幽波紋の奇妙な幻想 《Drifted Destiny》   作:右利き

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83.スターダストクルセイダース

 バタバタと赤いスカートを(なび)かせながら、一人の少女が霧の湖の空を征く。

 博麗霊夢である。彼女は今しがた起きた異常を博麗神社から感じ取っており、「レミリアに何かがあった」と考え紅魔館へ向かっているのだ。

 そうして飛行する彼女の後ろを、さらに一つの影が飛ぶ。

 こちらは霧雨魔理沙。人里で復興の準備や物資の配給を行なっている時に紅魔館方面から響いてきた震動を感じ、霊夢と同じように震源へ向かった。彼女たちは行先を同じとする中、偶然出会ったのだ。

 

「あっ、見えてきたぜ!」

 

「……紅魔館から煙が出てる。でも、ただの煙じゃないわ。アレは。それにレミリアの妖力だって全然感じない。何か悪い予感がするわ……」

 

 霊夢と魔理沙は飛行速度を上げ、紅魔館への到着を急ぐ。

 館に近付いていくにつれ、紅魔館の状況が徐々に浮き彫りになってきた。壁のあちこちに穴が空いている。まるで虫喰い。レンガにも焦げ目がついている。

 間違いない。これは弾幕戦の跡だ。おそらく何者かの侵入を許し、何者かの襲撃に遭った…………そういうことなのだろう。紅美鈴(門番)の姿は門前に無く、戦いの後の片付けをするにしては静かすぎる。おそらく結果は、『敗北』。

 

「……!」

 

「霊夢、あれ…………」

 

「ええ。あいつのようね。あいつが、紅魔館を襲ったのね」

 

 2人の視線は時計台へ向けられる。降り注ぐ太陽光を一身に浴び、黄金一色に輝く者がいる。それは確かに2本脚で立ち、2本の腕を胸元で組んでいる。しかし、人ではない。

 彼は意志だ。意志そのものだ。誇り高く、気高い黄金の精神に打ち滅ぼされた巨悪の意志。それは『時』すらも超越する、最強のスタンドだった。

 

「……よく来た。博麗の巫女、博麗霊夢……」

 

 ザ・ワールドはパチパチと小さな拍手を霊夢へ送った。そして次に魔理沙の方をジロリと見る。

 少し細められた目はいかにも「何だお前は」と言いたげである。何か意味を含んだ視線に気押されながらも、魔理沙は虚勢を張って声を上げた。

 

「お、お前スタンドだな!? どうして紅魔館を襲ったりしたんだッ! 答えろ!」

 

「お前は覚えのないやつだな…………霊夢の友人か何かか? 見たところによると魔法使いのようだが。紅魔館にも一人いたな」

 

「質問に答えろ!」

 

「楯突いたから倒した。それだけのことだ。私は私の目的のため、障害となるものは全て断ち切る。我が本体のように…………『勝利して支配する』。あるのはそれだけよ」

 

 それこそザ・ワールド、もといDIOの全てだ。生まれながらの悪。百と二十年前からのディオ・ブランドーの穢れた本質そのものは、確かに幻想郷に流れ着いてしまった。

 勝利して支配する。殺して奪う。喰らって生きる。

 そしてその毒牙は、いよいよ幻想郷の調停者へと向けられた。時を止められる十六夜咲夜、いくら不意打ちとはいえザ・ワールドは彼女を打ち破っている。フランドール、マジシャンズレッド、クリーム以外の住人たちもそうだ。

 だからこそ、この衝突は免れない。霊夢は札とお祓い棒を握り締め、魔理沙は魔法道具を服のあちこちから引っ張り出す。目の前のスタンドを打ち倒すために。また、打ち倒されるために。

 

「御託はいいわ。さっさと倒すわよ。魔理沙。このタイミング……どうせ、昨日の異変もこいつが関わってるに決まってる!」

 

「フフフ。ああ、その通りだ。昨日は残念だったな。何者かにピノキオを倒されたおかげで、計画が中途半端になってしまったからな…………」

 

「こ、こいつ……!」

 

「さあ、始めるぞ。博麗の……」

 

 

スパアァァン!

