幽波紋の奇妙な幻想 《Drifted Destiny》   作:右利き

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復活したと見せかけて一ヶ月ぶりです……
最近忙しいのと、初期構想を思い出したりジョジョや東方を読み返したりやり直したりして中々書けないでいました。割と思い出してきたので、ここからは少し早くなるかもしれません。


97.物部布都の龍の夢

 時はサイレント・ウェイと青娥の戦いに決着がつくよりも少し前のこと。

 先へ進む異変解決組に進展があった。

 ハイエロファントの危機を察知したサイレント・ウェイと別れ、大祀廟の洞窟を進んでいた霊夢、魔理沙、チャリオッツの三人は彼ら二人の身を心配していたが、二人とは別のスタンドエネルギーの反応が消えたことをチャリオッツが確認する。ひとまずは大丈夫だろうと安心し、三人は先を急ぐこととした。

 しばらく進むと、彼女らは長く続いた岩壁に囲まれた狭い通路をようやく抜ける。仄暗くだだっ広いその空間の中心には、地下をさらにぶち抜く木造の塔のような建物が鎮座していた。

 

「……あれはお墓かしら」

 

「アレがかぁ? よく分かったな霊夢」

 

「墓っつーか供養塔とかそういうヤツかもしれねぇな。ほら、壁に色々文字が書いてあるだろ」

 

 魔理沙が塔を指差す。暗くて見えづらいが、確かに壁には多くの文字が羅列されているのが目に入る。しかしかなり古い文字であったため、現代の日本語であれば読めるチャリオッツには何が書いてあるのかさっぱりであった(薄くなっている文字が多いのもあった)。だが、魔理沙と霊夢がそれらを見て墓や供養塔の類と判断したからには、おそらく慰霊の文言や死者の名前があるのだろうと推測する。

 そんな中でチャリオッツが唯一判別することができたのは、一際多く目立つように刻まれた『物部布都』の文字であった。

 

「……もの、ぶ……ぬのと?」

 

 

物部布都(もののべのふと)じゃ!』

 

 

『!!』

 

 塔の上から何者かの声が響く。

 三人が目線を上げて見れば、そこには一人、少女が彼女らを見下ろしていた。彼女は銀髪を後ろでまとめて烏帽子を被っており、白い水干と青いスカートに身を包んでいる。幻想郷ではあまり目にしない衣装である上、こんな場所にいることから三人はすぐに異変の首謀者の一味だと判断し、身構える。

 

「お主らか? 我らの邪魔をしようとしている輩は!」

 

「あんた誰よ」

 

「んん!? 何じゃ、聞いていなかったのか? さっき自己紹介したろうが! そこに書いてある通り、我が物部布都じゃ。ちょっと待っていろ」

 

 布都は塔の足場を蹴り、三人の前に降り立つ。

 そこで分かったのは、彼女の身長は大体魔理沙と同程度だということ。烏帽子を含めてもチャリオッツの胸下までの身長しかなかった。数はこちらの方が分があり、加えて見た目で判断しても警戒する必要はなさそうであるが、チャリオッツは既に気付いている。布都からスタンドエネルギーを感じ取れたのだ。数は一つ。おそらく人型のものではないだろう。

 

「……霊夢、魔理沙、気をつけろ」

 

「スタンドの気配がするの?」

 

「なるほど。厄介かもな……」

 

「何じゃ何じゃコソコソと。まぁいい。改めて言おう。我は尸解仙の物部布都! 復活された太子様をお守りする使命を帯び、お主ら侵入者を一網打尽にしに来た次第だ。お主らで間違っとらんよな? 青娥殿が言ってた侵入者」

 

 布都は三人を指差し、そう言い放つ。

 自信満々に降りてきて宣戦布告した割には、目の前の三人が情報として入ってきた侵入者本人なのかどうかあやふやな様子。さらにそのことについて何も思うことは無いらしく、堂々と三人に確認まで求める始末であった。

 魔理沙が布都にツッコむ。

 

「太子様? 青娥? どっちも知らねぇな。つーかお前、私たちが敵かどうか分かってねーのに戦おうとしてたのかよ。アグレッシブだな」

 

