幽波紋の奇妙な幻想 《Drifted Destiny》   作:右利き

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久々の休憩回です。




41.Cancella Tempo

 霊夢たちが地底に向かったのと同時刻。『地底から怨霊が溢れ出る異変』は、人里でも起こっていた。もちろん、間欠泉を伴ってだ。至る所で温泉と怨霊が溢れ、里の民全員がその対処に追われていた。

 朝から混乱する人里だが、昔と違って今は専属の用心棒がいる。それは…………

 

「ア……アギ……」

 

「これで全部か。何なんだ? こいつらは……」

 

「おぉ、スティッキィ・フィンガーズさん。おかげで助かりました! なんとお礼をすればいいか……」

 

「気にすることじゃない。それより、こいつらについて慧音は何て言ってるんです?」

 

 人里を縦断する大通り。そのど真ん中に現れた怨霊の大群を蹴散らす者、S・フィンガーズは彼を呼びつけた老人に質問する。

 今となっては彼も幻想郷の住人だが、それでも分からないことは多い。特に、彼が元々いた『外の世界』には存在しなかった妖怪については。

 

「えぇ……それが……全く分からないと……」

 

「慧音でも……か…………分かりました。また何かあったら呼んでください」

 

「はい! ありがとうございました」

 

 敵を排除し終えたS・フィンガーズは、背後から里民たちの歓声を受けながら帰路につく。

 朝の9時近くから怨霊の対処に追われ、時刻は既に昼を回っていた。怨霊調査を行う慧音の元へ行こうかと思ったが、S・フィンガーズは自宅へと向かう。自らは昼食を必要としないが、今()()()()()()()()には必要だ。

 彼女は食事が無くては生きていけない。

 

 自宅に到着したS・フィンガーズの手には、帰ってくる途中で買った饅頭(まんじゅう)が入った袋がぶら下がっている。

 戸を軽くノックすると、砂が乗ったサッシに構わず戸をスライドさせた。

 

「今戻った。ケガの具合はどうだ。妖夢」

 

「あっ、スティッキィ・フィンガーズさん。おかえりなさい。えっと……痛みは引いてきました。おかげさまで」

 

 布団から上半身を起こす白髪の少女、妖夢がS・フィンガーズを迎える。彼女は先日の戦いの後、アヌビス神の支配から解放され、路地裏で倒れているところを発見されたのだ。体の数箇所、主に肋骨を数本折っており、いくらかの介抱の後S・フィンガーズの家で寝かされていた。

 S・フィンガーズは彼女の前に買い物袋を置くと、妖夢は「すみません」と袋を(あさ)り始める。

 

「あ、またこのお饅頭。美味しいですよね」

 

「そう言うと思って買った。代金のことは気にしなくていい。俺も慧音から貰ったしな……」

 

「ありがとうございます……色々と。では」

 

 妖夢は一言断り、袋から出した饅頭を頬張った。

 彼女が食べている饅頭は、中に餡子(あんこ)が入っている。『つぶ』ではなく、『こし』の方だ。妖夢が目覚めてからまだ2日だが、目覚めたその日に買ってきた物を妖夢がえらく気に入ったため、S・フィンガーズは今日もこうして買ったのだ。

 スタンドであるS・フィンガーズは物を食べずとも良いが、以前慧音に勧められた饅頭屋の商品を気に入ったために、その店を知っている。

 

 S・フィンガーズは布団の横に座布団を敷くと、美味しそうに饅頭を食べる妖夢を眺める。そして、ちょうど一個目を食べ終わるタイミングで口を開いた。

 

「妖夢。君の刀の件だが…………」

 

「! はい……何でしょう?」

 

「すまないが、手がかりは依然見つかっていない。やはり、誰かに破壊されたと考えられる」

 

「……そうですか…………」

 

 淡々と告げるS・フィンガーズ。それに対して、妖夢は顔を曇らせる。

 彼女の目覚めてからの第一声は、自身の刀の所在であった。自身のケガよりも、2本の刀がどこにあるのか、それを先に心配していた。それほど必死になるのだ。彼女にとってよほど特別な物だったのだろう。

 S・フィンガーズは、ハイエロファントと魔理沙が白楼剣を破壊した時のことを思い出す。

 妖夢を解放するため仕方なかったとは言え、後になったら取り上げるだけで良かったのではないか、と考える。

 

