幽波紋の奇妙な幻想 《Drifted Destiny》   作:右利き

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ありがたい限りです。


39.役立たずのヨーヨーマッ

「ハ、ハイエロファントォーーーーッ!!」

 

 影の中に引きずり込まれた仲間の名を叫び、悲痛な表情を浮かべる魔理沙。何をどうすればいいのか、今の彼女には全然分からなかった。

 ハイエロファントを助けなければならない! 

 どうやってそれを行うのか?

 敵スタンドを倒す!

 どうやって見つける?

 彼女は何も分からず、分かろうとしても彼女自身の焦りが思考の邪魔をする。そのようにして思考できない中、彼女がおもむろに手にしたのは、一枚のカードである。カラフルな絵が表面にあるカード。そう。ご存知、スペルカードである。

 

「ハーッ……恋符.ノンディレクショナルレーザーッ!」

 

 

ドギュゥゥウウウン!

 

 

 魔理沙の大技は天井や壁、地面を轟音とともに抉っていく。放たれた何本ものレーザーは辺りを荒れ地に変えていくが、それでも手応えは無い。いや、それで良かったのだ。もし、この技でスタンドを倒していたなら、一緒にいるはずのハイエロファントにも被害が及んでいたはずだ。

 土埃が立ち昇る中、魔理沙はハッと我に返り、その場でへたり込んでしまう。

 

「ハーッ……ハーッ……そ、そうだ。ハイエロファント……を……助けるんだ。だが…………」

 

 魔理沙は消えたハイエロファントを探す方法を再び考えるが、良い案が中々出ない。ここで、ハイエロファントが最後に言い残した言葉を思い出す。

 

「…………」

(た、たしか……『私とクリームなら』って言ってた……何だ? 私とクリームに何の共通点があるんだ?)

 

 魔理沙は一度座ってから、立ち上がったり、天井を眺めたりして、クリームの姿を想像する。

 そうだ。たしかクリームはでかい口で何でも()()()()。だが、魔理沙は大した口は大きくない。それに何でも食べるわけでもない。好き嫌いはしない、と謳ってはいるが、実のところ結構我儘(わがまま)である。

 

「な、何だよ……私とクリームの共通点って…………あとは……クリームは透明になれるんだったか……?」

 

 そう。クリームは自身を暗黒空間に折り畳み、自分自身が暗黒空間となれる。その際、誰の目にも暗黒空間と化したクリームの姿は見えない。目に見えないまま、暗黒空間に始末されるのだ。

 しかし、魔法でやろうと思えばできるのだが、それがハイエロファントの策と関係があるとは到底思えない。

 と、なれば……

 

「あとは…………あの……『削る能力』か……」

 

 クリームの暗黒空間。触れたもの全てを粉微塵にする亜空間。ハイエロファントが言っていた共通点というのが暗黒空間のことならば、多少は納得できる。

 そして、魔理沙の『触れたものを破壊する物』とは、おそらくミニ八卦路の"マスタースパーク"のことであろう。ハイエロファントに初めて見せたのはアヌビス妖夢との戦いでのことだ。共に白楼剣を破壊したわけだが、一体それ(マスタースパーク)が何に使えるというのか?

 まさか、やたらめったらに撃てということか?

 そんなはずはない。魔理沙は思案する。ハイエロファントは彼女に「落ち着け」と言った。魔理沙はチャリオッツ(ポルナレフ)のように直情的である。相手の挑発にすぐ乗ってしまう部分など、とても似ている。だからこそハイエロファントは言ったのだ。ポルナレフだって、落ち着いて対処する際はとても冴えていた。ハイエロファントは、それを魔理沙にだってできるはずだと考えていた。

 

(そうだ……落ち着け……ハイエロファントはその部分を強調してた。ひょっとして、それが"マスタースパーク"よりも重要なんじゃあないか……? ()()()()()()()()()()()……それが重要……)

 

 魔理沙は再び天井を見上げる。

 ゴツゴツした岩肌は、彼女のミニ八卦路で破壊できるかもしれない。壁もそう。地面だってそうだ。

 そしてあのスタンドは光が苦手だ。影が無ければ、やつ自身移動することも叶わない。

 