 

 

「ム!」

 

 ザ・ワールドの頬から突如として血が(ほとばし)る。横一文字に切り傷ができており、そこから噴き出したのだ。

 やったのは霊夢である。高速で腕を振り抜き、札を投げつけ、カッターのようにザ・ワールドの顔を裂いた。狙いは顔の中心だったが、頬に当たったのはザ・ワールドの反応が間に合ったからである。

 霊夢の方を見てみれば、彼女は札を投げつけたフォームのまま静止している。瞳はザ・ワールドに向けられ、静かな怒りに燃えていた。相手はカビ異変を超える史上最悪の異変、その首謀者なのだから。

 

「ハァッ!」

 

「フン!」

 

 ザ・ワールドと霊夢は動き出す。ザ・ワールドはその巨大な拳を振りかざして、霊夢はお祓い棒を掲げて相手へと突進を仕掛けた。

 霊夢はザ・ワールドの放つ拳や脚を間一髪で回避、お祓い棒による刺突や札による斬撃をもってしてザ・ワールドへダメージを与えていく。それに対するザ・ワールド、霊夢の攻撃などまるで意に介さず、ひたすらに肉弾攻撃によって霊夢を追い詰めようとする。

 拳は霊夢の頬をギリギリで(かす)り、いくつものすり傷を生んでいく。ザ・ワールドも霊夢の攻撃によって傷ついてはいる。しかし、霊夢と比べると体力の消耗はほとんど見られない。霊夢は既に、肩で息をし始めているというのに。

 

「は、速ぇ……速すぎる…………!」

 

 霊夢と共に来た魔理沙は、あまりにも速い攻防を傍観するのに夢中になっていた。

 霊夢とはよく異変解決に乗り出した中だ。彼女の戦いなど、今まで幾度となく見てきている。相手に弾幕を撃ち、弾幕を避け、あるいはぶつけて相殺する。それが霊夢の弾幕戦だった。

 こんな戦いなど見たことがない。霊夢が本気になって、相手を消し去ろうと戦っている。弾幕だけではなく、己の持つ全てを使ってだ。

 自分は必要なのか? この場に居て何かあるのか? いくら死ぬこともあるとはいえ、普通の弾幕戦しか行えない自分など…………

 魔理沙の中に少しずつ、そんな思いが現れ始めるのだった。

 

「フハハハハハ。どうした、霊夢。息が上がってきているぞ? まだ戦いは始まったばかりだろう! 守るんじゃないのか? 幻想郷を。私を倒すのだろう?」

 

「…………!」

 

「フフフ。いくら本気を出していないとはいえ、私の攻撃にここまで耐えられるのは流石と言ったところか…………だが、そろそろ終わりだ」

 

「!」

 

「フン!」

 

 

ドガァアン!

 

 

「あうッ!」

 

「霊夢!?」

 

 ザ・ワールドの拳が霊夢の顔面に直撃する。だが、彼が言うように本気で打ったわけではない。これはあくまで、挑発の一撃だ。霊夢に全力を出させるための挑発。DIOから受け継ぐ、()()()だ。

 浮遊状態を維持しながら、霊夢はヨロヨロと後ろへ退く。顔には疲れの色が見えており、鼻からは先程の攻撃によって流れたのだろう、鼻血が出ている。しかし、瞳を見れば誰でも理解できる。彼女の闘志はまだ、消えてはいない。

 

「……ふん。あっそう…………そんなに私に倒されたいのね……もう少しいい思いさせて、楽しませてあげようと思ったのに……()()()()()()()()()()()()?」

 

「ほう?」

 

「……!」

(霊夢…………)

 

 突如、霊夢の周りに風が巻き起こる。この時、ザ・ワールドはその風の正体が何なのかを理解することはなかったが、魔理沙はすぐに気付いた。

 霊力だ。霊夢に宿る溢れんばかりの霊力が一気に放出され、それが旋風となって自分たちを取り巻いているのだ。霊力とは人間に備わる魂を源とするエネルギー。それはもはや、スタンドとの差異などほとんど無い。形を取っているか、あるいは取れるかどうかだけだ。

 

「スタンドエネルギー……いや、これは違うな。微妙に違う。()()()……という言い方が正しいのかは分からないが、とにかく似て非なる何かだな」

 

「霊夢……それは何だ!? お前、そんなことできたのか!?」

 

「……ガラにもなく修行したのよ……地底で色々あってね。このままじゃいけないと思って頑張ったわ。魔理沙(あんた)を見習って」

 

 霊夢の周りを渦巻く風は、やがて白いモヤへと変貌する。そしてそれは雷雲のように白い雷を放ち始め、どこからか現れた8つの陰陽玉も霊夢の周りを回転し出した。これは爆発的な霊力が生み出した、博麗霊夢の新たな段階である。その名は…………

 

「これが『夢想転生』。私の新しいスペルカードで、私の能力の一部分!」

 

「すげぇ……すげぇぜ、霊夢!」

 

「なるほど……面白い」

 

 バチバチとスパークする霊夢に、ザ・ワールドはゆっくり近付いていく。組んでいた腕を解き、拳を握って標的を補足。まずは試し打ちだ。

 霊夢は全く動こうとしない。自分よりも大柄な目の前の相手を、ただ黙って見上げているのみである。魔理沙はそれを少々不安げに見守り、ザ・ワールドはニヤリと笑みをこぼして見下ろす。

 そして拳が放たれた!

