?」

 

 ハイエロファントの聞き返しにハァとため息をつく。ハイエロファントは思わず「何かやってしまったのか…?」と不安になるが、どうやら杞憂(きゆう)であったようで、

 

「小町という部下が私にはいるのですが、()()サボりに来ているようでして。そのついでに、あなたと話しておこうと思ったのですよ。マジシャンズレッドやクリームではなく、あなたと」

 

「話したいこと……ですか? 一体何を……」

 

「立ち話も何です。よく寄る茶屋があるので、そこでお話しましょう」

 

 そう言って、映姫はハイエロファントを連れて人里の入り口方面へ向かって、淡々と歩を進めていった。

 

 

 

 

____________________

 

 

 東に向かい続けて十数分。大きく「茶」と書かれた旗を壁に掛け、特段派手なわけでもないが、風流と落ち着きのある家屋に到着した。映姫は外に置かれた長椅子には座らず、茶屋の主に「こんにちは、少々話をしたいので」と断りを入れてからハイエロファントと茶屋内のテーブル席についた。

 

「さて、ハイエロファントグリーン。私はあなたに聞きたいことがたくさんあるのです。まずは、あなたの本体についてから」

 

「は、はぁ……」

 

 映姫は手に持つ(しゃく)を自身の前に、ハイエロファントを問い詰めるように質問を投げかける。出会ってから一切表情筋を動かすことなく、真顔で、実に淡々と話す様子はハイエロファントをかなり困惑させていた。

 

「僕の本体……ですか。「話せ」と言われても何から話せばいいやら……」

 

「安心してください。"スタンド"については軽くではありますが、既に予習済みです。それに、あなたの幻想郷での行動は逐一(ちくいち)監視していますから」

 

 多少は専門的な用語を使ってもいい、ということだろう。ハイエロファントは少し安心する、ことはなかった。「監視していた」だって?プライベートのへったくれもないではないか、と思わず心の中で文句を垂れる。

 しかし、花京院の記憶も含めて、今まで出会った人々の中で最も偉いのは、間違いなく彼女であることには違いない。言葉に気をつけねば、と肝に(めい)じてハイエロファントは説明を始めた。

 

「僕の本体の名は花京院典明、高校生でした。スタンド能力に目覚めたのは幼少期で、「()()()()()()()()()人間とは心が通じ合わない」という考えを持っており、およそ17年間の孤独の生活を送りました。そこから先は知っての通りです」

 

「"そばに現れて立つ"というところから、そのヴィジョンを名付けて"スタンド"。あなたは花京院典明にとって、自分自身ではなく、()()()()()()()と思われていたのでしょうね」

 

「ええ……僕もそう思います」

 

 映姫は相変わらず真顔のまま答えるが、ハイエロファントにはその返答が快く思われた。種族は違えど、理解者の存在は誰にでも大きいものだ。

 ハイエロファントはここであることが思い浮かんだ。彼女は閻魔大王だ。死んだ者を裁く者。もしかしたら……

 

「……映姫さん。その……あなたが閻魔大王というのなら、僕の本体と……」

 

「それはないですよ。ハイエロファント」

 

 きっぱり真っ向否定。ハイエロファントが考えたのは、死んでしまった花京院と映姫は相対したことがあるのではないか、ということ。しかし、事実は違ったようであるのだ。彼女は花京院を裁いていない、とのこと。

 

「私は閻魔ですが、あなたの想像している像とはかけ離れていると思いますよ。私は"是非曲直庁(ぜひきょくちょくちょう)"という組織に所属しているのですが、我が組織は幻想郷の担当です。花京院はDIOという男によって殺されてしまった、と聞きました。エジプト、ですよね? その地は幻想郷でもなければ、日本でもない遠い場所。死んでしまった彼は私とは会っていません」

 

「そう……ですか」

 

 非常に残念そうにトーンが落ちる。彼の視線も下に向けられ、無言の間が出来上がるも、映姫は特に慰めることもなくハイエロファントを見つめ続けていた。ハイエロファントは映姫が(しゃべ)り始めるのを待つのと同時に、自身の質問を探す。映姫はハイエロファントの体を空港の税関職員のように隅々まで見回すと、「そういえば」とようやく口を開いた。

 