「天井を……砕け…………ってか……」

 

 魔理沙は小さく呟いた。そうだ。とても簡単なことである。ハイエロファントも言っていた。

 落ち着くこと。それは人間が何かをする上で、最も重要なことと言っても過言ではない。静かに、理性を保たなければ、人間足り得ない獣同然。焦った時こそ、落ち着くことが大切である。そうしなくては、どんなに簡単なことでも見落としてしまうのだ。

 天井を砕き、暗黒の地底に日光を浴びせること。それがハイエロファントが魔理沙に託した策であった。

 魔理沙はミニ八卦路を握り締める。

 

(簡単なことだ……ものすごく簡単なこと…………でも、どこか()()()()()。一皮剥けたような……)

「……分かったよ。ハイエロファント。これがお前の望むものだな!? たっぷりと浴びせてやるぜ。日光をッ!」

 

 強く握る八卦路を高く掲げ、はるか上部にそびえる岩の天井に照準を合わせた!

 

 

恋符.マスタースパァァーーーーク!!!

 

 

ドギュゥゥウウウウン!!

 

 

 日の差し込まぬ天へ向けられたミニ八卦路から、極太の光線が放たれる。だが、太さが太さでもスピードは大したものだ。飛び去る天狗だって仕留められよう。

 そうして放たれた虹色の閃光は、一撃で紅魔館を壊滅できる程の威力を以ってして岩の天井を削り始めた。擬音には換えられない轟音を響かせ、"マスタースパーク"は日の下を目指す。

 しかし、それだけの威力のビームを、魔理沙は両方の腕だけで支えている。彼女は普段、これを片手で撃っているのだが、それは箒に乗って飛行している時の話であり、そもそもこの威力で放つことがないからだ。いつも以上にかかる負担は大きいが、捕まった仲間の命には代えられない。

 

「うぉおおおおあああああ!!」

 

 魔理沙は八卦路を左へ、そして右へと薙ぎ払い始める。より多くの岩石を削り、地上から差し込む日の光を多くするためだ。

 そしてついに、岩の天井にヒビが入りだした。あともう少しだ。あとほんの数秒で、"マスタースパーク"は地面を貫通する。

 しかし、それを良く思わない者がいた。()()だ。

 

 

キラリ

 

 

「……! な、何だ……?」

 

 天井に視線を向けていた魔理沙は、視界の隅で光を放つ物を目撃した。小さく、まるで金属光沢のように冷たい光。最初は何か、全く分からなかったが、その発光体の正体はすぐ判明する。

 

 

ギュゥウオォォオオオオ!!

 

 

「う、嘘だろ……ナイフ!?」

 

 計3本。銀色に鈍く光るナイフ群が、魔理沙目掛けて高速で飛んできた!

 

「うわ! 危ねぇッ!」

 

 魔理沙はサッと頭を下げ、できるだけ体を小さく丸めようとする。始めの一本は魔理沙の顔スレスレを通り過ぎて行き、次の一本は彼女の三角帽子を貫いた。

 回避が間に合った、一瞬そう思う魔理沙だが、最後の一本はそうはいかなかった。

 通り過ぎるかと思われたナイフの刃は肩の生地を吹っ飛ばし、それによってできた傷から血を体外へ解き放った。火傷のヒリヒリとした痛みや、アブに刺されたような腫れ上がった感覚が同時にやって来る。

 痛みだけならまだいい。ここで魔理沙が()()()()()()()()()は、八卦路を手放してしまったこと。

 

「くあッ……! ヤ、ヤベェ……八卦路……」

 

 血が(にじ)む右肩を押さえつつ、転がった八卦路を拾おうとする。が、

 

『拾わせると思うかッ! お前が『往く道』はたった一つだけだと、言ったはずだ!』

 

「!!」

 

 無意識に体を傾けたおかげで、魔理沙自身の影が明かりの外へと伸びてしまった。

 敵スタンド、『ブラック・サバス』はその瞬間を見逃さず、魔法の明かりを包む闇から、彼女の影へ流れ込むように移動。上半身だけを出し、魔理沙の首を掴みにかかる!

