幽波紋の奇妙な幻想 《Drifted Destiny》   作:右利き

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今回も長いです。


50.『キング・クリムゾン』

 崩壊した景色は再び元の姿へ構築されていく。神社の縁側に立っていた影は消え、同時に世界の外へ弾き出された7人の意識も戻って来た。

 さっきまで暖かい部屋の中にいたが、気付けば雪が舞い落ちる外。部屋着のまま、そして裸足で冬の石畳を触れた早苗は、心臓が飛び出そうになるのをなんとか堪えた。一同は人智を超えた力を今体験した。

 

「ハッ……!? そ、外……だと!?」

 

「時間が飛んだ……ッ! それに、今のこの位置関係はヤバい! 一人一人が離れすぎているぞッ! みんなもっと寄るんだ!」

 

 今彼らの各々の距離は、最も近い感覚でも5mは離れている。皆から一番遠い場所にいるのはS・フィンガーズであるが、彼は自分よりも先に他の者の安全を確保するために叫んだ。

 しかし、彼はまだ気付いていない。『キング・クリムゾン』の最初の標的は、自分であるということを。

 

「スティッキィ・フィンガーズ! まず自分の身を守るんだッ! やつは後ろにいるんだぞォーーッ!!」

 

「!」

 

 ハイエロファントの絶叫が響く。だが、S・フィンガーズはこの中で戦闘センスがかなり高い部類に入る。つい先程まで気付いていなくとも、敵の位置が分かったなら、ほとんど反射で拳を繰り出せる。

 そのようにして、身を捻って自らの背後を殴った。予備動作はほぼ無く、相手も同じように手練れであったとしても防ぐのは難しいだろう一撃だった。それが、ただの人間であればの話。今から戦おうとしているのは、過去に出会ったスタンドの中で最も()()()であるのに、どうして()()()()で仕留められようか。

 

ガシィッ!

 

「うっ!?」

 

『……久しぶりだな。スティッキィ・フィンガーズ……』

 

「スティッキィ・フィンガーズ……! うぉおおおッ! 野郎ォォーーーーッ!!」

 

「!? 待て、チャリオッツッ! 戻って来い! 2人が同時にやられたら、本当に勝機は無くなるんだぞッ!」

 

「ここであいつを止めなかったら、スティッキィ・フィンガーズは殺されるッ! 止めるな、ハイエロファント! キング・クリムゾン! 貴様の相手は、この俺だァアアアアァーーーー!」

 

「バカがっ……!」

 

 チャリオッツに近かった魔理沙はハイエロファントの制止の声を聞き、チャリオッツにしがみついてでも、S・フィンガーズへの救助を止めようとする。ハイエロファントも彼に触手を伸ばした。が、チャリオッツは彼らを高速で避けると、レイピアを片手に未だ影しか見えないK(キング)・クリムゾンへと特攻を仕掛ける。

 甲冑を脱ぎ捨ててはいないが、それでも彼のスピードは数いるスタンドたちの中でも高い方である。まともにやり合えば追いつけない。S・フィンガーズは捕まって動けないが、K・クリムゾンの方はチャリオッツを避けようともしていない。チャリオッツに見えているかは分からないが、ハイエロファントからすれば、やつが何か罠を張っているのは明確だった。

 

「避けろ、スティッキィ・フィンガァーーーーズッ!」

 

「ぐぅっ」

 

 レイピアがK・クリムゾンを襲う直前、チャリオッツは叫ぶ。それをしかと聞いていたS・フィンガーズは、腕を掴まれたまま、自分の体を斜め下へ倒れるように捻る。自分を捕らえるK・クリムゾンを、盾のように前へ出してチャリオッツへ差し出す姿勢となった。

 そして、直撃。

 

 

ドグサァッ!

 

 

「がぼぉあッ!」

 

「…………!」

 

「バ、バカな…………ッ!」

 

「……あれが、『時間を消す能力』と『未来予知』か…………厄介な能力だ…………」

 

 神奈子が思わずそう呟く程の能力。S・フィンガーズとK・クリムゾンの位置は逆転し、チャリオッツのレイピアはS・フィンガーズの首を貫通した。彼の口からは真っ赤な血が噴き出し、明らかなダメージを負ったことが分かる。幻想入りしたスタンドの中で最もパワーのある彼が力負けしたという事実は、キラークイーンやハイエロファントを絶望させた。

 真正面から殴り合っても負け、奇襲も成功するかどうか分からない。そんな相手にどう勝てというのか。

 

「お前……ポルナレフのシルバー・チャリオッツか? 本体と比べてずいぶん雰囲気が変わったな」

 

「な……なんだ……と…………」

 

ドグシャア!

