幽波紋の奇妙な幻想 《Drifted Destiny》   作:右利き

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「その血の運命」って良いですよね。




20.Queen hunts the Rat

 時刻は午前4時30分。人里の中心に位置する寺子屋に忍び寄る影が1つ。ハイエロファントグリーンだ。彼はキラークイーンと手を組み、人里を脅かすネズミを退治するため、指定された集合場所に到着した。と言っても、彼らは人里の人間のために戦うのではなく、「関わりのある友人を守るため」、「自分の命を守るため」にネズミを討たんとしているのだ。

 季節は秋に変わり始め、外は薄暗く、冷たい風が緩慢(かんまん)に外皮を()でる。ハイエロファントは辺りを見回し、近づく人影がないかと注意を向ける。

 

(冷えるな……人々はまだ寝静まっている頃か……)

 

 外皮をさすりながらそう思うハイエロファント。

 すると、突然寺子屋の戸が開いた。ハイエロファントは不意の出来事に驚き、(てのひら)を合わせて"エメラルドスプラッシュ"を撃てる態勢をとる。が、中から現れたのは敵ではなく、箒を手にした魔理沙だった。その顔は昨日別れた時と違い、落ち着きを取り戻していた。

 

「魔理沙……」

 

「戻ってくるって……思ってたぜ。ハイエロファント。全くよ、2人だけで見回りしろってかぁ?」

 

「……すまない。魔理沙。そんなつもりは無かったんだ。しかし、今日からまた僕は復帰する」

 

 魔理沙の冗談めいた言葉にハイエロファントは謝罪する。別れた理由が第三者にあるとはいえ、魔理沙を昏倒させて無理矢理あの場を後にした。ハイエロファントの勝手は、本人でもスルーできないほど、良い対応とは言えなかったからだ。

 ハイエロファントは魔理沙を真っ直ぐ見つめ、こう言い放った。

 

「今日! 敵を討つ。君も……ついて来るかい?」

 

 ハイエロファントは宙に右手を出し、魔理沙へと差し伸べる。

 

「へっ。そんなの、当たり前だろ! それに、こちらこそ、ありがとな」

 

「……僕は君のために戦う。人里(この場所)は僕を嫌う人が多くいるが、君にとっては思い入れのある所であり、守りたいものなんだろ? それを、君の友人である僕が手伝うことに、何もおかしい点は無い……」

 

 魔理沙は差し出されたハイエロファントの手を取る。それを確かと見たハイエロファントはガッシリと、様々な念と力を込めて魔理沙の手を握り返した。

 そこへ現れるもう一つの人影。

 

「……ずいぶんと、お早い集合だな。感心したよ」

 

「キラークイーン」

 

「!」

 

 寺子屋の向かい側に建つ家屋と家屋の間から、キラークイーンが姿を現す。ハイエロファントは前日に彼とコンタクトを取っていたので、キラークイーンが声をかけたこの一瞬、普通に接するところであった。しかし、次の瞬間、ハイエロファントは魔理沙へと瞬時に視線を移す。キラークイーンのことを自身よりも知らない魔理沙が、キラークイーンに対してどんな反応をするのか……先日の火事の件と相まって、魔理沙が()()()()()()いくか……?

 しかし、そんなことは杞憂(きゆう)であった。

 

「よう、キラークイーン。罠の手応えはどーだ?」

 

「……それを今から確かめに行くんだろう……」

 

「! 魔理沙? なぜ"罠"のことを知っているんだ? 君は気を失って、あの場にはいなかったはず……」

 

 ハイエロファントの疑問に、魔理沙ではなくキラークイーンが答えた。彼の表情から「つまらんことはとっとと終わらせたい」という思いがジワジワと(にじ)み出ている。

 

「君が人の苦労も知らずに早く帰ってしまった後、彼女に偶然()()()()しまってね……うるさくて面倒だったよ。ことの顛末(てんまつ)を話してやって、今、この通りと……いうわけだ」

 

「おう。そーいうわけさ。と、いうわけで……ハイエロファント、一緒に敵を倒そうぜ!」

 

「……フフ。ああ。そうだね」

 

 ハイエロファントは心から笑みがこぼれていた。これから"死"の(ふち)まで突き進むというのに、彼は後戻りしたいという気は全く持っていなかった。ここにある確かな仲間の存在と、信頼しきっているわけではないが、強力なスタンドと共に友人のために共闘するというこの()()。ハイエロファントはしかと噛み締めていた。

 

 

 

