幽波紋の奇妙な幻想 《Drifted Destiny》 作:右利き
時刻は午前4時30分。人里の中心に位置する寺子屋に忍び寄る影が1つ。ハイエロファントグリーンだ。彼はキラークイーンと手を組み、人里を脅かすネズミを退治するため、指定された集合場所に到着した。と言っても、彼らは人里の人間のために戦うのではなく、「関わりのある友人を守るため」、「自分の命を守るため」にネズミを討たんとしているのだ。
季節は秋に変わり始め、外は薄暗く、冷たい風が
(冷えるな……人々はまだ寝静まっている頃か……)
外皮をさすりながらそう思うハイエロファント。
すると、突然寺子屋の戸が開いた。ハイエロファントは不意の出来事に驚き、
「魔理沙……」
「戻ってくるって……思ってたぜ。ハイエロファント。全くよ、2人だけで見回りしろってかぁ?」
「……すまない。魔理沙。そんなつもりは無かったんだ。しかし、今日からまた僕は復帰する」
魔理沙の冗談めいた言葉にハイエロファントは謝罪する。別れた理由が第三者にあるとはいえ、魔理沙を昏倒させて無理矢理あの場を後にした。ハイエロファントの勝手は、本人でもスルーできないほど、良い対応とは言えなかったからだ。
ハイエロファントは魔理沙を真っ直ぐ見つめ、こう言い放った。
「今日! 敵を討つ。君も……ついて来るかい?」
ハイエロファントは宙に右手を出し、魔理沙へと差し伸べる。
「へっ。そんなの、当たり前だろ! それに、こちらこそ、ありがとな」
「……僕は君のために戦う。
魔理沙は差し出されたハイエロファントの手を取る。それを確かと見たハイエロファントはガッシリと、様々な念と力を込めて魔理沙の手を握り返した。
そこへ現れるもう一つの人影。
「……ずいぶんと、お早い集合だな。感心したよ」
「キラークイーン」
「!」
寺子屋の向かい側に建つ家屋と家屋の間から、キラークイーンが姿を現す。ハイエロファントは前日に彼とコンタクトを取っていたので、キラークイーンが声をかけたこの一瞬、普通に接するところであった。しかし、次の瞬間、ハイエロファントは魔理沙へと瞬時に視線を移す。キラークイーンのことを自身よりも知らない魔理沙が、キラークイーンに対してどんな反応をするのか……先日の火事の件と相まって、魔理沙が
しかし、そんなことは
「よう、キラークイーン。罠の手応えはどーだ?」
「……それを今から確かめに行くんだろう……」
「! 魔理沙? なぜ"罠"のことを知っているんだ? 君は気を失って、あの場にはいなかったはず……」
ハイエロファントの疑問に、魔理沙ではなくキラークイーンが答えた。彼の表情から「つまらんことはとっとと終わらせたい」という思いがジワジワと
「君が人の苦労も知らずに早く帰ってしまった後、彼女に偶然
「おう。そーいうわけさ。と、いうわけで……ハイエロファント、一緒に敵を倒そうぜ!」
「……フフ。ああ。そうだね」
ハイエロファントは心から笑みがこぼれていた。これから"死"の
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「なあ、キラークイーン。ネズミ取りの罠ってよぉ〜、何をしたんだ? チーズでも置いたのか?」
3人はキラークイーンが罠を設置したという、
「……そんなわけないだろう。大体、「ネズミはチーズが大好物」だなんてこと、その
「なっ、何をぉ〜〜っ?」
「魔理沙、ほとんどのネズミは雑食性なのは知っているだろう? たしかに、チーズも食べるだろうが、やつらは主に
「そう。だから私も麦だとか、玄米だとかをかき集めて罠に使った(それを食べるかは知らんが)。それだけではないがね」
「へぇ〜。そう……」
ハイエロファントは魔理沙に分かりやすく解説してくれたが、キラークイーンは無知であることに対してイヤミっぽく、冷たく応える。キラークイーンの
キラークイーンの仕掛けた罠。それは、先程彼が言った通り、穀物をいくつかの廃屋にかためて配置したもの。それに加え、ボロボロに細かくしたチーズをまぶしている。キラークイーンはチーズぐらい人里のどこかにあるだろうと思っていたが、
キラークイーンは寺子屋からチョークを持ち出していた。寺子屋のチョークは
キラークイーンはネズミの「窒息」を狙っていた!