 彼のスピードはスタンドたちの中でも並以上。弾幕戦で戦い慣れているといえど、今の魔理沙ではそのスピードに反応することはできなかった。不意を突かれ、彼の両手が魔理沙の細い首をホールドする。

 

ガシィイッ!!

 

『まだ抵抗するか? それとも生きて帰りたいか?』

 

「…………」

 

 ブラック・サバスの問いに魔理沙は答えない。

 諦めたが故の沈黙ではない。首を掴まれたからと言って、彼女の闘志が尽きることはないのだ。

 

「……強者の余裕か? ナメんなよ」

 

『!!』

 

ボバァアン!

 

『うぐぁああッ!?』

 

 突如、魔理沙の(てのひら)が光を放ったと思うと、ブラック・サバスの体が後方へと吹っ飛んだ!

 彼女は至近距離で魔法を撃ったのだ。下手な真似をすれば、すぐに頚椎(けいつい)(ひね)られる状態だったというのに、臆すことは全くなかった。()()()()()使()()である魔理沙は、今この場で、精神の成長を遂げた。誰から受け継いだのか、それとも学んだのか、今彼女にある冷静さこそ、ブラック・サバスに一撃を与えた要因と言えよう。

 ブラック・サバスは弾幕が直撃した腹部を押さえ、唸り声を上げて苦しむ。

 

『う……ぐぉ……』

 

「今度こそ終わりだぜ……ッ!」

 

 魔理沙がそう言い放つと、近くに転がった八卦路が一人でに浮遊。そして魔理沙の右手に吸い込まれるようにして飛んで行った。

 八卦路を掴んだ魔理沙の狙いとは…………

 ブラック・サバスは魔理沙の気迫に怯み、後退を試みる足の動きが止まる。今がチャンスだ!

 

「恋符.マスタースパークッ!!」

 

ズギュゥウウウゥゥウン!!

 

 再び放たれたマスタースパークは、目の前にいるブラック・サバスではなく、先程のものと同じように岩の天井を目標に向かっていく。

 そして轟音を轟かせながら、ついに地表を貫通した。

 

『うっ……!? うぉお……うォおおああああッ!!』

 

「!」

 

 マスタースパークが空けた穴からは、綺麗なカーテンやベールのように輝き、透き通る日光が侵入する。

 それを直接浴びたブラック・サバスの体は激しく燃え上がり、地底に彼の断末魔が響き渡った。シャクトリムシのように(もだ)える姿は、見る側にある意味の恐ろしさを感じさせる。

 魔理沙は心の中で勝利を確信した。が……

 

『こ、これで終わりはしない…………! 私は()()()()に『信頼』されている……ッ! ここで……お前たちを逃すことは……やつへの侮辱に値するッ! 私もお前たちも、どうなるか分からないぞッ!』

 

 炎上して転げ回る中、ブラック・サバスは声を振り絞る。『信頼』だの『侮辱』だのと口にするところを見ると、それなりに本体の影響を受けているらしい。

 遠回しに命乞いに聞こえなくもないが、魔理沙は遠慮なくぶった斬る。

 

「……お前がその『少女』とやらにどれだけ信頼されているのかは知らないが、どうせそいつが怖いから従ってるんだろ? 信頼を裏切る『侮辱』を気にしてる割には、人様の命は軽く扱って侮辱するんだな。お前」

 

『……ッ!! クァアァアアアアーーーーッ!!』

 

「まだやるつもりか!」

 

 ブラック・サバスは火だるまになりながらも、魔理沙を始末するため手を振りかざす。

 先程の魔理沙の言葉、ブラック・サバスにとって死刑宣告にも聞こえた。いや、最初から魔理沙はブラック・サバスを倒すつもりでいた。門番とは侵入者を防ぐ役割であって、敗れ、侵入を許してしまった場合にはその門番の"首"が危うくなる。

 ブラック・サバスは、一度魔理沙たちを通してしまった時点で門番は失格である。そして彼は、往生際が悪いが故にさらなる戦いへ足を踏み入れてしまったのだ。スタンドの消滅を懸けた戦いに。

 

『オォオオオッ!!』

 

「くらえ……これで最…………」

 

 

ドスッ ドズッ! ドスゥ!

