幽波紋の奇妙な幻想 《Drifted Destiny》   作:右利き

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明けましておめでとうございます。
長めの休暇の中で、かなりぎゅっと敷き詰めた一話となりました。
そして疲れました。
トニオさんの料理食べたい。

それよりも、「岸辺露伴は動かない」の実写ドラマ、皆さん見ましたでしょうか?
個人的にかなり好きな具合に仕上がっていて興奮しました。単行本で1、2は持っているので、富豪村とD.N.Aの話は知っていたんですけど、「くしゃがら」は知りませんでした…
初めて内容を知った、ということで「くしゃがら」が一番のお気に入りです。
(録画しました)



5.紅い悪魔と幽波紋

 射命丸からの取材から一夜明け、ハイエロファントはこれまでのように早朝から忙しく家事をしていた。玄関前の掃除を終え、ポストの中を覗くと、1枚の新聞が。

 

 

「「文々。新聞」……これは……昨日の取材のか?」

 

 

 新聞の正面には大々的に「舌切り蟲の討伐! その正体は妖怪ではなかった!?」と記されていた。

 

 

「案外早いんだな。新聞が作られるのって……」

 

 

 花京院は新聞記者の取材を受けたこともなく、別に新聞を愛読していたわけでもないため新聞について新たな知識を身につけられたことが少し新鮮に感じる。

 ハイエロファントは新聞を取り出すと、店内のカウンターに置き、魔理沙を起こして朝食を出した。魔理沙はトースターから出てきたばかりの淡い焦茶色のトーストにマーガリンを付けて頬張る。ひと齧りした後に指に付いたパンのカケラを指同士を擦り付けながら皿の上に落とすと、そばに置かれた新聞を手に取り、何にも期待してないような半目のまま新聞を読み始めた。

 

 

「……ふ〜〜ん。あいつにしちゃ……真面目に書いたな。これ絶対お前に興味出したぞ」

 

「別に危害があるわけではないんだろう?いいんじゃあないか?」

 

「面倒だぞぉ? 付き纏われたりするし」

 

「嫌になったら君にどうにかしてもらうさ」

 

「えぇ〜〜」

 

 

 他愛もない会話をしながら朝食を終えると、魔理沙は2階へ着替えに行き、ハイエロファントは食器を片付け始めた。いつもの白黒の服に着替え終えた魔理沙が2階へ戻ってくると、ドカッと再びカウンターに座った。

 

 

「やることね〜な〜。なーんにも」

 

「……君、いつになったら僕に助手らしいことをさせてくれるんだい?」

 

「え?助手?もうやってるだろ?」

 

「ハァ。もういいよ。初めからだが、君のそういうところが素なのかワザとなのか未だにわからない…」

 

「ハァ〜。魔法だのの研究も大体終わったしな〜。」

 

「……では魔理沙。パチュリー様の図書館から盗んだ本、返してくださる?」

 

「いや〜。それは断るぜ……ん?」

 

 

 突如店内に()()()以外の女性の声がフワッと鼻を撫でる落ち着いた紅茶のような匂いと同時に発せられた。住人2人は声が聴こえた瞬間、同時に玄関を振り返る。すると、そこには銀髪の、西洋の物語から抜け出してきたようなメイド服を着た女性が立っていた。外見からして10代後半〜20代前半ぐらいか?

 

 

「なっ……誰だ!」

 

 

 ハイエロファントは彼女を振り返ると、掌を合わせる。エメラルドスプラッシュを放つ迎撃態勢だ。

 

 

「落ち着けって、ハイエロファント。私の知り合いだ。以前ちょっとした事件があってな。そこで知り合ったんだよ」

 

「紅魔館でメイドをしております、十六夜咲夜です。よろしくお願いしますわ。ハイエロファント様」

 

「は……はぁ……」

 

 

 十六夜咲夜と名乗った女性はハイエロファントに軽くお辞儀をした。そして顔を上げ、ハイエロファントを手で指し示しながら話を続ける。

 

 

「今日やって来たのは、あなたに用があってね」

 

「……僕に用だって? 欧米風の人間に知り合いは少ないぞ」

 

「実は……我が主、レミリア・スカーレットが今朝の新聞を読んであなたに非常に興味をもたれたのよ。それで、あなたを連れてくるようにと命を受けて来たの」

 

 

 今朝の新聞。タワーオブグレーの件を気にかけていたのだろうか。いや、まさかスタンドの存在自体に?ただならぬ()()を覚え、ハイエロファントは警戒する。

 

 

「別にそこまで警戒することでもないぜ? 新聞読まれてめっちゃ気に入られただけだよ。きっと。いきなり()()()()()()()()はしないはずさ」

 

 

 いや、待て。今魔理沙の口からかなり気になる言葉が飛び出たぞ。「とって食う」だって?

