幽波紋の奇妙な幻想 《Drifted Destiny》 作:右利き
久々に興奮しました。
「慧音さんッ! こいつぁ、一体どういうことなんだ!」
人里内で突如発生した大火事が
「……返す言葉もありません……」
「あのバケモノを逃がしちまう、大火事を許す、人は死ぬ! 正直、
「……!」
「待ってください。責任は僕にあります。僕が
「やかましいッ、人外は引っ込んでな!」
慧音が責められるのを見かね、ハイエロファントが自分へ
「あーあー。犯人はあいつじゃあねぇってことはよく分かった。しかしよ。だからと言って俺たちの里をめちゃくちゃにされて黙ってられるわけがねぇだろう? それとも何だ? 俺たちがアンタら、スタンドのことを気味悪がるのが気に入らず、結託して放火したのかァ!?」
「なんだと、てめぇッ!!」
消防団の男の放った言葉に反応し、今まで黙って見ていた魔理沙が飛びかかった。男の襟を掴む手と彼女の額には血管が小さく浮き出ており、完全にプッツン状態だ。
「ハイエロファントはそんなくだらねぇことをするやつじゃあねぇッ!! それもこれも、キラークイーンと本当の犯人がやったことだし、やつらが悪いんだ!」
ハイエロファントと出会って1ヶ月ほど、共に過ごしてきた魔理沙は幻想郷の中でハイエロファントを1番よく知っている。彼女だからこそ、ここまで怒れた。
「くそ……! 離しやがれっ、魔理沙! お前らの関係なんか知ったことじゃあねぇんだ!」
「なんだとォーーッ!?」
「いいかッ! あいつらスタンドは"
「ッ…………このッ!」
ギリギリと歯が
「いい。止めるんだ。魔理沙」
「! 何言ってるんだ、ハイエロファント! こんなやつ……」
「魔理沙。僕だって、自分とは全く違う存在と出会ってしまえば、彼らと同じく怖いし、警戒だってする。ましてや、それが命を狙ってくるときた。同族に
「…………」
魔理沙はハイエロファントの言葉を聞いて、男の襟から手を離す。「くそっ」とセリフを吐き捨て、男もハイエロファントの方を向いて続く言葉に耳を傾けた。
「……『僕が怖い』。だったら話は簡単だ。僕は
「なっ……ハイエロファント……」
「何ィッ!?」
ハイエロファントの口から出た予想外の言葉に、魔理沙も思わず気分を悪くしてしまう。いや、正確に言えば、ハイエロファントの気分を害してしまった、と自分の力不足や人里の人間たちのことについて
が、この発言を聞いて1番声を上げたのは消防団の男であった。
「お……お前、火事の件についての責任はどうすんだよ……!」
「責任か。それじゃあ、その
「そ、そういうことを言ってんじゃあねぇ!」
「ハイエロファント……お前がいなくなったら、犯人はどうすんだよ!」
「魔理沙、君は僕より強いだろう。慧音さんもいるし、実力的には申し分ない。それに、昨日彼らは言っていた。『人里は自分たちの手で守る』と。きっと犯人を捕まえる策や勝てる算段でもあるんだろう。だったら、僕がいてもいなくても同じだと思わないか?」
「……ハイエロファント……」
「そういうことで、僕はあなた方に
ハイエロファントは体の向きを180°変え、人里の出口のある方へと足を進め出した。しかし、ここで魔理沙がハイエロファントを止めようと、男を押し退けて躍り出る。
「待ってくれよ、ハイエロファント! たしかに
「当て身」
ド ス ッ
ハイエロファントの声とともにバタン!と音を立てて魔理沙が倒れた。よく見てみると、ハイエロファントの右腕が
ハイエロファントは魔理沙の気絶を見届けると、彗音の方を振り返った。
「慧音さん。魔理沙は見ての通り、かなり暴走しやすい
「! 待つんだ、ハイエロファント! どこへ……?」
「……では」
ハイエロファントは一度止めた足を再び動かした。それを見送る慧音は、スタンド戦のスペシャリストであるハイエロファントが離脱したことにかなり焦り、同時に何も分かっていないこの状況でさらなる犠牲者が出ることを
____________________
慧音たちと別れ、日の光が届かない人里のとある小道。ハイエロファントは目的地もなく、ただ
「……ようやく現れてくれたか。かなり探したよ。キラークイーン」
「…………」
ハイエロファントに呼びかけられ、彼の数メートル先の陰からキラークイーンがぬっと姿を現す。相変わらずの無表情で、大きな2つの瞳がハイエロファントをジーっと見つめている。しかも、何やら竹で