「うるさい! 思案に夢中になってお主らを奥に通してしまっては格好がつかんのでな。それで、どうなんじゃ」

 

「大当たりよ。私たちは異変を解決しに来たってわけ。あんたに親玉がいるってのはさっきの会話の流れでわかったから、大人しくそいつの元へ連れて行ってくれれば痛い目に遭わなくて済むわよ」

 

 霊夢はお祓い棒と札をこれ見よがしに突き出す。

 魔理沙も弾幕戦に使う魔道具を取り出し、チャリオッツもレイピアをチラつかせた。多勢に無勢、それをアピールする。スタンドを帯びているとは言え、三倍という数の差を埋めることは難しいはずである。ましてやその内二人は異変解決のスペシャリストなのだから。

 だが、布都は不敵に笑うだけであった。

 

「ほうほう……ずいぶんと自信たっぷりのようだな。我に絶対に勝てるようなその言い草、不遜極まる!」

 

 布都は両手を広げる。すると、妖怪が操る妖気でも神が放つ神気でもない、別のオーラが彼女から溢れ出した。おそらく霊気の類であろうが、これに触れるのは霊夢たちにとって初めてのことだった。

 放たれる霊気はやがて形と光を帯び、光球となって布都の周囲に浮かび始める。弾幕戦の心得はあるようだ。布都はニンマリと笑い、三人を見返す。

 が……

 

「同じセリフをそっくりそのまま返すぜ。三対一だぞ? お前こそ何でそんなに自信たっぷりなんだよ。お前が隠し持ってる…………スタンドが理由か?」

 

「!」

 

 魔理沙の言葉を聞いた布都は口を紡ぐ。

 まさに図星を突かれたようで、驚いた表情を浮かべた彼女。「どうしてそのことを知っている!?」とでも言いたげだ。態度が180°変わってしまい、つい先程までの自信はどこへやら。今度は慌てた様子で魔理沙たちに訊き返す。

 

「なっ、何故()()()()のことが分かった!?」

 

「俺たちスタンドは精神のエネルギーで具現化してんだよ。スタンドとスタンドは互いにそのエネルギーを感じ取れるのさ」

 

「チャリオッツはさっきからずっと気付いてたぞ。パッと見じゃあスタンドっぽいのが見えないけど、もしかして道具型のスタンドとか?」

 

「う、うぅ……バ、バレていたとは…………」

 

 おそらくスタンドを隠し玉として用意していたのだろう。だがそれがバレてしまったため、布都は一気に調子を落としてしまう。そもそも数の違いにより分が悪いことは分かってはいたようだ。しかし、幸か不幸か彼女の心配は外れることになるだろう。三人が「何なんだこいつは」と呆れた中、魔理沙は魔道具を動かし始め、霊夢とチャリオッツの前に立った。

 やる気のようだ。

 

「二人は先に行っててくれ。こいつは私が相手するぜ」

 

「はぁ? 何言ってんのよ魔理沙。三人でチャチャっと片付けた方がいいじゃあない。せっかく数の有利があるんだし、相手はスタンドも……」

 

「分かってくれるだろ? チャリオッツ」

 

 魔理沙はチャリオッツを見やる。

 この場では霊夢だけが知らない。先日世界(ザ・ワールド)やホワイトスネイクが攻撃を仕掛けてきた際、霊夢の身につけた夢想封印の圧倒的な力に、魔理沙は自分の非力さを痛感させられたのだ。霊夢よりもずっと修行してきたつもりであったが、それでも埋められない差があったことを知ってしまったのである。自尊心に傷がついたのだ。

 どこにもやり切れない気持ちを消化するにはさらなる努力しか方法はなく、件の戦いの後、霊夢が療養している間に彼女はずっと腕を磨いていた。チャリオッツはそれを知っている。

 

「……んじゃ、頼んだぜ魔理沙!」

 

「あっ、ちょっとチャリオッツ! 待ってよ!」

 

 チャリオッツは地面を蹴って跳躍し、塔、夢殿大祀廟に向かう。飛び出した彼に霊夢も続く。

 布都相手に三人で挑むのもいいが、きっと魔理沙に任せても結果は変わらないだろう。その信頼があった。それならば身を引き、この先に待ち構えているもう数体のスタンドと黒幕に霊夢と共に挑んだ方が彼女のためになるかもしれない。魔理沙にはそれが必要だ。

 しかし、それを黙って見逃せるはずのない布都。飛び出すチャリオッツと霊夢に弾幕を浴びせようとする。

 

「むっ、行かせると思うか!」

 

 

ギュオオォン!