「白楼剣の方。私を助けるために破壊したんでしたっけ」

 

「あぁ。あの場ではアヌビス神を確実に倒すことが重要だった。だが、今考えると他にやり方があったと思う」

 

 S・フィンガーズは自身が思うことを包み隠すことはしない。それは決して赦しを乞うためではなく、彼の奥底にある優しさからくるものだった。もちろん、相手がどういう反応をしようとも、全て受け入れるつもりである。それはまた、自分への戒めでもあった。

 

「ご自分を責めていらっしゃるんですか? たしかに……あの二刀はどちらも私にとって特別な物ですが、あなたは恩人です。感謝してますよ」

 

「………………」

 

 妖夢は本気でそう思っている。

 S・フィンガーズ……というより、本体のブチャラティは人の汗を見るだけで(舐めればもっと)、その人が嘘をついているか分かるという特技をもっている。今まで厚い布団に入っていたからか、食事をしたばかりで代謝が上がったからかは分からないが、妖夢の汗は真実を物語る。

 しかし、どこか悲しげな表情は崩れておらず、やはり刀を失ったショックは大きいらしい。

 

「そう言ってくれると、ありがたいがな……」

 

 S・フィンガーズはそう呟くと、視線を落とした。

 妖夢も2個目の饅頭へと手を伸ばす。

 2人の会話が終わった途端、突然誰かが戸を叩いた。

 

「ん? 誰かな?」

 

「…………」

 

『スティッキィ・フィンガーズ、いるか? 慧音だ』

 

「……慧音? 何の用だ?」

 

 S・フィンガーズ宅を訪れたのは、半人半妖の上白沢慧音。倒れていた妖夢を発見したのは彼女だ。

 S・フィンガーズは妖夢に関連した用事だろうと予想し、内側から戸を開ける。

 

「慧音。何か用か? 妖夢の刀が見つかったか?」

 

「あぁ……いや、そのことについてじゃないんだ。ここに来た理由は。君に会いたいと言う人がいてな……」

 

 「会いたい人?」とS・フィンガーズは首を傾げた。奥にいた妖夢は一瞬期待に満ちた顔をするが、慧音が刀の用件を否定したため、再び表情が元に戻る。

 それにしても、S・フィンガーズは全く見当がつかなかった。幻想郷に知り合いは少ないはずだ。その数少ない知り合いも、わざわざ人を寄越すような人物ではない。

 S・フィンガーズが腑に落ちない顔をしているのを察し、慧音は言葉を付け足す。

 

稗田阿求(ひえだのあきゅう)。この前言った人だ。彼女は前々から君たちスタンドに興味を持っててな」

 

「……例の転生をくり返す人物か。稗田家の現当主の」

 

「『幻想郷縁起』を編纂(へんさん)しているんでしたっけ」

 

「そう。彼女はそれに、スタンドのことについて書き足したいと言っていた。それで、君に協力してほしいと私に頼んできたんだよ」

 

「…………なるほどな」

 

 幻想郷縁起。それは幻想郷に住む妖怪や英雄を記す、歴代の御阿礼(みあれ)の子が受け継ぎ、書き記してきた書物である。

 と言えば、かなり分厚い巻物を連想する人が多いと思うが、実際は少し違う。たしかに、阿求含め、御阿礼の子はいくつもの長い巻物に歴史や妖怪の情報を綴ってきた。しかし、今では『鈴奈庵』という貸本屋で製本を行っているため、数冊の本になっている。こちらの方が手に取られやすいのもあってだ。

 

「決して嫌というわけではないが、俺である理由は? キラークイーンじゃいけないのか?」

 

「あぁ……その、分かっていると思うが、彼は多分……そういうのにあまり協力してくれそうになさそうだろう?」

 

「…………」

 

 S・フィンガーズは納得する。

 キラークイーンは群れるのを好まないタイプだ。カビの異変が起こる前、3人で博麗神社を訪れた時も嫌なのか、嫌ではないのか、よく分からない態度を示していた。他人にも興味が無さそうである。

 彼ならばきっと、誰かと話すために時間を取るのも、自分のことを探られるのも好きではないはずだ。

 S・フィンガーズは特に悩むこともなく、すぐに返答する。

 

「分かった。名家の人物が呼んでいるなら、行かない手は無いだろう。妖夢、また家を空ける。留守番を頼むぞ」

 