 

 

「とって食う、か。普通の人間とは思えないが……何者なんだ? 君の主は」

 

「お嬢様は……吸血鬼よ。本当はご自分であなたを招きたかったそうで。でも、こんなに日光が照りつけていては出向けない、と嘆いていらしたわ」

 

 

 吸血鬼! 

 ハイエロファントの頭に電流が走った。彼の本体、花京院典明はかつてDIOという男に敗れたのだが、彼もまた吸血鬼の1人だった。ハイエロファントは幻想郷が()()()()()()()()、既に耳にしており吸血鬼が存在しているだろうことも考えていたが、まさかあちらがコンタクトを取ろうとしてくるだなんて一体誰が考えられるだろうか。

 

 

「……吸血鬼か…… 魔理沙。以前僕の本体、花京院典明が敗北した相手の名前は知っているだろう?」

 

「え? あぁ。たしか、DIOってやつだろ?」

 

「そう。……彼も吸血鬼だった」

 

「え!? そうなのか!?」

 

 

 魔理沙が目を剥いて驚く。咲夜も無言だがいかにも「意外」と思っていそうな表情をしている。大方、主が吸血鬼だと知って驚愕するリアクションを期待していたのだろう。実際ハイエロファントは"驚いては"いる。

 

 

「まさに「悪のカリスマ」。「邪悪の化身」と言っても過言ではない。会ってしまったら誰であっても虜にしてしまうだろう容姿、雰囲気。恐ろしいやつさ……スタンドも強力だった。「時を止める能力」。圧倒的パワー、スピードを持ち合わせているというのに、あの能力は反則というやつだ」

 

 

 ハイエロファントはDIOと初めて遭遇したとき、そして敗北したときのことを思い出す。心なしか、体が少し震えているように感じた。ハイエロファントは話を聴いていた彼女らの方を見る。「そんなやつだったのか」、と唖然としているだろう……

 

 

「へぇー。大変だったんだな」

 

 

 意外!それは平静ッ!

 

 

「私とお嬢様を足して2で割ったような感じなのね。たしかに強い存在だとは思うわ」

 

「……何?」

 

「実は咲夜ってな、時間を操れるんだよ。もちろん止めることだってできる。あんな広い館の中で家事をするんだ。何時間とか止められるんだろ?」

 

「そうね……2、3時間といったところかしら。限界まで止めたことはないけど、家事をするときはそれぐらい止めることもあるわ。……でも、一回止めたらクールタイムが要るわね。それでも数秒間だけだけど」

 

「……す……すごいな……」

 

 

 ハイエロファントはまたもや驚愕する。自分自身、DIOが永遠に時を止められるとは思っていなかった。止められても数秒〜数十秒程度だと。それ以上止められるのならば、ジョースター一行はDIOの館に足を踏み入れた時点で殺されていただろう。

 だというのに、今目の前にいるこのメイドは数時間だって?DIO以上に恐ろしい存在なのではないか。その考えにハイエロファントは思わず(おのの)いてしまう。……では、彼女を従えるレミリア・スカーレットとはどれほど強力な者なんだ?