____________________

 

 

「なあ、キラークイーン。ネズミ取りの罠ってよぉ〜、何をしたんだ? チーズでも置いたのか?」

 

 3人はキラークイーンが罠を設置したという、標的(ネズミ)のテリトリー内の民家を目指していた。キラークイーン本人(いわ)く、ハイエロファントと約束した通り、廃屋だったり、既に犠牲者が出ている家に罠を張ったとのこと。魔理沙はその罠のことについて、素朴(そぼく)な疑問を投げかけた。

 

「……そんなわけないだろう。大体、「ネズミはチーズが大好物」だなんてこと、その(とし)で信じているのか?」

 

「なっ、何をぉ〜〜っ?」

 

「魔理沙、ほとんどのネズミは雑食性なのは知っているだろう? たしかに、チーズも食べるだろうが、やつらは主に穀物(こくもつ)を狙う。彼らの被害は昔からあり、弥生(やよい)時代では()り取った(いね)などを守るため、ネズミの侵入を防ぐ「高床式倉庫」というものが作られるほどだ」

 

「そう。だから私も麦だとか、玄米だとかをかき集めて罠に使った(それを食べるかは知らんが)。それだけではないがね」

 

「へぇ〜。そう……」

 

 ハイエロファントは魔理沙に分かりやすく解説してくれたが、キラークイーンは無知であることに対してイヤミっぽく、冷たく応える。キラークイーンの()()()()()()()()()()()にムっとした魔理沙は、前を歩くキラークイーンから視線を外し、人通りの無い小道を眺めながら後をついて行くのだった。

 

 キラークイーンの仕掛けた罠。それは、先程彼が言った通り、穀物をいくつかの廃屋にかためて配置したもの。それに加え、ボロボロに細かくしたチーズをまぶしている。キラークイーンはチーズぐらい人里のどこかにあるだろうと思っていたが、偶々(たまたま)見かけなかったのか、そもそも無かったのか、見つけられなかった。ただ、牛乳は手に入れられたため、じっくり煮込んでバターとの中間のようなチーズをしかたなく作ったのだ。しかし、このチーズはあくまで()()を消すためのものである。何の匂いを? チョークである。チーズと穀物の"山"に粉状にしたチョークを混ぜているのだ。

 キラークイーンは寺子屋からチョークを持ち出していた。寺子屋のチョークは()()でいうなら、旧タイプのものであり、石膏(せっこう)でできている。「万物に害を与える毒」というわけではないものの、もし体内に入った場合、分解するのは困難。キラークイーンはそれを狙っていた。水に濡らしても溶けづらいという性質、そしてネズミは人間よりも口内は(せま)い。

 キラークイーンはネズミの「窒息」を狙っていた!

 

(結局チーズを使ってるんじゃあねーか……)

 

「? どうしたんだい? 魔理沙」

 

「いや、何でも……」

 

「そろそろ着くぞ。集中するんだ」

 

 3人はいよいよ罠を仕掛けた1軒目に到着した。里の大通りから大きく外れた廃屋である。今回の行方不明事件とは関係なく、家主はずいぶん前に亡くなってしまったという。

 キラークイーンは(ゆが)んだ戸を力づくでこじ開け、奥に設置した餌皿を持参してきた提灯(ちょうちん)で照らした。

 

「うっ……! こいつは!?」

 

「ネズミ共は確かに()()()()()()()()な。ただの、だが」

 

 餌皿の周りには食い散らかされた穀物、そして、ひっくり返って動かない4匹のネズミが。4本の手足を(いびつ)に曲げて天を仰いでいる。魔理沙はショッキングな光景に戸の側から動けずにいたが、ハイエロファントとキラークイーンはズカズカと入っていき、ネズミの死骸をいじったり、家具の裏を調べたりし始めた。

 

「……のたうちまわったようではあるが、()()()()()形跡は無い。先日、僕らを襲ったネズミはいないようだ」

 

「では、次だ」

 

 キラークイーンたちは始めの廃屋で収穫を得ることはできず、2軒目の家を目指すこととなった。

 そんな3人の様子を、窓から覗く異形の存在。

 

「クルル……ギ……キキ……」

 

 

____________________

 

 

 3人は1軒目の廃屋を巡った後、2軒目、3軒目、4軒目と罠を張った家々を回る。罠を仕掛けた家々は、巡るごとにネズミのテリトリーの中心へと向かっていく。だが、見つかるのはただのネズミの死骸ばかり。先日ハイエロファントたち2人を襲った弾丸も、()()()()()()()()()()()()も見つからない。その事実は、キラークイーンに苛立ちを与えて続けていた。

