幽波紋の奇妙な幻想 《Drifted Destiny》   作:右利き

84 / 101
投稿が遅くなり、本当に申し訳ないです……
言い訳としては何ですが、私情で忙しくなり始めたのです。投稿は頻度は落ちますが、それでもいわゆる『エタる』なんていうことはありません。
待っていてくださると幸いです。


81.DIO()に仕える神父(Christian)

 紅魔館が世界(ザ・ワールド)に襲撃されるよりも数分前のこと。

 妖怪の山中腹に位置する守矢神社にも、とあるスタンドが訪れていた。

 しかし、『襲撃』とは違う。戦いが起こった跡は周りに無く、弾幕の光や音が放たれたのを知っている者はいない。守矢の者も含めて。

 そして彼らは、神社屋内の居間にて会談を行っていた。

 

「ほう。『天国』か。お前たちはそこへ向かうために、私たちに手を貸してほしいと?」

 

 こたつが取り除かれた部屋で、八坂神奈子は自分の向かい側に座る者へ問い直す。彼女の客は、どうやら神奈子たち守矢の者に力を貸してほしいと頼み込んできたようである。

 『天国』に行きたい、とはまた変わり種がいたものだ。幻想郷の住人は天国より、どちらかというと冥界に行きたがる。閻魔に裁かれ、魂は冥界にて転生の時を待つ。その仕組みを知っているからだ。

 

「だが、神の力に頼るとなると、あるものが必要になるんだよ。何か分かるかね?」

 

「ええ。知っていますとも…………信仰、でしょう?」

 

「ああ。分かっているじゃないか」

 

 神奈子は笑みをこぼす。しかし、目は笑っているわけではない。過去の経験から、相手を信用しきれていないだけだけだ。

 彼女は以前、守矢神社を妖怪の山に移転させた件でスタンド、グリーン・ディを安易に受け入れた。だがそれが原因で、後日幻想郷中で多大な被害が出てしまった。

 過去の経験から。今、彼女の目の前にいるのはスタンドである。胡座(あぐら)をかく神奈子に対し、礼節をわきまえ、座布団の上にぎこちない様子でありながらも正座をするスタンドだ。それはホワイトスネイク。

 

「我々は人間の魂、精神から生まれた存在…………信仰心など、当然のことながら持ち合わせております。心配なさらぬよう」

 

「ならいいがな。私たちは以前、スタンド絡みで厄介ごとがあってね。そして、昨日も。とても大変だったよ。絵本や絵画の中から、キャラクターが飛び出してくる異変だ」

 

「……ええ。存じています……」

 

「タイミングが良いな。ぴったり翌日に、お前が神社に来るなんて」

 

「……………」

 

 神奈子は圧をかけて話す。それに気押されてなのか、ホワイトスネイクは口を紡いだ。視線はやや下を向き、膝の上では拳がギリギリと握られている。

 部屋は完全に2人きりのように見えるが、実は部屋の隅には早苗も控えている。神奈子は彼女にも効くほどの、相当の威圧をホワイトスネイクに与えているようだ。早苗は一言も喋らなかった。

 

「タイミングというのは? まさか我々のことを疑っておいでで?」

 

「可能性の話をしたまでだ。そう焦るなよ。スタンド。そして、滅多なことを言うんじゃあない。疑う、信じるの領域の話でもないさ。調べればすぐに分かる」

 

「……ならば、我々の身の潔白は証明できますな」

 

「ふふふ。さぁ、それはどうかな……」

 

 パチンッ! と神奈子は指を鳴らす。

 それを耳にした早苗はドタドタと慌ただしくしながら、何やら布に包まれた箱のような物を持ち出して来た。早苗の胴体よりも大きめの木箱である。

 早苗は神奈子の側に箱を置くと布を取り去り、いよいよ開封した。

 中にあった物とはささくれに(まみ)れている、バラバラに破壊された木製の何か。人の手で加工された跡があり、滑らかな球体や絵の具で着色された箇所も見られる。

 

「これは…………」

 

()()、見覚えないかい?」

 