 

 

「我が主も圧倒的カリスマ、何人でも虜にできる素晴らしい容姿をお持ちになっているのよ。そんな方が招いているんだから、どう? 美味しいお茶も出すわ。」

 

「い、いや……うぅん……」

 

 

 どうにも警戒してしまう。彼女の言い草からして、ほとんどDIOにそっくりなのではないか。本心、かなり行きにくい。

 

 

「なぁ、行こうぜ。ハイエロファント。私もパチュリーに用があるしよ。ついでだ、ついで!」

 

「図書館に、の間違いでしょ?」

 

 

 ハイエロファントは最後まで迷ったが、幻想郷の住人となってしまった今、このような機会を無下にするのはどうか、と思い遂に折れた。

 紅魔館へ行く決意をし、それを2人に表明すると、咲夜は早々と時間を止めて帰ってしまい、魔理沙は出発の準備を整えて箒に乗ると、ハイエロファントも乗せて紅魔館へ直行した。

 

 

 

 

 

 

___________________

 

 

 箒で飛び立っておよそ7分後、森が開けたところに巨大な湖が見えてきた。未だ天に昇りつつある太陽の光を反射して、波が生まれる度に宝石のように煌めく。そして湖のさらに向こう、赤茶のレンガで造られた洋館が佇んでいる。なるほど。名前の通り、たしかに紅い。

 

 

「あれが紅魔館か。いかにも西洋の吸血鬼がいそうな場所だ」

 

「ああ。それに、見た目通り結構広いからな、迷子になるなよ」

 

「大丈夫だとは思うが……さすがに咲夜さんが案内してくれるだろう」

 

「かもな〜」

 

 

 そんな話を交わしながら数分後、館の前まで辿り着くと門の前に咲夜ともう1人、高身長な女性が立っていた。見慣れない服を着ている。ハイエロファントは記憶を辿り、彼女が着ている服が中国のものに似ていると気付いた。しかし、なぜ洋館で中華なんだ…?

 

 

「お待ちしておりました。さ、ハイエロファント様、こちらへどうぞ。レミリア・スカーレット様の元へ案内いたしますわ」

 

「よっし。行こうぜ。ハイエロファント!」

 

 

 魔理沙が元気良くハイエロファントと並んで門の内へ入ろうとしたとき、中華の女性が立ち塞がった。

 

 

「ハハハー。すみませんねぇ、魔理沙さん。パチュリー様からあなたの入館は認められてなくってぇ……」

 

 

 申し訳なさそうに魔理沙の肩を手で押さえている。魔理沙は「ハァ?」と素っ頓狂な声を上げると、中華の女性に掴まれながらジタバタと暴れ始めた。

 

 

「おい! なんでだよぉ! つーか、そういうことってあいつも決められるのかよッ! 別に何もしないって、パチュリーのやつに言っとけよ! 咲夜ぁ!」

 

「…だってあなた、信用ならないもの」

 

「おいいぃぃーー! ハイエロファントぉ! 私が今から言う魔導書をも……」

 

「はいはい、お引き取り願いしまーす」

 

 

 女性が先程よりも強いパワーを以ってして魔理沙を抑えつける。途端に「いたたたた!」と叫びが飛んできたが、そんなことに構いもせず咲夜はハイエロファントを連れて外門をくぐって行った。

 

 

 

「……ものすごくどうでもいいことなんだが、君もこの館もまさに「洋」という感じなのに、何で門の女性は中華風なんだ?」

 

「彼女は中国の妖怪なの。ちなみに、中華風なのはここで彼女だけよ」

 

「ハァ……彼女も妖怪……なぜ中国の?」

 

 

 次の質問をぶつけられた咲夜は人差し指を顎に当て、「んーー……」と考えた、と思ったら、

 

 

「……わかりませんわ」

 

 

 即答であった。回答を聞いたハイエロファントは「実は彼女は大雑把な性格なんじゃあないか?」と心の中で思わずにはいられなかった。

 

 紅魔館の中に入ったハイエロファントは「やはり」といったように扉から入ってすぐのホールを見渡す。館内はとても暗かった。明かりだなんてものは必要最低限、というより壁際の、しかも天井付近で小さい炎が揺らめいているだけだ。かつて訪れたDIOの館もこのように明かりが少なかった。今回は扉から入って落とし穴に落とされることはなかったが。

 

 ハイエロファントは咲夜に案内されるまま、暗い廊下や階段を進む。その途中で妖精を見かけ、咲夜になぜ館内にいるのか、と聞くとどうやら館内のメイドの一員のようである。彼にとって初耳だったのが、咲夜が紅魔館のメイド長であったこと。しかし、それほど驚くようなものでもなかった。彼女の振る舞いなどからして、かなり()()()人だとわかっていたからだ。

 

 

 そのような会話を交わしながら、ついに咲夜の足が他のものより少し豪華な、両開きの扉の前で止まる。

 