 そして、3人は最後に5軒目の家へと向かう。

 

「なかなか掛かってねぇもんだな」

 

「敵がスタンドなのか、妖怪なのかハッキリしていない今では、効果的な対処が分からない……そもそも訪れていない可能性もあるんじゃあないか?」

 

「…………」

 

 ハイエロファントの問いかけにキラークイーンはだんまりで返す。

 言い返さないのは、ハイエロファントの言ったことが心のどこかで「その通り」だと納得していた部分があったからだ。狩猟経験のないキラークイーンは()()()()()()()()()()()()()()()であることを知らない。

 

「……そーだな……敵はスタンドなのかな? ハイエロファント、襲われた時にスタンドのエネルギーを感じ取れなかったのか?」

 

「それが……かなり焦っていたものだから……魔理沙は妖怪のエネルギーみたいなものを感じることはできないのか?」

 

「できないことはねぇけどよ。人里に来てからは()()()()()のは感じてないぜ」

 

「……いい加減口を紡げ。頭にくる。そして、着いたぞ」

 

 キラークイーンの苛立ちは既に限界を迎えていた。ぶっきらぼうに2人へ言い放つと、家屋の戸を開けて中の様子を見た。しかし、キラークイーンの望みはついに叶うことはなく、10匹ほどの、よく見たネズミがチョークを喉に詰まらせて死んでいた。

 

「ここも……か。結局、ターゲットのネズミは掛かっていなかったな」

 

「スタンドって死んだら消滅するんだろ? もしかしたらもう消えてるのかもしれねーぜ? なぁ、キラークイーン。そう落ち込むなって。罠っていうのはそう上手くいくものじゃあない……」

 

 ハイエロファントと魔理沙は家屋から出ようと、玄関へと足の先を向ける。しかし、キラークイーンはそうしようとはしなかった。彼の諦めたくない気持ちや、悔しさが"妄想"として生み出したのかもしれないが、キラークイーンの頭の中には、とある仮説が浮かんでいた。

 

(以前テリトリーに訪れた時、他のネズミの形跡やその姿を一切見かけなかった……それは、ネズミたちがこのテリトリーの主を恐れていたから……罠に気付いたターゲットがテリトリーを別の場所に移した、ということは容易に想像できる。だが、たった一夜で他のネズミ共は()()()()()()にこうも多く侵入してくるか……? たとえ、美味い馳走(ちそう)があったとして……)

「……待つんだ」

 

「ん?」

 

「どうしたんだ? キラークイーン」

 

 キラークイーンは背を向けた状態で、外へ出ようとするハイエロファントと魔理沙を呼び止める。そして2人の方へ振り返るが、彼の瞳は今まで以上に鋭さを増して、金属のように鈍い光を放っていた。

 

「これは私の勝手な想像だが、一応君らに教えておこうと思う」

 

「え? 勝手な想像?」

 

「ああ。我々が狙うネズミだが、もしかしたら、今、この近くにいるかもしれない」

 

「詳しく聞かせてくれ」

 

「……ここは我々が狙うネズミのテリトリー(独壇場)。だというのに、テリトリーの中心に行けば行くほど、罠に掛かるネズミの数が多くなっている。まるでテリトリーなど無かったように、どころの話ではない。まるで、この場所へ集められたかのような……な」

 

 キラークイーンがここまで言うと、ハイエロファントは彼が何を言いたいのかを何となく理解してきた。だが魔理沙はまだ分からず、眉が左右で歪んでいる。

 

「……君の言いたいことが分かったよ」

 

「えっ? 何だよ?」

 

「私は思うわけだ。今まで見てきたネズミ共の死骸は……ターゲットが()()()使()()()結果だと」

 

「な……何ィーーッ!?」

 

 キラークイーンの考えは、ターゲットはテリトリー付近のネズミだけでなく、人里中のネズミを力で従え、昨夜にキラークイーンが張った罠の毒見に使った、というもの。もしターゲットの正体がスタンドであった場合、罠の発見も他のネズミを使って(おこな)ったと仮定するなら、キラークイーンがエネルギーを探知できなかったこと、妖怪である場合にも本体が遠く離れていれば、魔理沙が探知できなかったことに合点がいく。

 

「なるほど……だけどよーっ、ターゲット(やつ)が近くにいるってのはどうして分かるんだよ?」

 

