幽波紋の奇妙な幻想 《Drifted Destiny》 作:右利き
ウェザーの戦いを早く観たい……
霧に包まれる街の奥へと足を踏み入れるハイエロファントたち一行。目に映る街並みは一切変わることなく、ずっと同じ風景が続き、逆に前後左右が分からなくなってしまいそうだ。しかし、彼らには"飛行"という手段があるため、さほど重要な問題ではなかった。
「なんというか、建物や灯りはあるのに殺伐としているというか……」
「人ッ子一人イナイナ……」
一行は不用心に突き進む。「敵陣かもしれないというのに、何をバカなことを」と思うかもしれないが、ハイエロファントの、彼なりの考えがあってのこと。誰もいない街道を眺めて思う。まるで中身が抜けた、セミの抜け殻のような街。
「…………」
(あの時と違うのは……今回は人がいない点だ……あの老婆の街にいたのは
「ハイエロファント、そろそろ教えてくれないか? 心当たりのあるスタンドについて」
「……えぇ。そうですね…………「大きなガイコツ」というワードを聞いて思い浮かんだのは「正義」のカードの暗示をもつスタンド、
「霧だと? 実体をもたないならば、もし
「"霧"ならば風に流されます。それを利用するんです。 ですよね? 射命丸」
「! え、私ですか?」
突然名指しで呼ばれた射命丸は、驚きながら自身を指さす。横にいたクリームとマジシャンズレッドも注目した。
「君は風を操ることができると聞いた。実体がなく、霧でヴィジョンが形作られる
「……ほうほう……ハイエロファントさんの推察では、この街はその霧のスタンドが関係していると……それで、そのスタンドは霧であるため、私の風を使えば吹き飛ばせる……ね…………って、私が戦闘要員じゃあないですかッ」
「うんうん」と頷きながらハイエロファントの言ったことを復唱し、自分の役割について指摘した。射命丸は自分ではなく、ハイエロファントたちが戦闘要員であるつもりでいたからだ。
もちろん異論を唱える。
「私は調査係です! 戦いの方をお願いしたくて皆さんを誘ったのに……」
「お前は天狗で強いんだろう? この前レミリア嬢に「"スタンド"って聞いたことのないワードだから見に行ったものの、大したこと無さそうですね」と言っていたではないか」
「う……っ」
「……ソコマデ言ウノダッタラ、我々ガ相手スルヨリモ早ク敵ヲ倒シ、調査デキルト思ウゾ」
真っ当な理由付けで言いくるめられる射命丸。久しぶりに過去の自分を呪った。だが、その時の自分に対してのため、自身の態度全体を見直そうとは考えなかったようである。また同じ目に遭う時がくるだろう。
その上、射命丸は自分の力を持ち上げてくれたことには悪い気分を覚えず、頭を抱えながらも問題を大きく捉えなかった。
と、その時。事態は一変する。
『ケケケケケ! そうか、そうかァ〜〜……そこの黒髪女がワシの相手をするんじゃなぁああぁ?」
『!』
突如響いた女の声。ひどく
一同は声の主を見つけようと街を見渡すが、あの声を発しそうな老婆はともかく、人影の一つも見当たらない。すると、何気なく上空を見上げたマジシャンズレッドが指を差して叫んだ。
「みんな、見ろ! 空がおかしいぞっ」
「霧ガ……変形シテイク……」
辺り一面に広がる霧が、上空に舞い上がって渦を巻きだしたのだ。風は吹いていない。渦巻く霧は徐々に形をとっていく。グムグムと噴き出すようにして作られたヴィジョンは、王冠を被った巨大なガイコツ!