 

 

ドオオォウッ!

 

 

「むッ!」

 

「え!? あ、あいつの拳が……!?」

 

 すり抜けた。すり抜けている。ザ・ワールドのメロンのような巨拳は霊夢の胴体を確かに貫き、しかし一切血液が流れ出ない。透過していた。

 これが霊夢の『空を飛ぶ程度の能力』の一端である。それは文字通り空を飛ぶことができ、またあらゆるものから束縛されず、()()状態となる。

 ザ・ワールドの攻撃が効かないのはこのためだ。霊夢は彼の攻撃から()()、完全に無効化したのだ。これが『夢想転生』の防御の能力。そして、攻撃の能力がこれだ。

 

 

ドガァア〜〜ン!

 

 

「ぐおおッ!?」

 

「スペルカード、ご存じでないかしら? 本来、戦いの決着を急ぐための物なのよ。防御とともに攻撃も含まれているのは当然なの」

 

「あんな強そうなスタンド相手に一方的だ……今の霊夢は、さしずめ見える透明人間ってことなのか」

 

 霊夢の周りを飛び交う陰陽玉から青い弾幕が放たれ、ザ・ワールドの脇腹へ直撃する。発生した爆煙が晴れると、そこにはスプーンで(えぐ)ったような風穴が。どうやら弾幕の威力も少々向上しているようだ。

 攻撃を受けて怯むザ・ワールドだが、陰陽玉からは容赦なく次の弾幕が撃ち出される。霊夢から飛び退いて距離を取るも、弾幕群は彼を追尾して逃がさない。回避するのは困難だ。それに気付いたザ・ワールドは腕を交差させ、弾幕の直撃に備える。

 青と赤の多量の弾幕は、防御に徹するザ・ワールドへ一斉に襲いかかった。

 

「ぐッ…………これ……は! 確かに強いッ……! 流石は博麗の巫女、博麗霊夢…………『楽園の守護者』と呼ばれるのも頷けるッ…………!!」

 

「まだ余裕そうね」

 

「ぬおお!」

 

 弾幕群の密度はさらに大きくなり、ザ・ワールドのうめき声すらも掻き消していく。霊夢はこのまま決着へ持っていく気なのか。

 と思いきや、突然ピタリと弾幕が止んでしまった。

 霊夢は相変わらず、いや、今度は立場が入れ替わってザ・ワールドを見下ろしている。見下ろされているザ・ワールドはと言うと、息も絶え絶えとなり弾幕をガードした両腕が力無くぶら下がっていた。

 

「霊夢!? 何やってんだ!?」

 

「…………何の真似だ……?」

 

「選択肢」

 

「なに?」

 

「降伏したらどうかしら。そうしたら、惨めに死ぬことはないわ。後悔も悪意も痛みも全て一瞬で消し去ってあげる。これは慈悲よ」

 

『!!』

 

 どういう風の吹き回しか。霊夢はザ・ワールドに選択の余地を与えた。これにはザ・ワールドも魔理沙も驚きの表情を隠せないでいる。

 霊夢は至って真面目な顔のままだ。魔理沙は彼女の様子に、あることを感じてしまう。決着を急いでいるのではないか? 弾幕を撃ち続けないで止めたのは、ザ・ワールドがまだ何かを隠していることに気がついたからではないか? そう思うのは、魔理沙自身もザ・ワールドに違和感を覚えているからである。

 スタンドとは何かしらの能力をもつものだ。だが、目の前のザ・ワールドは未だ何も見せていない。腕がボロボロになり、息が上がっていても、魔理沙と霊夢はザ・ワールドがまだ余裕であることを感じ取っていた。

 何かされぬうちに、実力の差を見せつけて降伏させる。これが悪手となるか、あるいは良き一手となるか、それはザ・ワールド本人以外の誰にも分からなかった。

 

「さあ……どうする……?」

 

「ッ…………」

 

 霊夢はもう一度ザ・ワールドに尋ねる。

 上手いこといくだろうか? 魔理沙は固唾を飲み込む。

 ザ・ワールドは先程と変わらずボロボロになった腕を垂らし、ほんの少しだけ(うつむ)いているため表情が分かりづらい。緊迫の数秒間の時を置いて、ザ・ワールドは遂に顔を上げた。

