幽波紋の奇妙な幻想 《Drifted Destiny》 作:右利き
「何者だ……貴様」
「通りすがりの、ただの平穏に暮らしたいスタンドさ」
キラークイーンはホワイトスネイクをまっすぐ見据え、そう答える。
刹那、ホワイトスネイクは地面を蹴飛ばし、常人では捉えきれないスピードで拳を繰り出した。拳は見事キラークイーンの頬にヒットし、周囲に破裂音が響き渡る。しかし……
「ペッ! それだけか?」
「なにィ!?」
「フン!」
ドゴォオオッ!
「!!」
キラークイーンの前蹴りがホワイトスネイクの腹部に炸裂。足が地面をガリガリと削りながら、ホワイトスネイクの体は後方へ吹っ飛ばされた。
そんなバカな。自分の拳は確かに当たった。目の前のスタンドの顔面に、確かに。遠距離スタンドである
だが、目の前のスタンドは防御を取ることなく、パンチに耐えてみせた。首がもげてもおかしくない威力を耐えたのだ。まさか、そんなことが。
「フ〜〜……そうだ。私がここへ来た理由についてだが……薄々感じていたとは思うが通りすがりというのは嘘だ。ちゃんと目的があって来たし、理由があって君を狙う。私が望むものは、あくまでも平穏な生活なのだよ」
「何だと?」
「正月から
「……自分が穏やかに暮らしているところを邪魔される前に、我々を始末しようと? それが貴様がここへ来た理由なのか?」
「ああ、そうとも。爆殺しに来た」
キラークイーンはスタンドパワーを右手に込め、分かりやすく指を鳴らしてみせる。慣れていない、彼なりの挑発である。
言葉通り、キラークイーンはホワイトスネイクや
そんな中、先日彼はとあるスタンドと戦闘を行った。その相手というのがエジプト9栄神の一角、天空の神の暗示をもつホルス神である。
キラークイーンはホルス神との戦いの中で、己の精神によって身体能力が変化するというスタンドの性質を完全に自分のものとしたのだ。
今回、キラークイーンが直々にホワイトスネイクを始末しに来たのは、この事情も絡んでいるのである。今の彼には、S・フィンガーズやF・Fはおろか、一対一ならば誰にも負ける気がしなかった。
「我らの目的は『天国』へ向かうことだ……貴様の平穏など、脅かすつもりは毛頭ない。貴様には微塵の興味も無い。ここで退くなら、私はその命に手をかけることはしないぞ。だが、それでも向かって来るというのなら……始末する」
「ほう……」
「さあ…………どうする?」
「…………」
ホワイトスネイクとしては、手に入れたいものがすぐそこにある以上、余計なトラブルは極力避けて通りたい。S・フィンガーズとF・Fは違ったが、キラークイーンは2人に比べれば話が通じそうでもある。
平穏を脅かされたくない。ということは、キラークイーンも戦いは避けたいはずだ。ここでは、互いの利益となる選択をすることが何より重要となる。
キラークイーンはどちらを選ぶ?
しばらく間を置いて、彼は歩き出す。ホワイトスネイクの方へ。殺気を纏い、握り締めながら。
「私は私自身しか信用しない。お前が死に、消えて無くなれば、話は別だがね。平穏はしっかり約束される。さあ、やろうか? 私は誰にも負けはしないよ……」
「ぐッ……!!」
「フッ……」
ホワイトスネイクとキラークイーンの距離は一mを切った。完全に、拳の届く位置に立っている。
提案は破棄された。戦いはもはや避けられない。ホワイトスネイクが勝利したとはいえ、先程のS・フィンガーズたちとの戦いでの消耗は未だ回復していない。その状態で、さらに強いキラークイーンの相手をするのだ。下手をすれば、キラークイーンの言葉通り消えるのはホワイトスネイクの方である。
だが、だからと言って始めから諦めることなどしない。
ホワイトスネイクは残ったエネルギーを存分に体中に流し、パワーを溜める。キラークイーンよりも速く、重く、拳を放つために。
「ウリヤアアアアア!」
「ウショオオアアアアアッ!!」
ドッヒャァァ〜〜〜〜ッ!
