幽波紋の奇妙な幻想 《Drifted Destiny》 作:右利き
参考になるので、なんとか時間を見つけて読みたいものです。
冷たく、少し乾いた秋風が紅葉を払い落とす季節。博麗神社には博麗霊夢と霧雨魔理沙が縁側で茶を啜っていた。そんな彼女ら。霊夢はいつもと変わりないようだが、魔理沙は心なしか元気がないように見える。
実は彼女の家に居候しているスタンド、ハイエロファントが原因だった。妖怪の山の麓で起こった戦い、
曇った表情を浮かべる魔理沙を鬱陶しく感じ、霊夢が口を開く。
「魔理沙……落ち込むために
嫌味っぽくなった霊夢の言葉に反応し、一瞬だけ魔理沙は視線を霊夢の方へ動かす。しかし、また彼女の黒目は正面を向いてしまった。言い返す気力もないようである。
「悪かったな……私だって気分転換ぐらいしたいんだよ」
「……分かるけど、ずっと同じことやってて何かあるの?」
「気分転換のためにやることを考えてんだよ」
「……ハァ……」
霊夢は思わずため息をつく。
ハイエロファントはスタンドであり、自分たち人間とは、そもそも普通の生物ではないため、身体の構造上自分たちにするような処置を行えない。ボロボロになったスタンドは何もしなくとも元通りに再生するが、死亡すると血の一滴も残さず消滅してしまう。ハイエロファントは消滅してはいないものの、意識がないまま寝たきりだ。打つ手がない魔理沙も精神的に疲労している。
霊夢も何とか彼女を手伝いたいと思ってはいるが、
(スタンドね……何から何まで厄介だこと……)
霊夢はまた一口、茶を啜った。
そのまま2人の間には沈黙の時が流れる。互いに喋ろうとはしなかった。しかし、ふと霊夢が神社前の鳥居へ目を移すと、風や鳥の声に混じって人の話し声が聴こえてきた。彼らは神社への石段を登ってきているようで、だんだん足音まで聞き取れるようになる。足音から察するに、人数は3人。しかし、話しているのは内2人のようだ。
「……ここが博麗神社だ」
「なるほど。ここがな…………
「…………」
「あんたもここには初めて来るのか?」
「まぁね……」
石段を登ってくる者の正体が頭部から徐々に判明する。
淡い青色の髪にヘンテコな帽子。1人目は上白沢慧音。
白っぽい肌に大きく鋭い目。黒いコテや腰巻きをした、2人目キラークイーン。
青いヘルメットのような物を目元まで被り、体の所々に独特な装飾がなされている者。3人目スティッキィ・フィンガーズ。
霊夢は彗音以外とは初対面であった。石段を登り切った彗音は縁側に
「やぁ、霊夢。修行はしているか?」
「そんなのするわけないでしょォ〜〜」
「はは。やっぱりか」
「それよりも、そっちの2人は? もしかしてスタンド?」
「あぁ。最近人里に住み始めてな。魔理沙もスティッキィ・フィンガーズは知らないだろう?」
「え? あ……あぁ」
「スティッキィ・フィンガーズだ。よろしくな」
「あぁ……よろしく」
魔理沙はおもむろに
「……霧雨魔理沙。かなり元気がないようだが、どうかしたのかね? ハイエロファントは?」
「お前と一緒に戦った後すぐ……また戦いがあったんだ。その時に重傷を負って、ずっと家で寝てる」
「……そうか」
キラークイーンよりも先に、スティッキィ・フィンガーズが反応した。「里を二度救ったスタンド」と称える者もいるハイエロファント。S・フィンガーズは幻想郷に来た日からずっと気になっており、近いうちに彼の元を伺いたいと思っていた。しかし、激しい戦いで負傷、というのなら致し方ないと訪問を諦めることにする。
全員が黙り、重くなってしまった空気に耐えかねたのか、霊夢が立ち上がって神社の奥へ体を向ける。
「ま、上がりなさいよ。お茶持ってくるわ。そこに座っといてくれていいから。私の分は空けといてね」
そう言うと、4人を置いて台所へ歩いて行った。
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縁側に取り残された4人。霊夢が離れる前と同じように、重い空気が漂っている。この空気の発生源である魔理沙はともかく、キラークイーンとS・フィンガーズも表情を一切変えることなく座っている。次に耐え切れなくなってきたのは、慧音だった。
「その……なんだ。もっとこう……明るい話をしないか? ずっと沈んだ調子じゃあ……な?」
「……あぁ」
「…………」
(とっとと帰らせてくれないものか…………)
キラークイーンは心の中でため息をついた。彼は自分の意思でここに来たわけではなく、慧音に半ば強制的に連れてこられたからだ。彼の頭の中は不満でいっぱいになっている。
しかし、魔理沙が小さく返事をしたため、霊夢が来るまでの間、S・フィンガーズとキラークイーンから外の世界や、彼らの本体についての話を聞くことになった。キラークイーンが帰ることができるのは、もう少し先のことだ。
「まずは俺から話せばいいのか?」