 

 

『うぐぉわあああッ!?』

 

 ブラック・サバスの手刀が魔理沙に迫った瞬間、彼の体が宙へと浮き上がった。

 見てみれば、彼の胸からは3本の紐のような物が貫いている。緑色で、先端が鋭くなっている触手。もはや誰のものかは明らかだ。

 魔理沙の強ばった表情が明るくなる。

 

「ハ、ハイエロファントの触脚ッ!」

(良かった! あいつは元気みてぇだぜッ!)

 

『バ……バカな……』

 

シュボォオオォォ……

 

 ブラック・サバスはハイエロファントの触脚に貫かれたダメージと、未だ身を包む炎のダメージによって、ついに体の消滅が始まった。

 触脚はブラック・サバスから火が燃え移らぬよう、素早く体から引き抜かれる。その後は灰になる吸血鬼のように、日光のスポットライトを浴びながら、崩壊していくのだった。

 

「よし……終わった……な……!」

 

 魔理沙はブラック・サバスの消滅を見届けると、近くで脱力しているハイエロファントの触脚を見やる。

 

(この触脚を追って行けば、ハイエロファントの所へ着くな。早く行って助けないと……)

 

 そう思い、魔理沙は近くに倒れていた箒を立たせて(またが)った。そして浮遊するが、ここでとある異変に見舞われる。()()()()()()()()()()()()()()()…………

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 

 

「! な、何だ? この音…………いや、まさか…………天井が……崩れてくるッ…………!?」

 

 魔理沙の予想通り、突如響いたこの地鳴りは、彼女の"マスタースパーク"の影響で天井が崩壊し始めた音である。

 上を見ると、光の割れ目が続々と現れてきている。地面が割れ、日光が漏れているのだ。このままでは頭上の天井が完全に崩れ、生き埋めになってしまう。そうなる前にハイエロファントと落ち合い、地底の先に進まなくては。

 

「うし! 今行くぞ。ハイエロファントッ!」

 

 魔理沙は箒を前に動かし、ハイエロファントの触脚を辿りながら彼の行方を追った。

 

 

___________________

 

 

 地底中に鳴り響いた地鳴り。それは()()()()にも聴こえていた。

 魔理沙たち同様、にとりの依頼を受けて地底の調査を行う者たち。大小バラバラの3つの影が、火の灯された灯籠(とうろう)が並べられた道を突き進んでいた。

 

「何? 今の振動……チャリオッツ、分かった?」

 

「あぁ。地震か? 日本は多いんだろう?」

 

「えぇ。日本は造山帯にありますので、地震も火山活動もよく起こりますよ。だんな様」

 

 紅白の巫女、霊夢がチャリオッツに質問を投げる。それを受けたチャリオッツは霊夢に返答……と思いきや、別の者が霊夢に代わって反応した。

 2人の前に立ち、地底を案内しているのだ。彼もまた、ブラック・サバス同様地底に流れ着いたスタンドである。ブラック・サバスと違い、醜い出立ちをしている。

 

「あぁ、そうだ。おふたりとも、災害グッズはお持ちで? もし頭上の岩が崩れてきた時のため、ヘルメットなんてどうです?」

 

「……結構だ」

 

「そうですか。それは残念」

 

「………………」

(……何でチャリオッツは()()()()()()()()()……?)

 

 丁寧で、まるで召使いのように振る舞うスタンドだ。どうみても小さいポケットから2人分のヘルメットを引っ張り出すが、チャリオッツに断られて元に戻す。

 近くで見ていた霊夢は、この異様な光景に内心でツッコミを入れる。

 と言うのも、このスタンドとの出会いに関係していた。

 

 

 

『ようやく着いた……ここが地底か?』

 

『えぇ。そうみたいね。灯籠があって不気味なとこ』

 

『…………』

 

『……何?』

 

『どっちへ行けばいいんだ?』

 

 博麗神社の裏から噴出した間欠泉。そこから地下へと侵入した2人は、魔理沙たちよりも早く地底の世界へ到着した。

 しかし、魔理沙たちの時とは違い、一本道のどちらの方向を見ても同じ景色であるのだ。灯籠が並べられ、道が明るく照らされているのは良いが、どちらへ進むのが正しいのか分からなかった。

 そんな時だ。

 

『おやおや、おふたりとも。何かお困りで? あいにく、今はチョコレートを一切れしか持ち合わせておりませんので、食べる方はじゃんけんでお決めになっていただく必要があります』

 

『うわっ!?』

 

『スタンドかッ!?』

 

ズバァン ズババァッ!