 神奈子は箱の中から一際大きな木の塊を持ち上げる。ホワイトスネイクはそれを見た瞬間、ビクッと体を震わせた。何かに気付いたように。

 神奈子が手に持っているのは、雑に釘や紐で修理された木の人形の頭部。その大きな特徴として、人形の顔の真ん中に細長い棒が付いていた。

 

「その反応。何かエラい物でも見たかしら?」

 

「ッ…………!!」

 

「バレバレなんだよ。スタンド。お前たちのことは既に天狗が把握済みだ。妖怪の山は彼らの家。ゴキブリでもない限り、奴らは絶対に捕捉するよ」

 

 白狼天狗、犬走椛。千里眼をもつ彼女はいち早く山の異変に気付き、侵入者を捕捉した。彼女の報告によれば、ホワイトスネイクはキング・クリムゾンと思しき者と交戦していたという。

 バレていた。ホワイトスネイクはいかにも「まずい」という表情を浮かべ、逃走するために畳を蹴って縁側へ続く障子へと向かう。

 しかし……

 

 

バグオオオオン!

 

 

「うがあああッ!!」

 

「逃がしはしないよ。この人形が破壊された後に異変が収まったことはバレバレだ。そして、この人形とお前の関係も何となくは、ね」

 

 ホワイトスネイクの右脚は爆裂し、障子に手が届くまで数センチというところで倒れ伏してしまう。襲ったのは神奈子の弾幕だ。周りに被害が出ないよう、エネルギーをグンと凝縮した一球である。

 神奈子は早苗に振り返って指示を下す。

 

「早苗、諏訪子を呼んできてくれ。この腐れ外道スタンドを捕縛するわよ」

 

「は、はい!」

 

 早苗は部屋の奥へ走り、自らの仕えるもう一柱の神を呼びつけに向かった。

 残された神奈子はホワイトスネイクへ迫り、未だ伏せられている頭を掴むと、強引に持ち上げる。空いたもう片方の手は、相手に脅しを掛けるギャングのように背中へと突きつけた。

 もう加減はしない。油断もしない。秋に起こったカビ異変の時のような不手際は、己の誇りと同志たちの安全のためにも絶対に防がねばならない。軍神が、陥ちることなどあってはならないのだ。

 

 

____________________

 

 

 壁が、床が、天井が流動する。まるで火に当てられている蝋燭(ろうそく)のように。確かにはたらいている臓腑のように。この部屋は()()()()()

 溶ける部屋の中に在るのは緑色の髪をもつ少女と、赤い服に身を包んだ紫髪の神。そしてそのどちらもが深い眠りの中にいた。眠り、『夢』見、そして溶ける。部屋と同じく、彼女らも溶けていく。

 部屋の主は、ここ守矢神社に奉られる神奈子ではない。ちゃぶ台に突っ伏している彼女ではなく、彼女を見下ろす白色の者だ。彼もまた、ドロドロに溶けていた。ホワイトスネイクだ。

 

『ウジュ……ウジュル………………私ハ、唯一絶対の神ニ仕エル者。異教ノ神ガ我らノ悲願ヲ邪魔スルンじゃあナイゾ。溶けてイケ……(スネイク)の胃の中デ!』

 

 ボタボタと自分の一部であった液体を垂らしながら、ホワイトスネイクは眠る神奈子へ言い放つ。

 神奈子の在る仏教と、ホワイトスネイクの本体であるエンリコ・プッチの信仰するキリスト教は根本的に違う。仏教には数多の神が存在するが、キリスト教では唯一神がいるのみ。ホワイトスネイクからすれば、神奈子は異端も異端。邪魔者である。彼女の存在それ自体が、己や本体の否定にすらなり得る。

 だから滅ぼす。

 能力によって、そこに転がっている緑髪の信者もろとも溶かし尽くす。そこに残るのはホワイトスネイクが()()ディスクだけだ。

 

『…………! 何カガ来ル……」

 

 床から少しの振動を感じ取り、何者かの接近に気付くホワイトスネイク。彼は完全に流動体へ変化すると、静かに床の中へと溶けていった。

 それとほぼ同時に、神社の奥へ続く障子が勢いよく開けられる。開けたのは広い笠を被った小さなシルエット。洩矢諏訪子である。神奈子の力が徐々に弱まっていくのを感じ、急ぎ駆けつけたのだ。

