幽波紋の奇妙な幻想 《Drifted Destiny》 作:右利き
4人は、いや、スティッキィ・フィンガーズは元々神奈子に呼ばれて妖怪の山を訪れていた。かつてザ・グレイトフル・デッドと相対した際、早苗とも遭遇したのだが、彼女から受け取った神奈子の手紙が始めである。
キング・クリムゾンを打ち倒す作戦のため、彼は数日前より今日に神社を訪れるよう伝えられていた。できるだけ仲間を連れて来いという言葉も添えられており、そのためにハイエロファントやチャリオッツもいるのだ。
そして今彼らは、目の前に鎮座する巨大なカエルに驚いている。
「こ、こいつ! 人を食ったのかッ!?」
「きっとそうだろう……あの口から見えている腕、どう見ても子どものものだ。このカエルは人喰いの妖怪に違いないぞ!」
チャリオッツは剣を構え、マジシャンズレッドは手元に炎を起こす。その後ろでもハイエロファントとS・フィンガーズがいつでも手を出せるよう、スタンドパワーを手に集中させている。
蛙の妖怪大ガマは4人が攻撃体勢に入ったことに気付いたようで、石段につけていた尻をゆっくりと上げた。そして……
「うおおっ!? おい、上に逃げたぞ! 待ちやがれッ!」
大ガマは空中に跳び上がり、器用にその場で一回転すると、石階段を数段ずつ飛び越しながら守矢神社方面へ向かって逃走を開始した。
その光景に一瞬呆気に取られたチャリオッツだが、すぐに我に帰って声を上げる。そして大ガマを追うため、一番に飛び出して行ってしまった。
「どうする、スティッキ・フィンガーズ! あのカエルを追うか? 人喰いなら放っておくわけにはいかないだろう」
「……しかし、この階段の先は守矢神社だ。数週間前から妖怪退治も本格的に始めている。それをこの山に住む妖怪が知らないとは思えない。おそらくだが、
妖怪である自分を退治する神社に、わざわざ逃げて助けを乞いに向かうとは思えない。それが彼の見解だ。
S・フィンガーズの分析を聞き、尋ねたマジシャンズレッドとハイエロファントは頷く。既に走り出して大ガマを追跡するチャリオッツに続き、3人も大ガマを追って階段を駆け上がっていくのだった。
昨日、人里は一匹の龍によってその多くを焼き払われた。F・FやS・フィンガーズの尽力によって被害者を減らすことはできたものの、それでも失われたものはあまりにも多かった。
今はまだ復興が始まっておらず、安否の確認の取れない者を捜索したり、一時的な住居の整備や食糧の配給が行われている。S・フィンガーズはF・Fに人里の守衛を任せ、復興の手伝いに来ていたマジシャンズレッドやハイエロファントたちを引き連れて現在、というわけだ。
ちなみにだが、マジシャンズレッドはフランドール、クリームと共に人里に訪れ、残りの3人は永遠亭へ向かった。数度の襲撃を受けた永遠亭の連中が心配だから、とフランドールはよく気にかけていたのだ。最も、その大部分はハーヴェストのことだが。
人里を離れることに思うことはあったものの、件の大異変に少しでもあのキング・クリムゾンが関わっている可能性があるのなら、S・フィンガーズが動かないわけにいかない。やつは、必ず倒さなくてはならない存在なのだから。
人の腕を咥えた大ガマを追い、階段を登りきって4人はいよいよ守矢神社の境内へと到達する。だが、彼らの足は鳥居をくぐった直後に止まることになった。
その原因とは、神社から溢れ出るドス黒いスタンドエネルギーの存在である。
「何だ……!? このオーラ……まるでDIOのような……!!」
「いいや、ハイエロファント。DIO以上だ……! こいつはヤバすぎる……!」
「……なるほど。どうやらあのカエル、俺たちに神社の中にいるスタンドの相手をしてほしかったようだな…………」
S・フィンガーズは推察する。現に大ガマの姿はもう見えない。彼らを連れて来ること、本当にそれだけが目的だったのだ。
S・フィンガーズは声が屋内に聴こえぬよう、ハンドシグナルで3人へ指示を出す。始めに行くのはチャリオッツだ。音を立てないように神社に近付き、障子の陰に隠れつつ侵入を試みる。
障子は何事もなくスッと開いた。レイピアを片手に、チャリオッツは薄暗くなっている部屋をぐるりと見回すと、部屋の異常を視界に捉えた。
「な、何だこりゃあッ! どーなってんだ!? 部屋が……溶けてやがる!」
「チャリオッツ、どうかしたのか!」
「部屋が溶けてんだよ! それに……いたぞ! か、神奈子と早苗だぜ。部屋のど真ん中で同じように溶けてやがる!」
「チャリオッツ、中にいる神奈子や早苗、それともう一人いないか? 確か神はもう一人いると聞いた。彼女も回収して戻るんだ。そして注意も怠るな」
S・フィンガーズが言っているのは諏訪子のことだ。神社の奥へ続く戸の前に、彼女と思われる少女が倒れている。右腕が無かったものの、チャリオッツ含め誰もそれに気付いてはいない。今はそれほどの状況である。チャリオッツはレイピアを持ったまま諏訪子の横に跳ぶと、彼女を抱き抱えて脇に挟んだ。
しかし、一人でここまで入って来たものの、これから3人を同時に助け出すのは困難だ。神奈子か早苗か、どちらか一方を空いている腕で抱え、残った一人をハイエロファントかマジシャンズレッドに頼むしかない。
「しゃーねぇ。神奈子さまはハイエロファントに任せるとするぜ。おい、ハイエロファント!」
「ああ!」
チャリオッツは早苗を選び、彼女の襟を掴むと外へ向かって応援を頼んだ。
それを耳にしたハイエロファントは腕を数本の紐状に解き、神社の中へ伸ばすため、触手をしならせる。だがここで、触手が空中で弧を描き、いざ投げ出されんとするその瞬間、ハイエロファントの目にあるものが映った。
外へ脱出しようとするチャリオッツの背後で、何かの影が動いたのだ。
「ハッ、チャリオッツ! 後ろだッ! 何かいる。攻撃されるぞ!」
「なにっ!?」
チャリオッツはハイエロファントの警告に反応するも、すぐにその場を離れるのではなく無意識に振り返ろうと首を曲げかけてしまう。
彼の視界に一瞬入ったのは、ドロドロに溶けた腕のようなものが彼自身の頭部に迫っているところだった。確実にヤバいと脳の中で警報が鳴るも、声に出すまでにはまだ時間がかかる。脚を動かすにも、もっと時間が必要だ。
一人では避けられない。
「ムゥン!