 

「到着しましたわ。それじゃあ、私に続いて入ってちょうだい」

 

 

 咲夜はそう言うと、扉をノックした。すると、扉の向こう側から「どうぞ」と女の子の声が聴こえた。声の高さからして、咲夜よりも年下なのか?とハイエロファントは思ったが、彼の緊張を解くにはまだ弱い説である。

 返事を聞いた咲夜は「失礼します」と断りを入れ、扉を開けた。徐々に大きくなる扉の隙間からボウッと朧げな光が漏れる。蝋燭か何かの火だろうか。咲夜が開かれた扉を通るのに続き、ハイエロファントも入室する。それを見て咲夜はハイエロファントの左側に立つと、蝋燭の火によって暗がりができている部屋の奥を手で示した。

 

 

「本日は足をお運びくださり、ありがとうございます。ハイエロファント様。そして、この御方こそ、この紅魔館の主君、レミリア・スカーレット嬢でございます」

 

 

 そう言った直後、壁際のランプが一斉に点灯。蝋燭の向こう側に1人の背の低い女の子が手を広げていた。

 

 

「ようこそ。我が館へ。ハイエロファントグリーン。会えてとても嬉しいわ。既に紹介があったけど私が紅魔館の主、レミリアよ。よろしくね」

 

 

 鋭い眼光を向け、威圧たっぷりの声で話す彼女は、青紫の髪をし、レースの入った淡いピンク色の服を着ている。さらに赤い目をもち、しゃべっているときにチラリと見えた口内には人間のそれよりも鋭い犬歯が。しかも背中には黒いコウモリの羽ときた。DIOとは似ても似つかないが、それこそRPGや伝説にある姿をした、吸血鬼。何人もの人々を虜にすると咲夜は言っていたが、それは妖艶な姿に、ではなくてほのかに漂わせる"可愛らしさ"のことなのではとつい思ってしまった。彼女がレミリア・スカーレットか。

 

 

「……お初にお目にかかります。レミリア嬢。あなたのような高貴な方と繋がりをもてたことにとても感謝しています」

 

 

 片膝をつき、頭を垂れ、出来るだけ……レミリアの気分を損なうまいと言葉を紡ぐ。

 

 

「あら、律儀なのね。やっぱり()()()()()()()()()のよ…………ほら、早くこっち座ってっ」

 

 

 レミリアは蝋燭の立てられている机を挟むようにして置かれているイスの片方に座ると、もう片方よりの机の面をパンパンと叩いて促す。

 

 

「え、ええ」

 

 

 渋々といった感じで椅子に座ると、レミリアはいきなり身を乗り出してハイエロファントをまじまじと観察する。

 

 

「あの…何か僕の顔に付いているんですか?」

 

「いいえ?……ふぅーん…………ねぇ、あなた。うちに来ない?」

 

 

 唐突な勧誘。一体さっきの観察で何を思ったのだろうか。

 

 

「魔理沙のところよりも美味しい食事もあるわよ。大きい図書館もあるし、館内の人数も多いから退屈はしないと思うわっ」

 

「いや、いきなりどうしたんです? 僕に何の用なんですか? 勧誘ですか?」

 

「あっ……いけないいけない。気持ちが先行しちゃった…… オホン。えーっとね、ハイエロファント。実は今朝の新聞を読んで、あなたにものすごく興味が出たのよ。"スタンド"についてね」

 

 

 今朝の新聞。

 昨日の取材でスタンドに関する、ハイエロファントが持ち合わせている情報のほとんどを開示していた。レミリアはそれに興味を示したようだ。

 

 

「なるほど。それで、あわよくば自身もスタンドを身につけたいと?」

 

「そうよ! ねぇ、ハイエロファント。スタンドの発現方法を教えてちょうだいな。もしくは、私の従者になるか」

 

 

 肩を掴んで揺さぶりながら問いかける。おもちゃを買ってもらおうと親の説得にかかろうとする子供のようだ。

 

 

「一応言っておきますけど、スタンドは使い魔だとか、ペットじゃあないんです。そう扱う人もいるかもしれないですが、少なくとも、僕と僕の本体(花京院典明)はそう思っていない。」

 

「わかってるわよ。私は珍しいものが好きなの」

 