「スタンド……ですか。不思議な存在ですね。亡霊のように「魂=体」ではなく、「魂の周りを体=意思が取り巻いている」という感じ。核となる魂も完全なものではなく、言ってしまえば不完全なカケラのようですし」

 

「………………」

 

「……ハイエロファントグリーン。以前あなたが戦った……そう、タワーオブグレーを覚えていますか?」

 

「ええ……」

 

 しっかりと覚えている。前世でも幻想郷(こちら)でも戦った相手なだけあって、印象深い。しかし、なぜ映姫はタワーオブグレーを話に出してきたのだろうか。

 

「私は先程、幻想郷での行動を逐一監視している、と言いました。もちろん、タワーオブグレーとの戦いもヴァニラ・アイスという者の意識が宿ったクリームとの戦いも目にしています。ヴァニラ・アイスの魂は紅魔館のフランドール・スカーレットによって破壊されたことも知っています。本来はあまり無視しないことですが、今回重要なのは()()ではありません」

 

「な……何が重要なんですか?」

 

「幻想郷から来た魂、幻想郷を経由して来た魂。それらをジャッジすることが私の仕事。あなたはタワーオブグレーがどうなったか……気になりませんか?」

 

「!」

 

「彼は……私の元へは来ませんでした。」

 

「何ですって……!?」

 

 ハイエロファントは生物の魂を破壊する力を持っていない。フランドールのようにタワーオブグレーに存在する魂のカケラを破壊する術も知らない。だというのに、タワーオブグレーは彼岸へと到達しなかったという。()()()()はある事実を示していた。

 

「スタンドは、内に秘める魂の力が弱すぎるあまり"死"と同時に完全なる消滅を迎えてしまう、ということです。」

 

「まさか……そんな……」

 

 ショックだ。ハイエロファントは幻想郷に来てから2度の戦いを経験してきた。タワーオブグレーとの戦いで、自身の体の治癒力が異常に高まっていることを知り、多少の無茶をしたこともあった。だが、一歩間違えていたら何も残すことなく、どこへも到達することなく消滅していたかもしれないというのだ……

 映姫の目が厳しいものへと変わると、彼女は1つの提案をしてきた。

 

「幻想郷には"賢者"がいます。外の世界とこの世界を繋ぎ、幻想郷へ概念を送り込むことのできる妖怪、八雲紫の手によって外の世界へ出ることは可能でしょう。この地で生きていくには、あなたたち"スタンド"は()()()()()が弱すぎる。強力な妖怪もいますし、これからもスタンドは次々と現れるでしょう。()()()以降、どうもそんな気が……」

 

 映姫は口を閉じた。「あの件」というワードを口にした瞬間のことであった。もちろんハイエロファントはそれを聞き逃すはずもなく、「逃がさない」とでも言うように映姫に問う。

 

「……あの件? 何ですか? あの件とは」

 

「……数ヶ月前に起こった"大異変"、とでも言いましょうか。環境を劇的に、あらゆる事象の通常を異常に変えた「時」。世界中を巻き込む程の規模でした。しかし、それを覚えている者はほとんどいない」

 

「なぜです? そんな大きな事件だというのなら、誰もが知っているものでしょう?」

 

「……幻想郷の賢者たちはその異変を隠しました。「解決できなかったから」、「原因が分からないから」。理由はその程度。この事実を知る者はほんの数人です」

 

「霊夢は知っているんですか?彼女は幻想郷の中でもかなり重要な人物だと聞きましたが……」

 

「いいえ。博麗の巫女も例外ではありません。彼女もまた、()()()()()()()()()1()()です。試しに本人に聞いてみてはどうでしょう」

 

「……」

 

 予想外だ。異変の解決は基本的に霊夢の仕事だと聞いていたため、本人に確認すれば何か分かったかもしれないと考えたが、どうやら無駄のよう。

 

「……解決できなかった、ですか。幻想郷は平和そうに見えますけど……」

 

「平和が全てではありません。長い間続いてきた"通常"が重要なのです。異変が疎まれるのは、それが突如やって来る"異常"だから。 ……解決はできませんでしたが、異変の影響を最小限に食い止めることは成功しています。影響というのは、あなた方"スタンド"の出現。そして、幻想郷中に咲き誇る花々。」

 

「! あの季節外れの花たちはその大異変が原因だったんですか?」

 

