幽波紋の奇妙な幻想 《Drifted Destiny》   作:右利き

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私、最近ロストワードをプレイしているんですが、難しいです。一章の紫になかなか勝てなかったんですよ。他にもいろいろなゲームをプレイしているんですけど、ゲームが好きというだけで別に上手いわけではないんですよね。
でも、東方のおかげでいろいろな地域や伝承を知るきっかけになったり、ジョジョのおかげでいろいろなことを深く考えるきっかけができたりするんですよね。下手であっても興味をもって突っ込めば、何か得られるし、楽しいですよね。
だからやめられない。

という感じでメディスンがお気に入りです。


7.炎の魔術師と暗黒空間

「YES I AM!」

 

 

 ハイエロファントの声にそう答えたスタンド、マジシャンズレッドは左肩を突き出し、サムズアップした状態の右手を腰付近でチッチッと振る。

 

 

「ハハ……何ですか……そのポーズ」

 

 

 再会の嬉しさに思わず目が熱くなる。マジシャンズレッドはスカーレット姉妹を壁際に座らせると、ハイエロファントの前に降りた。彼の目もまた、再会を喜ぶように見開かれているが、同時に悲しさを含んだ輝きがあった。

 

 

「会えて嬉しいぞ……ハイエロファントグリーン……お前もこちらへ来たんだな……」

 

「ええ。来てしまいましたよ……」

 

 

 2人は固く握手する。様々な想いを込めた互いの手は、燃えていなくともとても熱い。

 

 

「驚きました。火にまつわる噂話が出ているのを知って、もしかしたら、と思ったのですが……それより、彼女らはどうやって助けたんです? そんなに速く動けましたっけ?」

 

 

 ハイエロファントの問いに再びチッチッと手を振る。

 

 

「見せなかったか? これだよ。赤い荒縄(レッドバインド)。これを使って、間一髪だったが、2人を救助したのだ」

 

 

 そう言ってマジシャンズレッドが出した右手から、細長い炎の縄が形成される。ヘビのようにうねうねと動くそれはハイエロファントの触手の如く、自在に操れるのだ。

 

 

「……助かりました。……それで、やつのことなんですが……」

 

「ああ。分かっている。あのスタンドは私を、アヴドゥルを葬ったスタンドだ。」

 

「……やはり」

 

 

 ハイエロファントはまる焦げになって動かないクリームを指差してマジシャンズレッドに問いかける。

 葬られたアヴドゥル、そしてイギーというもう1人の仲間に代わり、怒りのパワーで性能の上がったポルナレフのスタンドがクリームを葬ったのだが、マジシャンズレッドは()()()()()()()()()()。しかし、なぜ本体(アヴドゥル)の死後のことを知っているのかは、ハイエロファントには知る由もなかった。

 

 

「あのスタンド、明らかにあなたや僕とは違うようです。さっきの口ぶりから察するに…本体の人格が()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 M(マジシャンズ)レッドは「ふむ」と思案する。クリームは未だ動きを見せない。

 

 

「クリームの本来の人格は先程あなたが助けたフランドールと知り合いのようで、命を取らないでくれ、と……」

 

「……私が仇討ちでクリーム(やつ)を殺してしまうのではないかと?」

 

「!」

 

 

 不意に背中を叩かれたように、ハイエロファントは意外そうにM(マジシャンズ)レッドを振り返る。不本意に言ったのではないかと思ったが、彼の瞳は綺麗に澄み、嘘など1つもついていないと一目でわかった。

 

 

(アヴドゥル)は全く後悔をしていない。命をかけなければならない戦いだったのだと理解していたし、そして覚悟をもっていた。自身の命を投げうってでも守りたい仲間たちがいたからこそ……満たされているのだ。敵討ちだと? 違うな。ハイエロファント。私がここに立ち、そして戦おうとしているのは、再びお前と同じ時を過ごす、そんな運命を感じているからだ! お前が戦うというのなら、喜んで協力しよう!」

 

 

 ハイエロファントは静かに聞いていた。

 ああ、彼もまた黄金のように輝く精神と気高き覚悟をもっている。僕……典明も満たされていたんだろう。幻想郷に来てから感じていた()()()()()()()。心に走る亀裂が、たった今セメントで塗り固められていく。ジワジワと、ゆっくりやって来るこの緊張感は、仲間に会えた気分の高揚だろうか?それとも、再び味わうかもしれない"喪失への恐怖"なのか……

