幽波紋の奇妙な幻想 《Drifted Destiny》   作:右利き

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お久しぶりです。
ドラゴンボール、良いですよね。戦いのシーンをよく描写のヒントにさせてもらってます。お世話になってます。


87.BITE THE DUST 〜忘却の彼方へ〜

「F・Fは死んだ。S・フィンガーズとやらも。この人里でやることは、上白沢慧音のディスクを奪うことだけとなった!」

 

 バラバラになったF・Fの残骸は地面に堕ち、ホワイトスネイクはそれを踏みにじる。S・フィンガーズはというと、数発のF・F弾を頭に受け、少し離れた所に倒れ伏していた。彼らはホワイトスネイクに敗北してしまった。

 ホワイトスネイクは決着を確信し、踵を返して慧音の元へ向かう。

 彼女はうつ伏せで倒れた状態で、頭からディスクが半分はみ出ている。『記憶』のディスク、これを回収すれば、ホワイトスネイクの目的は完全に達成されるのだ。

 

「………………」

 

 ホワイトスネイクは数歩だけ歩くと、足を止める。

 自分の足音に混ざって、他に砂を踏み締めるような音が聴こえたからだ。しかし、自分が歩くのをやめた瞬間、聴こえてきた音は消える。代わりに、背後に何者かの気配を感じるようになった。

 ホワイトスネイクはゆっくり振り返る。

 

「…………な、何だと……」

 

「……ハァーッ……ハァーッ…………」

 

「ス……スティッキィ・フィンガーズ……!」

 

 影を揺らめかせ、そこに立っていたのはS・フィンガーズだった。肩で大きく息をしながら、今にも倒れそうになっている。まさに、瀕死の状態だ。

 だとしても、()()()()立てているのか。ホワイトスネイクにはこれが全く理解できなかった。彼は、頭に弾丸を喰らったはずだ。

 

「バカな……頭に弾丸を撃ち込まれ、どうして立つことができる!? F・F弾は確実に……!」

 

 ホワイトスネイクはF・Fを殺した場所に目をやる。

 そこでは、消し去ったはずの黒い塊が蠢いていた。バラバラにして、踏みつけて、乾いた土の中に消えていったはずのプランクトンの塊が。

 F・Fは生きていた。

 

「フ、フー・ファイターズ! 生きていたのか!? い、一体いつからだ……一体いつ、誰から……()()()水を得たァァーーーーッ!?」

 

 F・Fの残骸はウジュウジュと湿った音を立て、廃墟の中にゆっくり侵入していく。通りの方向にいるホワイトスネイクから逃げるようにして。

 S・フィンガーズが生きていたのは、F・Fが生きていたからだ。彼女から放たれたF・F弾はプランクトンの群れでできている。弾丸がS・フィンガーズの頭に撃ち込まれた後、そのプランクトンたちを操作して傷口を塞いだ。

 治したわけではない。これから回復するわけでもない。あくまでも傷を塞ぎ、一時的に動けるだけだ。S・フィンガーズに、先程ホワイトスネイクと打ち合った体力は残っていない。そのはずである。

 

「このッ……死に損ない共が、黙って倒れていればいいものを! 余程殺されたいらしいな! いいだろう。今度こそバラバラに引き裂き、虚無の彼方に葬ってやるッ!」

 

「………………」

 

「動くなよ、スティッキィ・フィンガーズ。すぐ楽にしてやる。ほんの少し、苦しむだけだッ!」

 

 ホワイトスネイクは地面を蹴り、一瞬にしてS・フィンガーズとの距離を詰める。

 S・フィンガーズは反応できたのだろうか。射程距離内にホワイトスネイクが侵入しても、一切のアクションを起こさない。彼が掲げた拳が振り抜かれ、S・フィンガーズの頭部に迫ろうとしても、まだ…………

 

 

ドメシャアアアッ!

 

 

「バグゥゥッ!?」

 

「…………」

 

 ホワイトスネイクの顔面に、S・フィンガーズの青い拳が突き刺さった。

 先程まで、彼はどんな動きも見せていなかったはずだ。だが、S・フィンガーズはホワイトスネイクを確かに捉え、拳を当て、動きを止めている。それに、まだ体力の余るホワイトスネイクだったが、S・フィンガーズの()()動きを目で追うことはできなかった。これらは事実だ。

 S・フィンガーズはまだ、終わってはいない。そう。両腕を切断するとしても、策を立ててもがき続けたあの黄金の青年のように。

 

「ハァアーーッ!」

 

「カァアアアッ!」

(バ、バカなッ……!)