「あぁ。頼んだ。私の話はつまらないからね。何か、面白いことを思い出すために時間をかけて話してくれ」
先の話し手はS・フィンガーズとなった。彼は嫌がることはなかったが、キラークイーンとしては
キラークイーンの真剣な顔を見て、S・フィンガーズは口を開いた。
「そうだな……それじゃあ、俺の本体とその周りのことでも話そうか…………本体の名前は、"ブローノ・ブチャラティ"。ギャングだった」
「ギャング……? いつか本で見た…………あまり良いイメージがないが……」
慧音が苦言を漏らす。彼の驚きの告白に、思わず魔理沙とキラークイーンも注目する。
「それが普通だ。だが、
「それで……死んじまったってことか……」
「あぁ。だが、ブローノは後悔していない。
彗音、魔理沙は静かに耳を傾ける。再び沈黙が流れると、S・フィンガーズは「あぁ、忘れていた」と挟み、話を別方向へ転換しようとした。
「すまない。空気を変えるのが目的だったのに、余計重くしてしまったな」
「いや、いいんだ。続けてくれ」
「……そうだな……他は仲間の話ぐらいか…………ウチのチームにパンナコッタ・フーゴという男がいたんだが、そいつのスタンドは…………」
慧音に促され、かつての仲間の話をしようとS・フィンガーズは切り替えた。キラークイーンは相変わらずな顔で黙りこくっている。魔理沙も同様である。
すると、そんな中、4人に一陣の風が吹きかかった。少し強いと感じる程度の風で、S・フィンガーズと慧音はスルーしようと思う。が、しかし、風が過ぎた後の景色を見て、そんな考えは吹っ飛んだ。
神社の境内、その上空に1人の少女がいたのだ。
彼女は辺りをひとしきり見回すと、縁側に腰掛ける4人目掛けて言葉を投げた。
「ここが……博麗神社……ですね? 見たところ、博麗の巫女は留守のよう……」
少女は不思議な容姿をしていた。
明るい緑色の髪の毛。青いスカートに、白い上着、髪にはよく分からないヘビだのカエルだののアクセサリーが付いている。彼女が
謎の少女に彗音が声を掛ける。
「霊夢に会いに来たのか? だったら…………」
「あ、知り合いの方ですか? でしたら、博麗霊夢にこうお伝えください。『神も参拝客もいない、そんな神社は必要ない…………取り壊すか、我々"守矢神社"に明け渡すか、3日以内に決めよ』と」
『!!』
少女の口から出てきたのは驚きの言葉だった。神社を取り壊す、守矢神社……? 言葉を聞くだけでは非常に身勝手な話に聴こえる。
少女はS・フィンガーズとキラークイーンへ目を移すと、手に持つこれまた風変わりな、霊夢のお祓い棒のような物を向け、再び口を開いた。
「妖怪が
「……妖怪……?」
「俺たちのことか……?」
キラークイーンとS・フィンガーズは顔を見合わせた。2人とも、化け物だの死神だのと比喩的に言われたことならあるが、妖怪と
慧音は素早く弁解しようと口を挟んだ。
「いや、彼らは妖怪ではなくてだな…………」
「妖怪でしょう! どう見てもッ! 自身の
「違うんだ……だから……」
「なんとまぁ、ひどい巫女! 人間としてどうなんでしょーねぇ! もっともっと顔を拝んでやりたいですよ」
「………………」
少女は話を聞かない人間だった。慧音も説明を諦めるほどの
話をより詳しく聞いてみれば、彼女ら"守矢神社"は外の世界での信仰が集まらなくなったため、幻想郷にて信仰を増やそうと考えているらしい。博霊神社の入手はその第一歩であると。
しかし、これだけ騒げば様子を見に来る者もいる。と言っても、彼女の場合、お茶を
「何よ、何よ。うるさいわねェ……誰か騒いでんの?」
「あ、霊夢」
「! あ〜、あなたが…………なんだ、結局いるんじゃあないですか。嘘ついちゃって」
(我々は何も言ってないのだが……あの小娘
少女と霊夢はついに相対した。
それにしてもこの少女。とにかく、キラークイーンを
「博麗の巫女、博麗霊夢! この神社を明け渡しなさい!」
「聞いてたわよ。ずいぶん勝手に決めてくれるのね。まぁ、いいケド」
「え? いいのか!?」
この場にいる霊夢以外の人間、全員の予想を外した回答だった。博霊神社は幻想郷の中で一番と言っていいほど重要な場所ではなかったのか? 緑髪の少女も目を丸くしている。そんな中、一番初めに口を開いたのは慧音だった。
「れ、霊夢!! お前、自分が何を言っているのか、分かってるのか!? 私は許さんぞっ」
「なんでアンタの許可が要るのよ……あっちの言う通りでしょ? 参拝客がいない神社なんて〜〜……ねぇ?」
「な、なんだとぉ……ッ」
霊夢の態度に、慧音の額は青筋が立っていく。霊夢は少女を廃品回収の業者だとでも思っているのか。幻想郷の守護者とは思えない物言いは、慧音の中の「呆れ」と「怒り」を増幅させる結果となった。
彗音から話を聞いていたスティッキィ・フィンガーズも霊夢と少女に何か言いたげであったが、キラークイーンに「両者だけの問題だ」と制され、口を塞ぐ。