(結局チーズを使ってるんじゃあねーか……)
「? どうしたんだい? 魔理沙」
「いや、何でも……」
「そろそろ着くぞ。集中するんだ」
3人はいよいよ罠を仕掛けた1軒目に到着した。里の大通りから大きく外れた廃屋である。今回の行方不明事件とは関係なく、家主はずいぶん前に亡くなってしまったという。
キラークイーンは
「うっ……! こいつは!?」
「ネズミ共は確かに
餌皿の周りには食い散らかされた穀物、そして、ひっくり返って動かない4匹のネズミが。4本の手足を
「……のたうちまわったようではあるが、
「では、次だ」
キラークイーンたちは始めの廃屋で収穫を得ることはできず、2軒目の家を目指すこととなった。
そんな3人の様子を、窓から覗く異形の存在。
「クルル……ギ……キキ……」
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3人は1軒目の廃屋を巡った後、2軒目、3軒目、4軒目と罠を張った家々を回る。罠を仕掛けた家々は、巡るごとにネズミのテリトリーの中心へと向かっていく。だが、見つかるのはただのネズミの死骸ばかり。先日ハイエロファントたち2人を襲った弾丸も、
そして、3人は最後に5軒目の家へと向かう。
「なかなか掛かってねぇもんだな」
「敵がスタンドなのか、妖怪なのかハッキリしていない今では、効果的な対処が分からない……そもそも訪れていない可能性もあるんじゃあないか?」
「…………」
ハイエロファントの問いかけにキラークイーンはだんまりで返す。
言い返さないのは、ハイエロファントの言ったことが心のどこかで「その通り」だと納得していた部分があったからだ。狩猟経験のないキラークイーンは
「……そーだな……敵はスタンドなのかな? ハイエロファント、襲われた時にスタンドのエネルギーを感じ取れなかったのか?」
「それが……かなり焦っていたものだから……魔理沙は妖怪のエネルギーみたいなものを感じることはできないのか?」
「できないことはねぇけどよ。人里に来てからは
「……いい加減口を紡げ。頭にくる。そして、着いたぞ」
キラークイーンの苛立ちは既に限界を迎えていた。ぶっきらぼうに2人へ言い放つと、家屋の戸を開けて中の様子を見た。しかし、キラークイーンの望みはついに叶うことはなく、10匹ほどの、よく見たネズミがチョークを喉に詰まらせて死んでいた。
「ここも……か。結局、ターゲットのネズミは掛かっていなかったな」
「スタンドって死んだら消滅するんだろ? もしかしたらもう消えてるのかもしれねーぜ? なぁ、キラークイーン。そう落ち込むなって。罠っていうのはそう上手くいくものじゃあない……」
ハイエロファントと魔理沙は家屋から出ようと、玄関へと足の先を向ける。しかし、キラークイーンはそうしようとはしなかった。彼の諦めたくない気持ちや、悔しさが"妄想"として生み出したのかもしれないが、キラークイーンの頭の中には、とある仮説が浮かんでいた。
(以前テリトリーに訪れた時、他のネズミの形跡やその姿を一切見かけなかった……それは、ネズミたちがこのテリトリーの主を恐れていたから……罠に気付いたターゲットがテリトリーを別の場所に移した、ということは容易に想像できる。だが、たった一夜で他のネズミ共は
「……待つんだ」
「ん?」
「どうしたんだ? キラークイーン」
キラークイーンは背を向けた状態で、外へ出ようとするハイエロファントと魔理沙を呼び止める。そして2人の方へ振り返るが、彼の瞳は今まで以上に鋭さを増して、金属のように鈍い光を放っていた。
「これは私の勝手な想像だが、一応君らに教えておこうと思う」
「え? 勝手な想像?」
「ああ。我々が狙うネズミだが、もしかしたら、今、この近くにいるかもしれない」
「詳しく聞かせてくれ」
「……ここは我々が狙うネズミの
キラークイーンがここまで言うと、ハイエロファントは彼が何を言いたいのかを何となく理解してきた。だが魔理沙はまだ分からず、眉が左右で歪んでいる。
「……君の言いたいことが分かったよ」
「えっ? 何だよ?」
「私は思うわけだ。今まで見てきたネズミ共の死骸は……ターゲットが
「な……何ィーーッ!?」
キラークイーンの考えは、ターゲットはテリトリー付近のネズミだけでなく、人里中のネズミを力で従え、昨夜にキラークイーンが張った罠の毒見に使った、というもの。もしターゲットの正体がスタンドであった場合、罠の発見も他のネズミを使って
「なるほど……だけどよーっ、
「人里には自分を殺そうとする輩がいる……しかし、そこは絶好の餌場。かつ、自分は人間を簡単に殺せる手段を手にしている。逃げという一択を何の
「そして、一度逃げてしまえば永遠に追われ続けることとなるわけだ。だから隠れるのもいいだろうが、いくら賢くても野生動物。自身の平穏を脅かす者は……確実に
ハイエロファントは事実に基づいて意見を言う。が、それに対してキラークイーン。まるで
魔理沙のスカートのポケットの中には、妖怪の妖力を探知するミニレーダー装置が入っている。装置から半径50メートル以内の一定値以上の妖力を検知すると細かく振動するのだが、それが今、反応したのだ!
