幽波紋の奇妙な幻想 《Drifted Destiny》 作:右利き
次回から戦闘パートに入れそうです。
普段あまり入ったことがない、ということもあって竹林の中に怪しく
「やっぱり真っ直ぐ突っ込んだ方がいいぜ!」
「何の対策も無しに? 無茶よ。何か罠があるかも」
「罠なんて張るのか? 弾幕勝負が基本なんじゃあないのか?」
「弾幕戦で罠を張るのもいるわ。それに、異変の犯人が「ルール」を知ってるとも限らないもの」
「弾幕は火力! パワーは命! いいか? コソコソやってちゃあ調子が出ねえってもんだ!」
「それ、あなただけの問題じゃない」
まだ確信も何もない状態であるにも関わらず、魔理沙は灯りへ向かって突進する意見を変えない。それに対し、アリスとハイエロファントは様子を
「竹林の中にいる、ということは「竹林内での適切な動き」を熟知している可能性が十分ある」
「それが……どうしたんだよ」
「空は
「そう。竹が乱立している竹林は姿を隠すには最適だ。あちらからしてもだし、僕らからしても……だ」
「……ということは、なんだ? 近くに降りてから地上を歩いて接近する、ってのか?」
「僕はその作戦を推すよ」
「…………分かったよ。それで行こう」
ハイエロファントの作戦を聞き、魔理沙はほんの少し迷ったが、ついに承諾する。「しっかり掴まってろ」とアリスに言うと、ハイエロファントと共に夜の闇よりも更に暗い竹林へと降下を開始した。
音1つ出すことなく、静かに着陸した3人はかなり先に見える灯りを目指して歩を進める。
静寂。とても静かな林。魔理沙たちの耳に入るのは、彼らに蹴散らされた落ち葉や竹のカケラのこすれる音のみ。ひたすら無言で、サッサッと流れるように目的地を目指し歩く。未だ動くことのない満月の光は、人形劇の人形の如く彼ら3人をあの灯の元へと
しばらく歩き続け、見えている灯りの大きさが最初に見えていた頃のものよりも大きくなってきていることが分かるようになった時、3人の足は止まった。魔理沙は後ろに続く2人に手で「止まれ」の合図を送る。それに気付いたハイエロファントとアリスは、突如聴こえ出した
「……!」
前を歩く魔理沙がハンドサインでハイエロファントとアリスに「私が行く」と合図を送ると、2人は承諾して足を止める。魔理沙はスカートのポケットからミニ
魔理沙と謎の人物は束になって生える竹を壁にして背を合わせると、ガンマンの早撃ち勝負の如く、高速で相手の眉間へ
「……えっ?」
「な……!」
「? どうしたんだ? 魔理沙?」
魔理沙の動きが止まった。後ろから見ていたハイエロファントとアリスが怪訝に思って彼女へ近づくと、いつの間にか雲で
「ま、魔理沙……どうしてここに!?」
「お前こそだぜ……何でいる!? 抜け駆けできたと思ったのに!」
魔理沙の口からうっかり本音が漏れる。しかし、驚きのあまり「あっ、しまった」の声は彼女から発せられることはなかった。ハイエロファントとアリスが魔理沙の背後へ来ると、霊夢の背後にも2つの影が出現した。長身のものと、そうでないもの。
「……その2人は? 君の知り合いかい?」
「あー。この2人ね。妖夢はどうでもいいけど……」
「ひどいです。霊夢さん」
霊夢が口に出した瞬間口を挟んだ。しかし、言葉に出した内容と比べて、表情は
「あーーと……それで、こっちが八雲紫」
「!」
霊夢の言葉を聞いたハイエロファントは素早く妖夢から視線を移す。美しく、しかしどこか妖しさを秘めた微笑みを浮かべた八雲紫はハイエロファントを見つめ返した。突如現れた緊張の鎖が体を縛り上げ、彼女から目を離させない。
(彼女が……幻想郷の賢者、八雲紫か。確かに、魔理沙や霊夢とは桁はずれのオーラがある……!)
