幽波紋の奇妙な幻想 《Drifted Destiny》   作:右利き

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今回は短めです。


21.ネズミの王

 キラークイーンたちはハイエロファントの回復をある程度待った後、姿を消したコダマネズミとシアーハートアタックを追って、駆け足でその場を離れる。シアーハートアタックは北上しているようだ。

 

「なぁ、キラークイーン。コダマネズミはどこへ向かっているんだ!?」

 

「そんなこと……私が知るわけないだろう。だが、シアーハートアタックの反応を見る限り、ターゲットは人里の中心から離れ続けている。外へ逃げるつもりのようだな」

 

「お前、さっき「逃げない」とか言ってただろーがッ!」

 

「全ての生物に当てはまるとは言っていない」

 

「ケンカはやめろ!」

 

 魔理沙の突っかかりにキラークイーンはのらりくらりと適当に答え、彼女をヒートアップさせるも、ハイエロファントが仲裁に入る。

 人里の中心から離れ続ける理由について、3人はヒントも持ち得ず全く分からなかったが、すぐに明らかとなった。3人の前方に「妖怪の山」が見えてきていたのだ。

 

「山に入るつもりかっ」

 

「キラークイーン、山に入って私たちを()くつもりらしいぜ!」

 

「それは参ったな」

 

「な、何ィッ!? 弱点は無いんだろ!?」

 

「……「妖怪の山」と言うぐらいなのだから、妖怪は大量にいるんだろう? シアーハートアタックの()()()()()()()()()いいが……」

 

「ハァ〜〜?」

 

 ハイエロファントと魔理沙は一切知らないことだが、シアーハートアタックは標的の体温を検知して追跡する。温度が高ければ高いほど、シアーハートアタックは優先して狙うのだが、妖怪の性質をキラークイーンは全く知らず、かつ、その数が多いというのだから山に入られては()()()()追跡がしにくくなる。キラークイーンはコダマネズミには山へ入ってほしくないと思わず願った。

 

「このスピードじゃあ山に入られるッ!キラークイーン、お前飛べるか!? 私は先に行くぜ!」

 

 そう言い残した魔理沙は、乗った箒のスピードをぐんぐん上げて直進して行った。ハイエロファントも浮遊し、魔理沙を追う。

 

「……飛ぶ……か……浮遊はできるが……」

 

 走りながら足を地面から離し、宙に浮いて魔理沙たちを追おうとするが、ハイエロファントのようにスピードを出せない。彼は慣れているのだろう。浮遊してから前方へ進むまで、()()()()()()()()

 

「……チッ……走った方が速いじゃあないか……」

 

 キラークイーンは舌打ちし、地面から離れた足を再び下ろすと、飛行する魔理沙とハイエロファントを追って人里からも外れていくのだった。

 

 

____________________

 

 

 自らの脚で駆けるキラークイーンは、しばらくして山へと続く森の入り口で立ち往生する魔理沙とハイエロファントを見つけた。シアーハートアタックを追跡できるのはキラークイーンだけのため、そのうち()()()()ことは大体予想がついていた。キラークイーンは減速し、立ち止まっている2人へ声を掛ける。

 

「大方予想はついていたが、まぁ、「このまま真っ直ぐ進んでいいのか」となるだろうな」

 

「そりゃあ……もう森だしよ。どっかで待ち伏せとかしてるかもって思うだろ?」

 

 魔理沙に言われ、キラークイーンはシアーハートアタックの反応を注意深く探知する。すると、思っていたよりも遠く離れていないことが分かった。

 

「どうだ? キラークイーン」

 

「……そう離れてはいない。このまま真っ直ぐ…………いや待て、どういうことだ……?」

 

「どうかしたのか?」

 

「シアーハートアタックが……折り返してくる……」

 

 なんと、探知したシアーハートアタックの反応は3人の方へとUターンし始めてきたのだ。ということは、コダマネズミがキラークイーンたちに向かってきた、ということになる。キラークイーンの言葉に、魔理沙とハイエロファントは戦闘態勢に移った。

 

「2人とも、すぐ撃てるようにしておけよ。じきに姿を現す……2……1……!」

 

 キラークイーンがカウントダウンを始め、"0"を迎えた。キラークイーンの読みでは、0と同時にコダマネズミが前方の草むらから姿を現す、というものだった。しかし、姿を現すどころか、草むらが揺らされる気配もない。一瞬緊張が走るが、魔理沙から早々と解けた。

 

「おい、出てこねえぞ……どうなってんだ?」

 

「…………」

 

「まさか……キラークイーン、君のシアーハートアタックは……()()()()()()()()のではないか……?」

 

「な、何ィ!?」

 

「……かもしれないな」

 

 キラークイーンはしっかりと探知していた。シアーハートアタックが自分のいる地点を通り過ぎ、人里へ向かって走る反応を!