「物みたいに扱わないでください」

 

「むぅ……じゃあスタンドの発現方法! 教えてほしいわ」

 

 

 ハイエロファントはレミリアを見つめて「どうしたものか」と考える。ハイエロファントグリーンはスタンドを無理矢理発現させる方法は知っていた。かつてDIOに操られていたとき、腹心であるエンヤという老婆が人間を特殊な矢で貫くことによって、スタンド能力に目覚めさせる光景を目にしたことがあるからだ。

 しかし、ハイエロファントはこの方法では発現しておらず、"矢"による発現の詳細をよく分かっていない。

 

 

「残念ですが、僕は"自然に発現"したスタンドのため、無理矢理スタンドを発現させる方法はよく知りません。1つだけ目撃したことがありますが、使われたアイテムも無いですし……」

 

「……そう」

 

 

 残念そうにハイエロファントから身を離す。そんなにスタンドが欲しいのか。

 

 

「はぁ〜〜。スタンドが欲しいわ……」

 

「そんなにですか?」

 

「だって面白そうじゃない。()()()()()()()()()()()だなんて、誰だって気になるわ」

 

 

 レミリアは机に突っ伏し、足をパタパタと揺らしながら呟く。魔理沙よりも幼く見える姿の通り、子供らしい言動が多い。ハイエロファントは彼女に関する話と実際の矛盾を感じているが、ただならぬオーラを醸し出しているゆえ、警戒を解けない。

 

 

「…スタンド能力の覚醒については何とも言えないですが、灰の塔(タワー オブ グレー)や僕みたいに他の流れつくスタンドを引き抜けばいいんじゃあないですか? "霧の湖の幽霊船"なんか……」

 

「幽霊船……やっぱりあれもスタンドなのね」

 

「見たことはないですが、死ぬ前に似たようなスタンドに遭遇したことがあるので。タワーオブグレーの件もありますし、おそらくスタンドだと思いますよ。」

 

「でも船じゃない…………じゃあ、"狐火"は?」

 

「狐火?……初めて聞きましたが……」

 

「そっちは知らないのね。最近ここいらの森で出るって噂らしいわ」

 

 

 "狐火"。それは幽霊船と並んで噂される妖怪話である。道行く人間や妖怪を追いかける火の玉であり、それに驚いて逃げるといつの間にか消えている、という噂だ。

 

 

「人を追いかける火、か……」

 

 

 火にまつわるスタンド。たしかに身に覚えがある。しかし、人や妖怪を追いかける……

 

 

「それは……どうでしょうね。わからないです」

 

「そう。……変な時間とったわね」

 

 

 と言うと、レミリアはイスから離れた。ハイエロファントも「終わりか?」と席を立つ。そしてレミリアはハイエロファントに「ついてきなさい」と言うと部屋を出た。ハイエロファントは彼女を追い、部屋を出る。

 

 

「実はあなたを呼んだのには別の理由があってね。こっちが本命なのよ」

 

「何ですって?」

 

「私の妹、フランドールっていうんだけど、最近自分の部屋から出てこないの。私や咲夜が呼びに行っても断固として出てこないのよ。運べばご飯はしっかり食べるんだけどね。姉として心配だわ」

 

「……心配だという割には、()()()()()を優先していませんでした?」

 

「ギリギリまで迷ってたのよ。あなたに相談してどうにかできるかってね」

 

 

 もっともらしい言葉を述べ、レミリアはハイエロファントを連れて次々と階を下へと巡る。

 

 

 1階まで下り、入り口とは別の巨大な両開きの扉の前まで来ると、小さい体に似合わず大扉を1人で開ける。扉の奥にはなんと、見渡す限り本、本、本の広大な図書館があった。しかも、他の部屋や廊下に比べてランプが多く、明るくなっている。魔理沙や咲夜が言っていた図書館はここのことだったのだ。

 

 

「なんて広い図書館なんだ……」

 

「こっちよ」

 

 

 レミリアに導かれて図書館を歩いていく。上下にも広く、階段も下り、2フロア分地下へ下りると、開けた空間に出た。ハイエロファントはそこで、本が山積みされている長机の中に動く紫の服を着た女性を見つけた。服だけでなく、紫色の髪、紫色の帽子と、とにかく紫色が好きなようだ。本を手にしながらこちらを見つめている。どうやら彼女が「パチュリー」らしい。魔理沙が言っていた女性だ。レミリアによると、彼女も魔理沙と同じ魔法使いでこの大図書館の管理人であるよう。

