幽波紋の奇妙な幻想 《Drifted Destiny》 作:右利き
どうせジョジョとクロスオーバーさせるかもですが……
リンプ・ビズキットの能力によって甦った兎たちを吹き飛ばした永琳は、よろめきながらもようやくある部屋に辿り着いた。先程大技で吹っ飛ばした場所と違い、ここは数ある納屋の内の一つである。人が隠れるには狭い上に暗いのだが、一先ず体力の回復が優先だ。弾幕を放った右腕は、ゾンビ化した元部下たちに向けていたもののため緊張していた。いつも通りの調子で放つはずが、予想外の負担がかかってしまったようである。
「ハァ……ハァ……早く集まるのよ。ハーヴェスト」
廊下からトットットッと軽い何かが走ってくる音が聴こえてくる。音の主は扉が開けられたままの納屋の前まで来ると、一切の躊躇も無く中へ侵入する。彼の姿は虫のようで、それでいて二本脚で直立する様は人間のようにも見える。これがハーヴェスト。永遠亭には無数にいる。納屋へ走って入ってきた者に続き、どんどん、途切れることなくハーヴェストたちは集まり出す。
「どうしたんだど。永琳!」「爆発がしたどーー」
「何か悪い予感がするぞ〜〜」「どーして裸なんだど?」
「敵襲よ。ハーヴェスト。今ここに集まってきているだけでいいわ……! 私の指示を聞いてちょうだい。これから、あのゾンビスタンドを倒すわ!」
永琳は続々と集まりつつあるハーヴェストたちに、自分の考えたリンプ・ビズキットへの対抗策を話し始めた。そんな中、納屋へと忍び寄る者がもう一人。リンプ・ビズキット本人である。
彼は永琳の後をついて来たのだ。納屋から聴こえてくる永琳とハーヴェストの会話に耳を立てリンプ・ビズキットは襲いかかるタイミングを測る。
『マヌケが…………外まで声が聴こえてんのが分からねぇのか? この俺がこの部屋に到達する前に……八意永琳が
リンプ・ビズキットは鼻で笑うように呟く。具体的に永琳が何を用意するのかは知らないが、わざわざハーヴェストたちを自分にけしかけて足止めをするということから、その何かの用意にはそれなりに時間がかかることが分かる。かつ、永琳もハーヴェストも、リンプ・ビズキットが既に部屋の前まで来ていることを知らない。リンプ・ビズキットの方が一歩有利な状況である。彼らの反撃の準備が整う前に、決着はすぐにつける!
『八意永琳ッ! てめーが何をやろうとしてるのかは知らねぇがよォ〜〜ッ、みすみす俺が反撃の準備を黙って見てると思ってんのか! えぇ!?』
リンプ・ビズキットは納屋の前へ躍り出で、部屋の奥にいるはずの永琳に向かって声を投げかけた。そんな彼の視界に飛び込んできたのは、黄色く小さなスタンドたちが肩車をして、床から天井まで届くぐらい高く作られた肉の壁もとい『スタンドの壁』。
ハーヴェストたちはリンプ・ビズキットの姿が見えないからか何なのか、一言と声を発することなく肩車の体勢を崩さない。そして永琳からの返答も無い。準備に夢中になっているからか、あるいはそこに居ないように見せかけているのか。リンプ・ビズキットは口角を上げて口を歪ませる。
『おいおいおいィ…………居留守のつもりかァ? その奥にいるのは分かってるんだぜ』
リンプ・ビズキットはハーヴェストの壁のど真ん中を指差し、調子づいたように話す。
『
下衆な笑い声を交えながら、リンプ・ビズキットは下品な言葉を口走る。その刺激に、今まで黙っていたハーヴェストも引き気味である。だが相変わらず永琳からの応答は無い。いや、そもそも永琳は今何をやっているのか? リンプ・ビズキットは急にそんな疑問を抱く。
納屋から外へ聴こえてきた話によれば、ハーヴェストたちがリンプ・ビズキットを足止めする間に永琳は何かを用意すると言っていた。用意する、ということは何かしら手を動かして作業をしているはずである。それが弾幕であったとして、先程彼女が放った『秘術.天文密葬法』のように強烈な光を放ったりもするだろう。しかし、だ。ハーヴェストたちの奥からは何の音もしなければ、光ったりもしていない。ただ、永琳のにおいがそこにあるだけのように感じる。リンプ・ビズキットは何かを予感する。今までの調子はどこへやら、いきなりハーヴェストの壁に飛びかかり、無理矢理壁を突破しようともがき始めるた。
