幽波紋の奇妙な幻想 《Drifted Destiny》 作:右利き
「そうか……それは難儀だったな」
「えぇ。生きた心地がしなかったですよ」
ハイエロファントは自身の前に差し出されたカップに口をつけ、中の紅茶を口内に流し込んだ。ここは紅魔館の3階テラス。同じテーブルを囲むのは、マジシャンズレッドとクリーム。3人は紅茶をすすりながら、先日の「ネズミ討伐」の話をしていた。
「ソレニシテモ、爆破能力ヲモツ
「……怪しさはあった。裏表がありそうな性格でね。だが、他人には良い意味でも悪い意味でも無関心そうに見えたし、かえって無害……なんだろうか……」
ハイエロファントは自信なく答えた。キラークイーンには少しサバサバしたところがあり、また、周りへの無関心さから大胆なこともするスタンドだと思っている彼。怒らせれば怖そうだが、こちらから何かしない限りは大丈夫だろう、と2人に説明した。
「しかし、あんなことがあっては
「…………」
「? どうかしましたか?」
「クリーム。あれを」
「アァ。ハイエロファント、コノ新聞ヲ見ロ」
ハイエロファントの呟きに不穏な反応をしたマジシャンズレッド。クリームに
「……「紅魔館に2名のスタンド。その正体は敵か味方か?」……」
「まったく、迷惑な話だ。いきなりやって来られて質問攻めをくらったのだからな」
「こちらにも来たんですね……」
「アノ妙ニ
やはり射命丸は
時は午後3時。温かい日光と少し冷えた風が体表に当たり、なんとも心地よい。そして、先程よりも風が出てきたことを感じたマジシャンズレッドは動き出す。
「ム……風が出てきたな。続きは
「えぇ。紅茶も無くなってきましたしね……」
3人は各々のティーカップと下に敷いていたテーブルクロスを回収し、館内に入ろうと背を外に向けた……その時、
「えっ、もう入っちゃうんですか? 私、今来たばっかりなのに〜〜」
突如、3人を呼び止める声が聴こえた。もちろん、驚かなかった者はいなかったが、「誰だ?」と思う者は誰一人いなかった。この場の全員が聞いたことのある声。そして、その声の持ち主は先程話題にしていた人物だ。
「しゃ……射命丸……」
「どーーも。今日はハイエロファントさんまでいらっしゃるんですね」
ハイエロファントたちが振り返ると、
しかし、3人とも、思ったことは心の中に留めておこうとはしていたのだが、もうすでに表情に表れてしまっていたらしく、それを見た射命丸も眉をひそめてしまう。
「な、何ですか? みなさん……その顔は……」
「……イヤ……何モ……無イガ……」
「別にお前が嫌いというわけではない。まぁ、いきなりの来訪なのでな……」
「取材は受けませんよ」
クリームとマジシャンズレッドがオブラートに包んで言うが、ハイエロファントはお構いなしに取材を断った。この中では1番長く射命丸との付き合いもあるためか、自然に口から出てしまったのである。ハイエロファントは「しまった」とは思わなかったが、彼女の不満そうな反応は見ることになるだろうと予想するも、実際は違った。ハイエロファントの言葉を聞いた射命丸は「違いますよ」と前置きし、シャツの胸ポケットから手帳だけを取り出してページをめくっていく。
そして、手帳をめくり続ける手をあるページで止めると、そこに
「実は最近、「妖怪の山」付近で気になる目撃情報が出ているんですよ。なんでも、
「なに? 存在しない街が……存在するだと?」
射命丸の言葉をマジシャンズレッドがくり返す。たしかにおかしな目撃情報だ。一文で矛盾点ができているのだから。
「幻カ……見間違エジャアナイノカ?」
「そんな! この情報が揚がっているのは我々天狗の監視者からなんですよ。エキスパートである彼らが見間違えるはずなんてありませんし、大体、何と間違えるんですか?」
「ソレハ……
「クリーム、蜃気楼は光の屈折によって遠くの景色が霧に映って見える像だ。幻とは違う」
ハイエロファントがクリームの勘違いを訂正した。蜃気楼は存在しないものは見えはしないが、存在しているならば遠く離れていても映って見える時がある。もし、存在しない街の正体が蜃気楼ならば、幻想郷のどこかにその街が存在するはずだが、幻想郷内でのジャーナリストである射命丸がそれを知らないとは考えにくい。
「その前にだが、天狗の監視者とは何だ? 天狗は組織でも作っているというのか?」
「えぇ。その通り。ハイエロファントさんには既に言いましたが、我々天狗は縦社会の形式に重きを置いた組織を構成し、妖怪の山の管理を
マジシャンズレッドの質問に答え、素早く話を元に戻す。射命丸は天狗たちの間で
だが、ハイエロファントはそれを聞いて断ろうとする。
「君が好きでやっていることだろう? 僕らは関係ないじゃあないか」
「ハイエロファントさん。もし、スタンドが関わっているとしたらどうです?」
「……知らない街がいきなり現れることによって、何か悪影響があるのかい? 何かあってからでは遅いし、予防は大切だが、僕はやたらめったらにスタンドとは戦わない」
「そんなぁ……マジシャンズレッドさん、なんとか言ってくださいよ!」
「無闇に刺激しないことについては賛成だ」
「トホホ……こんな調子だったらクリームさんも来ませんよね……?」
「……当タリ前ダ」
結局3人に断られてしまった。射命丸はあからさまに残念そうな表情を浮かべ、
彼らの頭の中に「?」が浮かんだ次の瞬間、射命丸は顔を上げ、元々の自信に満ちた笑顔をハイエロファントたちに見せつけた。
「ふふふ……まぁ、簡単に乗ってくれるとは思っていませんでしたよ」
