幽波紋の奇妙な幻想 《Drifted Destiny》   作:右利き

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ついに第2部最終回です。
次回から第3部が始動!



26.霧の正義と雨のようなエメラルド

『ケケケケ! 終わりじゃあ、終わりじゃあッ、ハイエロファント! 天狗を庇いながら幾度も壁や地面に叩きつけられては、もう立つ力もありはしないじゃろう』

 

 灰色に渦巻く霧、ジャスティスが笑みを浮かべる。その下にはハイエロファントと射命丸が。2人は彼女が言う通りに攻撃され、力無く倒れていた。道の脇の()()からも、その攻撃の苛烈さが見てわかる。

 

『ハングドマンが倒されることはない……もしもマジシャンズレッドが逃げ切れたことを考えておくなら〜〜……お前も()()()()()()か!』

 

 射命丸はハイエロファントに拘束されて動けない。しかし、逆に体を紐状に解いたハイエロファントも動くことはできないのだ。

 ジャスティスは宙で指をクイッと動かす。すると、バサバサと羽をバタつかせて6羽のカラスが姿を現した。もちろん、ジャスティスの支配下にあるため、彼らの体にも穴は無数に空いていた。

 

『さぁ、行けィ。カラスどもッ!』

 

カァア カァ クゥァアーーッ!!

 

「……くぅ……ッ…………」

 

 ジャスティスの指示により、カラスの群れは上空から地面のハイエロファント目掛けて急降下を開始した!

 襲いくる6羽の黒鳥は、まるで魚雷やミサイルのよう。ハイエロファントは上体を起こし、掌を構えて"エメラルドスプラッシュ"を撃とうとする。しかし、負い続けたダメージが体の自由を奪い、発射に手間取ってしまった。それが「終わり」だった。

 

ドシュゥ ドシュッ  ザクゥ!

 

「くぅあァッ!!」

 

 ハイエロファントの口から悲痛な叫びが上がる。カラスたちはハイエロファントの体、特に腕、肩に突き刺さった。頭部を狙った攻撃もあったが、バランスを崩したおかげで避けられたのは不幸中の幸いと言えるだろう。

 しかし、ジャスティスの前で傷を負ったということは……

 

『ヒャヒャヒャハハハハ!! ほォ〜〜れ、これでお前にも「穴」が空いたわけじゃっ。ワシとダンスを踊ってもらおうかッ!』

 

「ぐうぅッ……! う、腕が……!」

 

 負った傷は円形の穴へと変わり、カラスたちは再び空へ舞い上がる。操られるハイエロファントの腕に音楽を添えるかのように、上空で「カァー カァー」と鳴き(わめ)き始めた。

 操られる両腕は、ハイエロファントの意思を振り払い、"エメラルドスプラッシュ"の構えを取る。

 

『ケケケケケケッ、自分の技でくたばりやがれェェッ!!』

 

「ぬぅッ、やむをえん……!」

 

 ハイエロファントの掌が緑色に発光する。しかし、そこからエメラルドスプラッシュが放たれることはなかった。放射する瞬間、射命丸を捕らえていた触脚を地面に潜らせ、縫うようにして別の地点から出すと、自身の両腕を拘束。そして後方に引っ張り、無理矢理攻撃体勢を解除したのだ。

 しかし、エメラルドスプラッシュを無効にしたはいいものの、背後に控える射命丸は自由の身である。

 

「ハ、ハイエロファントさん!!」

 

「……!!」

 

 

ビ ュ ゴ ォ ウ ウ  

 

 

ボゴォアアァ〜〜ン! 

 

 

 射命丸の扇が振るわれ、超至近距離で暴風が発生。ハイエロファントを吹き飛ばす。まるで数トンの羊毛の塊を高速でぶつけられたかのような衝撃を生み出した。

 ハイエロファントは体勢を崩しながらコンクリート壁に激突する。発生した音の大きさから考えて、無事ではないだろう。間違いなく大ダメージを負ったはずだ。

 射命丸は全身から血の気が引くのをしかと感じた。「こんなやつに勝てるのか?」 改めてハングドマンの攻撃に気付かなかった、自身の軽率さを憎んだ。

 

『ケケケケケ! もう大したパワーも入っておらんようじゃなぁ〜〜!? 終いか?』

 

 立ち昇る土埃の中から、ハイエロファントがジャスティスに吊り上げられて姿を現す。息はあるようだが、全身から力が抜けているようでもう戦えはしない。そんな状態だ。

 

「………………」

 

「あぁ……ハイエロファント……さん…………こんな……敵にどう勝てば……せめて傷さえ無ければぁ……」

 

『「後悔先に立たず」! 部外者は最初から抜けておればよかったんじゃよッ』

 

 ジャスティスは笑いながら吐き捨てる。そして彼女はハイエロファントを自身の下へと移動させた。

 これから何が始まるのか? まるで(はりつけ)にされたように、ハイエロファントの両腕は左右へ伸ばされ、宙で固定される。

 それに対して射命丸。彼女はハイエロファントの前へ。そして彼女の胸ポケットから、左手が2枚のカードを一人でに取り出した。それらは"スペルカード"だった。

 

