幽波紋の奇妙な幻想 《Drifted Destiny》   作:右利き

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久々に長めのお話を書きました。



13.小さき収穫者たち

「……お? みんなが戻ったっ!」

 

 ハイエロファントが張り巡らせた触脚でウサギたちを掃討し終わった瞬間、魔理沙の元気な声が響いた。ハイエロファントを除く他の4人も五感の調子が戻ったようで、辺りを見回して一息つく。ハイエロファントが5人を先導するために前に出ようとした時、彼の腕をアリスが掴んだ。

 

「……どうしたんだい?アリス?」

 

「いや……その……()()()()()()、もしみんなが知らなかったら、内緒にしててよ……」

 

「……あ、ああ……」

 

 先程の戦いの中で、五感だけでなく平衡感覚まで狂わされたアリスはハイエロファントに助けを乞うたのだが、どうやらそのことを恥ずかしく思っているらしい。全く気にしていないハイエロファントは彼女に返事をすると、魔理沙たちに「行こう」と告げてついに竹林の屋敷へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 玄関の戸はすんなり開いた。そこから先は通路が二手に分かれており、どちらの先も視認することができない。外から見た大きさよりも、屋敷内部はかなり広くできているのだろうか?もしくは……()()も何者かの仕業だというのだろうか。

 

「通路が2つに分かれてんなら……別行動しかないな」

 

 魔理沙の言葉に全員が頷く。さらに霊夢の提案で話し合いでチーム分けを行ったところ、右手進行が魔理沙、妖夢、ハイエロファント。左手進行が霊夢、アリス、紫、という組み合わせとなった。パワーバランス、頭脳面で考慮した結果である。

 

「うし。この組み合わせなら、まず負けることはねーな」

 

「そうね。黒幕と出会ったら、真っ先に「叩く」! それじゃあ、また後で落ち合いましょう」

 

「おう!」

 

「ああ…………ん?」

 

 霊夢と魔理沙の掛け合いに反応したハイエロファント。ふと、自身の行く左手の廊下へ目をやると、不思議な存在を見つけた。タッタッタッと走る、小人のような影。しかし、その全容はハイエロファントの視界に完全に映る前に、先の闇へと姿をくらませてしまった。

 

「どうしたんだ?ハイエロファント。何か見つけたのか?」

 

「……いや……紫さん、幻想郷には小人はいるんですか?」

 

 ハイエロファントは紫へ視線移すことなく、闇を見つめて問いかけた。紫は別に不思議がることも、「何を言ってるんだ、こいつは」と呆れる様子も見せず、表情筋を少しも動かすことなく「おそらく」と答えた。どちらにせよ、それほどメジャーな存在ではないようだ。ハイエロファントは自身の見た影を頭の隅へしまい込むと、魔理沙と妖夢と共に他3人と別行動を開始した。

 

 

 

 

 3人と別れて十数分。彼らの歩く廊下は未だ終わりを告げることなく、一方向へと、ただただ続いている。進み出した頃は、右側の壁に月明かりが差し込む小窓がいくらか存在していたが、今歩いている地点は外からの一切の明かりを遮断していた。

 だからといって、彼ら3人は無様に手探りで歩を進めているわけではない。どちらにもだが、魔法使いがいる。こんな時のため、と言わんばかりに魔理沙は魔法で橙色(だいだいいろ)の光の玉を宙に浮かべて辺りを照らしていた。

 

「くそ〜。全然終わりが見えないぞ」

 

「うん。やっぱりこのお屋敷、何か変よ。何かしらの"術"がかけられてるのかも」

 

「正体が分かれば、こんなチンケな術のトリック、簡単に解いてやるのにさ。あっ。そういえば、ハイエロファント。紫に小人のこと聞いてたけどよ、何かあったのか?」

 

 思い出した魔理沙がハイエロファントの背に問いかけた。先程から、ハイエロファントは魔理沙と妖夢の前を歩き続けて何かを探しているようなそぶりをしている。彼は魔理沙の方を振り向くことなく、応答した。