「うわ!」「こいつ無理矢理引き剥がしてくるどーー!」
『うるせえチビどもがッ! ガキはお呼びじゃあねーんだよ! とっととどきやがれッ!!』
いくらたくさんのハーヴェストが集まってできた壁と言えども、ゾンビとなってパワーと凶暴性が増したスポーツ・マックスの攻撃を耐えるのは困難だったらしい。3回ほど腕を薙ぎ払われ、ハーヴェストたちは散り散りになってしまった。壁に穴が空き、そこから見えたものは…………
『ち、ちゃんといンじゃあねぇかよッ…………! 驚かせやがってッ!』
永琳は確かにいた。目を見開いて、ハーヴェストの壁の穴から覗き見るリンプ・ビズキットと視線が合った。最も、彼女の方からリンプ・ビズキットが見えているわけではないのだが。
リンプ・ビズキットは永琳の姿が見えたことで、ついに攻撃を開始する。永琳も反撃をしようとするだろうが、まだ彼の方が速い。一瞬の内に両腕を振り抜き、鞭のようにしならせて周りのハーヴェストを薙ぎ払うと、全てのハーヴェストたちは吹っ飛ばされ、壁はついに全壊してしまう。そして永琳の全体像が露わになると、いつでも首を絞められるよう素早く彼女の首を両手で掴みに行った。強靭な顎は、まずは肩を喰らいに彼女の頭部の左隣を目指す………………
と、その時。リンプ・ビズキットはあることに気が付いた。異変があったのは掴んだ永琳の首。
『ッ…………!? な、何だ……と…………!? こ、こいつ脈が無いぞ…………既に死んでいるのか!?』
永琳の首にある頸動脈。血が流れているはずの血管から脈動が感じられない。リンプ・ビズキットは改めて両手で首を掴み、左右の脈動を確認する。しかしだめだ。脈はやはり無い。しかも今気付いたことだが、永琳の体は既に冷たくなっている。開かれた瞳にも光は無い。完全に、死人のそれとなっていた。
だが死体を見て怯えるほど、リンプ・ビズキットは肝は弱くない。なんなら、今まで散々見てきたもの。剥製を作る上で何度も何度も。リンプ・ビズキットは永琳が既に死体であると分かると、死の原因を探ろうとした。外傷、特に出血や首に付く縄の跡などを隅々まで見て探る。
『……傷がねぇぞ……! こ、こいつどうやって死んだんだ……? まさか毒か? いや、こいつからは他のにおいはしてねぇッ……! 一体どうやって…………』
「あらあら。必死そうね。スタンドさん」
『!』
「私の死因を探ってるのかしら。どうせ分からないわ。バラバラにしないとね」
『八意……永琳…………!』
リンプ・ビズキットの背後から永琳の声が聴こえてきた。彼が勢いよく振り向くと、納屋の入り口で服を着た状態で立っていた。いつもの赤と青の高貴なものではなく、寝巻きか何か質素なものであるが。そして彼女の右手には注射器が握られていた。
リンプ・ビズキットは確信する。あれが「用意する」と言っていたものであると。中に何か赤黒い液体が入っているが、それが自分を殺すための武器であろうと。屈んでいた状態から立ち上がり、まっすぐ永琳を睨みつける。
『マヌケが…………わざわざ
「「頭を噛みちぎられた私の透明ゾンビが向かって来ている」って言うんでしょ?」
『!!』
「あなたに死体をどうにかする能力がある中で、そういう想像ができないのはバカの証よ。得意げに何を話してるのかしら。それに、
『何だとッ…………!?』
「この注射器に入ってるのは私が作った薬でね…………注入するとあらゆる細胞を破壊し、血球も溶血させるのよ。あなた、さっき私のことを「犯す」とか言ってた気がするけど……
『〜〜〜〜!』
「あ、どうせあなた「なぜやつの場所が分かった!?」とか言いそうだから先に言うけれど……あのゾンビ、私の血液を体中に塗りたくってたから血の足跡ができててバレバレだったわよ。私のゾンビでも知能はやっぱりゾンビなのね。いや、頭が無くなってたからかしら?」
透明であるためにそれが見えることはないが、リンプ・ビズキットの顔にどんどん焦りの色が出始める。永琳の死体から生み出したゾンビは既に消された。次は自分の番だ。先程永琳はハーヴェストたちに自分のことを足止めするよう指示をしていた。リンプ・ビズキットは最初、指示の内容は納屋の奥に
ガシッ ガシガシ ガシ!