「まっ、まさか……ッ!?」

 

『ヒャッハハハハ!! さぁ、いよいよお待ちかねの処刑タイムじゃあっ! 何発耐えられるかのぉ〜〜? ハイエロファントォ!!』

 

「ぐっ……そ、そんな!!」

 

 射命丸は必死に抵抗するが、そんなことはお構いなしに左手がカードを掲げる。そのスペルカードの名前は、「風神.風神木の葉隠れ」。至近距離で撃ったならば、どんな妖怪や人間でも吹っ飛ばしてしまう威力をもつ。

 その大技は、いよいよハイエロファントに構えられた。

 

「は、離せェッ! 体を返すのよォ!!」

 

『そんな条件のむと思うのか〜〜? いいからやれィ! なんなら、最初にお前を殺してやろうか? ヒャヒャヒャヒャッ』

 

 ジャスティスに抵抗することはできない。彼女の思うがままに操られ、射命丸の精神も限界に近かった。天狗はプライドが高い種族。彼女もまた、仕事上表に出すことは少ないが、高いプライドの持ち主であるからだ。

 そして、射命丸が持つスペルカードが、掲げられた大技が、光輝き始める!

 

『ケケケケケケケッ! これで本当の終い! 拳で霧がはったおせるかッ! 剣で霧が切れるかッ! 銃で霧を破壊できるかッ! 無駄じゃ無駄じゃ。きゃきゃケケーーッ! 正義(ジャスティス)は勝つ!』

 

「こっ…………ここまで……ッ」

 

 射命丸は観念した。覚悟を決め、(まぶた)を閉じる。もう何もかも終わりであると。このまま、ジャスティスとハングドマンは幻想郷中に勢力を拡大させ、いずれは……

 

 

 ついにスペルカードは、綴られた文字や絵が見えなくなるほどの光を放つ。そして……発動する!

 

 

 

ボグォオオォーーーーン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うギャァアア〜〜〜〜ッ!!!』

 

 周囲に絶叫が木霊した。それはハイエロファントのもの……ではなかった。射命丸のものでも。

 声の主はジャスティスだ。射命丸はその異常に気付き、ゆっくりと目を開く。そこに広がっていた光景は……

 

「! ス、スペルカードが……! 燃えて…………」

 

 そう。彼女が手に持っていたスペルカードは燃え切れていたのだ。しかも、辺りには火の粉が、先程まで充満していたジャスティスの霧に代わって飛び交っていた。ジャスティスの束縛が一時的に解かれた射命丸は、ふとジャスティスのいたところへ目を向ける。

 そこに立っていたのは、真っ赤に燃える()()()()()

 

『くぅォオァ〜〜……この……炎はマジシャンズレッド……!?』

 

 オレンジ色に照らされる霧が渦を巻き、再びジャスティスが顔を作り出す。彼女が見つめる先には、体の(いた)るところに炎の衣をまとったマジシャンズレッドの姿が。息を切らしていることからして、急いでここへ向かってきたのだろう。

 焦がされた宙を漂いながら、ジャスティスはあることに気付く。ここで再度生まれた疑問をマジシャンズレッドへぶつけた。

 

『ハ、ハングドマンは……!? あやつはドコへ行った!?』

 

「……ハングドマンか…………やつは光のスタンド。反射物に映り込み、その反射物を支配する…………そして、光は直進することしかできない。もし、ハングドマンがある鏡を支配していた時、その付近に一つの反射物も無く、自身のいる鏡を壊されたら……やつは()()()()()()()()()()()……」

 

『な……なんじゃと……?』

 

「消えてしまったよ……空の彼方に!」

 

『キ……キサマァァーーーーッ!!』

 

 マジシャンズレッドはハングドマンが獣の瞳に入った時、地下からその獣を空へと打ち上げた。この奇襲を予期していなかったハングドマンは脱出が遅れ、獣の瞳の中にとどまることになってしまったが……その瞳に次なる反射物が()()前に、マジシャンズレッドが手を下したのだ。直接撃破したわけではないが、ハングドマンはこれで戻らない。残るはジャスティスのみ!

 

『お、おどれらァ〜〜……ッ!! このままで済むと思うなぁよぉおおお!!』

 

 本来骨は表情を()()()()だろう。しかし、怒りに燃えるジャスティスの顔は、おぞましく、シワを深く刻んで歪む。

 ジャスティスは怒りのままに射命丸に手をかざし、再び彼女を操ろうとした。射命丸の体はまたジャスティスの手に下り、硬直する。

 

「うっ……く……!」

 

「まだ……やる気か…………」

 

『お前ら全員、みな殺しじゃわァアーーッ』

 

 ジャスティスの指に連動し、射命丸の右腕が高く振り上げられる。暴風が吹き荒れる。その予兆だ。しかし、ジャスティスの意思と攻撃は砕かれるハメになる。なぜなら、彼が来たからだ。

 

 

ガ  オ  ン  ! 