 

「我々の来た方角へと向かっているということは……コダマネズミの狙いは人里……虐殺を続けるのか、それとも「既に人里は自分の支配下。ホームグラウンド」だとでも言いたいのか……」

 

「くそっ、だったら今すぐ追わねぇと!」

 

「あぁ……! ……何?」

 

「どうかしたのか? キラークイーン」

 

「シアーハートアタックの反応が……挙動不審に……」

 

 キラークイーンが探知しているシアーハートアタックは、3人の後方10メートルの地点で直進を止め、ウロウロと前後左右へ動いていたのだ。そして……

 

 

ボグォオン! ドバオッ! ボゴォオオン!!

 

 

 地面が爆裂した。踏んづけられた地雷のように、掘り当てられた間欠泉のように、地下から岩や土を噴き上げる。その中には、血しぶきも混ざっており、魔理沙の白い肌を赤く染めた。そしてその血の主であろう、無数のネズミの死骸も空中へ巻き上げられていた。

 

「う、うわあああ!! 何だこりゃあ!」

 

「地下には道があった……多くのネズミ共が人里と山を行き来するためのもの……ということか」

 

「キラークイーン、もう君は追跡できないのか?」

 

「難しいな……最も危惧していた事態だ」

 

 キラークイーンはお手上げ状態であった。地下から追跡するのはネズミの群れに(はば)まれて不可能。もはや地上から地道に襲うしかない。キラークイーンが()()を実行するかどうか決めかねていた中、ハイエロファントは既にどのように行動するかを決めていた。

 

「おそらく、この近くにコダマネズミが地下道に入った穴があるはずだ。僕は体を紐状にできる。そこから追跡しよう」

 

「ハ、ハイエロファント……大丈夫なのか?」

 

「……そうするしかない」

 

「決まりだな。ハイエロファント、穴はそこの草むらの奥にあるはずだ。我々はひと足早く人里に向かっているからな」

 

「あぁ。そうしてくれ」

 

 キラークイーンはハイエロファントにそう告げると、彼に背を向けて人里を見据えた。ハイエロファントもキラークイーンに背を向け、言われた通りに草むらをかき分けて穴を探し始める。

 

「ハイエロファント」

 

「ん? どうした? 魔理沙」

 

 魔理沙は腰を(かが)めているハイエロファントの肩を叩いて振り向かせる。彼女の手には一本の筒があった。弾幕戦の時に使うものと似たような形状しており、一目見たハイエロファントはそれが「武器」であるとすぐに理解した。

 魔理沙は筒をハイエロファントの右手に持たせ、握らせると彼の目をじっと見て言った。

 

「ハイエロファント……今回ばかりはマジにヤバい……絶対に死ぬなよ」

 

「…………」

 

「これ、私の弾幕の少しだ。

戦い始めたらよぉ〜、これを空に撃って合図をくれ。

そしたら、すぐに駆けつけるからな」

 

「あぁ……ありがとう」

 

「霧雨魔理沙、行くぞ。人里を「守る」んだろう?」

 

「分かってるよ! それじゃあな、ハイエロファント!」

 

 キラークイーンに()かされ、魔理沙は急足でハイエロファントの側を離れる。魔理沙は去り際にハイエロファントにサムズアップをして彼の健闘を祈るのだった。そしてまた、ハイエロファントも魔理沙から貰った弾幕の筒を握りしめ、見つけた穴に体を少しずつ入れてターゲットを追い始めるのだった。

 

 

____________________

 

 

 地下道に入ってしばらくしたハイエロファント。その中には大量のネズミがおり、道を阻んでくるものかと想像していたが、予想に反してその数は少なかった。いや、少ないどころではなく0(ゼロ)だった。足音ひとつも聴こえない。もぬけの殻状態である。

 

(明かりに関しては所々に生えている"キノコ"が発光しているおかげで大丈夫だが……なぜネズミは1匹もいないんだ?)