 

「神奈子ッ!? 早苗まで! 一体何が起こったの!? この部屋のこの様子は…………!?」

 

 部屋を見回し、この一室に起こっている現象を頭の中で整理しようとする。しかし、あまりにも異常であるためか、何がどうなっているのか諏訪子は全く理解できない。神奈子も早苗もやられている。ただ一つ分かるのは、間違いなく妖怪がやったわけではないということ。

 その結論に至った時、諏訪子は考えついた。

 

「まさか……スタンド!? これはスタンド攻撃……」

 

 言いかけて止める。

 気配は背後に現れた。きっと()()()なんだろう。こいつが、2人をドロドロに溶かして眠らせているのだろう。そうに違いない。つい数瞬前、この部屋の中に急に感じ取れた。誰よりも黒い、最もドス黒い邪悪を。

 

「くらえッ!」

 

 

ボバアァ〜〜ン!

 

 

 諏訪子は振り向きざまに弾幕を背後に立つ者に浴びせた。

 諏訪子や神奈子にとって、弾幕とは『神遊び』と呼ばれるもの。神と人間が弾幕を用いて遊ぶ、すなわち祭り。しかし、この一撃に遊びの意などは一切込められていない。同胞の仇。殺して捧げる贄である。

 弾幕を放った場所からはほのかな煙が立ち、標的に直撃したことを諏訪子に知らせる。ものの数秒で煙が晴れ、倒れ伏せる者の全貌が明らかとなった。

 猿だった。

 

 

ドガン!

 

 

 諏訪子の頭部に衝撃が走る。これにより、彼女は理解した。『奪われる』と。何か大切なものが、頭からスルリと抜け落ちていく。その感覚を味わいながら諏訪子は体勢を崩し、ゆっくりと倒れゆくのだった。

 

「お、(おとり)だった…………さっきの猿は……」

 

 諏訪子は畳に倒れるまでに完全に意識を失い、やがて骸のように動かなくなってしまった。

 そんな彼女の頭からは銀色に鈍く光るディスクが飛び出ている。それを待っていたかのように、諏訪子の体のすぐ近くから流動する一本の腕が伸びてくると、そのまま指でディスクを(つま)んだ。

 すると、腕の根元が隆起し、それとともにディスクも諏訪子の頭から引っ張られる。姿を現したのはホワイトスネイク。またも、彼は獲物を一匹捕まえたのだ。

 

『……(スネイク)ガ蛙ニ負ケルワケがナイ…………最も、オ前ハ蛙ノ神デハナイヨウダガ……』

 

 奪取したディスクをブラブラと振り、意識の無い諏訪子を見下ろしながら煽るホワイトスネイク。だが、ここで彼はあることに気がついた。

 いつからだった?

 諏訪子の、右腕が無い。弾幕を放った右腕が。

 

 

____________________

 

 

 大ガマという妖怪がいる。それは諏訪子がよく水浴びをしに行く沢に住んでおり、彼女とは共に色々なことをする仲である。

 そんな妖怪が今、守矢神社へと続く山の階段に居た。子ども一人が入ってしまいそうなほど大きな口には、子どものものと思われるか細い腕が咥えられていた。

 

「あぁん? 何だ? このカエル」

 

「巨大だな。もしや妖怪か?」

 

「! 気をつけろチャリオッツ、マジシャンズレッド! そのカエル、人の腕を咥えているぞッ!」

 

 大ガマは待っていたのだ。友を助けてくれる者たちを誘い、連れて行くために。目の前にいる彼らなら、神社を襲撃したスタンドをどうにかしてくれるかもしれない。

 ハイエロファント、チャリオッツ、マジシャンズレッド、そしてS(スティッキィ)・フィンガーズなら。

 




キリの良さを取って、文字数少なめの話を投稿していこうかと思います。
それでも長くなる時はなるかもしれませんが……

to be continued⇒

あくまで参考までに、ということで。

  • 東方をよく知っている
  • ジョジョをよく知っている
  • 東方もジョジョもよく知っている
  • どちらもよく知らない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。