「やはり……お前か。この街はお前が見せていた幻影。
『ヒャヒャヒャッ! ワシこそ、「正義」のカードの暗示をもつスタンド、
宙に浮かぶガイコツは高笑いを響かせながら、不気味に
恐ろしい光景だが、ハイエロファントは屈しない。
「……エンヤ婆と戦った時、お前の能力で墓場を1つの街に見せていた。巨大なガイコツを見たという目撃情報と、「存在しない街」という存在。やはりと思っていたが、お前が関与していたんだな」
『そのとぉーーり……お前たちのことは
「J・ガイル……!? まさか、やつのスタンドも幻想郷に来ているのか!?」
『ヒーヒヒヒヒ……どうかのぉ〜〜……!」
ジャスティスはハイエロファントの問いに答えず、はぐらかした。
J・ガイル。"両右手の男"とも呼ばれている。彼はかつての仲間の一人と因縁深い人物であり、その者の旅の目的はJ・ガイルの殺害だった。その後、見事J・ガイルを倒すことに成功。ハイエロファントの本体、花京院もその場にいたのだが、実に恐ろしいスタンドであったことを覚えている。
また、マジシャンズレッドの本体、アヴドゥルを戦線離脱させた原因ともなったスタンドだ。侮れない。そのため、J・ガイルのスタンドがこの地に来ているかどうかを明かすことは重要事項であるのだ。
「ハイエロファントさん、先手必勝です。
射命丸はそう言うと、翼を広げて飛び立った。ギュン!とジャスティスの目前まで飛び上がると、彼女は腰に差していた一本の
『ケケケケ……やる気かぁあああ〜〜?』
「これも取材のため。それに、
射命丸は笑みを浮かべるジャスティスを見据え、風をまとった扇を高く振りかざす。そしてその右手を背後に振り下ろすと、プロテニスプレイヤーの如く高速で腕を振り抜いた!
が、
風は吹いていない。射命丸の右腕は
「しゃ、射命丸!? 何をしているんだッ」
「なぜ腕を止めた!?」
「ッ…………!!」
突然の出来事にハイエロファントとマジシャンズレッドは驚きを隠せない。当の本人も自身の身に何が起こったのか、全く理解できていない様子を見せる。彼女も驚いた様子で
そう。右腕を。
ジャスティスは勝ち誇ったように高笑いした。
『ケーーケケケッ!! 言ったろう! ここはお前たちを始末するための場所じゃと。
ジャスティスは言葉を切ると、人差し指をクイッと上へ上げた。すると、それに連動して射命丸の右腕も勢いよく上へ掲げられる。
ハイエロファントは瞬時に理解した。
「
『ぎゃははははっ、気付くのが遅かったなぁ〜〜!? ほんの一か所でいいのさっ。ほんのちょっぴりでいいのさッ。それがワシの能力ッ! 「
射命丸の腕にはジャスティスの霧がまとわりついていた。いや、吸い込まれるように取り巻いている、と言った方が正しい。彼女の腕には
これがジャスティスの能力。傷付けた部位に入り込んで「穴」を空ければ、その部位を意のままに操ることができる。
だが、ジャスティスは実体をもたず、直接相手を傷付けることはできない。エンヤ婆と相対した時は、エンヤ婆本人があの手この手で体を傷付けようとしていた。つまり、射命丸の腕を傷付けた者が
(……待てよ…………さっき
ハイエロファントは考えた。嫌な予感が胸を突く。
すると、一瞬意識しなかった内に、ジャスティスに捕らわれた射命丸が苦しそうに声を上げ始めた。見てみれば、右腕を吊り上げながらその手で自分の
「うっ……ぐッ…………ウギギ……」
「射命丸!」
「クリーム、あの霧を
「……無理ダ。ソンナコトハデキナイ上、霧ハ微細ナ水ノ粒。暗黒空間デ全テ消スノモ困難ダ」
敵が霧であるため、あのクリームでさえもお手上げ状態である。マジシャンズレッドも炎を使おうとするが、ジャスティスが射命丸を盾にする可能性も否めず、下手に手出しできない。
ジャスティスは動けない3人を見て嘲笑う。
『ケケケケケッ! なんとも非力だのぉおお〜〜ッ! これはこれで愉快じゃが、まだ終わらん!
ジャスティスは捕らえた射命丸を始末するかと思いきや、突如何者かに向かって声を発した。ハイエロファントは「しまった!」と心の中で叫ぶ。彼にはほぼ分かっていた。声をかけてから、
「あっ……ぐぅッ!?」
喉を解放された射命丸は、再び苦痛に顔を歪める。彼女の首筋は、横へ走る
ハイエロファントはその光景を見た瞬間、背後を振り返って街中の窓ガラスにすばやく目を配る。数ある窓ガラスの内の1つがチカッと
ハイエロファントは掌を合わせ、叫んだ!
「エメラルドスプラッシュ!!」
飛び出す緑色の弾丸。それは
「俺は鏡の中にいる……やれ……
シ ュ ピ ピ ピ ィ ッ !