「正確に言えば二次災害です。死して幻想郷に入ってきた幽霊たちがあの様々な花を咲かせているのです。先程も言ったように、あの異変の真相は謎のまま。これから本当の"恐怖"が起こる可能性は十分にありますが……」

 

 閻魔大王は言葉を途中で切った。机上に置かれた湯呑みから、少量のお茶を静かに飲んでハイエロファントを見つめ直す。

 

「あなたの身にこれから起こることは全く予想がつきません。いつ、あなたに消滅が訪れるかも分からない……それでも、あなたはこの地で「幻想郷の住人」として生きていきますか?」

 

 ハイエロファントは映姫の言葉を「逃げたっていい」と解釈した。たしかに、ハイエロファントにだって死の恐怖はある。それも、先の無い消滅への恐怖。並の人間、生物なら真っ先に「NO」と断り、八雲紫とやらの力を借りて外の世界へ逃げ出すかもしれない。

 しかし、ハイエロファントは違った。花京院典明(ハイエロファントグリーン)は既に決めていた。「もう、恐怖からは逃げないし、負けもしない」と。幻想郷にはかつての仲間、M(マジシャンズ)レッドがいる。新たな友人である魔理沙、霊夢、レミリアと彼女の館の住人たちだっている。ようやく見つけた()()()()()()()()()()を離れて何のアテもなく外の世界を放浪するよりも、心の通じる仲間のために戦えるというのなら、

 

「僕は受け入れます。幻想郷で再び背負った「運命」を。たとえこの身が滅びることがあっても、それが「運命」というのなら、それに従います」

 

 ハイエロファントの「覚悟」を見た映姫はしばらくハイエロファントの目を見つめると、(まぶた)を伏せた。映姫は「少々軽く見ていた」と少し気恥ずかしく感じるのだった。

 チラリと外を見ると、既に夕暮れ時。明るい橙色(だいだいいろ)に染められた道路が彼女の目に映る。

 

「……あら、もうこんな時間でしたか。そろそろ、小町を探しに行かなくてはいけませんね……ハイエロファントグリーン。今日はお話ができて良かったです。あなたの気高き覚悟。見定めさせてもらいました」

 

 映姫は席を立ちながらハイエロファントに感謝を述べた。その言葉と声は、先程の堅苦しいものから変わって、相手に落ち着きを与え、優しさを感じさせるものとなっていた。

 

「ええ。僕もです。あなたのような人と出会えて、お話させていただいたことは光栄に思います」

 

 ハイエロファントも席を立ち、茶屋の出口まで映姫を見送る。店を出た彼女は数歩だけ歩くと、忘れていたことを思い出したようにハイエロファントへ振り向いた。

 

「本来、私が言うことではありませんが、あなたの「勇気」に敬意を表して……ようこそ。幻想郷へ。この地はあらゆるものを受け入れます。それはとても残酷な話で……同時に美しきことでもある。あなたと花京院典明の「第二の生」に"Luck(幸運)"と、更なる"Pluck(勇気)"があることを祈っています。もちろん、善行の積み重ねも……ね。」

 

 映姫はハイエロファントにそう言い残すと、彼と夕日に背を向けて、暗い群青に染まりつつある人里の出口へと歩を進めていった。

 

 

 

 

 彼女は最後にハイエロファントに微笑みを見せていた。閻魔大王たる彼女は滅多にその表情を見せはしない。あの顔の真意は何だったのか。

 気高き者への敬意の表れ、それだけなのか?果てなき旅路を往く「運命の奴隷」を哀れんでのものなのか?苦難の道を往く「十字軍」の"安寧"を祈ったものなのか?どちらであったとしても、彼女との「時」はハイエロファントに幻想郷で生きていく力を更に成長させたことは確かである。

 

 

 精神力の成長はスタンドの成長である……

 




第1部《Drifted Stardust》完

どうだったでしょうか。花映塚の話を入れた理由としては、ハイエロファントグリーンの勇気、そして映姫の最後の言葉を書きたかっただけなんですが……

まだたった10話しか投稿していませんし、まだまだ物語の導入部なので、面白さも「大して」な程度かもしれませんが、事件は第2部より本格始動!

次部、
第2部《ダイナマイトは湿らない》
これからもお楽しみに!
to be continued⇒

あくまで参考までに、ということで。

  • 東方をよく知っている
  • ジョジョをよく知っている
  • 東方もジョジョもよく知っている
  • どちらもよく知らない
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