2人のラッシュは同時に放たれた。
強硬な拳が高速でぶつかり合い、火花をあちこちに散らしながら衝撃波を次々に生み出す。かなり激しいラッシュの速さ比べだが、キラークイーンの顔はまだまだ涼しげ。対するホワイトスネイクと言えば、歯を食いしばり、力という力を振り絞っているのが分かる。
ここで一石を投じなくては、キラークイーンの優勢は覆せない。そのことが頭の中にチラリと現れた瞬間、ホワイトスネイクはすぐに行動を取る。
「ハァアッ!」
「うぐッ!」
ホワイトスネイクの前蹴りがキラークイーンの腹部に炸裂する。その威力はキラークイーンの体が一瞬宙へ持ち上がるほど強烈なものである。
だが、キラークイーンも負けてはいない。
「フン!」
「ぐがァッ!」
キラークイーンは素早いアッパーを放ち、ホワイトスネイクを頭から大きくのけぞらせた。
この一撃も重く、ホワイトスネイクの体は高く打ち上げられる。隙だらけとなった。
この瞬間をキラークイーンが逃すことはない。さらに速いジャブを3発、ホワイトスネイクの腹部に食らわせ、今度は海老反りにさせる。
「がァァアッ!」
「うっ……!」
海老反りの体勢を上手く活かし、ホワイトスネイクは反撃の蹴りをキラークイーンの脇腹へ叩き込んだ。
ダメージにはなったのだろう。キラークイーンは一瞬怯む。しかし、それが地雷であった。
直後、キラークイーンのラッシュには蹴りも加わり、手数が倍に。高速で動くキラークイーンの体、腕、脚は残像を生む。ホワイトスネイクが防御しようとも、また徐々に押され始めるのだった。
ドドドドドドドドドドド
「うぅぅおおおおおおおお!!」
(つ、強いッ……! 速すぎる! こいつ……完全にコントロールしているのかッ。我々スタンドは感情が激しく昂れば、強い意志をもてば性能が上がるということを! こいつは自分の意志をコントロールできているのかッ! 『殺意』を!)
「………………」
キラークイーンはただただ無言で攻撃を加え続ける。相手の反撃も、同じようにラッシュで相殺することすらさせない。ホワイトスネイクはラッシュを止め、ひたすらに防御に徹するしかなかった。
そして、ホワイトスネイクの推測は当たっている。ホルス神との戦いを経て、キラークイーンは現在幻想郷のスタンドの中で最も
元々本体からの影響を受けて正面戦闘を苦手としていたキラークイーンであるが、『殺意』という意志をより強くもつことで性能を底上げ、ホワイトスネイクを凌駕するパワーとスピードを手に入れた。
(簡単なことと思うだろうが……今からお前がやろうとしても無駄だ。それが誰もいない場所でやるならともかく、今は私と戦い、そして押されている。焦っているだろう。そんな状態で、感情、意志をコントロールできるのか?)
キラークイーンの言う通りである。現在のホワイトスネイクでは、同じ方法でキラークイーンと同じ境地に至るのは難しい。
彼の本体も、キラークイーンの本体である吉良吉影と同じように、数々の人間を殺害してきた。殺すこと、殺意をもつこと、難しくはないだろう。
だが、とにかく今は無理だ。『もつ』だけならできるだろうが、キラークイーンのようにはいくまい。半端に終わることは目に見えている。
だからこそ、別の方法でキラークイーンを超えるしかない。
ホワイトスネイクの右手は、キラークイーンから見えないように自身の背中へ回されていた。
「お……『お前に命令する』!」
「!」
ホワイトスネイクは自身の左腕を限界ギリギリまで盾に使い、右手を振りかぶる。指に挟まれていたのは、銀色に輝く
彼はこのディスクに命令を書き込み、キラークイーンに挿入する作戦に出る。しかし……
「ウリヤアアア!」
ズバアァァァ〜〜ッ!