 レミリアは彼女とアイコンタクトで「妹のところへ行ってくる」と伝え、パチュリーは再び読書のために目を本に落とした。

 

 しばらく歩くと、再び両開きの扉が。側には咲夜がいる。時間を止めて移動してきたのだろう。

 

 

「咲夜。どうだった? あの子の様子は」

 

「…………」

 

 

 咲夜は「残念ながら……」と言うように首を振る。「やっぱり」と言い、レミリアが扉を開ける。その先は長い通路になっており、館内よりもさらに暗い。3人は共に通路の先を目指して進み出した。

 

 

「お嬢様。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()です」

 

「何者かと一緒に、ね……」

 

「……フランドールは1人で引きこもっているわけではないのか?」

 

 

 思っていたことと違った。てっきり喧嘩だか、()()()()()()が来ただかして1人で引きこもっているのかとばかり思っていたが、どうやらそうではないらしい。ハイエロファントの問いに咲夜が答える。

 

 

「どうやら、そのようで…… しかも、妹様がお変わりになられてから、館内でおかしな話が出てきたの」

 

「おかしな話?」

 

「ええ…………妖精のメイドたちの数人が行方不明になったのよ」

 

「……断りも入れずに休暇を取ったんじゃあないのか? もしくは、仕事に嫌気が差したか……」

 

「考えられない話ではないけど、噂はそれだけじゃあないわ」

 

 

 咲夜が答えようとしたとき、レミリアが口を挟んだ。

 

 

「実はね、この館の中で"悪魔"の目撃情報が出たのよ」

 

「悪魔だって?」

 

「そう。鋭い爪に角、光る目、巨大な体躯。まさしく悪魔だーって報告しに来たわ。最初はパチェの……ああ、パチュリーのことね。彼女の使い魔の見間違いかと思って本人聞いてみたんだけど、目撃情報が出た期間に使い魔の呼び出しは一切やってないって言うのよ。不思議な話よね」

 

「……それで、件の悪魔が妖精メイドを(さら)って、フランドールがそれを匿ってる可能性があると?」

 

「そう。フランが誰かに話している声は何度も聞いたけど、その相手が誰なのか、何者なのか、教えてくれないのよ。」

 

「……なるほど。それで僕を…………わかっていると思いますが、僕はスタンドだ。仮に悪魔だったっていうんなら、専門外ですよ。」

 

「それを確かめるためにあなたを呼んだのよ。ほら、着いた。」

 

 

 長い通路を歩き続け、到着したのは、これまた両開きの扉の前。しかも、今までと明らかに雰囲気が違う。所々が錆びつき、辺りには血痕らしきものが飛び散っている。

 魔理沙よりも幼く見えるレミリアの年下。レミリア自身、子供らしい部分があるというのに、それよりも幼いというのに、こんな部屋を持たせるのはいかがなものか?そう思いながら、ハイエロファントは扉に顔を近づけて中の様子を音で探る。

 

 中からは女の子の声がする。しかもただ1つだけ。それ以外の声は全く聴こえない。女の子の声のトーンからして、上機嫌のようだ。楽しく()()に向かって話している。

 

 

「音だけではわからないですね」

 

「それじゃあ……ね?」

 

 

 レミリアと咲夜は互いを見た後、同時にハイエロファントを見つめた。"頼んだ"、と。「はぁ」とため息をつくと、ハイエロファントは意を決し、扉をノックする。すると、中の女の子の声が消える。と同時に、トコトコと扉の近くまで歩いてくる音がした。

 

 

「……あなたは……? そのノック……お姉様や咲夜じゃあない……」

 

「僕の名はハイエロファントグリーン。君のお姉さんに言われて来たんだ。なぜ君が引きこもるのか、誰と一緒にいるのか……それを聞かせてもらうために。教えてくれないか……?」

 

 

 奥の少女、フランドールは黙り込む。「だめか?」と思った瞬間、返事がきた。

 

 

「……どうしても、だめ。あなたを()()()()()()

 

 

 傷つける? なぜ?