 

 

「……だったら、やることは1つですね」

 

「ああ。2人で、ヴァニラ・アイス(あの人格)を倒すッ」

 

「3人……いえ、4人でなくて? ハイエロファント、と鳥のスタンドさん」

 

 

 決意と友情を込めた2人のスタンドの掛け合いに、サッカーのスライディングの如く入り込む者がいた。目が赤く腫れており、短いスカートのお尻の部分に少し砂埃がついている。十六夜咲夜だ。それに…

 

 

「咲夜さん……と……」

 

 

 咲夜の後ろからフランドールが登場する。咲夜も主2人の安否を確認できたのか、顔が晴れている。フランドールの方も、やっと何かを振り払ったような、意を決したように強い顔をしている。

 

 

「フランドール……」

 

「ハイエロファント。私、決めたわ。()()()()()()。私のせいでお姉様とパチェがやられたんだから、私が間違ってたことは……分かったわ」

 

 

 フランドールは反省している。

 落ちるトーンを聞いたハイエロファントはフランドールの肩をポンと叩き、「いいや」と否定した。

 

 

「君は間違っていない。たしかに、2人は負傷してしまったが、それは君だけのせいじゃあない。友を助けたいのだから、攻撃に躊躇するのは当然のことだろう。君は今こそ腹を決めた。それが最も重要なことだと思うよ」

 

 

 ハイエロファントの言葉が自然と心に刻みこまれる。フランドールはハイエロファントのことを知らないし、その逆もそうである。しかし、彼らは共に"孤独を体験した者"。その事実が互いに引き合ったとしたら?マジシャンズレッドとの再会、アヴドゥルとイギーの仇、そして似たもの(フランドール)。これら全てが運命の贈り物なのか?

 知らない事実に取り囲まれた彼らは、それを確かめる術をもっていない…

 

 

「! お二方、あれを……」

 

 

 フランドールとハイエロファントの会話の切れにタイミングよく咲夜が指を出す。その先には、下半身が未だ寝ている状態で上半身をもたげ、こちらを睨むクリームの姿。恨めしそうにその瞳はギラギラと鋭く光り、口からは瘴気のように暗い霧が漏れ出てている。

 

 

「起きたか」

 

「……みんな、クリームは透明になれるけど、本当は完全な透明じゃあないの」

 

 

 フランドールの突然の告白に皆振り向く。

 

 

「何だって?」

 

「実は、よく見てみると淡い紫色のボールなのよ。多分、それが彼の()()()()()()

 

 

 フランドールから突然発せられたクリームの"攻撃の穴"。ハイエロファントはこれを聞き、うつむいて数秒考える。

 

 

「……みなさん。僕に考えができました」

 

「!」

 

 

 ハイエロファントが顔を上げると、「本当!?」とフランドールが希望と驚きを混ぜた瞳を向け、M(マジシャンズ)レッドと咲夜は「待ってました」と口元が緩んだ。

 

 

「いいですか……この作戦はあなた方3人の力が必須ッ。全員の力無くして成り立たない。しかし、今は()()()()()()()()()()()()()障害が残っている」

 

「障害ですって? 我々はほぼ万全の状態のはずよ。フラン様のケガも治りつつあるし……」

 

「パチュリーだ」

 

 

 ハイエロファントは近くに倒れているパチュリーへ目を移す。彼女は生きてはいる。しかし、ダメージが大きいため、魔法を使うことも自力で歩くことすら叶わないだろう。

 

 

「彼女をこのまま放っておくわけにはいかない。レミリア嬢もそうだが、巻き込んでしまう可能性がある。どうにかしなくては……」

 

「それなら、私の時間停止で移動させれば?」

 

使用不可時間(クールタイム)があるなら、できるだけ使いたくない」

 

 

 ハイエロファントは思案する。こうしている間にもクリームは傷を修復し、いよいよ腕をついて立ち上がろうとしている。

 すると、M(マジシャンズ)レッドは両手を重ねて開き、フランドールの胴体並みの一塊の炎を生み出した。

 

 

「マジシャンズレッド?」

 

「この炎は生物探知機だ。これだけ暴れまわったのだ。館の外に茂っている()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「まさか……」

 

 

 炎はマジシャンズレッドを離れて上へ、そして本館に近い壁側へと迫っていく。ある程度まで近づくと、炎はいきなり右へ移動する。

 

 

「捉えたぞ。そこだッ! C・F・H(クロス ファイヤー ハリケーン)!」

 

 

 マジシャンズレッドは手をクロスさせ、巨大なアンク型の炎を生物探知機へ向かって撃ち出した!