「! ハ、ハイエロファント! 妖力だ!」
「……妖怪が近づいて来ているのか……? しかし、僕らには……」
「……スタンドのエネルギー……2人とも、構えるんだ。正面の窓から、姿を現す……!」
人里をほのかに照らし始める日光が、3人のいる家の正面に取り付けられた窓から中へ差し込んできていた。するとその時、ガリガリと音を立てて、窓の下部から影が這い上がってきた。魔理沙は帽子の中に隠した円筒やミニ八卦路を、ハイエロファントは両掌を合わせ、キラークイーンは提灯を投げ捨てて戦闘態勢に入る。
姿を現したのは!
「ギシャアァァーーーーッ!!」
「な、何だ!? あいつはッ!」
姿を見せたのは、非常に大きなネズミ! 顔や前足の形は今まで嫌というほど見てきたネズミ共のそれであったが、違うのはその大きさ! 子犬ほど? いいや、それどころではない。体長は1メートルにもなろうか。尾も入れた全長であれば、魔理沙の身長だって軽く超えてしまうだろう。
しかも、魔理沙たちの目を
「!! マズい、魔理沙ッ! 伏せるん……」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!
ネズミの背中に埋まった砲台は、ハイエロファントの言葉をかき消し、ガトリング銃のように圧倒的スピードと火力で3人を蜂の巣に……いや、ドロドロにせんと火を噴いた。これを食らってしまっては、いくら超常的実力を持つ3人であっても、ジャムのようにされてしまっているだろう……
砲撃は約1分間に渡って浴びせられた。そして
ネズミは3人のいた地点に、死体を確認しに近づく。と、次の瞬間!
「ギ……チッ!?」
ドガシャアアァ〜〜ンッ!
近づくネズミに、巨大な木の板が吹っ飛んだきたのだ!
反応が遅れた巨大ネズミは木の板に押され、家の外に壁を破って飛ばされてしまった。何が起こっているのか? ネズミにはさっぱり分からなかった。あの3人は確実に殺したはず、だと……
「やれやれ……君たち、私がいて本当に良かったな」
「ああ……感謝するよ。キラークイーン。凄まじいパワーとスピードだったな。久々に見たよ」
煙が晴れ、木の板が飛ばされた中からキラークイーンたち3人の、ピンピンした姿が。危機を乗り越えたのは、キラークイーンの行動であった。
彼はハイエロファントが魔理沙を庇おうとしていた一瞬、家の床に指を突っ込み、ちゃぶ台返しのごとくひっくり返したのだ。
「さて、ご対面だ。よくも私の命を狙ってくれたな」
「魔理沙、立てるかい?」
「おう、ハイエロファント。大丈夫だぜ。それにしても、何なんだ? あいつ。妖怪に、スタンドの特徴まであるなんて……」
「実際によく見てみれば分かる。外へ出るぞ」
キラークイーンに
土埃がかなり晴れ、早朝の日が2人の瞳を熱く突き刺したその時、やつは姿を現した。
「! 魔理沙! あれを見るんだっ」
「……こいつは……」
「ギギ……キィーーッ!」
魔理沙の目には丸々と太ったネズミがいた。先程の巨大ネズミと同一個体であるのは確かだが、魔理沙は少し違和感を覚えた。彼女は、このネズミのことを知っている。
「こいつ……コダマネズミだぜ!」
「コダ……マ? 何だい? それは」
「れっきとした妖怪だ。別にそこまで強力ってわけでもないんだが……」
「なるほど。理解した。そのコダマネズミとやらに、スタンドであるその砲台が刺さっているというわけだな」
キラークイーンが遅れて家から姿を出し、毛を逆立てて
「やつの正体は分かったが、なぜあんなことに……?」
「今はどうでもいいことだ。やつはすぐに始末する!」
キラークイーンは腰を落とし、
しかし、次の瞬間、彼が避けたかった事態が起こった!