「人里には自分を殺そうとする輩がいる……しかし、そこは絶好の餌場。かつ、自分は人間を簡単に殺せる手段を手にしている。逃げという一択を何の躊躇(ちゅうちょ)もなく選ぶとは思えない」

 

「そして、一度逃げてしまえば永遠に追われ続けることとなるわけだ。だから隠れるのもいいだろうが、いくら賢くても野生動物。自身の平穏を脅かす者は……確実に迎え討ち(消し)に来るだろうな……」

 

 ハイエロファントは事実に基づいて意見を言う。が、それに対してキラークイーン。まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()かのような発言をする。が、ハイエロファントにも魔理沙にも、彼の言葉が怪しがられることはなかった。これにはとある理由が。

 魔理沙のスカートのポケットの中には、妖怪の妖力を探知するミニレーダー装置が入っている。装置から半径50メートル以内の一定値以上の妖力を検知すると細かく振動するのだが、それが今、反応したのだ!

 

「! ハ、ハイエロファント! 妖力だ!」

 

「……妖怪が近づいて来ているのか……? しかし、僕らには……」

 

「……スタンドのエネルギー……2人とも、構えるんだ。正面の窓から、姿を現す……!」

 

 人里をほのかに照らし始める日光が、3人のいる家の正面に取り付けられた窓から中へ差し込んできていた。するとその時、ガリガリと音を立てて、窓の下部から影が這い上がってきた。魔理沙は帽子の中に隠した円筒やミニ八卦路を、ハイエロファントは両掌を合わせ、キラークイーンは提灯を投げ捨てて戦闘態勢に入る。

 姿を現したのは!

 

ギシャアァァーーーーッ!!

 

「な、何だ!? あいつはッ!」

 

 姿を見せたのは、非常に大きなネズミ! 顔や前足の形は今まで嫌というほど見てきたネズミ共のそれであったが、違うのはその大きさ! 子犬ほど? いいや、それどころではない。体長は1メートルにもなろうか。尾も入れた全長であれば、魔理沙の身長だって軽く超えてしまうだろう。

 しかも、魔理沙たちの目を()かせたのは大きさだけではない。そのネズミの背中には、2つの砲台が埋まっていた。ギラリと光るその砲身は、確かに3人を狙っているのをハイエロファントは一瞬で理解するも、時すでに遅し。

 

「!! マズい、魔理沙ッ! 伏せるん……」

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!

 

 

 ネズミの背中に埋まった砲台は、ハイエロファントの言葉をかき消し、ガトリング銃のように圧倒的スピードと火力で3人を蜂の巣に……いや、ドロドロにせんと火を噴いた。これを食らってしまっては、いくら超常的実力を持つ3人であっても、ジャムのようにされてしまっているだろう……

 

 

 

 砲撃は約1分間に渡って浴びせられた。そして殺戮(さつりく)ショウがいよいよ終わると、ドデカいネズミは窓についた格子を(かじ)って破壊し、家の中に足を踏み入れる。中はネズミが放った、硝煙(しょうえん)と言えるのかは分からないが、白い煙のヴィジョンが充満し、屋内の細かい様子はよく見えなかった。

 ネズミは3人のいた地点に、死体を確認しに近づく。と、次の瞬間!

 

「ギ……チッ!?」

 

ドガシャアアァ〜〜ンッ! 

 

 

 近づくネズミに、巨大な木の板が吹っ飛んだきたのだ!

 反応が遅れた巨大ネズミは木の板に押され、家の外に壁を破って飛ばされてしまった。何が起こっているのか? ネズミにはさっぱり分からなかった。あの3人は確実に殺したはず、だと……

 

「やれやれ……君たち、私がいて本当に良かったな」

 

「ああ……感謝するよ。キラークイーン。凄まじいパワーとスピードだったな。久々に見たよ」

 

 煙が晴れ、木の板が飛ばされた中からキラークイーンたち3人の、ピンピンした姿が。危機を乗り越えたのは、キラークイーンの行動であった。

 彼はハイエロファントが魔理沙を庇おうとしていた一瞬、家の床に指を突っ込み、ちゃぶ台返しのごとくひっくり返したのだ。(さいわ)い、家の床下は朽ち始めていたため、簡単に穴を空けられた。ネズミの弾丸は恐ろしい毒があるものの、威力は大したことはなかった。そのため、1つも貫通していくことなく、ひっくり返した床板で全弾防ぐことができたのだ。

 

「さて、ご対面だ。よくも私の命を狙ってくれたな」

 