 

 

  ド  グ  オ  オ  ォ  ン 

 

 

 轟音と共に壁に大穴が穿(うが)れた。すると、

 

 

「おわーーッ! 何だァ!?」

「ちょっと魔理沙さん! 何やってるんですかーーッ!」

 

「! あの声は……」

 

 ハイエロファントと咲夜、フランドールの3人には聞き覚えのある声。爆炎と土埃が晴れると、そこには白黒の服を着た少女と、緑色の中華服を着た女性が驚きの表情を浮かべて立っていた。

 

 

「魔理沙ッ!」

 

「美鈴!?」

 

「おっ。ハイエロファントォ! って、すげええ! 何が起きたんだこりゃ!」

 

「咲夜さん! 何かあったんですか!? 修理はまた私が中心なんですかァ!?」

 

「! ……ええ! そうよーー!」

 

 

 2人共、それぞれ別の意味で驚いている。ハイエロファントは「しめた!」と2人へ向かって叫んだ。

 

 

「説明は後でするが、2人共!パチュリーとレミリア嬢が負傷しているッ!どこか安全なところへ連れていくんだ!」

 

「な、何ィ〜〜ッ? レミリアとパチュリーが? やばい敵みたいだな……」

 

「そ、そんなッ! すぐ行きます!」

 

 

 魔理沙はすぐさま下の階へ箒に乗って下り、パチュリーを回収して再び上昇。美鈴と呼ばれた中華女性はレミリアを探しに上階を駆け出した。

 

 

「ハイエロファント! 負けんなよッ!」

 

「大丈夫さ。負けることは……ない」

 

 

 上へ上がる魔理沙に応え、クリームを振り返る。他3人もやつを見据えている。クリームはいよいよ膝を立たせ、今にも踏み込んで襲ってきそうだ。

 

 

「ググ……オォノレェ……貴様ら全員、クリームの暗黒空間ニばら撒いてクレル!!」

 

「いいですか……作戦は……」

 

NNU UOOHHHHHHHH(ヌヌウ  ウオオオオオオオオオオオオ)!!

 

 

 クリームは憎悪と怒りで作り上げたかのようなおぞましい咆哮を上げ、両腕に力を込めて跳ね上がると、滞空している間に体をガブガブと呑み込み始めた。

 

 

「…………する。いいですね。」

 

「ああ!」

 

「わかったわ」

 

「任せて!」

 

「……では、行くぞッ!!」

 

 

 クリームの暗黒空間が襲いかかる前に、ハイエロファントは作戦を3人に教え、右手を上げる合図と共に4人は散開する。暗黒空間と化したクリームは標的を見失ったことに気付かず、先程まで4人がいたところを大きく抉り取る。

 攻撃の経過を見たハイエロファントは咲夜に叫び、ついに作戦を決行した。

 

 

「さぁ、咲夜さん! 任せるよ!」

 

「ええ! 時よ……止まれッ!!」

 

_____________________

 

 

 

 

 「確実に仕留めた」と思っていたクリームは異変に気付き、ポッと顔を出す。

 

「奴ラは……どこへ行ッタ!!」

 

「こっちだ。クリーム」

 

 

 クリームは掛けられた声に向かって勢いよく振り向いた。そこにはマジシャンズレッドが。両手に火を灯し、口からは火気が漏れている。

 

 

「モハメド・アヴドゥル……貴様ハ暗黒空間ニ呑み込ンダはずダ……なぜ生きてイル!!」

 

「……哀れなやつだ。()()()()()すらも覚えていないというわけか」

 

「グガアアアアーーーーーッ!!」

 

「フランドール!!」

 

 

 何をトリガーに怒りだしたのか分からないまま、クリームは目に見えぬ暗黒空間に再び身を包み、突進する。しかし、M(マジシャンズ)レッドはフランドールの名前を叫び、飛んできた彼女に掴まってクリームを回避した。