「なんだぁ? さっきの騒ぎはよ!」
「おいっ、うるせぇーーぞッ! 朝から!」
「! あ、あそこを見て! スタンドよーーッ!」
「あいつらァ〜っ! また暴れ回ってんのか!!」
「…………できれば避けたかった事態だ。面倒だな……」
コダマネズミの乱射攻撃やキラークイーンが吹き飛ばした
(! 既に6時30分を過ぎている……! マズい。ここまで騒がれては、この場にいる人々は……)
「おい! 静かにしててくれ! 今ここに敵が……!」
「ギシャアアァーーーーーッ!!」
「な、何だぁ!?」
魔理沙が起きてきた人々に叫ぶが、その声が
ドドドドドドドドドドドドド!
「ぎゃあぁぁーーーーッ!!」
「うげっ」
「ひィイィィーーーーッ!」
大量に放たれた弾丸が、家々から顔を見せた人々に襲いかかる!
毒の付いた弾丸は、人々の顔や胴体に突き刺さり、見るも無惨な姿へと変えていく。即死を
「や、野郎ォーーッ!!」
人々へ弾丸を撃ち続けるコダマネズミ。魔理沙は自分が
「クルル……ギギ……!」
「! や……ヤバ……」
「まっ、魔理沙!」
ネズミと魔理沙の距離はおよそ7メートル。毒の弾丸が魔理沙を襲おうとしたその時! その間に緑色の触手が割って入った!
ドス ドス ドス ドスゥ!
「うぐぅ……!」
「ハ、ハイエロファントォ!?」
魔理沙に弾丸が当たる瞬間、ハイエロファントが腕を触手に変えて攻撃を防いだのだ。もちろん、ネズミの毒が溶かせるのは人間だけではない。スタンドすらドロドロに溶かし崩す、まさに「スタンド毒」!
盾に使われた触手はスリムなフォルムを失い、ブシュゥと耳障りな音を立ててジャムのように
「ギッシャアァァーーーーッ!!」
「! あっ……待て! コダマネズミ!」
人々を混乱状態にし、ハイエロファントの無力化を確認したコダマネズミは
「く、くそっ。やつに逃げられる!」
「魔理沙、僕に構わず……
「そんなこと……できるわけないだろ!」
「やれやれ……何をぐずぐずしているんだ? くさい演技は今はいらないんだ……」
「な、何だとォッ!?」
魔理沙が対応に追われる中、キラークイーンが相変わらずな態度で喋りかける。彼の言葉に魔理沙はキッと振り返るが、キラークイーンは彼女らの方ではなく、逃げるコダマネズミを瞳に捉えていることに気付いた。
「そうだっ、キラークイーン、お前が追ってくれよ! お前は無傷だろ?」
「誰がそんな……私はやつの居場所へ向かいはするが、
「ハァ? こんな時に何を……!」
「
「コッチヲミロ!」
ギャル ギャル ギャル
キラークイーンが叫び、左手をかざすと、その甲からドクロがついた小型の戦車が撃ち出された。小型戦車は不気味な声を上げて、背を向けるコダマネズミをキュルキュルと追跡し始める。
「何だぁ? ありゃ!」
「……フッ!」
ザ シ ュ ウ !
「ぐぅあ!」
「ハイエロファント!?」
キラークイーンはシアーハートアタックを撃ち出した直後、魔理沙の反応に一切応えることなく、ハイエロファントの触手の付け根、右肩の部分を手刀で切り落とした。
「まだくたばるんじゃあないぞ。君にはもう少し働いてもらわないと困る」
「…………」
「キラークイーン……そんな言い方ないだろ?」
「どのみち、その程度の傷なら死ぬことはない。即死レベルのダメージを負わない限りは…………我々から流れ出る血液も、あくまでヴィジョンだ。そう簡単に失血死もしないだろう」
自分でハイエロファントの腕を切ったからか、大した心配は無い様子のキラークイーン。彼の態度に、魔理沙はムっとして睨む。
「いや……助かったよ。キラークイーン。それじゃあ……ネズミを追おうか……」
「おい、ハイエロファント。無理するなよ」
「フン……そう急がずともいい」
ハイエロファントが魔理沙の肩を借りて、やっとの思いで立ち上がる。しかし、それに手をだしてストップをかけるキラークイーン。「何か考えがあるのか?」とハイエロファントは思うが、魔理沙は焦りが
「な、何言ってんだよ! さっきのちっこいのでどうにかなるのかァ!?」
「……シアーハートアタックは……よっぽどのことが無い限り、追跡をやめることはない。
キラークイーンが好きすぎて主人公交代が起こりそうで怖い……(一応メインはハイエロファント)
ついにコダマネズミとの戦いが始まった!
毒の弾幕を潜り抜け、ハイエロファントたちはターゲットを仕留められるのか?
お楽しみに!
to be continued⇒
あくまで参考までに、ということで。
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東方をよく知っている
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ジョジョをよく知っている
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東方もジョジョもよく知っている
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どちらもよく知らない