 

「……いや、さっき変な……小人を見た気がするんだ」

 

「こんな豪勢な屋敷にかぁ〜?」

 

「確証はないが、ゴキブリだとか虫ではないことは確かだ。人型をしていたかは怪しいが……」

 

「もしかして、ハイエロファントさんと同じスタンド……?」

 

 中々鋭いところを突く。ハイエロファントも、少しだけだがそう思っていたところだ。小さい、小人のスタンド。魔理沙はそれを頭の中で想像してしまったらしく、いきなり吹き出した。妖夢は()()を避け、ハイエロファントは呆れ気味だ。

 

「汚いわ。魔理沙」

 

「いや……だってよー! 小人のスタンドだろ? 絶対(ぜってー)弱いんじゃあないのかっ!?」

 

「魔理沙。小さいからといって(あなど)ってはいけないぞ。人の目では見えないぐらい小さなスタンドでも、()()()()()()()非常に恐ろしい」

 

 恋人(ラバーズ)。ハイエロファントの言葉が指しているのは、このスタンドである。

 人間の血管の中にまで入れてしまうような、極小のスタンド。髪の毛一本ですら動かすことができず、本体である"鋼入りのダン(スティーリー・ダン)"も「史上最弱のスタンド」と称していた。が、なんとこのスタンド、目に見えないだけにあらず、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。これによって、花京院の仲間であるジョセフ・ジョースターの体内に侵入し、本体とダメージを共有する、という能力を存分に発揮してジョセフと承太郎を苦しめた。

 

「アハハ……ハァ〜ア。いや、悪い悪い。つい笑っちゃったよ……」

 

「油断しないでね。ハイエロファントさんの言った通り、ここにいる"小人"も何か恐ろしい力を持ってるかもしれないから」

 

「はいはいよ」

 

 適当な返事をして、魔理沙たちは未だ終わりの見えない廊下を歩き続けた。

 

 

 

 進み続けてさらに数十分。ついに右手側に中庭と思われる場所へ繋がる戸が見えてきた。戸の下部は加工された木の板が張られており、上部は薄い硝子張りとなっている。そこから、偽の月の光が廊下へ差し込み、暗黒の通路を明るく照らしていた。

 

「やっと終わりかと思ったら、これは……庭かぁ?しかも結構綺麗な……」

 

「白玉楼の庭とちょっと似てるわ……ここにも庭師さんがいるのかな」

 

 

タッ タッ タッ タッ ……

 

 

「!」

 

「……足音か……2人共、構えるんだ」

 

 魔理沙と妖夢の2人が中庭に気を取られていると、先程自分たちの歩いてきた方向から何者かの走る音が響いてきた。ハイエロファントはそれにいち早く気付き、2人へ警戒するよう声を掛ける。音の大きさから思うに、まだ3人との距離がそこそこ離れていると見た。

 

「敵……か? どう思う? ハイエロファント」

 

「もし敵なら、あのウサギたちの誰かだろう。わざわざ走って追ってくるだなんてこと、普通はしないはずだ」

 

 ハイエロファントは先程撃破したウサギの誰かだと予想を立てた。中でも、力を持っていそうなセーラー服の女か、直接指揮していた小さい女か。しかし、ハイエロファントの予想は思っていたよりも早く外れた。足音の主は、すぐに姿を現したのだ。

 

「! これはっ!」

 

 走ってきたのは、小さな、とても小さな存在。ハイエロファントが言っていた小人?いいや、違う。間違いなく、「人」ではない。首が存在せず、ずんぐりとした体型に、計6本の手足。その臀部(でんぶ)からは昆虫を思わせる"腹"のような器官が伸びており、蜂のように黄色を基本とした横縞模様を体に引いていた。

 その小さな存在は、彼の存在に驚愕する3人を無視して、廊下の先へと走っていった。

 

「な、何だぁっ!? 今のちっさいのはっ!」

 

「もしかして、あれがハイエロファントさんの言ってた小人の正体……?」

 