 

 

『いいかい、フランドールは僕とM(マジシャンズ)レッドの機動力になるんだ』

 

 

「いい動きだったぞ。フランドール嬢。流石は吸血鬼。パワーもスピードも、人間とは桁外れ違う、といったところか」

 

「ありがとう。鳥さん……それで、いつのタイミングで()()の?」

 

「……やつの攻撃をギリギリで(かわ)すのだ。我々の位置を把握できなくなったとき、やつは顔を必ず出すはず。その時に一気に距離をつめてくれ」

 

「分かった」

 

 

 マジシャンズレッドを外したクリームはUターンし、宙にいる2人目掛けて高速で迫る。フランドールはこれを避け、通過したクリームは大きく弧を描き、再びUターン。フランドールはギリギリで躱す。

 焦ったくなったのか、クリームは3度目のUターンを行わずに縦横無尽に飛び回り、辺り一体をめちゃくちゃに抉り始めた。そこに残るのは元々豪勢な図書館だったとは思わせぬ程、破壊し尽くされた()()()()()

 

 

「くッ!」

 

 

 フランドールは更に速く、クリームの猛攻を捌こうとするが、クリームの()はフランドールとほぼ同じような大きさである。しかも、それが高速でやって来るのだから、いくら吸血鬼(中でも子供の部類のフランドール)といえども範囲が広く、マジシャンズレッドを抱えているという制約の中で無限に躱し続けることはできない。そして、ついに限界を迎え、

 

 

      ガ  オ  ン  !

 

 

「あっ……あああ…ッ!」

 

「フ、フランドール!!」

 

 

 右脚を抉り取られ、隻脚となってしまった。しかし、1度抉っただけではクリームは止まらない。第2撃を加えようと、2人へ再び接近する。

 

 

「まずいッ……2人共ーーッ!」

 

 

 ハイエロファントが悲痛な叫びを上げる。しかしこの時、フランドールは痛みに顔を歪めながらも、()()()()()()を既に決めていた。

 

 

「鳥さん! ガードして!」

 

「な、何だとッ!?」

 

「このまま……殴り飛ばすわッ!」

 

 

 ド  カ  ア  ッ 

 

 

 フランドールの指示で咄嗟に交差させた太い十字に、フランドールの鋭い拳が叩き込まれる。その反動によってマジシャンズレッドは床のある下へ、フランドールは上へとふっ飛んだ。クリームは2人の間の空を切り裂き、再び的を外してしまう。

 

 

   ド  ガ  シ  ャ  ア  ァ

 

 

 床へ墜落したマジシャンズレッドは、すぐさま首を上げ、図書館の宙を見上げる。そこには、先程よりも軽々と飛び回るフランドールの姿が。クリームの続く攻撃群を避けているのだ。五体不満足でも、あれだけの身体能力を維持できるのか、とつい見入ってしまった。

 フランドールは更に上昇し、空中で動きを止めると、マジシャンズレッドに叫んだ。

 

 

「鳥さん! 行ったよ!」

 

「……そうか」

 

 

 マジシャンズレッドは辺りを見回す。すると、自身の8m程先に、クリームの頭が出現していた。フランドールを睨みつけているが、マジシャンズレッドを見失ったようだ。当の本人はそれをいいことに、静かにクリームに歩み寄る。

 

 

「グ……チョコマカと……アヴドゥルはドコへ消えタ!!」

 

「こっちだ」

 

「!」

 

 

 声を聞き、振り返るクリームだったが、頭の両角をM(マジシャンズ)レッドに掴まれる。

 

 

「ヌッ、貴様ァ……ッ」

 

「このまま焼き払ってやろうか……え?」

 

「ナメるナアアアァァッ!!」

 

 

 クリームは力づくで振り払おうとはせず、暗黒空間から腕を伸ばすと、マジシャンズレッドの腕にすばやく掴みかかる。

 

 

「ぐっ!」

 

 

 感情の(たか)ぶりによってパワーが上がったクリームの握力はすさまじく、マジシャンズレッドは思わず両角から手を離してしまうが、クリーム自体からは離れられない。腕はギリギリと悲鳴を上げている。

 

 

「終ワリだアァッ!」

 

 

 クリームは暗黒空間となっている口をガバァッと大きく開くと、逃げられないマジシャンズレッドを暗黒空間に呑み込もうとする。が、

 

    ザクッ!   ザグッ! 