 

「チャ……チャリオッツゥゥーーーーッ!!」

 

「ハイエロファントッ、あいつ、こっち向いたぞッ! ど、どうするんだ!? 撃つか!? 逃げるのか!?」

 

 S・フィンガーズを盾にしたK・クリムゾンは、レイピアが動かないチャリオッツにゆっくり近付く。彼の掛けた言葉より、やはりK・クリムゾンとチャリオッツの本体は一度相見えたことがあるらしい。が、聞いた通りに敵対関係であり、そこには何の手加減も容赦もない。

 K・クリムゾンの鋭い拳がチャリオッツの頭、その上部を粉砕。破片が飛び散り、血液が噴き出し、チャリオッツとS・フィンガーズは連なるようにして吹き飛ばされた。

 K・クリムゾンの次の狙いは誰なのか。それが分からない状態で、他5人がいる方へと向き直る。逃げても逃げられない。攻撃しても当たらない。だが、敵は確実にやって来る。

 

「くそォ!! エメラルドスプラッシュ!!」

 

「オラァッ!!」

 

キング・クリムゾン

 

 

ドォオオ〜〜ーーーーン!

 

 

「全ての時間は消し飛ぶ。時の消し飛んだ世界では、如何なる行動も無意味となるのだ……」

 

 冷静沈着が自慢のハイエロファントであっても、仲間が目の前でやられれば思わず取り乱してしまう。しかも、相対しているのはDIOの『世界』に匹敵するだろうスタンド。彼の体は考えるよりも先に動いてしまった。その原動力は、怒りなのか、それとも克服したはずの恐怖なのか。

 エメラルドスプラッシュが放たれると同時に、魔理沙も弾幕群を飛ばす。地底での戦いが消化不良だったのか、という疑問さえ浮かぶ量である。

 しかし、どれだけ大量の弾幕を撃とうと、K・クリムゾンの前では全てが無意味となる。ゆっくり2人へ歩み寄るK・クリムゾンに弾幕と緑色の結晶弾が襲いかかるが、それらは彼に命中することはなかった。

 透過する。あらゆる障害をすり抜けていく幽霊のように、まるで、そこにK・クリムゾンがいないかのように弾幕たちは直進して行った。弾幕たちでさえも、この世界では標的を失ったということに気付いていない。

 

「……選ばれた運命からは誰も逃れることはできない。お前たちが滅びるという、()()()()()()()()()。そして……時は再び刻み始める!」

 

 2人に歩み寄ったK・クリムゾンは、ハイエロファントの背後に立つ。彼が右手の鋭い手刀を天に掲げると、それと同時に時も元に戻る。

 ハイエロファントと魔理沙が目の前にいたK・クリムゾンを「見失った」と気付いた時には、全てが終わっているのだった。

 

ドバァ〜〜ーーーーッ!

 

「ぐああッ!」

 

「ハイエロファン……あぐぅっ!」

 

「お前たちは知らないな。そこの緑色のはスタンドで……魔理沙(お前)は『幻想郷縁起』に載っているかもしれない。まぁ、どうせ取るに足らないカスなのだろうが……」

 

 完全に背後を取り、ハイエロファントに輝夜の時と同じように大きな裂傷を刻みつける。そして、彼の悲鳴に気を取られた魔理沙の首を、空いている左手でガッシリ掴んだ。S・フィンガーズをものともしないそのパワーの前には、少女の魔理沙の体重など知れている。首を締めたまま空中へ持ち上げると、ハイエロファントの生温かい血が滴る右手を構えた。その手は、おそらく魔理沙の腹を切り裂いて内臓を並べるつもりだろうか、再び手刀を作りだす。

 

「こ……のッ…………離しやがれッ……()()()()()()()()()()…………お前キモいぞッ……!」

 

「こんな夜でも人の顔が分かるのか? まぁ、いい。我が姿を見た者は……既にその時! この世にはいないのだ」

 