「魔理沙、立てるかい?」

 

「おう、ハイエロファント。大丈夫だぜ。それにしても、何なんだ? あいつ。妖怪に、スタンドの特徴まであるなんて……」

 

「実際によく見てみれば分かる。外へ出るぞ」

 

 キラークイーンに(うなが)され、ハイエロファントと魔理沙は外へ飛び出した。家の前には土埃(つちぼこり)を巻き上げて床板が砕け散っていた。その下にはネズミの気配はない。血溜まりもないことから、押し潰して圧死させた、ということはないだろうと判断する2人。すぐさま周りを警戒する。

 土埃がかなり晴れ、早朝の日が2人の瞳を熱く突き刺したその時、やつは姿を現した。

 

「! 魔理沙! あれを見るんだっ」

 

「……こいつは……」

 

「ギギ……キィーーッ!」

 

 魔理沙の目には丸々と太ったネズミがいた。先程の巨大ネズミと同一個体であるのは確かだが、魔理沙は少し違和感を覚えた。彼女は、このネズミのことを知っている。

 

「こいつ……コダマネズミだぜ!」

 

「コダ……マ? 何だい? それは」

 

「れっきとした妖怪だ。別にそこまで強力ってわけでもないんだが……」

 

「なるほど。理解した。そのコダマネズミとやらに、スタンドであるその砲台が刺さっているというわけだな」

 

 キラークイーンが遅れて家から姿を出し、毛を逆立てて威嚇(いかく)するコダマネズミをジロリと(にら)む。ハイエロファントはキラークイーンの言葉を聞いた後、集中してコダマネズミを観察してみると、なるほど。確かにその通りである。砲台からスタンドのエネルギーが放出されている。

 

「やつの正体は分かったが、なぜあんなことに……?」

 

「今はどうでもいいことだ。やつはすぐに始末する!」

 

 キラークイーンは腰を落とし、標的(コダマネズミ)の攻撃に備える。

 しかし、次の瞬間、彼が避けたかった事態が起こった!

 

「なんだぁ? さっきの騒ぎはよ!」

「おいっ、うるせぇーーぞッ! 朝から!」

「! あ、あそこを見て! スタンドよーーッ!」

「あいつらァ〜っ! また暴れ回ってんのか!!」

 

「…………できれば避けたかった事態だ。面倒だな……」

 

 コダマネズミの乱射攻撃やキラークイーンが吹き飛ばした瓦礫(がれき)の轟音によって、周りに住んでいた人々が起きてきたのだ。ハイエロファントは懐中時計を取り出して時刻を確認する。

 

(! 既に6時30分を過ぎている……! マズい。ここまで騒がれては、この場にいる人々は……)

 

「おい! 静かにしててくれ! 今ここに敵が……!」

 

「ギシャアアァーーーーーッ!!」

 

「な、何だぁ!?」

 

 魔理沙が起きてきた人々に叫ぶが、その声が()()()()ことはなかった。コダマネズミは人々の叫びによって刺激を受け、興奮してしまう。そして、背中の砲口が人里の民に向けられた!

 

 

ドドドドドドドドドドドドド! 

 

 

「ぎゃあぁぁーーーーッ!!」

「うげっ」

「ひィイィィーーーーッ!」

 

 大量に放たれた弾丸が、家々から顔を見せた人々に襲いかかる!

 毒の付いた弾丸は、人々の顔や胴体に突き刺さり、見るも無惨な姿へと変えていく。即死を(まぬが)れた者も、脚や腕が溶かされて()()()()()()にされ、後はコダマネズミに食われるだけ。こうなっては救いようがない。

 

「や、野郎ォーーッ!!」

 

 人々へ弾丸を撃ち続けるコダマネズミ。魔理沙は自分が()()()()()()今が好機(チャンス)と、ターゲットに飛びかかる。しかし、コダマネズミがそれを許すわけがない。火を噴く砲口を魔理沙の来る方へとゆっくり向け、弾丸の雨でなぎ払おうと攻防一体の攻撃を仕掛ける!

 

「クルル……ギギ……!」

 

「! や……ヤバ……」

 

「まっ、魔理沙!」

 

 ネズミと魔理沙の距離はおよそ7メートル。毒の弾丸が魔理沙を襲おうとしたその時! その間に緑色の触手が割って入った!

 

ドス ドス ドス ドスゥ! 