「分かりました。行ってらっしゃい」

 

「行こう。慧音。案内してくれ」

 

「あぁ。こっちだ」

 

 S・フィンガーズは戸を閉めると、慧音が先導して稗田の屋敷へと向かった。

 

 

 

____________________

 

 

 

「思っていたより、ずっと豪勢な屋敷だな」

 

 人里の、さらに中心地へ歩き続けた2人は、見張り番付きの門の前に立っていた。木でできているが、要人を守るに事足りた外壁も構えている。

 2人は屋敷の使いの者に案内され、屋内も歩き続ける。隅々まで掃除され、床は照明の光が綺麗に反射するほど。(ほこり)一つも見当たらない。

 屋敷の中にはいくつもの部屋があり、大きな中庭も存在している。中庭には池があり、肥え太った鯉が優雅に尾鰭(おびれ)を揺らしていた。

 2人は案内されるまま、そのまま二階へ。再び歩き、一つの部屋の前で立ち止まった。案内をした使いの人は、「少々お待ちください」と言い、障子を静かに開けて中に入っていった。

 

「稗田の当主はこの中にいるのか」

 

「あぁ。S・フィンガーズ、態度は崩しても良いからな。彼女は堅苦しいのは好まない」

 

「……そうか。だが、それは会ってから決めよう」

 

  S・フィンガーズは思慮深い。誰かに「そうだ」と言われても、たとえそれが信頼に足る人物であっても、自身の目で見てから判断する。稗田阿求も、もちろん例外ではない。慧音は良いだろうが、彼自身の体は人外そのもの。どんな反応をされるか分からないのもあり、下手なことはできないという理由もある。

 2人の会話が終わるのとほぼ同時に、先程中に入っていった使用人が部屋の外へ出てきた。準備が整ったようだ。

 

「慧音様。スティッキィ・フィンガーズ様。準備が整いました。どうぞ、お入りになってください」

 

「えぇ」

 

 使用人はそれだけ告げると、障子の前から立ち退く。

 それを見届けた慧音は、障子の引戸に手をかけて横へとずらした。目の前に現れたのは、床全てが畳の大きな広間。障子が開くと同時に畳の匂いが鼻になだれ込む。

 そんな部屋の真ん中に座していたのは、紫色の髪をしたおかっぱっぽい髪型の少女だった。

 

「………………」

(少女……? 女性だとは聞いていたが、まさかこんなに小さいとは思っていなかった)

 

 緑色と黄色の着物を重ね着し、花の髪飾りを付けている彼女こそ、稗田阿求その人である。

 見た目で言えば、それこそ小学生5〜6年生といったところ。その年頃の女の子なら活発な者も多いと思うが、彼女はそれとは正反対だった。醸し出す雰囲気から落ち着いている。やはり、ただの少女ではない。

 彼女の予想外の姿にS・フィンガーズは一瞬動揺するが、すぐに気を取り直して彼女の前に置かれた座布団の手前に立つ。阿求が短く「どうぞ、お座りください」と言うと、2人は同時に座布団に腰を下ろした。

 

「こんにちは。ようこそおいでくださいました。私が稗田家の当主、稗田阿求です。お見知り置きを」

 

「……ご存知だと思いますが……スティッキィ・フィンガーズです」

 

 正座の状態で、2人は軽く礼をする。

 

「お忙しいところ、急に呼び出したりしてすみません。朝から怨霊退治に奔走(ほんそう)していたんですよね?」

 

「はい。ですが、もう騒ぎは落ち着きました。後は湧き出た温泉の処理だけですが、それは里の者たちだけでできるでしょう。俺の出番は既に終わっています」

 

「そうですか……里に住む者の代表として感謝します」

 

「……いえ」

 

 阿求は挨拶の時とは違い、今度は深く頭を下げる。

 実際彼女は里を代表できるほどの人物であるが、今回の一件だけでは大袈裟だ。おそらく、S・フィンガーズは関わっていないがタワーオブグレー戦からカビの異変、今回の怨霊の件をひっくるめてのお礼だろう。

 しかし、S・フィンガーズはスタンドを代表しているわけではない。ただの一スタンドとして、阿求と相対している。謙遜、というわけではないが、S・フィンガーズは「自分が言われるべきではない」として多少の否定の意を示した。

 