 K・クリムゾンの右手がブレた。魔理沙が何とか絞り出した挑発に、彼は乗ってくれたのだ。K・クリムゾンがどのタイミングで魔理沙を始末しようとしたかは分からないが、少なくとも、魔理沙が喋っている間は攻撃を中断してくれた。

 魔理沙は覚悟を決めて目を瞑る。()()()()()()()()自分は死ぬ。それだけだ。

 腹を貫かれるか、それとも…………

 

「魔理沙さん、大丈夫ですか!」

 

「うぉっ! と……あぁ……助かったぜ…………ありがとよ。弾幕飛ばしてくれて」

 

 訪れたのは、とにかく硬い物が尻を打つ衝撃。気付いた時には首にあった圧力は消えていた。

 魔理沙は地面に尻もちをついていたのだ。神社の外を見てみると、森の中で爆煙が上がっている。声を掛けながら早苗が走って来るのを見て、魔理沙は早苗が弾幕を撃ってK・クリムゾンを退けてくれたことを理解した。そのための挑発だったのだ。

 魔理沙は早苗に助け起こされ、再び森の中を見る。やはり弾幕による煙は上がっていたが、着弾音は魔理沙の耳に届いてはいなかった。これが示すことは、「時間が消し飛んだ」ということである。

 

「早苗、やつは……?」

 

『やはり書いてあったな。えぇと、霧雨魔理沙…………魔法使いか。魔法も気になるが……今はどうでもいい。魔法使いも、この幻想郷には何人もいるようだからな』

 

「あ、あんな所に……!」

 

 時間を消して移動したK・クリムゾンは、神社の正面に建っている鳥居の上にいた。脚を組んで座り、どこかに隠し持っていた『幻想郷縁起』のページをめくりながら、魔理沙の情報を読み上げる。

 空に浮かぶ巨大な満月から注がれる光が逆光となり、K・クリムゾンの詳しい外見はよく分からないままだ。しかし、ギラついた目玉は地面に立っている一同からよく見え、さらに目玉の上に()()()()()()()()()()()()()()()()()のも分かった。これまで数々のスタンドたちと出会ったが、ここまで禍々しい見た目をしたスタンドはいない。彼のビジュアルと実力は、魔理沙と早苗の戦意を削るのに充分であった。

 

「キング・クリムゾンッ! 貴様の狙いは私のはずだ! 「神の力を奪う」と言っておきながら、逃げ隠れし続けるとは笑止千万。実物を目にして恐れをなしたか? 降りて来い。私が直々に戦ってやるッ!」

 

「落ち着け。八坂神奈子。たしかに、お前がその気になれば私を殺すことは容易いだろう。が、そうなれば私も、お前に何か一つでも傷を付けようと抵抗するものだ…………信者は可愛いか?」

 

「!」

 

「フン。安心しろ。優先順位は変わった。()()()()、もっと面白いものを見つけたのだ」

 

 K・クリムゾンはそう言うと、開いていた幻想郷縁起をパタンと閉じ、鳥居の内側へと落とした。何をするつもりなのか、全く理解できない4人は落下する本に目を奪われている。全員あまりにも集中しているからか、落ちていくスピードがとてつもなくゆっくりに感じていた。ゆっくり、ゆっくりと落ちていく。そして、消えた。

 感が鋭い神奈子は「時間が飛んだ」と認識し、周りへ視線を散らす。K・クリムゾンはすぐに見つかった。

 

「貴様だ。名前は何と言う?」

 

「…………!」

 

「……キ、キラークイーン!?」

 

「ほう。キラークイーンか」

 

 K・クリムゾンが現れたのは、立ち尽くすキラークイーンの正面。距離はかなり近く、どちらかが一歩、もう片方に近付けばすぐに拳を当てられるほど。

 しかし、「興味がある」とはどういうことなのか。早苗と神奈子からしたら、無愛想であるが幻想郷を脅かす者を倒すために立ち上がれる者。魔理沙からしたら、共通の敵と戦ってくれるが邪魔になれば味方でも殺しそうな、印象は良くないスタンド。

 能力は強力だが、完璧というわけではない実力。K・クリムゾンは彼のどこに興味をもったのか。それはキラークイーン本人でさえも分からなかった。

 

「どこか……だ。どこか()()()()。「どこが」と訊かれると答えられないが、何かが私と似ているのだ。同じ匂いがする、だとか。もしくは同じ敵をもっていたかのような、そのように感じさえするが…………お前はどう思う?」

 