「うがアアァァァッ!!」
キラークイーンは手刀でホワイトスネイクの右腕を斬り上げ、ディスクが放られるよりも速く、分断した。今回の戦いで一番の負傷を受け、ホワイトスネイクは思わず絶叫を上げる。
勢いよく切断された右腕はきりもみ回転しながら吹っ飛び、隻腕となったホワイトスネイク。ただでさえキラークイーンに押されていたというのに、これでさらに弱体化してしまった。
精一杯の抵抗として蹴りを放つも、キラークイーンに拳で受け止められる。その上攻撃も同時に行われ、キラークイーンの拳が触れた
「うう……ぐッ……!」
「これで分かっただろう。お前では私に勝てないんだよ。どれだけ足掻こうと、今の私に殴り合いでは勝てないんだ」
「私を……殺すつもりか……!? やめろ。そんなことはやめろ! 『天国』へ向かうことは幸福なのだ! 全ての人間が、全ての生物が、己の身に起こる出来事をあらかじめ知り、『覚悟』できることこそ真の幸福だ。それを邪魔するというのか!?」
「……何が幸福で、何がそうでないか。そんなことは私が決めることだ。少なくとも
「ううッ!?」
キラークイーンは右手にスタンドパワーを溜め始める。
ホワイトスネイクは切断された腕を庇いつつも、キラークイーンに圧倒されて思わず後ずさる。彼にはキラークイーンの抱く殺意が、ドス黒いオーラとなって顕現したように見えていた。ホワイトスネイクを怯ませるほどの凄みを放っていた。
キラークイーン第1の爆弾は、触れた物何でも爆弾に変える能力。何でも爆破する。どんなものであろうとも。スタンドであろうとも……
「願いましては、終わりの時だ。まあまあ楽しかったよ。ちっとも、名残惜しくはないがね」
「ぐ……くッ……!」
「消し飛べッ! キラークイーン第1の……」
バシィィイイッ!
「ぐっ!?」
キラークイーンがホワイトスネイクに触れる寸前、横から何かが飛んで来た。飛んで来たものはキラークイーンのこめかみに当たり、地面に落下する。
ドサッとそれなりの質量のある音と、カランと乾いた音が2人の耳に入った。
「…………」
「……腕、だと?
キラークイーンの頭にぶつかったのは、切断されたホワイトスネイクの右腕だった。近くに落ちた、乾いた音を立てた主は一枚の謎のディスク。それらの表面にはキラークイーンの顔、が映っていた。
奇妙な出来事が起こり、キラークイーンの動きは一度完全に止まってしまう。そしてホワイトスネイクの腕が飛んで来た方へゆっくり目を向けると、あるものが目に入った。
「ス、スティッキィ・フィンガーズ……!?」
ホワイトスネイクに敗れ、倒れているS・フィンガーズである。彼の頭には一枚のディスクが半分だけ顔を見せ、グルグルと回りながら徐々に頭の奥へと侵入しつつあった。
おかしなことはそれだけではない。キラークイーンはS・フィンガーズがそこで倒れていることは知っていたが、先程と明らかに違う部分がある。姿勢だ。
まるで何かを投げたように、不自然に片腕が伸びている体勢で倒れているのである。
「……危なかった……間に合ったな」
「何を……した!? この私に一体何をしたァーーッ!」
キラークイーンは一度は止めた右腕をもう一度振り上げ、ホワイトスネイクを爆弾に変えんと思いきり振り下ろした。そんなホワイトスネイクは、先程と打って変わって非常に余裕な態度で攻撃を待ち受ける。
そして、触れた。
「ッ……!?」
(バ、バカな……! 爆弾に……変えられない!?)
「どうした? 私を爆殺するんだろう? 早くしたらどうだ……できたらの話だが」
「……!!」
スタンドパワーは確かに手に込めていた。そしてそのまま、ホワイトスネイクの体に直接触れてやった。絶対に爆弾に変わるはずなのだ。今すぐにも。しかし、現実はそうはいかなかった。
キラークイーンは確信する。これがホワイトスネイクの能力なのだと。地面に落ちた、この一枚のディスク。これが自身に起こった異変の根源なのだろう。
キラークイーンはすぐさまディスクに手を伸ばすが、掴むことはなかった。ホワイトスネイクに阻まれ、伸ばした手を踏みつけられる。
「むざむざ取らせるわけがないだろう。それを拾われたら、私はお前に消されてしまう」
ドゴォオオッ!