『ッ!?』
「捕まえたどーー!」「さっきはよくも」
「やってくれたなだど!」「今度はこっちの番だど」
散り散りになったハーヴェストたちはリンプ・ビズキットの体に貼り付き、始めにくっ付いた個体を皮切りにどんどんリンプ・ビズキットの体を覆っていく。肉の壁の次は、肉の檻である。
リンプ・ビズキットはハーヴェストたちを振り払おうとするものの、彼らはあえて関節部分に集中するためにリンプ・ビズキットのパワーはほぼほぼ封じられてしまっていた。このままでは、永琳にあの薬を注射されてしまう。
『ぐ、おぉおおお!! やめろ……この、クソがァアアアアァッ!!』
「痛くしないわ。そのまま動かないで」
『クソがッ!! 永琳てめェ忘れてるんじゃあねーだろーなッ! この部屋にはお前の死体が転がってるだろうが! ゾンビはまだ、出てくるんだぜェーーーーッ!』
「!」
ベタ ベタ ベダ!
リンプ・ビズキットの悪あがきは止まらない。納屋の奥に転がっていた永琳の死体にスタンドエネルギーを当て、再び透明ゾンビを生み出したのだ。一番最初にいた部屋よりも狭い空間なために、足音は大きく響いてどこにいるのかが逆に分からなくなっている。さすがにこの場所で弾幕を使えば、自分にも被害が及んでしまう。そこをリンプ・ビズキットに突かれてはたまらない。彼によりも先に、この注射器を自分のゾンビに使うべきであろう。周りに死体が無ければ、リンプ・ビズキットは力持ちなだけの透明人間である。
『お前の死体には何の外傷も無い! 頭の欠損もだ。だからゾンビになったところで、
「…………この部屋のどこかに潜んでいる……」
『じわじわと自分に追い詰められろ! ターゲットが不死であると分かっているのだから、
「………………」
永琳は部屋中を見渡し、ゾンビが這っていそうな場所に目星をつけようとする。だが、やはり血の跡が無いとどこをどう移動しているのか流石に分からないらしい。こんな絶望的とも言えるこの状況を、一人嘲笑うリンプ・ビズキット。果たして彼の思い通りにいくのか? 永琳の瞳には焦りの色は一切見えない。
「逆に………………」
『…………あン?』
「逆に考えるのよ。ゾンビは床だけでなく壁も天井も歩くことができる。故に、相手の予想を上回る奇襲を仕掛けられる。それが分かっているなら、普通は歩けない壁や天井を警戒するわ。でもね。私だったら、そうやって注意が散漫になっている床を……歩く」
永琳は注射器を構えて膝を曲げる。自身の正面に注射針を突き立てると、中の液体を空気中に押し出した。すると、外へ溢れ出るはずの赤黒い薬品は空気の中へ吸い込まれるようにして消えてしまう。一滴も床にこぼれることはなかった。ここに、ゾンビはいたのだ。
『うげッ……ガッ…………』
『な…………バ、バカな……!?』
「私と考えが同じで良かった…………もし立場が逆だったなら、私は私のその思考に警戒して天井を行っていたと思うわ。逆の逆をね。でもそれをしなかった……ゾンビの低い知能に感謝するわ」
「ボシュ〜〜ッ」と音を立て、永琳の透明ゾンビは消滅する。それに伴い、奥にあった死体もズバズバと裂け始めてただのボロ雑巾と化してしまった。それがたとえ自分でも、敵というのなら排除する。それはまるで過去との決別である。K・クリムゾンにやられ、沈みきっていた過去を乗り越える、自分との決別。彼女の強さは取り戻されんとしていた。
何はともあれ、これでリンプ・ビズキットはゾンビを新たに生み出すことはできない。死体は他に無く、永琳の死体もボロボロになって使いようがない。彼はいよいよ終わりである。本人もそれを感じ取っているようで、体中から冷や汗が噴き出していた。そんな彼に対し、永琳は畳みかけるように言葉を発する。ハーヴェストに向かって。
「もういいわよ。ハーヴェスト。やっておしまい」
「分かったどーー」「行くど、みんな!」
『おおおおおぉーーーーーーッ!』
『!? な、何だ!? これから何をするってんだ! 答えろ八意永琳ッ!』
「…………何をって言われてもねぇ。あなたを消滅させるのよ。ハーヴェストたちの力でね」
『何だとォ……? こんなチビどもに、この俺が倒せると思ってんのかァ!? 俺を舐めんじゃあねぇッ! お前が来いよォ! まさか俺が怖ェのか!? ええ、八意永琳ンン!!』
追い詰められた獣には注意せよ。よくそう言われるが、今のリンプ・ビズキットは獣であろうが注意もクソもない存在。ただ躍起になって吠えているだけの小物である。リンプ・ビズキットに背を見せて納屋を離れようとする永琳に挑発を繰り返すが、全く相手にされない。これから死ぬ相手の遠吠えほど、聞いていて無意味なものも無いのだ。