 

 

「待てよ。お前の相手は私だぜ」

 

「…………!」

 

 魔理沙は魔道具から光弾を放ち、布都の目の前を遮る。そうして邪魔されたことにより彼女はチャリオッツと霊夢を逃し、塔の入り口と思われる穴から大祀廟の中への侵入を許してしまった。

 布都は「げっ」と焦りを顔に現す。しかし魔理沙の方に向き直った時には、彼女に対する敵意を剥き出した険しい表情を浮かべていた。そしてその手元には、いつの間にか謎のリングが。

 

「……せっかく有利な状況だったというのに、みすみす勝機を逃すとは哀れなものじゃのう」

 

「そういう台詞は勝ってから言うんだな。で、それがお前のスタンドか? ヘンテコな輪っかみたいだが」

 

「その通り。ただし! 安心することだな。我は弾幕以外を使ってお主を攻撃するつもりはない!」

 

「はぁ? じゃあ、そのスタンドは使わないってことか?」

 

「それはすぐに分かることだ……」

 

 布都はリングを両手に持つ。

 すると、東洋の龍の像がリングの上に現れた。

 

「さぁ……示せ(ドラゴン)ッ!」

 

「!」

 

「庚の方角……こっちだな!」

 

 リングの上の龍には鏃のような物が付いている。

 布都の言葉に反応した龍はリングの上から移動せず、その場で回転。そして鏃で洞窟内のある一点を指し示した。布都は龍がその地点を示すと、地面を蹴って素早くその場所へ向かう。

 龍が何なのか魔理沙には分からなかったが、今までのスタンドとの戦闘経験を鑑みるに、おそらく布都のこの行動はスタンド攻撃が始まる予兆(サイン)。そうみなした魔理沙は魔道具を周囲に展開し、弾幕を浴びせる。

 

「よく分からないが、させるか! くらえッ!」

 

 

ボン ボンッ ボグォオッ

 

 

「くっ、防がれたか」

 

 布都が先に展開していた弾幕は彼女に追従していき、魔理沙が放った弾幕群はそれらに阻まれて布都に届くことはなかった。小爆発が連鎖して起こり、後から飛んでいった弾も爆炎に触れて布都に当たる前に消えてしまう。

 龍が示した場所まで到着した布都だが、それから特に何かが起こることはなかった。先程と同じように弾幕を展開し、その場に佇んでいる。不敵な笑みを浮かべ、魔理沙を見つめているだけである。

 あの龍が何の効果をもたらすのかが分からず、余裕の表情を浮かべてる布都を魔理沙は少し不気味に感じていた。

 

(あいつ……マジで何考えてんだ? 弾幕を周囲に配置して、でも攻撃してくる様子もねぇぞ……)

 

「おや、攻撃が止んだな。我はもう少し待ってやってもいいぞ。まだお主の番だ」

 

「う、うるせぇ! ナメんじゃあねぇぞ!」

 

 魔理沙は弾幕の雨を布都に浴びせる。

 適当に撃つとしても「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる」。しかし、この布都には通じなかった。先程と同じように、周囲に展開された布都の弾幕が壁となって防がれるのだ。弾幕の炎が晴れて時々見える布都の顔は相変わらず余裕を語り、さらに一歩も動いていない。まるで自分に絶対弾幕が当たらないことを知っているようだった。

 引き起こされる爆発により、布都の前方の地面はどんどん歪に抉れていく。瓦礫や砂埃が巻き上げられる中、ついにそれは起こった。

 

 

ドズゥゥッ

 

 

「うぐああっ!?」

 