 

 ズルリ ズルリと体中を壁や上部にすり付けながら這い進むも、コダマネズミの移動はかなり早く、その痕跡はどこにも見当たらなかった。

 進むことおよそ5分。チラホラと地下道の上部から外の光が漏れ出ている出口が見え始めてきた。しかし、そのどれもがコダマネズミの胴体が通れるほど大きいとは言えず、いわゆるハズレの穴であることは明白であった。アタリの穴を見つけなければ。

 

(ぐっ……人里中のネズミを意のままに操っているのか? まるで「ネズミの王」じゃあないか……)

 

 ハイエロファントは幻想郷中のネズミがコダマネズミの配下になり、津波のようになだれ込む様を想像して、思わず身震いした。考えただけでも恐ろしい。

 きっと世紀末のようになってしまうんだろう、と呑気に怖いことを想像していると、ハイエロファントの前方に続く道の右脇から1匹の小柄なネズミが「キキキ」と鳴きながら姿を現した。

 

(! あれは……)

 

 コダマネズミ本体ではないが、あのネズミを追えばきっとターゲットの元に辿り着ける、あるいはどこか重要なポイントが分かるだろうとハイエロファントは考える。彼と目を合わせたネズミは、驚いたように身を引くと、ハイエロファントが向くその先に走っていった。

 もちろんのこと、ハイエロファントは逃すまいとその小さな「手がかり」を追跡を始めた。

 

「逃がさないぞっ」

 

 ネズミはその小さな体を活かして、狭いトンネルを縦横無尽に駆け回る。ハイエロファントも撒かれまいとヘビのようにうねりながらネズミを追う。が、追いかけっこの時間はそう長くは続かなかった。ネズミは穴から外へ出て行ってしまったのだ。ハイエロファントは一瞬、「しまった」と焦ったものだが、ふと気付いたこともあった。追いかけたネズミが出た穴は、直径が50cmを超えていたのだ。

 こちらは大当たりだった。

 

(この穴なら、コダマネズミだって出られるぞ……魔理沙に持たされた筒を持って外へ……!)

 

 ハイエロファントは(ほど)かれた緑色の触手で筒を絡めとり、日光が降り注ぐ一際大きな穴へと向かう。

 外から見たら()()()()が咲く様子に似ているが、緑色の紐が植物よりも生物に近い動きで穴から伸びて出てくる。さて、ハイエロファントが体を出した所はどこなのか? 現在、コダマネズミはどこにいるのか……

 

 この質問の答えは同じだった。

 

ギシャアァアァァーーッ!!

 

「な、何ッ!?」

 

 コダマネズミが「ネズミの王」……ハイエロファントのこの予想は当たっていた! コダマネズミは小さなネズミを使ってハイエロファントをおびき出したのだ。自身の張った罠に。

 ハイエロファントが体を出した地点は、家々に囲まれた小さなスペース。その一軒の家の屋根に乗ったコダマネズミからは、その穴は標的を撃ち抜くベストスポットだった。

 

「ま、まずい……!!」

 

 ハイエロファントは急いで体を地中に引っ込めようとするが、()()()()()()

 

 

ドドドドドドドドドドドドド!!

 

 

 コダマネズミに埋まったスタンド(ラット)は、ハイエロファント目掛けて火を噴いた。砲身はしっかり定まっていたため、()()()()()()()()。コダマネズミは自身の勝利を確信していた。

 しかし、この時確かに、黄金の閃光が穴から天へと昇っていた。

 

 

 

 




本当はこの話で終わらせたかったのですが、結構長めになると思ってキリのついたところで切ってしまいました。これからは少し短めの話が続くかと思われます。

そういえば、「ネズミの王」って彼岸島にもいましたね。個人的に1番気持ち悪いビジュアルでした……

次回、ついに妖怪コダマネズミとの決着!
誰がやつを倒すのか?
ハイエロファントの運命は?
お楽しみに!
to be continued⇒

あくまで参考までに、ということで。

  • 東方をよく知っている
  • ジョジョをよく知っている
  • 東方もジョジョもよく知っている
  • どちらもよく知らない
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