 

「……いくら強くとも、所詮は人間よ。今のお前は確かにこの私よりも強い。それは認めよう。だが、慈悲を与えるだの降伏しろだのという甘っちょろい考えがある以上は、この世界(ザ・ワールド)を超越することはできん!」

 

『!』

 

「知るがいい。世界(ザ・ワールド)の真の能力とは、まさに! 世界を支配する能力だということをッ!」

 

「霊夢ッ、早くトドメを刺せェーーーーッ!!」

 

 

世界(ザ・ワールド)!」

 

 

 ザ・ワールドは体の前で両拳を握ると、腕、体全体を大きく広げてスタンドパワーを爆発させる。

 霊夢は魔理沙が叫ぶと同時に陰陽玉で弾幕群を放出するも、ザ・ワールドにそれらが当たることはなかった。彼の姿は一瞬にして消えてしまったからだ。

 瞬きはしていない。しかと見ていた。だというのに、2人ともザ・ワールドが如何にしてその場から移動したのか、全く理解することができなかった。

 

「ハッ、魔理沙! 大丈夫!?」

 

「あ、ああ! 霊夢、あいつはどこに行ったんだ!?」

 

「分からないわ……とにかく、周りに気をつけるのよ」

 

 魔理沙と霊夢は周りに目を配り、ザ・ワールドの接近に注意する。やつはいきなり姿を消し、しかし背後に回って不意打ちを仕掛けるなどということはしてこない。完全に、この辺りから居なくなってしまった。

 こういう時にハイエロファントたちがいれば、と思う魔理沙であるが、もしものことを考えるほど今この場で無駄なことはない。とにかく自分たちでザ・ワールドを探し出さねば。

 

「……ん? 何だ……風が止んできた…………まさか霊夢、お前……『夢想転生』が……!?」

 

「……時間切れよ」

 

「!!」

 

 霊夢の霊力が底をついたのか、先程まで巻き起こっていた風は徐々に弱まっていく。もはや自然のそよ風と大差ない。スパークも起こらない。

 ここで、魔理沙はあることに気付いてしまう。それは最悪のシナリオと言ってもいいだろう。もしや、ザ・ワールドはこれを待っていたのではないか?

 「そんなまさか」とは思う。何と言っても、霊夢はザ・ワールドはおろか魔理沙自身にさえ『夢想転生』に制限時間があるなどということを知らせていないのだ。どうやってそれを知るというのか。だが、もしこの仮説が本当ならば? 霊夢が危ない。

 ザ・ワールドの能力が『瞬間移動』などであるのなら、今この瞬間にも……

 

「霊夢ッ! ここから離れるんだァ!!」

 

「えっ……」

 

 

ドン!!

 

 

 魔理沙が叫んだ瞬間、やつは現れた。霊夢の背後にだ。ザ・ワールドは右脚のパワーを思い切り()()、霊夢に渾身の蹴りを喰らわせんとしていた。

 

 

「無駄ァ!!」

 

 

ドゴォオオ〜〜ーーン!

 

 

 ザ・ワールドの蹴りが直撃し、霊夢の体は目にも止まらぬスピードで下へ吹き飛ばされてしまう。そして大地に激突し、多量の土埃を巻き上げて沈黙した。

 あまりに唐突な出来事に、魔理沙は全く反応することができなかった。もうもうと立ち昇る土埃を見て、ただそれだけ。動かない。動けない。

 

「蹴りが当たる瞬間、腕を出してガードしたな。間一髪で頭部への直撃を防いだか」

 

「お前……卑怯だぞッ! 時間切れを待って攻撃するなんてよ!」

 

「ならば私も問うが、さっさとトドメを刺さなかったのはなぜだ? そうしていれば霊夢も無事であっただろう。それに、お前は私の立場であったならバカ正直にわざわざ敗けに向かったのか? 正々堂々のためなら死ねるのか?」

 

「ッ……!!」

 

 そうではない。心では確かにそう思っている。しかし、ザ・ワールドの言うように自分がやつの立場であったなら、正々堂々のために死ねたか分からないというのが正直なところだ。自分だって時間切れを待つかもしれない。自分だって死ぬのは嫌だ。違うはずであるのに、否定しきることがことができなかった。

 ほんの僅かな慈悲であっても、掛けた者に何も思うことなく手にかける。幾度も実感した悪の側面は、もはやザ・ワールドの全身と言っても過言ではない。こんなやつに加減など必要ないのだ。

 だが、加減しなかった所で勝てるのか?