 布都は何もしていない。その場から動いておらず、指一本も動かしてはいなかった。

 爆発で巻き上がった瓦礫は魔理沙の意識の外から彼女に吹っ飛び、そして左肩に突き刺さったのだ。だが、それによって注意は自身の攻撃から周囲の状況に向けることができた。気がつけば、大量の岩の礫が魔理沙自身に迫ってきていたのである。

 

「うおおっ……! ぐぅ!」

 

 大小様々な礫が、まるで横向きの雨のように降り注ぐ。

 これは不味いと戦慄する魔理沙は急いで箒に跨ると、急加速して真横に回避。礫の直撃による負傷を免れた。

 それにしても不思議である。魔理沙は確かに狙いをつけていたわけではないが、それでも布都にここまで攻撃が届かないのは不自然すぎる。先程の礫の雨もだ。まるで、何か別のパワーが彼女を守っているよう。魔理沙はそう思えてならなかった。

 

「だが……! それなら接近戦だ!」

 

「!」

 

「至近距離から撃ちゃ弾幕の壁なんぞ関係ねぇ!」

 

 魔理沙は横に飛び退いた時の反動を完全に殺さず、押し留める。そして尻の方にエネルギーを溜めた八卦路を置き、布都に箒の柄の先を向けて急発進。八卦路のエネルギーをジェット代わりに、突撃を仕掛けた。

 布都はそんな魔理沙の行動に驚き、目を見開くばかり。もはや反撃に出る間も無く、激突を受け入れるしかないだろう。いくら運が良くとも限りはある。これは有効打になるやもしれない。

 しかし…………

 

 

グオオオンッ

 

 

「なにっ!?」

 

「甘いわ! その程度の攻撃にやられるこの物部布都ではないぞ! たりゃあッ!」

 

 猛スピードで直進してくる魔理沙。

 しかし布都は彼女を回避した。足元に転がる小石をわざと踏みつけ、足元から体を捩って回転。起こった回転をものにして跳躍すれば、華麗なアイススケーターのように体は曲線を描く。彼女が元いた地点を駆け抜ける魔理沙を迎え入れるアーチの如く。

 さらに魔理沙が布都の下を潜り抜けたその一瞬のうちに、布都は魔理沙に蹴りを浴びせる。

 

「うおっ!」

 

 魔理沙は間一髪で頭を傾け、布都の脚は魔理沙の三角帽子を掻っ攫う。

 標的を見失った蹴りだったが、しかし布都の攻撃は二段構えである。蹴りを放った勢いは彼女の体に側転するような回転を加えており、右手には光弾が煌めいていた。

 体を回転させた布都は、魔理沙の顔があった場所に平手打ちするように腕で薙ぎ払う。当然頭を傾けていた魔理沙に掌の光弾が当たることはなく、光弾は振り払いの勢いに任せて魔理沙の背後の岩壁に飛んでいき爆発した。

 これを好機とみた魔理沙。布都のターンは終わり、いよいよ待ち望んだ彼女の攻撃の順番である。

 

「ようやく当てられるぜ。喰らいやがれぇっ!」

 

 魔理沙は円筒の魔道具を取り出し、布都に向ける。

 その先端からは緑色の光が漏れ出している。綺麗だが、これは弾幕の光。暴力的な緑色は一メートルよりもずっと近い距離にいる布都に放たれようとしていた。

 

 

ビャウッ ブシュゥゥァッ

 

 

「あぐッ……!?」

 

「そう簡単に上手くいくと思わぬことだな」

 

 突如左耳に激痛が走る。

 目線を左端に寄せれば、暗い赤色の液体が飛び散っているのが見えた。どこからの攻撃なのか? すぐに分かった。背後だ。まさに布都が放った光弾が直撃した場所、その方向から飛んできていた。

 光弾の爆発により、岩壁が抉れた。その破片が魔理沙の方向に飛び、左耳を引き裂いたというのだ。

 度重なる"不運"、布都の笑みや態度。もはや偶然などではない。魔理沙は確信する。これがスタンド攻撃であると。布都が見せた龍の像やリングが、このめちゃくちゃな現象を引き起こしているに違いない。

 