「ぐハァッ!」
「さっきの勢いはどうした? 足腰が弱くなったんじゃあないか?
ホワイトスネイクはキラークイーンの手から足をどけると同時に彼の顎を蹴り上げ、2m程吹っ飛ばした。今の一撃は、全くホワイトスネイクの全力というわけではない。だというのに、彼が言うようにキラークイーンの体は今回はいとも簡単に浮かせることができてしまった。
焦っている。ホワイトスネイクの言葉は図星だ。
吹っ飛ばされたキラークイーンは上体を起こし、ぐらつく頭を押さえて痛みを堪える。ホワイトスネイクは腕を拾い、断面同士をピタリと合わせると、S・フィンガーズにもう一度近付くのだった。
「私がお前のラッシュを受けていた時、ディスクを掲げたのは覚えているな? あれは別に、お前に使おうとしていたわけではなかった。最初からS・フィンガーズに投げようとしていたからな」
それをキラークイーンが手刀で斬り飛ばし、わざわざS・フィンガーズの方へディスクを投げるという手間が省ける結果となったのだ。
ホワイトスネイクがS・フィンガーズに命じたのは『自分の腕をキラークイーンへ投げること』。始めから、ホワイトスネイクは腕を切られる覚悟でキラークイーンに臨んでいた。キラークイーンが切らないのなら、自分で切り落とす。最終手段はそれだった。キラークイーンの意識を自分に向けさせ、死角から
「私の能力も触れて発動するタイプのもの。ラッシュを打ち合っていた時点で、お前のディスクはユルユルだった。取りやすかったぞ。とても……」
全て、何もかも、ホワイトスネイクの思惑通りであったのだ。気付かないうちに、キラークイーンはまんまと
ホワイトスネイクはS・フィンガーズの頭に指を沈めると、命令に使ったディスクとはまた別のディスクを引き抜く。それはS・フィンガーズの『記憶』のディスクであった。
ホワイトスネイクはそれを自身の頭に挿し込むと、数秒後にディスクを引き抜き、その場に放り捨てる。そして未だ動くのが難しいキラークイーンへと歩み寄った。
ズ……ズブブ……
「ぐわあああっ!」
「まだ能力をもっているのか。自動で敵を追尾する、小型の爆弾戦車。危険なものは全て取り除かなくては。それも貰うぞ!」
ホワイトスネイクはキラークイーンの頭に指を突っ込み、中からさらにもう一枚のディスクを取り出す。表面には第2の爆弾『シアーハートアタック』が映っている。キラークイーンは能力を2つも奪われてしまったのだ。
前方に落ちている第1の爆弾のディスクを拾い上げ、ホワイトスネイクはその2枚を明後日の方角へ投げ飛ばしてしまう。
能力を封じられてしまったキラークイーンは、もう既にホワイトスネイクへ反撃する気力すら湧き上がらせることができない。それまでできていた『殺意』のコントロールすらも今では状況への絶望や焦りで全く利かない。
「ハァ……ハァ……」
「散々やってくれたなキラークイーン。パワーアップをしなければ、所詮お前はその程度。本体は余程ハングリーさに欠ける者だったようだ。そんなスタンドが、背伸びしてこの私に追いつけるとでも思ったか!?」
「あぐううっ!?」
その場で座り込んでいるキラークイーンの左手を、ホワイトスネイクは渾身の力で踏みつける。手の甲はメキメキと音を立て、軋み、先程まであった頑強さが完全に消え去ってしまったことを2人に知らしめた。
「誰も……誰もだ! この地にはジョースターの血統などいない。我々を邪魔できる者はいない! 私でさえも、
「ぐぅぅ……ッ……」
「これは『運命』なのだ。お前は『引力』を信じるか? お前は、そのためにここにいる!」
ゴシャアアァァン!