 

「うぐぅ……!」

 

「ハ、ハイエロファントォ!?」

 

 魔理沙に弾丸が当たる瞬間、ハイエロファントが腕を触手に変えて攻撃を防いだのだ。もちろん、ネズミの毒が溶かせるのは人間だけではない。スタンドすらドロドロに溶かし崩す、まさに「スタンド毒」!

 盾に使われた触手はスリムなフォルムを失い、ブシュゥと耳障りな音を立ててジャムのように(あふ)れ、広がる。

 

「ギッシャアァァーーーーッ!!」

 

「! あっ……待て! コダマネズミ!」

 

 人々を混乱状態にし、ハイエロファントの無力化を確認したコダマネズミは咆哮(ほうこう)を放つと、態勢を立て直すためか、一同に背を向けて逃走を開始した。魔理沙は逃げるコダマネズミを追おうとするが、触手を溶かされてうずくまるハイエロファントを置いては行けず、ターゲットが走り去る姿を黙って見ている他なかった。

 

「く、くそっ。やつに逃げられる!」

 

「魔理沙、僕に構わず……コダマネズミ(ターゲット)を追うんだ……」

 

「そんなこと……できるわけないだろ!」

 

「やれやれ……何をぐずぐずしているんだ? くさい演技は今はいらないんだ……」

 

「な、何だとォッ!?」

 

 魔理沙が対応に追われる中、キラークイーンが相変わらずな態度で喋りかける。彼の言葉に魔理沙はキッと振り返るが、キラークイーンは彼女らの方ではなく、逃げるコダマネズミを瞳に捉えていることに気付いた。

 

「そうだっ、キラークイーン、お前が追ってくれよ! お前は無傷だろ?」

 

「誰がそんな……私はやつの居場所へ向かいはするが、()()()()()()

 

「ハァ? こんな時に何を……!」

 

第2の爆弾(シアーハートアタック)

 

コッチヲミロ!

 

ギャル ギャル ギャル 

 

 

 キラークイーンが叫び、左手をかざすと、その甲からドクロがついた小型の戦車が撃ち出された。小型戦車は不気味な声を上げて、背を向けるコダマネズミをキュルキュルと追跡し始める。

 

「何だぁ? ありゃ!」

 

「……フッ!」

 

ザ シ ュ ウ ! 

 

「ぐぅあ!」

 

「ハイエロファント!?」

 

 キラークイーンはシアーハートアタックを撃ち出した直後、魔理沙の反応に一切応えることなく、ハイエロファントの触手の付け根、右肩の部分を手刀で切り落とした。(かせ)となる負傷を文字通り切り落とすことで、ある程度ハイエロファントの自由を確保できるのだ。肩の切断面からは、ドバドバと赤い血が流れ出る。

 

「まだくたばるんじゃあないぞ。君にはもう少し働いてもらわないと困る」

 

「…………」

 

「キラークイーン……そんな言い方ないだろ?」

 

「どのみち、その程度の傷なら死ぬことはない。即死レベルのダメージを負わない限りは…………我々から流れ出る血液も、あくまでヴィジョンだ。そう簡単に失血死もしないだろう」

 

 自分でハイエロファントの腕を切ったからか、大した心配は無い様子のキラークイーン。彼の態度に、魔理沙はムっとして睨む。

 

「いや……助かったよ。キラークイーン。それじゃあ……ネズミを追おうか……」

 

「おい、ハイエロファント。無理するなよ」

 

「フン……そう急がずともいい」

 

 ハイエロファントが魔理沙の肩を借りて、やっとの思いで立ち上がる。しかし、それに手をだしてストップをかけるキラークイーン。「何か考えがあるのか?」とハイエロファントは思うが、魔理沙は焦りが(つの)ってキラークイーンに対して苛立っていく。

 

「な、何言ってんだよ! さっきのちっこいのでどうにかなるのかァ!?」

 

「……シアーハートアタックは……よっぽどのことが無い限り、追跡をやめることはない。()()()()()()()()()。もちろん、破壊されることも……我が第2の爆弾(シアーハートアタック)に弱点はない!」

 

 




キラークイーンが好きすぎて主人公交代が起こりそうで怖い……(一応メインはハイエロファント)


ついにコダマネズミとの戦いが始まった!
毒の弾幕を潜り抜け、ハイエロファントたちはターゲットを仕留められるのか?
お楽しみに!
to be continued⇒

あくまで参考までに、ということで。

  • 東方をよく知っている
  • ジョジョをよく知っている
  • 東方もジョジョもよく知っている
  • どちらもよく知らない
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