 

 

「大丈夫。僕も、君ほど頑丈というわけじゃあないが、ただの生物ではなく、スタンドという存在。そう簡単にやられることはないさ」

 

 

 スタンド。その単語を言った時、フランドールが思わず、といったように「えっ」とこぼした。ハイエロファントはこれを聞き逃さない。

 

 

「……君今、スタンドと聞いて反応したな? 誤魔化せないぞっ。君が一緒にいる者はスタンドッ! 教えてくれ! 君は誰と一緒にいるんだッ!?」

 

 

 声に力が入り、怒鳴るようにして問いかける。しかし、その直後、扉の奥から「だめ!」と叫ぶ声が聴こえてきた。ハイエロファントに言い放ったわけではない。同室の誰かに…

 

 

「フ……フラン?」

 

「何か……ヤバい雰囲気だ……」

 

 

 扉の外の3人は不穏な空気を感じとる。フランドールの叫びはどんどん大きくなる。まるで、暴れる獣をなだめて抑えようとしているように。次の瞬間、扉がドンッと力強く叩かれると、フランドールの絶叫が響いた。

 

 

「お兄さんッ!! 逃げて! 早くッ!!」

 

「!!」

 

「何か……ヤバい!」

 

 

 

    ガ   オ   ン 

 

 

 

 突如、フランドールの部屋の扉に大穴が穿たれた。壊された?……いや、円形に消滅した、という方が正しいだろう。そして、その大穴は部屋前の通路まで空けられていた。スプーンで抉り取ったように、不自然に通路の床、壁が変形している。そして…あの3人のいたところも。

 

 

 しかし、3人は既に退避し、大図書館に移動していた。咲夜が時を止め、2人を連れていっていたのだ。

 

 

「な……何っ?フランは何を隠していたのッ!?」

 

「……彼女に悪意はない。おそらくだが、君たちに、そして、あの存在に被害が及ばぬように匿っていたんだ。バレてしまったら、双方に被害が出ることをわかっていた……君たちはやつを、やつは君たちを……そして……出てきた。あれが一連の犯人、というわけか」

 

 

 ハイエロファントが天井より少し下の付近を指さす。すると、その何も無い空間からスーーーッと滲み出るようにして、丸いシルエットの黒い布を被った骸骨のような顔に2本角をした異形の存在が姿を現す。しかも、自身の体を口に入れているのか、彼の下半身は無く、体の続きは口へ入っていっている。

 

 

「そんな……まさか本当に悪魔が……」

 

 

 咲夜が感嘆する。しかし、ハイエロファントは大して驚いていない。なぜなら、

 

 

「いいや、あれはスタンドだ。やつから感じるこのエネルギー……間違いないっ」

 

 

 禍々しい姿のスタンドは3人を睨みつける。すると、奥の扉から、1人の少女が息を切らしながら走ってきた。金髪で、白と赤の洋服に身を包み、宝石を思わせるようなキラキラとした羽のようなものが背中から生えている。

 

 

「フラン!」

 

「お姉様! 彼を傷つけないで!」

 

「な……何を……妹様! あの攻撃! やつは危険です! 放っておくわけには……!」

 

「ハ……ハイエロファント……グリーン…………」

 

 

 スタンドがここで初めて口を開いた。そして発したのは、相対するもう1人のスタンド、ハイエロファントの名。

 

 

「? なぜ僕の名前を……会ったことはないはずだが……」

 

「う……グゥゥ……キ様を……始末スル……ッ!」

 

 

 始末する。たしかにそう言ったスタンドは口をガバァッと開き、自身の下半身を再び飲み込んだ!それを見たフランドールは叫び、彼の()()()()()()()()()()()を止めようとする。

 

 

「だめ! せっかく仲良くなれてきたのに……ッ。また暴れて……私を困らせないでよ!!

 

 

 

       「クリーム」!!」

 

 

 

 

 

 

 

 




フランドールが匿っていたのは…なんとクリーム!?
襲いかかるクリーム……ハイエロファントとフランドールはどう対処していくのか?
お楽しみに!

to be continued⇒

あくまで参考までに、ということで。

  • 東方をよく知っている
  • ジョジョをよく知っている
  • 東方もジョジョもよく知っている
  • どちらもよく知らない
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