「あらあら。そんなに睨んで……警戒することはありませんわ。紹介の通り、私が八雲紫。幻想郷の……と言わなくても、既に知ってるかしら?」
「…………」
広げた扇子で顔を半分覆いながら、ハイエロファントたちに改めて名を告げる。3人共、まさかこんな所で彼女に会うとは想像もしていなかった。
「わざわざ幻想郷の賢者さまが動くってことはよー……かなりまずい事態なのかもしれないが、解決は楽って感じかぁ? 何たって
魔理沙は手を広げて目の前の5人を合わせて示す。アリスも魔理沙と同じ考えのようで、出発前よりも余裕のある笑みが
「よぉーーし……それじゃあ、私たち6人で! 月と「終わらない夜」の異変を解決しに行くぞッ!」
魔理沙が拳を上げて士気を上げようとしたが、それに応える者はいなかった。元々、
「……何だよ、お前ら。異変解決しに行くぞ。霊夢、どーしたんだよ。まさか今更怖くなったのかよ〜〜?」
「……紫。言ってやりなさいよ」
「……そうね」
「?」
ただならぬ雰囲気を感じ取ったハイエロファント。紫は広げた扇子を閉じ、その長い袖にしまう。すると、身につけたドレスを
「……「永夜の異変」を引き起こしたのは……私よ。魔理沙」
「……ハァ?」
思いもしなかった言葉に、少し間を空けて素っ頓狂な声を上げる魔理沙。しかし、驚いたのは魔理沙だけでなく、ハイエロファントグリーン、アリスも同様であった。次に3人の頭の中に浮かんだのは「なぜ?」である。
「…ど、どういうことだよ。お前が幻想郷の夜を止めたのか…?」
「その通りよ」
「なぜ…そんなことを? あなたは幻想郷の賢者で……この地を管理するのがあなただと聞きましたが……」
「異変を引き起こした理由……ね。
ガ シ イ ィ
紫から発せられた答えをトリガーに、魔理沙が紫の襟に掴みかかった。2人分の体重がハイエロファントに襲いかかり、彼の細い体がおもむろに後退する。「うっ」と苦しげに音を上げたハイエロファントに対し、掴まれた紫は一切臆することはなく、真っ直ぐ魔理沙を見続ける。
「お前ェ……! 面白半分で異変を引き起こしたってのか! 人里を消したのもお前か!?」
「ちょ、ちょっと魔理沙! 落ち着いて! 何もそういうわけじゃあ……」
「うるせえ! お前だって……こんなやつの肩を持って異変に加担してたのかッ!?」
「は? 違うわ! こっちの話も聞きなさいよ!」
「……ちょっと……2人とも……」
こんな敵陣近くで、とアリスが止めようとするが霊夢と魔理沙の言い合いはヒートアップする。一方、妖夢は我関せず、と遠目でその様子を見つめていた。魔理沙は霊夢を何よりも認めていたからこそ、
しかし、この時。魔理沙に信じられない出来事が起こった。
バ キ イ ィ !
「い……っ……!?」
「な……!?」
「…………」
魔理沙の体が宙を舞った。殴り飛ばされたのだ。拳を振り抜いていたのは、ハイエロファントだった。吹っ飛んだ魔理沙は「信じられない」といったように打たれた頬をゆっくり撫でる。
「落ち着くんだ。魔理沙」
「……ハ、ハイエロファント……」
ハイエロファントに声をかけられて、魔理沙は気がついたようにキッと彼を睨みつけた。
「お前が……その2人を庇う理由は無いだろッ……!」
「ああ。その通りだ」
「じゃあ、何で!」
「八雲紫は「面白半分で」だなんてことは一言も言っていない。物事を一方的に解釈するな。もし本当に君の思う通りだったとしても、
「……!」
ハイエロファントの頭に蘇ったのは、エジプトへの旅路で遭遇した夢を操るスタンド「
「……悪かったよ………ごめん。霊夢。ハイエロファント……」
「……ありがとう。ハイエロファント」
「礼なんていいさ。それよりも……なぜ、異変を引き起こしたんですか?八雲紫」
全員の視線が束となり、ハイエロファントの問いとともに八雲紫へぶつけられる。まるでこの時を待っていたかのように、不敵に笑みを浮かべると、一瞬で厳しい表情へと変化した。並ではない威厳が彼女から発せられる。DIOや出会ってきた数々の猛者たちとは比べものにならないオーラは、その場の空間をねじ曲げているようで呼吸すらも意識しなければ難しくなっていた。