 

 

『ばぅわっ!?』

 

 ジャスティスの顔に円形の穴が切り開かれた。直後、彼女の顔と両手は霧散。射命丸の体もまた()()()()。現れたのは暗黒空間。姿を見せるのはクリームだ。

 

「クリーム……」

 

「待タセタナ……ハイエロファントハ?」

 

「そこだ」

 

 クリームは湿る大地を踏みしめると、マジシャンズレッドが示す方を見やる。そこには、うつ伏せになって倒れるハイエロファントの姿が。彼の腕にも射命丸と同様の穴が空いており、ジャスティスから攻撃を受けたことをクリームに理解させた。

 

「……ナンニセヨ、戦イハコレ以上長引カセラレナイナ……決着ヲツケルゾ」

 

「あぁ…………」

 

 スタンドは意思が命。気絶した状態のハイエロファントは、放っておけば消滅する危険がある。最終決戦だ。マジシャンズレッドとクリームは再生するジャスティスを見据える。

 徐々に形が整っていくジャスティスの顔には、先程よりも深いシワが刻まれていた。しかし、込められた感情は怒りだけではない。焦りもまた、彼女の中に現れ始めていた。

 

『おぉ〜〜おのれェ……』

 

「……来てみろ……私はすでに疲れ切っている……加減はできないから、空のお前だって燃やし尽くせるぞ」

 

「…………」

 

『ギギギ…………ッ!』

 

 マジシャンズレッドの言葉に、ジャスティスは歯軋(はぎし)りする。彼女も大バカではない。この2人を前にして、勝機があると思いはしない。その上、一方はかつての敵、ジョースター一行の中でもかなり危険視していたスタンド。もう一方は主の側近のスタンド。

 はっきり言おう。ジャスティスは()()()()()

 

『……キィーーーーッ! 今は見逃してやるぅ……しかし、次会う時が! お前たちの最後じゃあッ!!』

 

「! 逃げる気か!?」

 

「…………」

 

 ジャスティスは辺りの霧を(ひるがえ)し、夜空の闇へと姿を消そうとする。射命丸はケガでまともに動けそうにない。マジシャンズレッドも手負いだ。では、とマジシャンズレッドはクリームに追わせんと促そうとするが、彼の口からその言葉が出ることはなかった。

 クリームはジャスティスを指差して言い放つ。

 

「……キサマ、サッキ目元ガピクピクト痙攣(けいれん)シテイタガ、アレハ何ダ? マサカ、()()()()()()()()?」

 

『……! 何じゃとぉッ!?』

 

 クリームにコケにされ、ジャスティスは怒りクリームを振り返る。しかし、この一瞬が、ジャスティスの運命を分けた。

 

 

シュゴォオォオォォォ!!

 

 

『ぬぬぅ!? す、吸い込まれ……れるえ!? な……何がァァァ!?』

 

 突然、ジャスティスの(ヴィジョン)、周囲の霧が地面へと吸収され始めた!

 射命丸は何が起こったのか全く理解できず、いきなりの事態に目を見開く。マジシャンズレッドは状況と、彼女の命運を知っているように、冷酷な眼差しでジャスティスを見つめる。

 

『ワ……ワシは!? どこへ連れて行かれるるるゥゥンじゃあぁああああ!?』

 

「……サァナ。私カラシタラ、(ainigma)ダ」

 

うごゥォオァアアアああぁああああーーーーッ!!!

 

 

パ  ァ  ン  ! 

 

 

 ジャスティスの姿が吸い込まれ、消えると同時に破裂音が響いた。いや、ただの破裂音ではない。手を、おもいきり強く叩いた音。ジャスティスが吸い込まれた地点には、畳まれた紙切れがへばりついていた。そして、そこ、同じ場所に立っていたのは、夜にまぎれるように暗い色をしたエニグマだった。

 

 

 

 正義(ジャスティス)の霧が晴れ、妖怪の山、およびその麓はいつもと変わらぬ夜に包まれた。人里や魔法の森、竹林に住む人々は、今宵(こよい)存在していた邪悪のスタンドや、命を削るような激戦を知らない。

 それが幻想郷である。それこそが。あらゆるモノが流れ着く。邪悪や、恐怖、死、あげくには因縁を…………

 様々なものが混在するこの世界では、それが普通なのだ。だが、()()()()()()()()()()()()…………

 

 

 

我々はみな『運命の奴隷』なんだ

 

 

 とある彫刻家の言葉である。

 

 

 




第2部、無事完走しました。
振り返ってみると、第1部よりも長く、戦いの表現など、かなり頭を悩ませた部分がありました。
しかし、次回からはついに第3部が始まります。気を引き締めていきたいと思います!


次回、
第3部「紅の風」
お楽しみに!
to be continued⇒

あくまで参考までに、ということで。

  • 東方をよく知っている
  • ジョジョをよく知っている
  • 東方もジョジョもよく知っている
  • どちらもよく知らない
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