「…………見当も……つかないな…………」

 

「……そうだな。では、お前の能力を当ててやろう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。どうにも、そんな気がしてならない。だが、似ているのはそこだけではない、とも思っている」

 

「!?」

 

 キラークイーンの表情が、ほんの一瞬だけ強張った。強張ったままではなく、一瞬で元の表情に戻った、否、戻したのだ。まるで、本当に『時を操る能力』をもち、その事実を隠したいかのように。

 そんな中、キラークイーンに背中を向けられている魔理沙と早苗は、K・クリムゾンの言っていることが理解できずにいる。キラークイーンの表情が見えないだけでなく、2人は彼の能力が『触れた物を爆弾に変える能力』であると知っていたからだ。しかし、そんな2人よりも近い位置にいた神奈子だけは、キラークイーンの異変に気付いているのであった。

 

「バカなこと言うな! キラークイーンの能力は時間を操ることじゃあねぇッ! 触った物を爆弾にするんだよ!」

 

「…………ほう」

 

「…………ッ!」

(あ……あのマヌケッ!! 自ら手の内を明かしてどうするッ!? これだから嫌いなんだ……ガキどもは……! どれだけ脳ミソが小さかったらあんなことができるんだ…………ッ!)

 

「フフ……まぁ、()()()()()()()()()()、だ。私は、この中ではキラークイーン、お前が一番私を殺せる可能性があると見ている。緑髪と魔法使いは力不足。八坂神奈子は神の特性故に、全力を出しづらい。だが、いざとなれば例え同じ側に立つ者であっても殺せるような目をした貴様なら、時を消し飛ばす私にすら刃が届くだろう……」

 

「…………褒めてもらって嬉しいな……だが、君の目的は何なんだ? イマイチよく分からない。もしかして、()()()()()()()()私を、君の仲間にしてくれるのかな?」

 

『な、何!?』

 

 キラークイーンの言葉に、魔理沙や神奈子は驚愕の表情を浮かべる。たしかに、キラークイーンは自分の利益を優先しているような言動は多かった。それは魔理沙も知っている。しかし、力を合わせればまだ可能性が潰えない相手に自分を売り込むとは。「彼は自分だけ助かるつもりか」と神奈子の中に怒りが湧き始める。

 さて、そんな質問を投げかけられたK・クリムゾン。彼の返答は……

 

「フフ……フハハハハ……! まさか、私に仲間だと? 笑わせるな。今、この場にいる者は皆殺しだ。一人たりとも逃しはしない。私が欲しいのは『力』だけだ。我が本体を束縛する、『呪い』に打ち()つためのな!」

 

「………………」

 

 キラークイーンの当ては、見事に外れる結果となった。

 しかし、ここでキラークイーンと魔理沙に疑問が生まれた。K・クリムゾンは「本体を『呪い』から解放する」という旨のことを言っていた。幻想郷にいるスタンドたちは、誰も彼もが本体は死んだか、もしくはそれに近い状態になってから幻想入りしている。しかし、『呪い』をかけられただけでスタンドを失うことなどあるのだろうか。

 K・クリムゾンから彼らに語られることはない。彼だけが知る真実、それは、本体であるディアボロがとあるスタンド能力によって()()()()()()()()こと。時間を消す能力をもつ彼が敗北した相手は、チャリオッツが言っていた『矢』によって力を得た者。ジョルノ・ジョバァーナ。『あらゆる行動を0にする能力』により、時間消去を完全に無力化。そしてK・クリムゾンを破ったのだ。

 死ぬという『真実』に辿り着くことのないディアボロは、運命によって永遠に殺され続けることになる。しかし、ある時。突如世界中の時が『加速』する事変が起こる。その一瞬、1秒にも満たない時間に、ディアボロを取り巻く『能力』がほんの少しだけ弱まったのだ。その隙を突き、K・クリムゾンは本体から離脱。後に流れ着いた幻想郷にてさらなる力を手に入れ、本体を解放すると誓ったのだった。

 

「さて、キラークイーン。お前の能力は本当に気になるが、私の邪魔になる可能性があるというのなら、消しておかねばならない。動くなよ。苦痛を感じたくなければな」

 

「……私の目標は『静かに、幸福に暮らすこと』だ。今、この場で殺されるわけにはいかない。かと言って、君は見逃すつもりも無い。ならば、どうする? 君という名のストレスを、この場で跡形も無く消し去る」

 

 K・クリムゾンは血に濡れた右手を手刀に変形させる。キラークイーンは握り拳を作る。そして、互いに一歩踏み出した。拳の、射程制空圏内である。

 

WRYYYYYEEEEA(ウリイイイイイイイイイア)ッ!」

 

「フン!」

 

 

グシャァン!