ハーヴェストは永琳を守る盾ではない。かと言って、永琳のために戦う矛でもない。彼らは『収穫』の名をもつスタンド。その名に相応しい役割を、永琳は彼らに与えていた。彼らは罪人を裁く処刑台だ。それはまさに、命の収穫。
ガザッ……ガザガサガサガサガサ
『な、何だ……こいつら、いきなり一斉に動き始めたッ』
ガサガサガサガサガサガサガサガサ
ハーヴェストたちはリンプ・ビズキットに纏わりついた状態で、一体一体が高速で振動し始める。それを確認した永琳はハーヴェストにもリンプ・ビズキットにも何も言わず、ただ部屋を後にする。残されたリンプ・ビズキットであるが、彼からしたら非常にこそばゆい感じがするだけである。「しゃらくさい」とハーヴェストを押し退けて永琳を追撃しようとする彼だが、異変はこの後に起こった。
『うッ…………ぐ……あぁ、アあ熱い!? あづッ……熱いィィ……ぐぉああおおおおぉおおおおお!!!』
大量のハーヴェストにひっつかれているリンプ・ビズキットは、突然痛々しい叫び声を上げた。それは今まで経験したことのないほど、想像を絶した苦しみなのだろう。
『熱殺蜂球』。ニホンミツバチが外敵、オオスズメバチに巣を襲撃された際に形成するもの。海に住むゴンズイのように、大量のミツバチが固まって密集することによって作られるもの。ハーヴェストはこれと同じものを作っていたのだ。この熱殺蜂球は纏わりついている周りのミツバチが羽や筋肉を高速で動かすことによって熱を生み出し、中にいる敵を蒸し殺すのだ。ミツバチの大きさ、能力によって本来生み出せる熱は50℃近くが限界である。しかし、ハーヴェストたちはミツバチよりも体が大きい上に身体能力も上だ。生み出す熱は、50℃どころではない。リンプ・ビズキットを焼き殺すまでいくだろうか。
『うぐぉおおおおおお!! クソッ……クソガァアアァアァ!! ブッ殺してやるゥゥーーーーッ! このクソッ、ヤゴコロエイリンンンガァ〜〜〜〜ッ!!!』
ボジュゥゥゥゥッ……!
近くにいる者の耳が裂けてしまうのではないか、という断末魔を上げ、リンプ・ビズキットは高熱によって消滅してしまった。
彼は最後の最後まで永琳を、今日に初めて会ったばかりの永琳を目の敵としているように執着していた。そんな彼が上げた断末魔は彼女の耳に届いただろうか。ゲスな邪悪の叫びは、今日という戦い、試練を越えて精神をさらに前へ進ませた者に届いたのであろうか。廊下を行く永琳の足取りは坂道を登り切った後かのように、何の枷も感じられないぐらい軽快なものであった。
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時を同じくして、幻想郷のどこか森の中。2つの影が土に描かれた
一つは白い体に真っ黒なボンテージのようなものを着たスタンド、『ホワイトスネイク』。そしてもう片方は、黄金色で巨躯の持ち主であるスタンド。彼らは仲が良いようだ。本体の間柄から。
ホワイトスネイクは自分の駒を置くと、はるか西の空を見上げて呟いた。
「……エンプレスに続いて……リンプ・ビズキットもやられたのか…………!」
「………………」
「どうする…………友よ。今からでも私が行くべきだろうか。
「いや、構わないさ。必要なのはあくまで『重力』。全てが揃った時、あの場所へ訪れるだけでいいのだ……」
ホワイトスネイクはリンプ・ビズキットを永遠亭に行かせたことを恥じ、立ち上がって自ら向かおうとする。が、黄金のスタンドはそれを制止した。ホワイトスネイクの行動を一切責めることはなく、「次はそっちの番だ」と手で示す。ホワイトスネイクは再び地面に腰を降ろして駒を置いた。
彼の言葉から分かるように、ホワイトスネイクはリンプ・ビズキットのことを一つの駒としてしか見ていなかった。部下としての情も無く、命令を失敗して逃げ帰ろうものならただで済ませるつもりもなかった。結果として、永琳とハーヴェストたちに消されてしまったのだが。
数回ほどこの駒のやり取りをした後、黄金のスタンドはまた口を開いた。
「何より優先すべきなのは地底の方だったな…………だが、焦ることはない。間違っても殺されることはないだろう。
「それはどうだろうか……万が一を考えても、早々に回収すべきだと思っている」
「では……どうする?」
「
次回、悪夢が始まる。
to be continued⇒
あくまで参考までに、ということで。
-
東方をよく知っている
-
ジョジョをよく知っている
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東方もジョジョもよく知っている
-
どちらもよく知らない