「俺も里に住んでいる者。生活資金は慧音から渡されてはいますが、タダでというわけにはいきません。それ相応の仕事……用心棒ぐらいならばできます。当然の行いをしたまでです」

 

「……そう仰ってくださると助かります」

 

「あぁ。私もスティッキィ・フィンガーズには世話になりっぱなしだ。カビの異変の時、対処方法を教えてくれなければ里の被害はずっと拡大していた。私からも改めて礼を言うよ」

 

 慧音も阿求も、S・フィンガーズへ感謝を述べる。

 彼の本体ブチャラティも、ギャングではあったが、街に住む人々のためにと動き続けた男だ。母親に暴力を振るう男を言い聞かせようとしたり、自殺した娘の彼氏が、実は娘を殺した犯人だと言い張る男の調査依頼も受けた。ギャングでありながらも正義の道を往き続けた彼の評判はとても良かった。

 S・フィンガーズはその生き写しだ。礼を言われるためにやっているのではなく、ただ、ブチャラティから受け継いだ精神の下で生活している。それだけである。

 

 ここで、阿求が軽く手を叩いた。

 

「さぁ! 本題に移りましょう。スティッキィ・フィンガーズさん、私が普段何をしているか、ご存知ですか?」

 

「……たしか、幻想郷縁起の編纂……」

 

「そうです! 元々は力の弱い人間たちが、強い妖怪に対処できるように、弱点などの情報を発信するための物でした。しかし、『スペルカードルール』、『弾幕勝負』の決闘方法が確立してからは、私が取材した妖怪や英雄たちの生活にも踏み込んだ、全く新しいものへと変わりつつあります。そこで、この幻想郷縁起に『スタンド』についても記したいんです」

 

(妖怪図鑑の延長ということか……)

 

 先程の態度と打って変わって、幻想郷縁起の話題となると年頃に見合ったテンションで話し始める阿求。

 部屋の前で慧音が言っていたのは、このようなことがあるからなのか、とS・フィンガーズは心の中で納得する。

 しかし、せっかく上機嫌になっているところへ堅苦しい態度のまま振舞っても、熱が冷めてしまうだけだ。ここは、一皮剥けよう。

 

「あぁ。分かったよ。阿求。好きなことを訊いてくれ」

 

「はい!」

 

 阿求は元気に応えると立ち上がり、部屋の隅に置いてあった座卓を座布団の前へ移動させる。その上には(すずり)と筆、一本の巻物が乗っている。これに情報を記すわけだ。

 

「では、始めましょうか。まず最初にですが、私の予備知識の確認をしてもらえませんか? 以前新聞で読んだきりで、()()()()()()内容が歪曲しているかも…………」

 

「あぁ。構わない」

 

「ありがとうございます。えーと……スタンドには『本体』があり、その精神や魂のエネルギーが具現化したもの……間違い無いですか?」

 

「あぁ。俺が知っているのと同じ情報だ。付け足すとするなら、本体の性根によって能力の凶悪さも変わる。以前のカビスタンドなんか良い例だ」

 

「なるほど……そのカビスタンドの本体とは知り合いなんですか? 戦ったことがあるとか」

 

「そんな感じだ。残酷さを楽しみ、無関係な一般人を巻き込み、任務も何もあったもんじゃない。自分の快楽のためだけに殺人を犯す、まさにゲス野郎さ」

 

 S・フィンガーズはローマの戦いを思い出す。

 一番最初にカビに侵されたのは、仲間のミスタとナランチャだった。ミスタの機転で危機を脱したが、その後すぐにゲス野郎(チョコラータ)は追ってきた。ヘリコプターの中から自分たちを見下ろし、嘲笑う姿はとても印象的である。

 

「激しい戦いだったんですよね。多分。しかし、そんなにたくさん、スタンドを扱う人間がいるんですか? 話を聞いていると、私が抱いていた外の世界のイメージとはそれなりに違うんですが……」

 

「……君が俺たちのいた世界をどんなふうに思っていたかは分からないが、スタンドを身につけている人間の方が少ない。だが、俺の周りにはスタンド使いは多かった。そうだな……『スタンド使いはスタンド使いと引かれ合う』と言ったら分かりやすいかな?」

 

「……なるほど。ですが、そうしたらどうして、この幻想郷ではスタンドを使える人がいないんでしょうか?」

 

「………………」

 

 S・フィンガーズは沈黙する。扱うのに苦労した筆を、阿求はスラスラと紙の上を走らせていくのを見ながら考える。

 忘れられていないから?