「追いかけてみよう。もしかしたら、異変の元凶の元へと辿り着けるかもしれない。」

 

 

 

ゴ オ オ オ オ オ オ ォ ォ 

 

 

 ハイエロファントが2人を先導して、謎の小人を追跡しようとした瞬間、廊下に轟音が響き、同時に大きく長い振動が3人を襲った。

 

「今度は何だ!」

 

 地響きのような轟音はドドドドドと大勢の何かが走ってくるような音へと変化する。3人は廊下の先から小人が走ってきた音が響く方を見やると、そこには驚くべき光景が。

 3人の方へなだれ込んできたのは、先程の小人の群れだった!その数、300はくだらない。川を()く激流のように、小人たちの群れはハイエロファントたちを飲み込んでしまった!

 

「ぐわあっ!? ヤバい! こいつら、結構パワーがある……!?」

 

「! まずいです! みんながバラバラに!?」

 

「ふ、2人共! 僕の触手に掴まるんだッ!」

 

 ハイエロファントは咄嗟に魔理沙と妖夢へ触手を伸ばして救出を試みる。が、それはついに叶うことはなく、全員がバラバラに押し流されてしまった。

 

 

 

 

____________________

 

 

 

「今、何か音がしなかった?」

 

「……音?」

 

 変わって、こちらは霊夢サイド。小人の群れに襲われた魔理沙たちのことなどつゆ知らず、終わりなき暗黒の通路を着々と突き進んでいた。こちらも照明係は魔法使いであるアリスが担当している。アリスと紫は特に気にも留めていないが、霊夢だけ()()()を聴いていたようだ。

 

「聴こえてなかったの? 結構大きい音だと思ったけど」

 

「多分、魔理沙が何かやらかしたんじゃあないかしら……そうとしか思えない……」

 

 霊夢とアリスが話に夢中でただ歩を進めている中、突如紫の足が止まった。何かに気付いたのか、ゆっくりと後方を振り返る。

 

「……どうしたの?紫」

 

「…………(やっこ)さんがいらっしゃったみたいよ」

 

「敵っ!?」

 

 紫がそう言うと、霊夢とアリスも同じように来た(みち)を向いて構える。すると次の瞬間、3人の見据える廊下の奥から、壁に付けられた松明が次々と点灯し始めた!ボッボッと、誰かがマッチかライターで着火しているのではない。魔法か、何かの力であろうか。霊夢たちが警戒心を強めていると、灯りのついた廊下の奥から、走ってくる何者か。

 

「! 何か来たわ。あれは……」

 

「あっ。さっきの(うさぎ)!」

 

 息を切らしながら走ってきたのは、先程6人を襲ったウサギたちの1人、鈴仙と呼ばれていたセーラー服の者だった。エメラルドスプラッシュを受けて、キレイだった服はボロボロだ。

 

「ハア、ハア、やっと見つけたぁぁーーーーっ!」

 

「ちょうど良かったわ。何もない長いだけの廊下で飽き飽きしてたところよ。さあ、掛かってらっしゃい!」

 

 霊夢は「待ってました」とばかりに札とお祓い棒を構える。しかし、それを遮るように、彼女の前に1本の腕がにゅっと横から生えてきた。アリスだ。

 

「え? アリスがやるの? 私にちょうだいよ」

 

「……霊夢。悪いけど、私にはあの兎を倒さなくちゃいけない理由があるのよ」

 

「ハア?」

 

 アリスの瞳はどことなく暗かった。因縁の敵を見つけたように、(うら)みと嬉しさを孕んでおり、霊夢も少し驚いた。確かに、アリスは「怒らせると怖いやつ」と何となく思っていたが、それは()()ではなく、()()()()意味で怖いのか、と改めて認識した霊夢であった。

 

「やらせてあげましょうよ。霊夢。せっかくやる気が出ているのに、邪魔しては悪いわ」

 

「いや、私もやる気……」

 

「ほら、行きましょ。それじゃあ、アリス。後は任せたわ」

 

「ええ。早く行って、元凶を倒してきちゃって!」

 