 

『うぎゃばッ』

 

『ちょ、ちょっとチャリオッツ! いきなり斬りかかることなんて……!』

 

『もぉおおおおっとォ〜〜ーーッ! チョウダイッ!』

 

『な、何ィ!? 何だ!? こいつはッ!』

 

『キャァアアアアァーーッ! 変態!』

 

 

 

 このようにして、例のスタンドはいきなり現れたのだ。

 それに驚いたチャリオッツは、一瞬でスタンドを斬り裂くが、結果はご存知の通り。

 すぐに再生し、なおかつさらなる攻撃を要求してきた。まるでダメージが無い。しかし、敵ではないことが判明したため、今は地底の案内をさせている。

 チャリオッツは既に彼と打ち解けているようではあるが、霊夢は巫女の直感でなのか、それとも変態の面を見てしまったからか、どうにも馴染めずにいた。

 霊夢が後方で悶々としていると、スタンドは再びチャリオッツへ振り返り、身振り手振りを交えながら新たな話題を振る。

 

「しかしですね、だんな様。いくら大丈夫と思っていても、いつ何が起こるか分かりません。わたくしめがハンドシグナルをお教えします」

 

「……ハンドシグナルなら、俺も一つ知ってるぜ」

 

パン ピッ スッ スッ……

 

「パン、ツー、まる、見え」

 

『YEAAAH!』

 

ピシ ガシ グッ グッ 

 

「〜〜〜〜ッ!」

(帰りたい……ハイエロファントと組めばよかった……!)

 

 チャリオッツたちのやり取りを見て、霊夢は顔を真っ赤にしていた。彼女の中では、ハイエロファントはかなりまともなイメージがあるため、同じ内容のことを振られても相手にしないだろう、と思うのであるが、その答えは知る人ぞのみ知る。

 

 こんな調子で進み続ける一行だが、周りの景色は中々変わらない。右へ左へ、上がって下がって…………

 地底は広いのだろうという考えが半分、そして、このスタンドは本当に道を知っているのかという疑問が半分、霊夢の頭にあった。チャリオッツはというと、相変わらず案内役のスタンドと会話を交えている。

 

「しかし、ここにも風が吹くんだな。おまけに結構強い。地底だと風は無いものだと思っていたが」

 

「ハイ。この地底も入り口が複数ありますので、どこかの吹き抜けから別の吹き抜けまで、風が入って、そして出て行っているのです」

 

「ほぉ〜〜……」

 

 チャリオッツとスタンドが言うように、今彼らが歩いている地点には強風が吹いていた。スタンド2人には(なび)く物が無いが、霊夢は風が吹く度に髪を直したり、スカートを押さえたりしている。

 そんな彼女の様子を見て、スタンドはとある提案をしてきた。

 

「霊夢様。傘をお使いになりますか? 一本持ってますよ」

 

「……え……? え、えぇ。そうね……貰うわ」

 

 霊夢が『YES』の意思を示すと、ヘルメットの時と同じように、明らかにポケットに入らないサイズの傘を彼が着るオーバーオールのポケットから引っ張り出した。

 そしてその場でバサッと広げ、故障が無いかを点検する。「ン〜〜……」と唸りながら一通り確認すると、霊夢へ手渡そうと傘を支える両手を彼女へ差し出す。すると…………

 

「あッ」

 

ゴロッ ゴロゴロゴロゴロ

 

「うヒャァ〜〜」

  

「アイツ、風に煽られて転がっていったぞ……」

 

 傘を開いたことにより、風を受ける面積を広げてしまったスタンドは、そのまま吹きつける強風に煽られてバランスを崩してしまった。彼の前にいた霊夢は寸前で避けたため、巻き込まれずには済んだ。だが、彼はそのまま止まらずに転がり続けて行ってしまった。