チャリオッツのピンチに、マジシャンズレッドはすかさず炎の荒縄を投げ込む。影から伸びる何かがチャリオッツの頭部を襲うよりも早く、炎はチャリオッツの胴体を絡め取り、彼を境内へと投げ出した。
「あ、あぶねぇ……助かったぜ。マジシャンズレッド」
「油断するんじゃあないぞ。チャリオッツ。ハイエロファント、今のうちに神奈子さまを」
「ええ!」
チャリオッツを逃してしまった影は、その場で一瞬たじろいだように揺れる。その隙を見計らって、ハイエロファントは神奈子へと触手を伸ばし、彼女を素早く回収した。
ハイエロファントたちが名前を呼ぶなど、回収された3人の意識を何とか戻そうとする中、S・フィンガーズはがら空きになった部屋へ目をやる。部屋はチャリオッツが言っていたように、未だ溶けているかのように流動しているし、スタンドエネルギーはまだ中に感じられる。倒すのなら今しかないだろう。
「誰か一人、誰でもいい。俺とともに来てくれ。敵スタンドがまだ神社の中にいる。残りの2人は3人を守っているんだ」
「僕が行こう。スティッキィ・フィンガーズ、どう詰める?」
「俺がやつへ奇襲を仕掛ける。ハイエロファントは敵の姿が見えた瞬間、真正面からエメラルドスプラッシュで攻撃、牽制するんだ。能力がハッキリと分からないこの状況で自由に動かせるな」
「ああ。分かった」
S・フィンガーズは地面にジッパーを取り付け、一瞬にして姿を消してしまう。部屋までの距離を把握し、地下から敵を叩くつもりだ。
ハイエロファントも、S・フィンガーズに言われた通り敵が姿を現す時に備え、掌にスタンドパワーを集中させる。それによってできる緑色の水面が光を屈折させ、彼が立つ石畳の上で揺らめいていた。
だが、この一瞬。自分の手に意識を移したほんの一瞬のうちに、中に見える部屋の壁の異常が完全に消失してしまった。元々の土壁に戻っているのだ。
敵は正面に見えていない。まさか、どうやってか裏口から出て行ったのか?
「まずい……チャリオッツ! マジシャンズレッドッ! 敵が消えた……エネルギーも感じられない! 接近に気をつけるんだ!!」
「ああ……だが、ハイエロファント。S・フィンガーズのエネルギーを探知してみろ。彼は、すでに敵の逃走に気付いている。追跡を始めているぞ!」
マジシャンズレッドに言われるまま、ハイエロファントは地下にいるはずのS・フィンガーズの気配を探る。彼はもはや神社の下にはいない。この場から徐々に離れていたのだ。
山の頂上がある方向から外れ、どんどん南へと進んでいく。敵は山を降りようとしているらしい。そしてそちらには、先日の異変でボロボロになった人里がある。
S・フィンガーズは人里の守護者。神奈子や諏訪子を封じたスタンドなど、絶対に見過ごせない。ブチャラティの『意志』に導かれ、己の『意思』で人里に留まる彼が、傷付いて死にかけの人里を守りに行かないわけがないのだ。
3人はそれを承知の上で、S・フィンガーズの後を追おうと木々の中へ駆け出し始める。
すると、次の瞬間!
『!!』
3人の体中を、まるで無数の槍が突き刺さったような感覚が這い回る。
知っている。この感覚を。覚えている。この恐怖を。心臓を掴まれ、潰されそうになっているかと思い違うほどの緊張感。首筋に手を伸ばされ、耳元で妖艶な舌なめずりを聞かされるような緊張感。一人しかいない。
これはかつて相対した、悪の帝王のもの!
「こ、こ……の……感じはァッ!!」
「まさかッ……まさかやつが!」
「いつか来ると思っていた……ついに来たのかッ……!」
『DIO!!』
冷や汗を噴き出しながら、3人は鳥居のある方へ同時に振り向く。
守矢神社は妖怪の山の中腹に存在する。鳥居は麓を向いて建てられており、そこから幻想郷中を一望することができるのだ。そう。幻想郷のほとんどが目に入る。
鳥居の奥、その遥か向こうで、紅い館が煙を上げている。館のシンボルである巨大時計すら、守矢神社から見えやしない。しかし、まだ見えなくともハッキリ認識することができる。やつはあそこにいる。
『
しばらく書いていなかったせいで、あまり筆が乗らない……
リハビリが必要ですね。勉強もですけど。
to be continued⇒
あくまで参考までに、ということで。
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東方をよく知っている
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ジョジョをよく知っている
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東方もジョジョもよく知っている
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どちらもよく知らない