「…………!!」
ホワイトスネイクの前蹴りがキラークイーンの顔面に炸裂する。あちこちに嫌な音が響く。とても、嫌な音が。バキバキと、割れて砕ける音が木霊した。
足がどかされると、堰を切ったようにキラークイーンの顔の半分が剥がれ、崩れ落ちる。落ちた顔の残骸は陶器のように、地面や胸に当たってさらに小さく割れる。糸が切れた人形のように、その場で仰向けに倒れてしまう。
顔が割れるほどの大ダメージ、そして能力を奪われたことにより、キラークイーンの生命力は著しく低下していた。まだ意識はあるものの、どうして未だ消滅が始まらないのか不思議になるレベルだ。
「ディスクを抜かれ、その負傷。もうお前は助からない。最期の時をこの地と本体との思い出に浸りながら過ごすがいい。今度こそ、全て消え去るのだから」
そんな捨て台詞を吐くと、ホワイトスネイクはキラークイーンに踵を返し、本来の目的である慧音の元へ向かい始める。
こうして一人取り残されたキラークイーンは、特に起き上がろうとするでもなく、ただ残った片目で空を仰いでいた。顔にできた空洞からは血が流れることもなく、暗い空間が広がるばかりである。
「…………」
聴こえるのはホワイトスネイクが土を踏み締める音のみ。それ以外は何も聴こえない。戦いに敗北してしまい、そんな自分から勝利を奪った者がホワイトスネイクであると、まるで鬱陶しく主張されているよう。
(死ぬのか…………これで)
あまりに唐突な宣告。
実感が湧いていないわけではない。実際痛みは確かに感じているし、体は経験したことないほど動かしづらい。慣れなのだろうか、これは彼にとっては二度目の死であるから。
まさか、自分が死ぬとは微塵も思っていなかった。パワーとスピードではホワイトスネイクを圧倒し、勝利は目前にまで来ていたのだ。それでも敗北した。
何がいけなかっただろうか。そもそも戦いに来たこと自体がそうなのか? 力を手に入れ、邪魔になる者を皆消そうとした。今になって思う。
では、どうして自分はここへ来てしまったのだ? 自分と
ああ、きっと何も違わない。覚えているぞ。川尻しのぶ。それと同じだ。情が移った。あまりにも、長く過ごしすぎた。やつらと。S・フィンガーズ、F・F、慧音たちと。
そんなつもりは無かったのに、お前たちはいつも私に絡んできた。事あるごとに。お前たちがそう感じていなくとも、私からすれば長すぎたんだ。
(……また負けた。また負けたぞ。吉影。貴方のようにはいかない。本当に、悪いと思っている…………私は、貴方の意志だというのに)
キラークイーンの顔に入った亀裂が広がり、やがて胴体にもヒビが入り始める。終わりの時は刻一刻と近付いてきている。
諦めるか?
(貴方ならどうする? このまま死ぬか? 私は負けたぞ。やつには勝負で勝てなかった。その上で、貴方はこれからどうするんだ?)
私は戦いが苦手だ。勝負は勝たなくては気が済まないが、吉影、貴方は仗助や承太郎に勝とうとしたか? わざわざ正面から戦って、勝利を見せつけようとしたか?