 元々いた地点から20mも離れ、ようやく彼の回転は終わる。目を回したのか、ひっくり返った状態のまま起き上がろうとしない。それを見かね、チャリオッツは霊夢へ促す。

 

「霊夢、起こしに行ってこい」

 

「ハァ!? 何で私が……アンタの方が仲良いじゃない」

 

「お前が傘をねだったんだろう? じゃあ、お前が行け」

 

「ム、ムカつく〜〜」

 

「当然のことだろ!」

(ホントは俺だって関わりたくないんだよ)

 

 文句を言い、やりたくないことをなすりつける合う2人。結局霊夢がスタンドの元へと行くことになった。

 先程霊夢はハイエロファントと組みたかったと(こぼ)していたが、ハンドシグナルの時と同じで、おそらくこの場にいるのが彼でもチャリオッツと同じことを言っただろう。彼ら2人も、本体同士がなすりつけ合ったことがあったのだから…………

 

 ブツブツと文句を零しながらも、霊夢はちゃんとスタンドの元へと行く。ある程度近付いてみれば、やはり自力で起き上がれないようで、パタパタと手足を動かしていた。まるでひっくり返ったカエルだ。

 嫌がりながらも、霊夢はスタンドを助け起こすため、手を伸ばす。

 

「ほら……大丈夫?」

 

「おぉ! ありがとうございます。ついでですが、傘をどうぞ。お渡しするのが遅れてしまいました」

 

「…………バキバキに壊れてるけど?」

 

「おや!」

 

 霊夢に起こされたスタンドは、逆の手に持つ傘を彼女に差し出すが、転がったせいで完全に機能しなくなっていた。「仕方ない」と、バキバキに壊れた傘をポケットにねじ込むと、スタンドは霊夢に背を向けてチャリオッツのいる方へと歩き出す。

 霊夢もそれに続く。

 

「ところで、霊夢様。口笛、お好きなんですか?」

 

「……何ですって?」

 

「いえ、先程からご機嫌そうに()()()()()()()()()()()()、つい」

 

 

 

…………ハ?

 

 

 

「ヒューー……ヒューー……」

(!? な、何……で……ッ!?)

 

 今の今まで全く気が付かなかった。霊夢は自分でも知らぬ間に、口笛を吹いている。

 しかし変だ。確実に口の形は()()()()()()()()()()()()()というのに。霊夢は自身の唇を触り、その形を確かめる。やはりだ。形は成っていない。では、なぜ自分から口笛の音がするのだ?

 

 霊夢は恐る恐る自分の口元、顎、そして頬を順番に撫でていく。そして、見つけた。

 

「……ヒューー……! ヒュ、ヒューー……!?」

(わ、私の頬に穴が……!?)

 

 霊夢の右頬、そこに直径1cm〜2cmの穴が2〜4つ。複数も空いていた!

 鼻を含め、吸って口に含まれた空気が口内に溜まり、頬の穴から抜けていたのだ。それによって、霊夢から口笛を吹く音が出ていた。

 しかし、頬に穴があるというのに、痛みは一切無い。穴を空けられた感触も無く、いつ空いたのかも分からない。しかし、霊夢には一つ確信していることがあった。それは…………

 

「ヒューー、ヒューー、ヒューー……」

(こいつ()()()()()…………このスタンドの攻撃……ってわけね……)

 

「わたくしめの名前、ヨーヨーマッ…………口笛は好き嫌いがございますので、地底内ではご遠慮ください……」

 

 

 

 

 




ヨーヨーマッ、やはり話が最近のものになるにつれ、スタンドが特殊になっていきますよね。ジョジョって。


魔理沙の奮闘より、ついにブラック・サバスを撃破したハイエロファントサイド。
しかし、敵の攻撃を受けていたのはチャリオッツサイドも同様であった。
攻撃に気付いているのは霊夢だけ。戦いの行方は?

お楽しみに!
to be continued⇒

あくまで参考までに、ということで。

  • 東方をよく知っている
  • ジョジョをよく知っている
  • 東方もジョジョもよく知っている
  • どちらもよく知らない
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