 

 

「ぐ……あぁ……ッ!」

 

「キ、キラークイーンの拳が砕けた!? あいつもパワー負けしたのか!?」

 

 キラークイーンが繰り出したラッシュを、K・クリムゾンは拳一発で止めてしまった。キラークイーンの右手は無事だが、左手が完全に歪んでいる。中指が手の平まで食い込み、他の指も明後日の方向を見て歪に折れ曲がっており、見るも無惨な姿に変えられてしまった。どの拳がどの軌道を通って放たれるか、それもK・クリムゾンは予知していたということだ。

 K・クリムゾンは大した表情を変えぬまま、次なる一撃を怯んだキラークイーンの腹へと叩き込み、バランスを崩した彼を地面へ倒して足蹴にする。

 

「クアアァァッ!」

 

「おそい」

 

ズバァアン!

 

「たしかに、触れて発動する能力はあるようだ。拳や手刀を使うでもなく、ただ触れようとしてきたところを考えると。しかし、無意味な行為に変わりなかったな?」

 

 下敷きにされたキラークイーンだが、それでも必死に抵抗してK・クリムゾンの脚を右手で触れようとする。が、それも読まれてしまい、鋭い手刀で腕を切り落とされてしまった。両手とも使えなくなってしまったキラークイーンは、最早爪や牙を失った動物。K・クリムゾンからすれば、いつでも殺せる子犬のようなものだ。血が(したた)る手刀をキラークイーンの眼前に構え、次の攻撃でトドメを刺すことを予告する。

 

「惜しいな。貴様の本体が、ディアボロ(我が本体)の部下であったならば、とつくづく思うぞ。あの生意気な小僧になど、遅れを取ることもなかったはずだ……」

 

「うっ……ぐ…………」

 

「死ねィ! キラークイーン! これで終わりッ……!」

 

 

キュルキュル キュラ……

 

 

「!? な、何だ……!? 何の音だ!」

 

 K・クリムゾンは手刀を高く振りかざす。が、その次の瞬間。聞き慣れない音が夜の境内に鳴り響いた。

 金属やら硬い物がこすれ合うかのような不快音。それはキラークイーンをとどめようとせんK・クリムゾンの背後から聴こえている。その音はどんどんK・クリムゾンの耳(有りはしないが、人間であれば存在している所)に近付いていき、同時に背中に何か物体の重さを感じ始めた。

 間違いなく、何かマズいものである。K・クリムゾンの本能はそう(ささや)くが、彼も人から生まれた者だ。それが危ない物だろうと分かっていても、振り向かざるを得なかった。

 

『コッチヲ見ロヨ。ホラ、コッチダゼ』

 

「な、何ィーーーーッ!?」

 

「キラークイーン…………『シアーハートアタック』」

 

 

カチッ

 

 

 K・クリムゾンの左肩、そこにそれは乗っていた。けたたましく音を鳴らしながら、キャタピラを回して背中を登って行ったのだ。熱を探知して敵を殺す、自動追尾爆弾が。

 K・クリムゾンが『シアーハートアタック』の存在に気付いた瞬間、小さな車体に付いたドクロのから光が放たれ、キラークイーンとK・クリムゾンはドス黒い爆煙に飲み込まれた。炎は出ず、それに伴う音も無い。キラークイーンはK・クリムゾンを仕留め切れないと想像していたが、やはりと言ったように、彼は時間を消し飛ばして回避したようだ。自爆するつもりではなかったが、キラークイーンの体もいつの間にか発生していた爆風で吹っ飛んでいる。

 

「キラークイーン!」

 

「!」

 

 爆風に晒されていたキラークイーンの体は、突然空中で止まった。K・クリムゾンに負わされた傷と爆発により、彼の体はほとんど動かない。意識も途切れつつある。だが、それでも自分の身に起こった何かを探ろうと、閉じかけていた目を開ける。目の前にあったのは、自分の脇を抱えて箒で飛ぶ魔理沙の顔だった。こちらを見ているわけではなく、おそらくいなくなったK・クリムゾンに警戒しているのであろう。少し首を傾けてみると、早苗もチャリオッツたちを救助している。