パ パ ウ ッ
「あ……あぁ…………!」
射命丸の全身から血が噴き出した。
ガシャアァ〜〜ン!
遅れてエメラルドスプラッシュが窓ガラスを叩き割った。ガラスはガシャガシャと音を立てて地へ落ちていく。
しかし、ハイエロファントの狙いは「窓ガラスの破壊」では無かった。「射命丸への攻撃を防ぐこと」! しかし、それは達成されなかった。彼女の翼や脚、肩には穴が空き、ついに完全な操り人形となってしまった。
「ハイエロファント!? ナゼ窓ガラスヲ撃ッタ? 射命丸ガヤツノ術中ニ落チタゾ!」
「……窓……ガラス……まさか…………!」
クリームは状況が分からず、ハイエロファントを叱責する。だが、マジシャンズレッドは彼の行動で
「J・ガイルのスタンド、
『その通り……俺がハングドマンだ……』
マジシャンズレッドの言葉に、どこからか響く男声の主が反応する。と、その直後、周りを警戒するハイエロファントたちに近い窓ガラスがチカッチカッと瞬いた。謎の光は次々とガラスに反射し、最後には射命丸の右目が輝いた。
「い、いかん! まさかハングドマンのやつ……射命丸の瞳に!?」
「ドウイウコトダ……ヤツノ能力ハ何ダ!」
「クリーム、ひとまず
クリームが敵の正体を探ろうと前へ出るが、ハイエロファントが制止、そしてマジシャンズレッドへ叫んだ。言葉を介さずハイエロファントの考えをくみ取った
『……炎の壁で
「……時間が無い。相手には射命丸がいる。風で吹き飛ばされる前に、僕の作戦を2人に聞いてもらいたい」
マジシャンズレッドの炎の中、その小さなスペースでハイエロファントが指示を出す。クリームは敵に関する情報を求めたが、一度戦っているハイエロファントの意見を聞くことにして静聴した。
「まずクリーム。君には行ってもらいたい所があるんだ……」
「私ニカ?」
「君はこの中で一番速く飛べるだろう。そのスピードを活かし、永遠亭に行くんだ」
「……分カッタ。何ヲ考エテイルノカハ知ランガ、オ前ガ言ウナラ従オウ」
「ありがとう。そしてマジシャンズレッド、あなたには……」
「ハングドマンの相手だろう?」
「えぇ。射命丸は僕がどうにかします。その間にハングドマンを引きつけて、あわよくば倒してほしい」
「あぁ……あの時の、
「よし……」
2人にあらかた作戦を話し終える。と同時に、彼らを囲む炎が一瞬ゆらめいたかと思うと、凄まじい勢いで横へ流れて消滅した!
犯人は射命丸、を操るジャスティスだ。彼女は薄笑いを浮かべ、射命丸はジャスティスに
『これで3人とも、
『あぁ、やつらをとどめるとしよう……』
ジャスティスもハングドマンへ指示を飛ばす。ハングドマンが何かアクションを起こす、その前にクリームが動いた。体を呑み込み、全てを消す暗黒空間へと姿を変えると、射命丸へ突進した。
『! ジャスティス、天狗を横へ動かせ!』
『ほいやぁああっ』
ハングドマンに言われた通り、射命丸を右方向へ移動させる。暗黒空間は辺りに広がる霧を削り取りながら直進しているおかげで、その軌道を視認するのは容易であった。暗黒空間はジャスティスの顔を文字通り「霧散」させると、
『……あのスタンド、どこへ行く気だ……?』
『あれはヴァニラ・アイスのクリームか……裏切り者も始末せにゃならんのぉ』
「いいや、始末されるのはお前たちだ」
『!』
ジャスティスたちは敵2人へ目を戻した。ハイエロファントは
そして霧と"光"のスタンドも彼らに合わせるようにして構えをとる。ジャスティスは射命丸を操り、ハングドマンも彼女の瞳の中で右手から刃物を展開。
戦いの火蓋は切って落とされた。
読み返して初めて気付いたんだですが、J・ガイルの「J」って「ジョン」なんですね。
ついに幕を開けた因縁の戦い!
悪の意思を焼き払い、制することはできるのか!?
お楽しみに!
to be continued⇒
あくまで参考までに、ということで。
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東方をよく知っている
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ジョジョをよく知っている
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東方もジョジョもよく知っている
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どちらもよく知らない