「……何が可笑しいのか分からないが、もう今日は帰ってくれるのかい?」
「まさかそんな! ……これは「
ニヤニヤと怪しげな笑みを浮かべる射命丸。ハイエロファントも
しかし、これは的中していたようで、射命丸は煽るようにハイエロファントへ言い放つと、手帳を再びめくりだす。6ページめくった後に手は止まり、勝ち誇ったようにメモを読み上げた。
「実はですね、その存在しない街の上空に「亡霊を見た」という証言があるんですよ。それも、大きなガイコツ!」
「! 大きなガイコツ……!?」
射命丸の言葉を聞き、ハイエロファントが固まった。クリームは大した動揺もなく、マジシャンズレッドもハイエロファントとは違って身に覚えがないようである。もちろん、射命丸はハイエロファントの動転に気が付き、イナズマの如く質問を投げかける。
「おやおやぁ〜〜? ハイエロファントさん、様子がおかしいですねぇ? もしかして、「大きなガイコツ」に身に覚えがあるのではないですか〜〜?」
「…………」
(……
射命丸の指摘を
「……分かった。君について行こう」
「ハイエロファント!?」
「ふふ。やっとその気になりましたね?」
「勘違いしないでくれよ。僕は
「分かってますよ〜〜……お2人はどうします?」
ハイエロファントの同意を得られ、高揚する射命丸はクリームたちの方へ目を向ける。2人は一度顔を見合わせると、決心がついたように射命丸へ向き直った。
「……ハイエロファントの様子を見る限り、因縁のある相手のようだ。無視はできんだろう」
「イツ出発スル? 我々モ同行スル」
マジシャンズレッドたちも射命丸の取材に同行する方針を示した。望んでいた結果を得た射命丸の笑みはさらに深くしわを刻む。2人の返答後、嬉しさに身を震わせると、射命丸は欄干に足をかけてその黒い翼を広げた。
「では、出発は本日午後6時! 再び伺いますので、準備しといてくださいよ! それではッ」
そう言うと、射命丸は蒼天へ飛び立っていった。飛行機が滑走路でやるように
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現在、時は午後6時14分。時間通り紅魔館に来た射命丸と一行は「妖怪の山」の
「かれこれ5分ぐらい歩いているが、虫の鳴き声以外何も聴こえないですし、何も見えてこないですね」
「あぁ。そもそも、霧が深い時にしか出ないのではないのか? 射命丸」
「みくびらないでください! 我らが「妖怪の山」の組織の科学力を
それぞれが会話を紡ぎながら歩き続ける。
今回の調査に関わること、関わっていないこと。射命丸の最近のマイブームは人里のとある喫茶店にある
楽しく時間を潰しながら進み続けると、ハイエロファントが何かを見つけた。
「! みんな、アレを見るんだ」
「……あれは……灯り……?」
山の麓到着後約20分後、一行の前方にポツポツと炎が揺らめく灯りが見え始めた。もちろん、射命丸はこんなところに火が立つものが無いことを知っている。これこそ、今回の噂につながるヒントなのか?
「霧も深くなってきた……いよいよ噂の「存在しない街」に到着したんでしょーか……!?」
「……慎重に行こう」
ハイエロファントの指示により、一行は背後も入念に、身の周りへと意識を向ける。クリームが大きな手で霧を払いのけながら進むと、次第に辺りの風景が鮮明に映り込み始めてきた。
そこで4人は驚愕する。なんと、彼らがいたのは中国を思わせる紅を基調とした静かな繁華街だった!
「こ、ここは!? いったい……」
「いきなりこんな街が現れるとは……」
「見ロ。屋台ニハ料理マデ並ンデイルゾ」
クリームが指差す方向には様々な屋台が並び、豪華な料理がハイエロファントたちを誘惑しようと湯気とともに匂いをばら撒く。赤い提灯が薄暗く火を灯し、なんとも不気味な雰囲気を漂わせている。
「ッ! 痛ぁ……ッ」
辺りを興味深そうに見回し、カメラのシャッターを切る射命丸。突如、彼女の腕に痛みが走った。見てみると、彼女の右前腕の真ん中に切り傷ができており、血を
「……? どこかで切った……? でも、こんないきなり痛みが……」
「どうかしたのか? 射命丸」
「あぁ……何でもないですよ、
射命丸はマジシャンズレッドに傷を隠し、先を行くハイエロファントとクリームに追いつこうと足を再び進め出す。マジシャンズレッドもまた、彼女を追いかけていった。
そして、ちょうど射命丸たちが去っていった通り、そこに建ち並ぶ屋台の窓ガラスには、金属に見られる鈍い光が瞬いていた…………
最近、久しぶりに「千と千尋の神隠し」を見て思いついた中華風の街が舞台です。
突如現れた中華風の街。
この場所に隠された秘密は何なのか?
ハイエロファントの身に覚えのあるスタンドとは?
お楽しみに!
to be continued⇒
あくまで参考までに、ということで。
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東方をよく知っている
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ジョジョをよく知っている
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東方もジョジョもよく知っている
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どちらもよく知らない