 可能性はあるが、根拠が無い。

 素質が無いから?

 幻想郷には人間だけでなく、たくさんの妖怪や動物がいる。『亀』の時のように彼らも使えるとは思うが、目撃情報も存在も知られていないなら可能性は低いだろう。

 

「……スタンド使いには主に二種類ある。一つは何かをきっかけに、もしくは生まれた時から備わっているパターンだ。もう一つは、あるアイテムによって発現させるパターン。スタンドの存在が知られていないなら、おそらくそのアイテムは無いんだろう。後は素質が無かったとか……」

 

「スタンドを発現……ちょっと興味あるかも……」

 

「死ぬか死なないか、だ。おすすめはしない」

 

「ハハハ……」

 

 S・フィンガーズの強められた声に、阿求は苦笑いをする。本心から言ったことだからか、S・フィンガーズも真面目に返したのだ。

 その後も2人のやり取りは続いていく。S・フィンガーズの能力や本体のことについて、また、その仲間たち。慧音と阿求、2人に突っ込まれたりしながら、かつての仲間のことを懐かしんだ。キラークイーンやチャリオッツのことについても、S・フィンガーズが知っている限りのことを限定して(本人ではないため、何でも喋るわけにはいかない)阿求に話した。

 阿求も、自身の知らない世界のことを知れて、誰から見ても分かるように上機嫌になっていた。

 

「あぁ、そうだ。S・フィンガーズさん。『鈴奈庵』にはもう行かれましたか?」

 

「いや…………たしか貸本屋だったか?」

 

「はい。私の知り合いがいるんです。最近は妖魔本を読むのにハマっているのだとか……」

 

「妖魔本?」

 

「妖怪が書き記したとされる、特殊な本のことだ。妖怪が自身の存在を知らしめたり、封印されていたりする」

 

「ほう……」

 

 S・フィンガーズの呟きに、慧音が反応した。

 彼女の解説で妖魔本が何なのかを理解できたが、人間が読むには危険すぎるのではないか? と疑問を抱く。

 だが、さらに聞いてみると、その阿求の知り合いも()()()()()()()()()らしい。妖怪ではないと言うが、特殊な能力に目覚めたら者だと。S・フィンガーズは霊夢や魔理沙のようなものかと考える。

 

「よかったら今度寄ってあげてください。スティッキィ・フィンガーズさんは人里の人気者なので、きっと喜ぶと思います」

 

「あぁ。そうだな。読書か……久しくしていないからな」

 

 

 昼近くから行われた稗田阿求の取材。

 それは夜になるまで続き、しかし、訪れた2人を不快にさせることはなかった。阿求は尽きない探究心に、スタンドという潤いを得られて満足する。S・フィンガーズもまた、幻想郷の知識を得られて有意義だったと振り返る。

 

 

 そんな彼らの会談が終わるよりも、ほんの少し前。

 貸本屋『鈴奈庵』の店番を務める少女、本居小鈴(もとおりこすず)がくしゃみをして鼻をすすっていた。

 

「ハックション! ハァ〜〜……もう、誰か私の噂してるでしょ〜〜……」

 

 髪に付けた大きな2つの鈴を揺らし、彼女は店の本棚を整理する。これは日課だ。普段と何ら変わらない、いつもの動き。人里内に怨霊と温泉が現れたこと以外、彼女は今の今まで日常を送っていた。

 しかし、彼女に再び非日常が訪れようとしている。

 

「……ん? あ、お客さんかな」

 

 店の暖簾(のれん)に一人分の人影が揺れた。

 彼女は人間の客だと疑わず、早めに整頓を終わらせてレジに座る。そして客の入店を待ち侘びた。

 

 小鈴は気付いていない。

 訪れる者の正体を。

 帝王がやって来る。黄金に敗れた、紅の王が……

 

 

 




刀を失った妖夢って、別の方の作品でもあまり見ない気がするような……


怨霊を倒し、平穏が訪れた人里。
しかし、そこに一つの影が迫っていた。
人里の運命やいかに?

お楽しみに!
to be continued⇒

あくまで参考までに、ということで。

  • 東方をよく知っている
  • ジョジョをよく知っている
  • 東方もジョジョもよく知っている
  • どちらもよく知らない
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