「ちょ……ちょっと、紫!」

 

 紫は抵抗する霊夢を抱えると、明るくなった通路を低空飛行して進んでいった。鈴仙がそれを追おうとするが、その前にアリスが立ちはだかる。やる気満々のアリスを目にし、鈴仙はその様子を鼻で笑う。

 

「ふふ。また、()()()みたいにされたいのかしら?結構可愛かったですよ〜」

 

 鈴仙はアリスを煽るが、アリスは俯いた状態のままでいる。どうしたのか、と鈴仙がアリスに近付こうとすると、アリスの体から赤いオーラが溢れ出し始めた。

 

「! もしかして、魔法使いの魔法……初めて見れるのかしら。」

 

「フフフ。さっきはありがとう……あの時のお礼に、あなたをブッち切りで打ちのめしてあげるわ」

 

「……!」

 

 

 オーブというものがある。オーブとは、よくカメラの写真などに写り込む"光の玉"である。一般的に「ほこり」だったり、「霊の魂」だと言われているのだが、後者の場合、そのオーブの色によって体験者にどんな影響を及ぼすのか、分かるようだ。例えば、「白色」は浄化された魂で、何ら影響はない。「黄色」は守護霊を表し、当事者の安全を。

 そして、「赤色」は怒り。当事者に不吉な出来事を……

 

「あなたをこてんぱんにしないと、「赤っ恥のコキっ恥」をかかされたこの気分がおさまらないのよ」

 

「…………ッ!」

 

 アリスから発せられるオーラは赤く染め上がり、彼女自身の闘気そのものを表しているように揺れる。その威圧に圧された鈴仙の目は、アリスの背後から出現する複数の「小さな人間」を映し、ブラックアウトした。

 

 

 

 

____________________

 

 

「うっ……ハッ……!」

 

 場面はまた変わり、小人たちの群れに押し流されたハイエロファントは目を覚ます。上体を起こし、周りを見渡すが他の2人の姿はない。それに、彼のいる場所は既に屋敷内ではなく、屋外の竹林だった。

 

「やつらに……弾き出されたのか……? それに、あの屋敷すらも見えない。どこまで連れてこられたんだ……」

 

 ハイエロファントは立ち上がり、見失った屋敷へ戻ろうと、少し朦朧(もうろう)としながら歩き始める。が、()()がそんなことを見逃すはずがない。ハイエロファントを()()()()連れて来たのだから、当然のことである。

 

 

 ガサ  ガサ  ガサ  ガサ  ……

 

「!」

 

 近くの低い茂みから、竹の陰から、上空から、やつらは現れる。小さい襲撃者たち……いや、彼らの名前の由来は「収穫」。彼らは"命の収穫者"である。

 

「こいつら……」

 

 

「おらたちの名前はっ!」    「ししし」

        「"ハーヴェスト"!」 

          「お前っ、動くんじゃあねーど!」

  「何だってできるんだどーッ!」 「ししし」

 

 

 ハーヴェスト。「おら()()」。ハイエロファントも初めて聞く名前、そして特性を持っているスタンドだった。基本、スタンドは1人につき1つだけ。

 しかし、このハーヴェストは違う。群体型のスタンド!何匹もいて、初めて1つのスタンドなのだ。

 

 呆気に取られているハイエロファントに、ハーヴェストたちは突進を開始する。あらゆる方向から迫ってきている中、ハイエロファントは棒立ちの状態を貫く。

 

永遠亭(えいえんてい)のみんなの邪魔はさせないどっ!」

 

『お前はここで再起不能(リタイヤ)だどーッ!!』

 

「やはり、君たちも敵か……エメラルドスプラッシュ!」

 

 竹林の中が緑色に輝いた。

 放たれたエメラルドはハイエロファントに直撃することなく、辺りに密集したハーヴェストの群れを薙ぎ払う。これには体の小さな彼らは(たま)らず、「うわあああ」、「ひイイィィ」と叫び声を上げながら砕け散っていった。

 

「あれだけいたのに、罠を張っていることに気付けなかったのか? ざっと見たところ、今この場にいたのはおよそ30体ほどのように見えたが……屋敷の中では今の10倍の数はいたはず。他にも……ッ!」

 

 自身の後ろに何者かの気配を感じ、ハイエロファントはうなじ部分を即座にガードした。

 

 

ザ シ ュ ウ ッ ! 