否。貴方は最初からそんなつもりは無かったはずだ。私をそんなつもりで使ったことなどなかった。私を使う時はいつも、殺す時だろう。
やってみせよう。殺してみせよう。勝負には負けたが、殺すことならできる。爆殺しよう。吉影。我々にはまだ、『スイッチ』がある。
(…………利用させてもらうぞ。慧音……)
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「この時をずっと待っていた。これで、ようやく手に入るぞ。『天国』への
ホワイトスネイクは慧音の頭からはみ出ているディスクを拾い上げる。今度こそ、彼は手に入れた。幻想郷の歴史が詰まった、唯一と言っても過言ではない『記憶』のディスク。
この時をずっと待っていた。S・フィンガーズ、F・F、キラークイーン。あらゆる者に邪魔されたが、いよいよである。早る気持ちを抑えながら、ホワイトスネイクはディスクを自分の頭に挿し込んだ。
「……おお! これが……そうか! 想像していた通りだ。やはり幻想郷、この地でも『時の加速』が起こっていたんだな!」
ホワイトスネイクの頭に流れてくる光景、『時の加速』。それはホワイトスネイクが幻想郷に入ってくる前の姿で引き起こしたもの。
空に浮かぶ太陽が高速で動き、光の帯となって頭上を走っている。木でできた家々は腐り落ち、岩や地面は風化する。地獄絵図のようで、しかし荘厳。
だが見惚れている場合ではない。ホワイトスネイクには使命がある。この『時の加速』を止めた者を突き止めることだ。
「……見つけたぞ。これは賢者、八雲紫。その横にいるのは紫の式神か」
夜と昼が高速でやって来る空に、2つの人影が浮かんでいるのを見つける。記憶を見る前から予想していた、よく知っている者だ。八雲紫と八雲藍。どうやら彼女たちが『時の加速』を止めたようである。
紫が宙で何かを唱えると、幻想郷中を包み込む『博麗大結界』が淡い桃色に輝き始める。するとその直後、周囲の環境に表れていた急激な変化の数々はピタリと止まってしまう。そして結界の光が消え果てると、空には昼の青色に戻っていた。
「なるほど。八雲の妖怪たちか。他にも加担した者がいるかもしれないが、まずはこの2人を…………ム? こいつは……?」
ホワイトスネイクが『記憶』のディスクを引き抜こうとした直後、空に浮かぶ紫たちの前に扉のようなものが現れ、それを開いて一人の女性が出てきた。
黒い冠を被り、紫のものよりもさらに明るい金髪を靡かせている。八雲藍の彼女への接し方からして、この謎の女はどうやら大物であるらしい。おそらく紫と同程度の。
しかし、ホワイトスネイクは彼女について全く心当たりが無い。数々の情報を集めてきたが、こんな者は見たことがなかった。
「もう少し記憶を探ってみよう。この女の正体が分かるまで」
ホワイトスネイクは慧音の『記憶』をさらに進める。
すると、今度は人里の中の光景が見えてきた。辺りに人が大勢おり、慧音は彼らに取り囲まれている。そしてその近くには、なんと縄に縛られたキラークイーンの姿が。
そこに箒に乗った金髪の魔法使いと緑色のスタンドが降り立ち、彼らが近付くとキラークイーンは自分で縄を引きちぎる。彼が自由の身となると、緑色のスタンドと里民が何やら言い合いを始めるのだった。
「……進めすぎたか。もう少し前だと思うが……」
ホワイトスネイクは今度は記憶を遡り始める。すると、不思議なことが起こった。
魔理沙とハイエロファントは慧音の家の中に入り、慧音もまた入る。キラークイーンの像が、慧音の視点に連動して動くのだ。キラークイーンが動くわけではない。慧音の視点と連動するだけで、キラークイーンは常に慧音の視界の真ん中にいる。
そして周りの時間は巻き戻っていくというのに記憶の中のキラークイーンが、彼だけがその場から動かないのだ。
「な、何だ? 何か……おかしいぞ」
時は過去に戻っていくというのに、人々の動きは逆再生しているように見えるのに、季節が夏から春へ移るのに。慧音の記憶から、キラークイーンの姿が消えない。ずっとこちらを睨みつけ、動かない。
「な……んだ!? これは!? これは違う!
ホワイトスネイクは確かに感じ取った。ついさっき消し去ったはずの『殺意』を。
記憶と連動して動かないということは、今目の前に見えているキラークイーンは慧音の記憶のものではないということ。
頭に挿したディスクに手をかけ、引き抜き、そして地面へ投げつける。ディスクは決して破壊することはできないが、ホワイトスネイクはこれで逃れられたつもりだった。
問題はディスクにあるのではない。
キラークイーンは、既に瞳の中にいるのだから。
「キラークイーン『第3の爆弾』
負けて死ね!
勝負には負けた。倒れたのはキラークイーンの方だ。
だが、勝利することが生きるということなら?
負けることが死ぬことなら?
to be continued⇒
あくまで参考までに、ということで。
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東方をよく知っている
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ジョジョをよく知っている
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東方もジョジョもよく知っている
-
どちらもよく知らない