 

 

「グアアアァァッ!!」

 

 

 クリームの両目にナイフが突き立てられた。いや、高速で飛んできたのだ。こんな芸当ができるのは、たったの1人しかいない。

 

 

「咲夜!」

 

「良かった……間に合ったわ」

 

 

 犯人は咲夜だ。マジシャンズレッドの更に後方に控えており、クリームからはM(マジシャンズ)レッドと姿が被っていて見えなかったのだ。

 クリームは思わぬ奇襲に怯んでしまってマジシャンズレッドの腕をつい離してしまうが、底無き執念によって再び掴みかかる。

 

 

「な、何だと!? 何という執念だ……ッ!」

 

 

 目が見えない状態でありながら、食らいつこうとする生物にあるまじき勢い。その姿はまるで"屍生人(ゾンビ)"。マジシャンズレッドは自身の周りに炎を暴れさせるが、辺りを破壊するだけで、クリームには中々ダメージが入らない。まだ暗黒空間に入っている()()()さえ出せば……

 

 

「無駄な足掻キだ! アヴドゥルッ! 貴様ハ……死んダッ!!」

 

 

 

   ガ  オ  ン

 

 

「なっ……あああっ……」

 

「鳥さん……が……」

 

 

 クリームは情けなしにマジシャンズレッドの頭にかぶりつき、粉微塵にして消滅させた。クリームはたしかにその感覚を覚え、一息するために暗黒空間から両足を床につけ、ナイフを目から抜くと、回復完了と同時に辺りの業火を見回す。

 

 

「フン。マジシャンズレッドだったカ。派手ニヤッたな。他の3人ニ逃げる隙を与エルタメカ」

 

 

 マジシャンズレッドの遺体を見下ろすと、それすらも焼かれ、元々の姿がどのようであったのか全く分からなくなっていた。クリームは顔を上げると、激しく揺れる炎の中に人型のシルエットを見つける。

 

 

「アヴドゥルの隙ヲ無下ニスルとハ……愚かなヤツダ。アの大きさハ花京院典明! 貴様モ終ワリだアアーーッ!」

 

 

 クリームは炎をかき分け、大口を開けてハイエロファントに飛びかかった。しかし、ハイエロファントの様子がおかしい。なぜ、突っ立ったままでいる……?

 

 

「警戒もなしに突っ込んでくるとは、愚かなやつだ。お前は空っぽだなッ!頭の中すらも!」

 

 

 ビッとハイエロファントは自身の足元を指差す。クリームはつられて指の先へ視線を移動させると、網メロン程度の穴が。しかも、火花を噴いているではないか。誰であっても、この状況に()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「なッ、コレハッ!?」

 

 

 マジシャンズレッドが辺りに炎を放ったのは逃走の隙を作るためではない。炎の勢いで床に穴を開け、攻撃のための隙をつくるためだったのだ。そしてまんまとクリームは引っかかった。

 

 

「終わりだ。魔術師の赤(マジシャンズレッド)!!」

 

 

 ハイエロファントの掛け声と共に、その穴は勢いよく噴火した。

 静脈血よりもはるかに真っ赤な噴炎はクリームの腹部に激突し、そのままクリームを宙へと押し上げた!

 

 

「グオアガアアーーーッ!! す、全て計算の内カ花京院典明ィッ!」

 

「当たり前だ! この花京院典明(ハイエロファントグリーン)は何から何まで計算ずくだーッ! そしてッ、2人共、任せたぞッ!!」

 

「ああッ!」

 

「ええッ!」

 

 

 ハイエロファントの呼びかけに応え、殺されたはずのマジシャンズレッドが火口を崩して姿を現し、時を止めて咲夜がクリームの背後へ周り込む。

 

 

「き、貴様ラ…ッ!」

 

「終わりだ! クロスファイヤーハリケーン!!」

 

「幻象.ルナクロック!」

 

 

 下からはアンクの炎。上からは鋼鉄のナイフの雨。いくら暗黒空間を操り、それら全てを消せるクリームであっても、大火傷という深傷を負った今では避けることすらままならない。