 

「うぐぅっ……ッ!」

 

 ガードに使った右手から、痛みとともに鮮血が飛び出す。ハイエロファントは元いた地点から跳び退き、改めて負傷箇所を確認する。すると、彼の右手の中指の中間、その端が抉られていた。首筋にもチクリと痛みを感じて触れてみると、そこからも(わず)かに出血していた。

 

「今度は……さっきの倍ぐらいか……」

 

 傷を付けられた場所へ顔を上げ、向けてみると、次は50体以上のハーヴェストが滞空していた。ウゾウゾと(うごめ)き、可愛さがほんの少しだけ存在していた外見にも関わらず、気持ち悪さを感じさせてくれる。

 

「しかし、どれほどいようが、お前たちに負けるわけにいかないッ! エメラルドスプラッシュ!」

 

 ビッとハーヴェストたちを指差し、エメラルドスプラッシュを放とうとするが、何も起こらなかった。おかしい。それに加えて、()()()()()()()()()()()()()

 

「お前が探しているのはコレのことかどー?」

「メロンみたいだど」

「ヘビみたいで気持ち悪いど〜」

 

「な……っ……」

 

 なんと、数体のハーヴェストがハイエロファントの触手を切断し、彼の目の前へ持ち出してきていたのだ。切断面は真新しく、プシュッ プシュッと栓の壊れた蛇口に付けたホースの如く、小刻みに血液を噴き出していた。不意の出来事に、ハイエロファントは目を丸くし、そして認識した。こいつらは、強い。

 

「お前のことなんか全然怖くなんかないど〜」

輝夜(かぐや)が喜ぶど〜」「帰ってまた遊ぶど!」

 

「……かぐや……君の主の名前か」

 

「むっ! 何で分かったんだどーっ」

 

「さっき自分で言ったじゃあないか……あまり()()()()()()()()()()のかな……」

 

「……そこまで言われて黙ってるおらたちじゃあねーど! 行くぞ! みんな!!」

 

 空中で静止していたハーヴェストたちは、内1体の掛け声によって同時に動き出した!対するハイエロファント。今は何もしていない。罠も張っていない。

 ただ、焦っていた。

 

(まずい……自分で煽っておいて何だが、まだ何も対抗策を思いついていない……ッ!!)

「くぅ……ッ!!」

 

(とど)めだど!! くらえェェーーッ!』

 

 

ド グ オ オ ォ ォ ン 

 

「な……これは……ッ!?」

 

 ハーヴェストたちが束となり、襲撃者を徹底的に追い詰めようとする大型蜂の如くハイエロファントに飛びかかっていった直後、突如現れた業火によってハーヴェストたちは焼き払われた。その跡には、彼らの残骸は残っていなかった。炎、といえば……

 

「マ、マジシャンズレッド!?」

 

「ようやく会えたな。ハイエロファント」

 

「どうしてここに……!?」

 

「異変解決に乗り出したのは、お前たちだけではない、ということだ。他にもレミリアと咲夜、クリームも来ている」

 

 助けに来てくれたのはマジシャンズレッドだった。聞けば、竹林の中に緑色の光を見て駆けつけたという。とんでもない助っ人だ。特にクリーム。彼に任せてしまったら、かなり危ないと思うが、そのストッパーとしてマジシャンズレッドと咲夜が来ているのだろうか?