「……私も君を待っていた……ちょっと、君に訊きたいことがあったんだ」
「…………」
キラークイーンの発言に、ハイエロファントは
「私もこの地にやって来て日が浅い……だから、君から幻想郷のことについて詳しく知っておきたいと思ってね……」
キラークイーンは口を小さく開閉し、他の表情筋をピクリとも動かすことなく淡々と言葉を述べる。ネズミを
「分かった。君の質問には
「…………ああ。構わないよ。ギブアンドテイクだな?」
キラークイーンは「YES」と意思を示すが、ハイエロファントはキラークイーンが口を開いた瞬間、彼に対しての信用が構築されることはなかった。
なぜか? キラークイーンは一瞬
しかし、彼は言葉では
____________________
「……僕の持っている情報はこの程度。次は君の番だ。キラークイーン。君のことを教えてくれ」
「本体と……私自身の能力について、だな? 私の本体は『吉良吉影』。『カメユー』というチェーン店の会社員だった。しがないサラリーマンさ……いきなり首に刺さった「矢」によって、
「…………」
キラークイーンからの質問にはあらかた答え、今度はハイエロファントの要求が応じられる番。キラークイーンの能力と本体のことについて本人の口から訊き出すことはできたが、ハイエロファントはそのほとんどを信じてはいない。
スタンドというのは、その本体の奥底に眠る「本質」が形をもったもの、と言ってもよいわけだが、爆破の能力をもつスタンドだって? そんなスタンドを操る本体が
「……君のことはよく分かったよ。その上で気になったのが……その左手で掴んだネズミだ。見たところ、まだ生きているようだが……?」
「これか」
キラークイーンは左手を少しだけ持ち上げ、全身を圧迫されて苦しそうに呼吸しているネズミの顔を
「……話してやってもいいが、その前に私も君に訊きたいことがもう1つだけある」
「なんだい?」
「君、さっき人里の人間たちに『行方不明事件には関わらない』と言っていたが、それはどういう
「……立ち聞きしていたのか。趣味が良いとは言えないな」
キラークイーンはハイエロファントと魔理沙たちが別れた場にいたというのだ。彼の様子からして、昨晩から今朝までの人里の情報はほとんど
「……君も
「フフ……違いないな」
キラークイーンはハイエロファントの返答を聞くと、何かが可笑しかったか、満足したのか、相変わらずの無表情のまま声を
こぼれる笑みが引いたキラークイーンは近くにある木箱に
「さて、君に話して有意義なことであるのは分かった……実のところ、
「何?」
「昨晩、我々は何者かの攻撃を受けただろう? その正体は私が既に掴んでいる。こいつとは違う、別のネズミだ」
「……それじゃあ、そのネズミは何なんだ?」
「それはこれから分かる……」
キラークイーンはそう言うと、竹籠から小さな
すると、
「ギッ……ギィッ……」
ドロオ〜〜 オッ
「! これは!?」
ネズミがさらに苦しそうに一瞬
「キラークイーン、これは……? いや、これこそが!」
「そう。行方不明事件の犯人の武器だ。昨晩撃ってきたものを回収したのだが……私が防いでいて良かったな?」
キラークイーンの言う通りだ。彼があの時、石をぶつけて弾丸を撃ち落としていなければ、このネズミと同じようにしてハイエロファントもドロドロになっていただろう。想像して、思わずゾッとする。
「だが、敵のネズミは何なんだ? 妖怪か? それともスタンドなのか?」
「さあね。それは私にも分からないが、
「何ッ!?」
ハイエロファントは思わず
「キラークイーン。いい加減、君の目的を教えてくれないか? どうしてそこまでのことをする?」
「……どうして、だって? そんなもの、決まっているだろう。私からしても
「……なるほど。しかし、こちらもその程度で構わない。僕もあまり君とは関わりたくはないので…………それで、これからどうするつもりだ? 手は組んだが、まさか情報だけ開示して1人で"ネズミ取り"をするのではないんだろう?」
「まさか……」