「ぬぅぅああぁあぁぁっ!!」

 

「ぬおっ!?」

 

 痛みに耐える魔理沙は箒を勢いよく回転させ、穂で布都の体を打ちつけて吹っ飛ばす。布都は今二人がいるこの場所に固執していた。それがスタンド攻撃に関係があると判断したため、魔理沙はこの場から彼女を引き離すことにしたのだ。

 裂かれた耳が炙られているように熱くなり、ドロリとした血が鬱陶しく流れ落ちてくる。謎に包まれた布都のスタンドのことも相まって、魔理沙は少しずつ精神的にも追い詰められていた。

 

「はぁ……はぁ……クソっ」

 

「……()()()わざとなら良い判断だったと褒めてやるぞ。だが、二度目が上手くいくかどうか、それは保証してやれんがな」

 

「お前のそれ……一体何のスタンド能力だ!?」

 

「馬鹿め、自分から言うと思うか? 敵ならば自分で解き明かすことだな。さぁ、また見せてやるぞ。示せ(ドラゴン)!」

 

 布都は再びリングをかざした。

 しかし、今回はリング上に龍の像は現れない。一度見た現象とは違うことが起こり、魔理沙は警戒心をマックスにまで引き上げた。だが、その不気味な違和感の正体はすぐに判明することになる。

 

 

『俺ノ能力……ソレハナァ、嬢チャン。『風水』ダゼ! 吉凶ノ地点ヲ示スノガ『ドラゴンズ・ドリーム』ダ!』

 

 

「っ!?」

 

 背後から老人の声が響く。それを耳にした瞬間、魔理沙は先程の魔道具を振り向きざまに作動させ、強力な光弾を放出した。

 だが、手応えは無かった。光弾は標的を無視して突き抜けていってしまったのである。

 そこにいたのは人の胴体ほどの巨大な球体。布都の持っていたリングに現れた像のような龍が、その球体に収まるようにして浮遊していた。喋ったのはこいつである。この龍のスタンド、『ドラゴンズ・ドリーム』。

 

「なっ……弾幕が突き抜けた!?」

 

『俺ニ攻撃ハ通用シネーヨ。全部透過シチマウ。オ前ノ敵ハ、アクマデモ布都ノ方ダゼ』

 

「おい(ドラゴン)! 何をしておるのだ!? そやつは太子様の復活を脅かす敵だぞ! 有利な情報をベラベラ喋ってしまうんじゃあないっ!」

 

『ウルセェーナァ! 俺ハ中立ダッテ何度モ言ッテルダロ! オ前ダケバッカリズルイジャアネーカヨ! 教エテヤレヨ相手ニモ!』

 

 ドラゴンは中立。布都と言い合いをしているところを見るに、どうやら本当のことのようだ。さらに、その能力は『風水』であることも聞くことができた。こちら(ドラゴン)から布都とは別の攻撃が仕掛けられることはないのだろう。

 『風水』とは自然の中に流れるエネルギー、それを知ることによって吉凶を決定づけるもの。よって『占い』とは違う。例えば戦乱の時代では城の『風水』を見てどの方角から城を攻撃すれば陥落させられるかを調べ、逆に城の弱点方角に神社などを建てて凶のエネルギーを静め城の守りをより堅牢にすることもあった。

 それと同じように、ドラゴンズ・ドリームは攻め込むべき『吉の方角』と危険な『凶の方角』を指し示す。魔理沙はそう理解する。

 

「まぁ、構わん。たとえお主が(ドラゴン)の能力を理解したところで、(ドラゴン)がいくら中立を謳ったところでそれを扱い切れるかどうか。それは別問題だからな!」

 

「…………お前、ほんとに中立なのか? 私にも風水を教えてくれるってことなのか?」

 

『マァナ。ソレヲ活カス、活カナサイハオ前次第ダガ』

 

 布都が吠える中、魔理沙はドラゴンに確認して安堵する。ドラゴンのことを知るまでは絶望感は強かったが、意外にもそうでもないかもしれない。

 布都は弾幕を展開する。いよいよ彼女も攻めに転じるようだ。ドラゴンが敵の立場である魔理沙にも吉凶を教えてくれるというのなら、『吉の方角』を知り、布都の攻撃を躱わすことができるはずである。