 

「とにかく、助かりました。敵はあれで全てではないと思いますが……」

 

「ああ。どうやら、そのようだ。見ろ。再びやって来たぞ」

 

 マジシャンズレッドが指差す竹林の奥から、再度ハーヴェストの群れが押し寄せて来た。ハイエロファントは掌を合わせ、M(マジシャンズ)レッドは腕を交差させて大技を放つ構えをとる。そして、叫んだ。

 

『エメラルドスプラッシュ!!』

 

『クロス・ファイヤー・ハリケーン・スペシャル!!』

 

 

バ シ ア ア ン ! 

 

ボ グ オ オ ォ ン ! ! 

 

 

 放たれた無数のエメラルド、アンク型の炎はハーヴェストたちを次々と殲滅(せんめつ)していく。伊達(だて)に日本からエジプトへ1ヶ月以上費やして進み続けたわけではない。その後も何十体ものハーヴェストが襲いかかってくるが、2人はその全てを焼き払い、吹き飛ばし、消滅させていく。

 

 もう200体は倒したか、という時に、突然マジシャンズレッドの様子がおかしくなり始めた。順調にハーヴェストを倒している中、いきなり膝をついたのだ。苦しそうに(もだ)えているわけでも、息が上がっているわけでもなさそうである。

 

「! 大丈夫ですか!? マジシャンズレッドッ。」

 

「ぐ……何か……おかしいぞ……この体の熱、フラつきよう……まさか……酒か……!?」

 

「さ……酒だってっ!? そんなバカな……!」

 

「ししし」  「勝手に持ってきたのかどー?」

「怒られるど!」「大丈夫大丈夫!」

「今持ってきたこの酒……お前たちの体に入れてやったど。酔っ払っちゃってフラフラかど〜?」

「こうなっちゃったら、もうおらたちの勝ちだど!」

「やったど!」   「やったど!」

 

「な、何ィッ!?」

 

「う……僕まで……アルコール……を……」

 

 膝をついて頭を垂れる2人の頭上、酒瓶を数体で抱えたハーヴェストたちが「勝利の喜び」を(うた)う。マジシャンズレッドとハイエロファントの足には、それぞれ3体ほどハーヴェストがくっついており、彼らの口部にある"針"で酒を直接注入したようだ。

 

「まずい……酔って焦点も合わない……」

 

「うおおぉお! C・F・H(クロス ファイヤー ハリケーン)!」

 

 ハイエロファントが酒による酔いに苦しむ中、マジシャンズレッドは果敢(かかん)にハーヴェストに大技を放つ。が、酒の効力は(すさ)まじく、M(マジシャンズ)レッドを離れた炎はハーヴェストたちを避け、何本もの竹を薙ぎ倒して消えていってしまった。

 

「おらたちは()()なんだど!」

「お前たちなんか、あっという間に倒せるんだど」

「最後の止めだど!」

 

「ま……マズい! 今の状態では、まともに防げないぞ……!」

 

「くぅ……っ……」

 

 ハーヴェストたちがジリジリとにじり寄ってくる。さすがに為す術なし、と2人が再起不能を覚悟したその時!

 

「幻象.ルナクロック!」

 

 ザグ! ザク ドスゥ! ザグザク ザグ ! 

 

「うわあああ!」「ひィィィ!」

「うぎゃああぁ!!」

 

「! ……このナイフは……!」

 

「さ、咲夜!?」

 

 酔っ払ってしまった2人へ飛びかかったハーヴェストの群れは、突如現れたナイフの雨によって一掃された。この光景にハイエロファントが驚いていると、彼らの目の前に咲夜が降り立ち、夜風に(なび)く髪をかき分けて、2人へ視線を移した。そして、物珍しそうにキョトンとした顔でマジシャンズレッドに問いかける。

 

「あなたが追い詰められているなんて……よほどの強敵だったのかしら。」

 

「それは……()で言っているのか……?それとも、イヤミか……?」

 

「とにかく、助かりました。もしかして、さっきのM(マジシャンズ)レッドの炎で場所が分かったんですか?」

 

「そーよ。そして、私以外にもここに来てるわ」

 

「……? レミリア嬢のことかい?」

 

「いいえ。あなたのお仲間かと思うけれど……」

 