 

「霊夢はまだ生きているな…………動けないのか、あるいは息を潜めているだけなのかは分からんが、()()()()()()()を刺してくれよう。だがその前に……」

 

「ハッ!」

 

「先に消し去っておこう。お前の命をッ!」

 

 ザ・ワールドは魔理沙の方へ向き直ると、彼女へ一気に急接近する。その高速移動もあってか、魔理沙はザ・ワールドを認識し反応することはできてもそこから動くことは敵わなかった。

 剛拳が迫ってくる。あんな大きく硬い拳で、目で追うのがやっとなスピードで殴られてしまえば、おそらく頭蓋骨は粉砕してしまうのではないか?

 血の気が引く。人は死ぬ寸前に視界がスローモーションとなると言うが、魔理沙は今ならそれが理解できる。パンチはゆっくりやって来るようだ。冷や汗さえも引っ込ませるこの恐怖は永遠に続きそうだ。底無しの苦痛が今にも、今にもやって来る。

 

 

ドッバァアアーーーーッ!

 

 

「ぬっ! これはッ!?」

 

「!」

 

法皇(ハイエロファント)の……エメラルドスプラッシュか!」

 

 

ドバァアアッ ドバァアアッ

 

 

 突然、魔理沙の背後から無数の緑色の結晶弾が飛んできた。2人の元に大量になだれ込んでくるも、それは魔理沙に当たることはなく、全てザ・ワールドへと向かっていく。

 ザ・ワールドは魔理沙へ振るった拳を止め、軽いラッシュで迫るエメラルドスプラッシュを叩き落とすが、数があまりにも多い。ダメージを受けることはないものの、防御を行ううちに魔理沙の近くから押し出され、距離を離されてしまった。

 魔理沙もそれを見てザ・ワールドからさらに距離を取る。すると、ああ、そうだ。やはり彼らが来てくれた。エメラルドスプラッシュで魔理沙を助けたハイエロファント、チャリオッツ、マジシャンズレッド。ハイエロファントは魔理沙に近付いて彼女を安心させ、残る2人は魔理沙とハイエロファントを守るようにしてザ・ワールドの前に立ちはだかる。

 

「お、お前ら……来てくれたんだな!」

 

「大丈夫か? 魔理沙。霊夢はいないのか? 彼女が動かないはずがないだろう」

 

「霊夢は……やられちまった…………隙を突かれて」

 

「そうか……」

 

 ハイエロファントは魔理沙の肩に手を置いたまま、ザ・ワールドを見やる。チャリオッツもマジシャンズレッドも、同じように宿敵を睨みつける。

 それは憎悪のようであって、憎悪ではない。終わらぬ因縁、終わらせるべき宿命と相対した者の覚悟の目だ。打ち倒すべき邪悪を前にした、燃え上がる黄金の精神だ。

 それに対してザ・ワールドは笑みをこぼす。それは歓喜だ。終わらぬ因縁に決着をつけられる歓び、怨敵と再び(まみ)えたことによる喜び。底なき邪悪は歓迎する。

 

「久しいではないか……我が宿敵たち。ジョセフや承太郎はいないが……ジョースター一行、幻想郷までついて来るとは恐れ入ったぞ」

 

「言ってやがれ、世界(ザ・ワールド)! お前だけは倒す。昨日の異変も、お前らが主犯だってこたぁ分かりきってんだよ!」

 

「紅魔館は今や私の住居だ。そこに住む住人たちも、私の友だ。それを傷つけた罪、たっぷりとツケを払わせてやる。私の炎で」

 

「フフフ……フハハハハハハハ! そうでなくては。そうであろう、宿敵たち。お前たちは私の宿敵の一人だと、既に認めている。だからこそ、私は断ち切るのだ。我らが悲願を邪魔する者を、因縁を、全て」

 

 エジプトで終わったはずの戦い。しかし、まだ誰の意志も滅んでいない。花京院の意志も、ポルナレフの意志も、アヴドゥルの意志も、そしてDIOの意志も。

 砂嵐が風に舞い、世界と星の戦いはここに再び起こる。

 

 

 




書きたいことがハッキリしてると、割とこれぐらいの量でも簡単に書けますからね。あらかじめ決めておくって、重要だと思います。

今回は結構オリジナルの設定があります。整合性(あるか分かりませんが)を重視し、夢想転生をここで初登場、未だ発展途上という設定です。

to be continued⇒

あくまで参考までに、ということで。

  • 東方をよく知っている
  • ジョジョをよく知っている
  • 東方もジョジョもよく知っている
  • どちらもよく知らない
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