「異変は……もう1つ起こっていた。私はその異変を解決するべく、この世界の夜を止めたのよ。」
「も、もう1つの異変だって……!?」
「あの月。見てみなさい。ここにいるほとんどの者が分かってると思うけど、あれは本物の月ではない。偽物よ」
「やっぱりか……」
「月は妖怪にとって大切な存在。こんな異変、夜を止めてでも解決しなくてはならない!」
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ここは、竹林に立つとある屋敷の奥。大人というにはまだ早いぐらいの、腰より下まで伸びる長髪をもつ女性が正座し、全開された障子から巨大な月を眺めていた。
「……綺麗ね。本当に綺麗。
独り言、ではない。彼女が佇むのはかなり広い空間であり、1人で生活するにはかなり持て余してしまう程の広さをもつが、今、この空間は
「……イナバ……てゐたちが
何者かたちに問いかける。問いかけられた者たちはウゾウゾと
「ウフフ……嬉しいわ。みんな。それじゃあ、行ってあげて。私のかわいい……お友達……」
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「それじゃあよー。なんで人里が消えてたんだよ」
「知らないわよ。紫がスルーを強行したから……あなたは何か知らないわけ?」
「……大丈夫よ。大したことではないわ」
「いや、大したことだろ! ハイエロファント! こいつやっぱり……」
「彼女が言うなら大丈夫だ。僕たちは目の前の問題を解くだけでいい」
「ハア?何でお前はそんなに紫の肩を持つんだよ」
「君よりかは彼女についての情報に富んでるさ」
何とか元の仲を取り戻した霊夢と魔理沙、他4人はいよいよ竹林の灯りへと出発を再始した。奥に小さく見えていた灯りはもうかなり大きく、その周りにある物がくっきりと
「あれは……屋敷……か?」
「そうみたいね。でも、あんなに大きな……」
「……どうして気づかなかったのかしらね」
数人は目を凝らして、奥に見える建物の様子を探ろうとする。後ろをついて歩くハイエロファントは彼女らの周りを警戒して首を左右へ振っていた。
「どうする? ここから吹き飛ばすか?」
「物騒なこと言わないの。魔理沙。まだ推定犯人、というだけで確定してるわけじゃあないんだから」
歩き続けながら魔理沙とアリスがやり取りしているのを見て、紫とハイエロファントは少し微笑む。霊夢は「やれやれ」と呆れている様子。6人が何事もなく、奥の建物へ到着できる、と思ったその時。ハイエロファントと同じく後方を歩いていた妖夢の足が止まった。
「? どうしたんだい? 妖夢?」
「……どうしてみなさん、口をパクパクしてるんですか?」
「ハア? 何言ってるんだ? 私たちちゃんと喋ってるだろ?」
「ほら、そうやって口だけ動かして……」
訳の分からないことを言い出した。確かに魔理沙とアリスは声を出して話していた。それはハイエロファント、紫、霊夢も分かっている。妖夢だけ、
「おいおい妖夢……耳かきのし過ぎかぁ? 鼓膜がイカれちまったんじゃあねーのか?」
「魔理沙。何か変よ。冗談はそれぐらいにして、周りを警戒して……」
「? んっ……? ねぇ、紫。あなた、そんなに青臭かったっけ……?」
「……霊夢。レディに向かって「青臭い」は失礼よ」
「え? だって……いつもの香水か何かの匂いが……」
「おいおいおい……霊夢もかよ……?」
妖夢に続いて霊夢の様子もおかしくなってしまった。他5人の鼻には、特に紫の強めの香水の匂いがしつこく引っ付いている。だが、霊夢にはそれを感じられないらしく、竹林特有の青臭さが代わりに彼女の鼻を刺激していた。
「何か……ヤバい雰囲気だ……」
「え!? おい! みんなどこに行った!?」
「魔理沙…? 何を言ってるの……?」
「うう…みんなが何を喋っているのか分からない……何かまずいことが起こっているのは分かるのに……」
「ッ! は、鼻がスースーする……! あーっ、もう! 気持ち悪いわ!」
妖夢は聴覚、霊夢は嗅覚、魔理沙は視覚の異常を訴え始めたのだ。それらはハイエロファントたちにも襲いかかり始めた。
(! この匂い……霊夢の言っている青臭さ……!?)