 咲夜がそう言うと、近くの茂みがガサガサと動いた。敵かと思ってハイエロファントは構えをとるが、そこから現れたのは妖夢。頭や服、そこら中に葉っぱを付けており、竹林の中をかなり歩き回ったと思われる。彼女は3人の顔を見ると、心底安心したように、表情が明るくなった。

 

「あ……良かった。みなさんここにいたんですね!」

 

「……誰だ?この少女は……?」

 

「魂魄妖夢……詳しい紹介は後でするわ。マジシャンズレッド。そして、見て。妖夢を()()()()()のか、敵がさらに来たみたい」

 

 咲夜が警戒を(うなが)すと、妖夢の背後から「待ってました」と言わんばかりにハーヴェストたちが飛び出す。ハイエロファントとマジシャンズレッドが妖夢へ「危ない!」と声を掛けようとした時、大量のナイフと共に、収穫者たちの影が落ちた。妖夢は腰に差した刀を一本、いつの間にか抜刀していた。

 

「さて……まだ続けるつもりかしら? おチビさんたち?」

 

「言っておくと、私も咲夜もかなり手強(てごわ)いですよ」

 

「ひィィ!こいつら、強いど!」

「逃げろーッ」「うわああ!」

「まっ、待ってくれど!」

 

「逃がしは……!」

 

 逃走を開始するハーヴェスト。それを追跡し、斬り伏せようと走り出す妖夢だったが、彼女はすぐに足を止めてしまった。彼女にとって、驚くべき光景を目にしたからだ。

 彼女が今手にしている刀は、「楼観剣」。妖夢が持っている刀の内、長いものの方である。そのため、内短い方の刀は腰に差してあるはずなのだが、それが今、彼女の目の前で地面に突き刺さっているのだ。妖夢は()()()()抜刀した覚えはない。

 

「な……何で……?」

 

「どうしたの? 妖夢?」

 

「わ、私の「白楼剣」が……いつの間にか! 地面に刺さってるんです!」

 

「何だって……? 何かおかしなことが……? 妖夢! そこから離れるんだ……ッ!」

 

『そうだ……早く逃げるんだな……ハーヴェスト』

 

「!」

 

 異変に気付き、警戒するハイエロファントと妖夢。咲夜と未だ酔っているマジシャンズレッドは周りを見渡す。しかし、突如響いた謎の声の主と思しき者は見えない。

 

「一体、誰だ……!? どこにいる……!?」

 

 ()いずった状態のまま、ハイエロファントは音、景色、振動、匂い、全てを頼りに敵を探すが、何も無い。本当に何も、手がかりが無い。ハーヴェストたちの気配も感じない。ただ聴こえるのは、夜風で竹が揺れる音。そして、バキバキと……

 

 

 

バ キ バ キ バ キ ィ ! 

 

 

「な……何だ! この音は!?」

 

「木が軋むような……」

 

「! これは………落ちてきたのは……これは、木片……ッ!?」

 

 轟音に混ざって空から降ってきたのは、家屋に使われているような木材。しかも、朽ちているものだ。咲夜はそれを拾い上げる。すると、それをトリガーにしたかのように、上から次々と同じような木片が降ってきた!

 

「あ、当たったら、ひとたまりもないですよッ!」

 

「咲夜さん! 退避だ! 時を止めて……!」

 

「!! 上から降ってきたのは……木片では……いや、あくまでアレの()()()()()のか!?」

 

 

 

ゴ オ オ オ オ ォ ォ 

 

 

 

 

 上空から降ってきたのは、木片の雨ではない。

 降ってきていたのは、巨大な、木造家屋だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




仗助も言っていた通り、ハーヴェストって強いですよね。
しかし、群体型スタンドで一番好きなのはピストルズ……



突如現れた巨大家屋。一体誰が空から落としてきたのか?
敵は何者なのか?
お楽しみに!
to be continued⇒

あくまで参考までに、ということで。

  • 東方をよく知っている
  • ジョジョをよく知っている
  • 東方もジョジョもよく知っている
  • どちらもよく知らない
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