霊夢の承諾を聞いた少女は「オホン」と咳払いし、気を取り直して霊夢に告げた。
(あ、あまりにも早い回答で驚いたけど……)
「あなたの答えは決まっているようですね。では、私は3日後、再びここを訪れます。その時に、あなたにも改めて"神の存在"を説いてあげましょう!」
「ハイハイ。勝手にどーぞ」
「ぬぅ…………あ、そうだ……申し遅れましたが、私の名前は
緑髪の少女、東風谷早苗は5人に背を向けると、風と共に「妖怪の山」へと飛んでいった。風の置き土産は、境内の端に寄せられた落ち葉の山を崩して掃除前の状態にしてしまう。霊夢はその光景にため息をつくが、そんなことは後回しだ、と彗音たちへ茶を
「そーだ。お茶持ってきたけど、どう?」
「いらん!! 私は帰る!」
慧音は霊夢の茶を受け取らず、ズンズンと鳥居に向かっていった。霊夢は慧音が何に怒っているのかを理解できなかったが、面倒なことは御免のため、慧音にそれ以上干渉することはなかった。それでは、とキラークイーンに湯呑みを渡そうとするが、彼も同様に、
「私も帰らせてもらうよ。博麗霊夢。お茶も遠慮する」
「あぁ、そう」
キラークイーンは慧音を追って鳥居を抜けて行った。
霊夢は「やれやれ」と、魔理沙とスティッキィ・フィンガーズを振り返る。魔理沙は相変わらずの様子だったが、S・フィンガーズはあらぬ方向を見ていた。早苗が飛んでいった方角、そこに位置する「妖怪の山」だ。
「えーと、スティッキィ……フィンガーズだっけ? 山なんか見て、どうかしたの? さっきの早苗っての、気に入ったの?」
「…………いや」
妙な間が空き、霊夢は「おやおや?」と薄ら笑いを浮かべる。が、彼の表情をよく見てみると少し強張っているのが分かった。そこに変な予感を覚えた霊夢も、浮かべた笑みをゆっくり消していく。次にスティッキィ・フィンガーズの口から出てきたのは意外な言葉だった。
「東風谷早苗が飛んでいったあの山。ほんの一瞬だが、
「……へぇ、スタンドってそんなことも分かるの?」
「さぁな。だが感じたのは事実だ。忠告はしておいたぞ」
スティッキィ・フィンガーズはそう言うと、遅れてキラークイーンたちの跡を追うのだった。
神社に残された霊夢と魔理沙。持ってきた茶から立ち昇る湯気は、徐々に弱々しく
「で、あんたはいつ帰るの?」
「そろそろさ。だがよ、霊夢。本当に神社を渡していいのか?」
「……管理者権限よ。何しても私の自由なの」
「あぁ、そうかい。まぁ、お前がいいならいいけどさ」
その後、霊夢と魔理沙は3人が残した茶を飲み干すと、3時間後、夕方4時にようやく解散した。霊夢は呆れ、魔法店で眠るハイエロファントはまだ目覚めていなかった。
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場所は変わり、ここは妖怪の山。その中継地点には、立派なしめ縄がトレードマークになる、博霊神社よりも荘厳な神社が建っていた。この神社こそ、"守矢神社"である。
その境内に降り立つ一つの影。東風谷早苗である。彼女の前、神社に挟まれるような形でもう数個、人影があった。
「ただいま帰りました。
早苗にそう呼ばれるのは、大きな帽子を被った少女と、帽子紫色の髪と背負うしめ縄が目立つ女性。早苗と彼女らは主従関係にあるようだ。
神奈子と呼ばれた女性は威厳のある低い声で早苗に返事をする。
「あぁ。おかえり。それで、どうだった? 博麗霊夢は神社を渡してくれそうかい?」
「はい」
「え?」
早苗から出た予想外な言葉に、神奈子の口から
「渡してくれそう……なの?」
「はい。快諾されました」
「へ、へぇ……アッサリしてるんだねぇ……」
てっきり「絶対に渡すものか!」とか、「話し合いの時間が欲しい」という返事が来るものかと思っていた神奈子は、霊夢のアッサリ具合に引き気味になっていた。
そんな彼女を横目に、早苗が2人の奥にいるもう一つの影に注目した。
「……御二方、あちらの方は?」
「ん? あぁ、
なぜ早苗が人気なのかが分からない者です(嫌いではない)。
自機だから、なんですかね?
平穏が続くと思われた幻想郷。
そこに忍び寄る邪悪の影…………
次回、「スタンドの幻想入り」が始まって以来、最恐の異変が起こる!
お楽しみに!
to be continued⇒
あくまで参考までに、ということで。
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東方をよく知っている
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ジョジョをよく知っている
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東方もジョジョもよく知っている
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どちらもよく知らない