「……5人が消えた……? どこかへ……いえ、でも声は聴こえるのね……」
「キャアッ!」
アリスが転倒……いや、うずくまった。かなりフラついており、地面に突っ伏している。生まれたばかりの鹿やキリンのように、立とうとするもすぐにへたり込んでしまう。
「アリス?大丈夫かい?ほら……手を……」
「ハ、ハイエロファント……今、
「!」
アリスがハイエロファントの手を掴んだ瞬間、ハイエロファントの視界からアリスの姿が消えた。声もだ。先程からうるさく叫んでいる魔理沙や、臭いに
いや、あれは耳だ!ウサギのような耳が生えた人間の群れ!そしてそのほとんどが少年、少女と呼べるぐらいの者ばかりであった!
(なるほど。既に囲まれていたのか。そして……あの中に、我々の五感を
ウサギたちの群れを凝視するハイエロファント。彼らの中に攻撃を仕掛けた者がいる、とにらんでいると、ついには彼らさえもハイエロファントの視界から消滅してしまった。敵を見失ったのだ。しかし、ハイエロファントは臆さない。さらに言うと、ピンチだとも思っていない。
「……君たちの正体……は、僕には一切分からない。だが、「勝った」とは思わないことだ。君たちでは僕らを倒せない」
ビシッと自身の正面を指差して言葉を放った。
そんなハイエロファントの様子を見ていたウサギたち。自分たちの作戦は完璧だ、と自負していた彼らにとって相手が未だ余裕をもった状態でいることを不思議に思う者は少なくなかった。
「な、何か……嫌な予感がするかも……」
「私も……」
「ど……どーせ
「その通り〜……私の作戦に狂いはない! ね?
「うるさいわね……ずっと能力を発動しっぱなしで疲れてるのよ……」
ウサギたちを指揮する、特段不思議なオーラを放つ2つの影。白と桃色が混ざった、
「大丈夫よ。みんな。私たちの「勝利」には変わりがない」
「さあ! みんな! あの侵入者たちをやっつけちゃってぇ!」
指差すハイエロファントを真似して、てゐも彼に向けて指を差した。それを合図に、周りの無数のウサギたちは五感が狂った6人へと突進を開始した!
相手が勝ち誇ったとき、
そいつはすでに敗北している
ドタドタと走り出したウサギたち。いつもは慣れている竹林で、今日はよく竹の根が足に絡む。くもの巣が顔にかかる……
「うわ! 根が足に!」
「危ない! 誰!? 根を切って整備しなかったの!」
「うわぁ! 顔にくもの巣が……!」
「ちょっと生温かいぞ……」
「ん? この竹の根っこ……ちょっと緑色に光って……」
「エメラルドスプラッシュ」
ドバアアア ドバアアア
ドバアアア
ドバアアア
バ シ ャ ア ア ア ア ン
竹の陰、地面、空。あらゆる方向から緑色の結晶体が無数に飛んでくる。ウサギたちは奇襲に対応しきることができず、てゐ、鈴仙共々、エメラルドの激流に呑まれて雨のように地面へ墜落していった。
ハイエロファントは妖夢が足を止めた時点で触手の罠を張り巡らせていたのだ。
「君たちの作戦には恐れ入ったよ。能力もね。だが、敵を知らなさ過ぎた。勉強不足だったな」
やはりハイエロファントには罠が似合う、とつくづく思います。
竹林の屋敷へ到着した一同。送り込まれた第一の刺客を撃破したが、次に立ちはだかるのは一体……?
屋敷の主とその"友達"とは?
お楽しみに!
to be continued⇒
あくまで参考までに、ということで。
-
東方をよく知っている
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ジョジョをよく知っている
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東方もジョジョもよく知っている
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どちらもよく知らない