 そう考えた魔理沙は、今にも襲いかかってきそうな布都を尻目にドラゴンに『吉の方角』を示すように声を上げる。

 

「おいドラゴン、『吉の方角』を教えてくれッ! 私にとっての『吉』だ! 布都(あいつ)の攻撃を避けられる吉凶の方角を示せえッ!」

 

『……ソレモ良イガ嬢チャン、オレハサッキカラ示シテイルゼ。オ前ノ、『凶ノ方角』ダ。マズ気ヲ付ケルベキハ、ドチラカト言ウトコッチカモナ!』

 

「なにっ……」

 

 自然に流れる『風水』のエネルギーは、実は人間にも置き換えて考えることができる。ドラゴンは魔理沙の右隣に来ており、その鏃は彼女の右頬を指し示していた。つまりはそこが魔理沙にとっての『凶の方角』ということである。

 一瞬戸惑う魔理沙。だが、布都は待ってくれない。

 その隙を逃さず、彼女はスペルを詠んだ。

 

「投皿『物部(もののべ)八十平瓮(やそひらか)』!!」

 

 

ギュオオオオォォッ

 

 

 十数枚の円盤状の弾幕を投げつける布都。一つ一つが回転するそれらはフリスビーのようで、しかし効果は丸鋸のようなのだろう。壁に直撃すると、荒々しい断面の切り口ができていた。

 魔理沙は箒を急発進させ、上空へと逃避する。しかし円盤の弾幕はやはりスペルカードのものだけあり、簡単に撒くことはできない。魔理沙という標的を見失った弾幕は炸裂すると、無数の細かい弾幕となって魔理沙の後を追う。

 魔理沙は下から迫ってくる弾幕を魔道具から放つ光弾で撃ち落とし、防御に徹する。そうした弾幕戦の渦中にいるドラゴンズ・ドリームは、腹立たしいことに涼しい顔をして二人のやり取りを眺めているばかりだ。

 

「いきなりスペルとはやってくれるじゃあねぇかよ。それなら、こっちも遠慮する必要はねぇな!」

 

 魔理沙は八卦路を構える。マスタースパークの準備だ。

 だが彼女がそれを放つことはなかった。飛び交う弾幕、広がる爆煙の中を布都は進み、ドラゴンズ・ドリームに近づいていたのを目撃したからである。吉凶の方角を知りたいのか? 否。それはすぐに分かった。ドラゴンズ・ドリームには、まだ魔理沙の知らない力がある。

 

「お前……何するつもりだ……!?」

 

「さっき言っておったろう。(ドラゴン)はお主の右頬を指し示していた。お主の『凶の方角』として! つまり()()()()()()()()()()()()ッ!」

 

 そう叫んだ布都はドラゴンズ・ドリームに触れる。するとどうだ、なんとドラゴンに触れた布都の腕はバラバラになるような映像と共に消えて無くなってしまった。

 「攻撃は確定」「魔理沙の凶の方角」。布都が何をしたのか、魔理沙には全く理解ができない。とにかく分かるのは、これからマズいことが起こるということだけだ。中立であるドラゴンズ・ドリームはようやく口を開いて教えてくれる。

 

『右頬ダゼ。気ヲ付ケナ……イヤ、モウ遅イカ』

 

「えっ…………」

 

 視界の右端の方が急に眩しく輝きだす。

 見てみれば、消えたはずの布都の腕。それが自身の右頬の横に現れ、光弾を放たんとしていた。超至近距離のゼロ距離放射である。魔理沙はとっさに防御しようとしたが、ドラゴンが言うように、もう遅かった。

 

 

ボグオォオオッ

 

 

 魔理沙は布都の放った青い閃光に呑み込まれた。

 

 

 

 




これからも楽しみにしていただけると嬉しいです!


to be continued⇒

あくまで参考までに、ということで。

  • 東方をよく知っている
  • ジョジョをよく知っている
  • 東方もジョジョもよく知っている
  • どちらもよく知らない
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