 

 

「キ、貴様らなああんぞニィィィィーーッ!!!」

 

 

ドグオオオオオ ドガ ドガガガガ ドガガッ

 

 

 全てがヒットした。上がる爆炎。飛び散る鮮血。恐ろしい断末魔と共に、ヴァニラ・アイスの生気は消滅したかのように感じられた。炎が晴れると、まる焦げになったクリームが姿を現し、轟音を立てて床に墜落した。その体からはシューッという音と共に煙が出ている。

 

 

『咲夜さんは時間を止めて、M(マジシャンズ)レッドに似た石像を彫ってください。M(マジシャンズ)レッドはクリームに敢えて捕まってください。そして、食われる直前に咲夜さんの石像と入れ替わり、その後に生まれる隙を突いて総攻撃をする』

 

 

 

「原型は残るようにかなり加減してやったが、どうかな」

 

「よし、クリームは……これでしばらく再起不能のはずだ」

 

「……よかった……」

 

 

 ハイエロファントの言葉に咲夜が思わず安堵するが、マジシャンズレッドが「まだだ」と入れる。

 

 

「このスタンドから人格を消し去るんだろう?ここからがまた難しいのだ。どうやって抜き取るのか……」

 

 

 フランドールが降りてきて合流し、4人はクリームを見つめる。すると、彼の胸辺りから、()()()()()()()が新たに立ち始めた。それは宙へと上がり、やがて形を創りだす。

 とった形は、筋肉に富み、長髪をもつ男。その顔は4人を睨みつけ、顔のあらゆる筋肉に全力を込めて歪ませている。

 

 

「! まさか、あれが本体!?」

 

 

 ハイエロファントは驚きを隠せない。しかし、マジシャンズレッドは"それ"がいきなり出てきたことに驚いたものの、そこ以外には、何か思うことがあるような視線を送っている。

 

 

「おそらく、本体の魂の一部が肉体のダメージの蓄積に耐えきれずに出てきてしまったんでしょう。さ、妹様、思う存分に……」

 

「ええ。」

 

 

 咲夜に勧められるのを分かっていたように、彼女の言葉をトリガーに前へ出ると、上を向けて開いた右手を立ち昇る本体の魂へ向ける。

 

 

「何を……する気だ?」

 

「……消えちゃえ!」

 

 

 フランドールはその言葉とともに開いた手を力強く、勢いよく握った。すると、ヴァニラ・アイスの魂は歯を食いしばり、痛みに顔を歪めるような表情をすると、ビキビキという音とともに亀裂が走り、砕け散ってしまった。

 

 

「な………」

 

「これが、妹様の能力よ。」

 

 

 「あらゆるものを破壊する程度の能力」。それはもはや「程度」で済ませていいものかと思ってしまうような恐ろしい能力だ。物体の最も緊張した"核"のようなものを問答無用で破壊し、連鎖するようにして物体自体を壊すのだ。

 それを聞いた2人は「スタンドでもそんな卑怯な能力をもつのはいないんじゃあないか……?」とつい思ってしまった。

 

 

「グ……ウ……ア……ッ……」

 

「! クリーム!?」

 

 

 苦しそうな唸りを聞き、フランドールがクリームへ駆け寄った。刺さった残りのナイフを抜き、優しく彼の手を握る。

 

 

「良かった……意識が戻ったのね……」

 

 

 安堵の涙がフランドールの頬を濡らす。それを焼けて褐色がかった大きな手が拭った。

 

 

「フラン……ドール。私ハ……」

 

「いいのよ。もう喋らなくて。大丈夫だから」

 

 

 フランドールはクリームに優しく抱きつく。安心させる抱擁。それは先程レミリアから自身に与えられたもの。

 子供は成長する。芽生えた自我が他者から受けたものを全て吸収して成長する。孤独を吸収したフランドールは、その辛さと寄り添われる喜びを学んで成長していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




戦闘描写、難しいです。


長い戦いがようやくひと段落。
次回はクリームの紅魔館での生活に触れていきます。
お楽しみに!

to be continued⇒

あくまで参考までに、ということで。

  • 東方をよく知っている
  • ジョジョをよく知っている
  • 東方もジョジョもよく知っている
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