 魔理沙は目を合わせないまま、キラークイーンに言った。

 

「時間を稼いでくれてありがとな。キンクリ野郎が何て言ってもよ〜〜、私はお前がやつに手を貸すなんて思ってなかったぜ。絶対に生き延びるぞ!」

 

『いいや、逃しはしないッ! 言ったはずだ。お前たちはここで死に、俺とディアボロを再び絶頂へ押し上げるために存在しているのだッ!』

 

「うっ!?」

 

 箒が急ブレーキをかけたように止まり、慣性のはたらくキラークイーンと魔理沙の体に進行方向への力がかかる。

 先程姿を消したK・クリムゾンの行方。彼は既に、魔理沙たちを追ってその背後に回っていたのだ。そして魔理沙の頬を鷲掴みにし、2人の動きを止めていた。

 『シアーハートアタック』が襲った左肩からは血が噴き出しており、それまで付いていた装甲のようなものも吹き飛んでいた。痛々しい状態だが、それでも大したダメージにはなっていないようで、魔理沙を押さえる左手の力は首を締めた時よりも強い力が込められていた。そして彼の右手は握り締められ、2人を同時に撃墜しようと振りかざされる!

 

「う、うおぉおおあああああ!!?」

 

「くらえッ! このくたばり損ないどもがァァアッ!」

 

「御柱『メテオリック・オンバシラ』!」

 

「ッ!?」

 

 拳が魔理沙の胴体を貫く瞬間、さらに背後から神奈子のスペルが読まれる。彼女の声を耳にしたK・クリムゾンは、拳を止め、思わず神奈子の方へと顔を振り向かせた。

 しかし、彼の目の前にいたのは神奈子ではなく、あらゆる場所から伸びて突進してくる巨大な柱の群れ!

 地面から、空中から、太さも長さも様々な柱と弾幕群がK・クリムゾンに襲いかかって来ていたのだ。それを察知すると、魔理沙の頬から左手も離してガードの体勢となり、すさまじい質量の攻撃を腕や肩で受け切ろうとする。が、やはり神。並みの防御では、彼女の攻撃を止めることはできない。

 

「ぐおぉ!! こ、このパワー……ッ! 何て重い……ぬあぁアアァーーーーッ!?」

 

「天の彼方まで吹っ飛べ!」

 

 神奈子のその言葉が放たれると同時に、柱の圧も一気に高まる。それはもはやK・クリムゾンだけで手に負える威力ではなく、力負けした彼は神奈子の言葉通りに、鳥居の間を一瞬で通過して幻想郷の彼方まで吹き飛ばされてしまった。

 

「た、助かった…………」

 

「……仕留め切れなかったか。あれは、まだ生きてる」

 

「だけど……くそっ。こっちは負傷者が多いぜ…………キング・クリムゾンか……ヤバいやつが来ちまった……」

 

「…………」

 

 ひとまず危機の去った守矢神社。負傷したスタンドたちは一旦ここで休ませ、傷が治り次第各々の帰路に着くことに決まった。早苗と魔理沙は彼らの補助をするため、神社に残ることとなる。神奈子は天狗の長である『天魔』に掛け合い、天狗たちにとあることを命令させた。

 『スタンド、キング・クリムゾンを幻想郷全域で指名手配する。見つけ次第、即刻処刑せよ』

 

 

(……キング・クリムゾン。やつは、このまま幻想郷にのさばらせておくわけにいかない。天狗に任せておけば、足取りくらい分かるだろう。こちらが抱える問題は……キラークイーン。キング・クリムゾンの言葉を全て鵜呑みにしたくはないが、あいつは…………果たして味方なのか?)

 

 

 

 




いかがだったでしょうか。このお話で、第三部は完結となります。次話……というより、次の次ですね。いよいよ第四部が始まります。
もう既に最終話までの流れは何となくできているのですが、それを迎えるのはいつになることやら…………
どうか最後まで読んでいただけたら良いなぁ、と思ってます。

それでは、第四部『Phantom WORLD』で再びお会いしましょう!
to be continued⇒

あくまで参考までに、ということで。

  • 東方をよく知っている
  • ジョジョをよく知っている
  • 東方もジョジョもよく知っている
  • どちらもよく知らない
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