ハイエロファントのイヤミっぽい言葉に、嘲笑を込めた返事をする。キラークイーンは竹籠から筒状に丸めた大きめの地図を広げ、ハイエロファントに赤い枠で囲んだ地点を示した。2人のいる場所から近いわけではなく、歩いていけば、30分はかかるであろう。それでも大通りからは離れているわけではなく、人目にはそこそこつきそうな場所ではある。ここがネズミのテリトリーである、とキラークイーンは話した。
「この赤い枠の上に点があるだろう? ここに何があったと思う?」
「何、だって? ……糞か何かかい?」
「……ドロドロに溶かした
淡々と話しているが、かなりえげつない光景である。実際に目で見たらその場で
「力を
「…………」
しかし、ここで1つ疑問が生まれる。なぜキラークイーンは無事なのか? テリトリーに入られておきながら、無事で逃す生物はそういないはずだ。仮に無傷だったとしても、「戦った」という事実は述べそうなものだが、キラークイーンは一切話さない。ハイエロファントはついに質問を投げかける。
「キラークイーン。君の口ぶりからすると、ネズミのテリトリーに入っていったようだが、その時は攻撃を受けなかったのか?」
「…………」
一時、沈黙が場を制する。禁断の質問であったのか? そう思いきや、キラークイーンは口を開いた。
「……敵のネズミはかなり賢い。素人目から見て、犯人が特定されづらいようにある程度証拠を消すこともやってのける。だからこそ、だ。相手は
「そうか……厄介だな……」
ハイエロファントは腕を組みながら親指を顎に添え、ネズミへの対抗策を考える。それを見たキラークイーンは、ドロドロに溶けたネズミを地面に放り、ハイエロファントへこう言った。
「……既に作戦は考えてある。私はこれから罠を張る。君は適当に
「何? 2人でやるのが1番じゃあないか?」
「我々は
「…………」
キラークイーンは静かに語った。ハイエロファントはキラークイーンの瞳を見つめ、その真意に迫ろうとするが、彼の意志は堅いよう。抱く意思は明白だった。こうして話してみて、キラークイーンが気難しいスタンドであることが分かってきていたため、ハイエロファントはこれ以上何かを言うのは無駄だと判断して口を紡ぐ。そして了承した。
「分かった。そこまで言うなら、任せよう。それで……作戦の実行はいつにするんだ? あまり時間は掛けられないぞ」
「フン。やはり人里の人間たちが心配なんだろう?」
「……いつなんだ?」
「……明日の午前5時、寺子屋の前に集合だ。霧雨魔理沙は連れて来てもらっても構わないが、邪魔はさせるなよ。万が一、敵を取り逃した時のための
「使えるものは何でも使う、かい?」
「当たり前だ。私は生き延びるために
____________________
キラークイーンとハイエロファントはその後別れ、ハイエロファントは一度魔法店に、キラークイーンはネズミが活動を始める夕方にポイントとなる家々に罠を張った。その夜、とある民家にて。
ボグオン!
キラークイーンは女性の右手を握っていた。左手はサムズアップに似た、親指を人差し指の側面に付けた形を取っている。手首から後ろの部分が無くなった右手は宙にぶら下げられ、キラークイーンはそれを下から覗く。この行動に
相手が憎かったとか、魔が差したとか、そういうことではない。ただ、悪意に染まった意思の下で行ったことではなかった。
(……
キラークイーンの本体、吉良吉影は死亡するまでの約15年間、手の綺麗な48人の女性を殺してきた。それ以外にも殺害している者はいるにはいる。
しかし、「女性」というところが肝なのだ。彼は常にその「手」を狙っていた。キラークイーンもそれは覚えている。頬ずりしてみたり、指輪を買ってあげたり、共に昼食を食べたり……しかし、キラークイーンには吉影の気持ちが今になって分からず、気になっているのだ。そして、「知りたい」という興味の延長線上にて、無意識に殺人が行われていた。
「
吉良吉影は
基本的にスタンドの口調や性格は本体から受け継がれたような感じにしたいのですが、キラークイーンがベラベラ喋るところを想像してみると……シュールですよね。
次回、ついにネズミ退治が始まる!
ハイエロファントは敵を討てるのか?
キラークイーンは己が望むものを手に入れられるのか?
お楽しみに!
to be continued⇒
あくまで参考までに、ということで。
-
東方をよく知っている
-
ジョジョをよく知っている
-
東方もジョジョもよく知っている
-
どちらもよく知らない