 

 S・フィンガーズは足を振り上げ、目の前で動きを止めるホワイトスネイクの腹部へ蹴りをお見舞いする。接地面積の小さいつま先をフルパワーで鳩尾(みずおち)へ叩き込んだのだ。

 ホワイトスネイクもこれには堪らず、今度は痛みと一時的な呼吸困難によってまたも動きを止めてしまう。開閉の自由も利かない口から唾を垂らし、前のめりになった。

 いいところへ()()()()

 S・フィンガーズはその場で回転すると、勢いを殺すことなくホワイトスネイクの側頭部に肘を打ち当て、家屋の方へ吹き飛ばしてしまう。

 

「うおおおあああああ!!」

 

 壁を突き破りながら吹っ飛んでいったホワイトスネイクを、S・フィンガーズは決して逃がさない。逃してはいけないのだ。ここで、必ず倒す。

 S・フィンガーズは腕を振り抜き、命綱のようにジッパーで繋いだ腕をホワイトスネイクの方へ飛ばす。砂埃の舞う中でホワイトスネイクを掴むと、再び自分の方へ、いや、大通りの方へと投げ飛ばした。

 

「うぐぅぅぅ!!」

(つ、強い…………さっきとは比べものにならないッ! 一体何だ!? 何が起こっているんだ!? こいつのパワーはどこから…………)

 

「うおおおおおッ!」

 

「ク、クソッ……!」

 

「ウリャァァアアッ!」

 

 

ドバッ ドバッ ドバァ〜〜ーーッ!

 

 

「うガァアアアアアア!!」

 

 迫るS・フィンガーズに反撃しようとするホワイトスネイクだが、彼が一発の拳を当てようとした時にはS・フィンガーズの拳3発を叩き込まれる。パワーも、スピードも、圧倒的な差をつけられていた。

 精神状態で性能が変わるというスタンドの性質。S・フィンガーズがここまで強化されたことは、過去を遡っても先例が無い。何が彼をここまで奮起させているのか。

 それにしてはうるさすぎるが、彼の雄叫びは、一体誰に手向ける鎮魂歌(レクイエム)なのか? 誰の死期を感じ取って、その拳を振るうのか?

 

「うおおおおおおおおおおッ!!」

 

「ッ……!!」

 

 

ズドドドドドドド!

 

 

「ぐバァアアアアアァァァアアーーーーッ!!」

 

 

 S・フィンガーズのラッシュがホワイトスネイクの全身に打ち込まれていく。全て等しい大きさのクレーターが体表を波打ち、ホワイトスネイクの絶叫を搾り出す。

 もはや、能力を使うほどのエネルギーはS・フィンガーズには残っていない。彼はただ、殴っているだけである。それでは簡単に死なない。だが、わざとではない。では、これはホワイトスネイクへの、神の罰なのか?

 キリストは人々の罪を自分の身で背負い、そして死んだ。だが、ホワイトスネイクは、エンリコ・プッチは違う。プッチは磔にする側でいようとした。いくら純白の体色で欺こうが、蛇は悪魔の使いなのだ。

 

「ッ!! ちょ……調子……に……乗ってンじゃあないぞォォーーーーッ!」

 

 

ドボォォアアッ!

 

 

「ガブフッ……!」

 

 しかし、ここでホワイトスネイクは左腕でS・フィンガーズの腹部を攻撃、貫いてしまう。ラッシュを耐えながらなんとか放った攻撃は、S・フィンガーズの命をすぐにでも消してしまえるような致命傷となった。

 

「ハァーッ……! ハァーッ……! どうだ……腹を貫いてやったぞ……これで今度こそ……!」

 

 ホワイトスネイクはS・フィンガーズの胴体から腕を引き抜こうとする。

 だが、上手くはいかなかった。腕を引っ張ると、S・フィンガーズの体まで自分の方へ寄ってしまう。まるで、腕と胴体を何かで固定されているよう。

 固定。ホワイトスネイクはすぐに理解した。答えは、すぐそこに。

 

「ジ……ジッパー…………! 傷口の断面と私の腕を固定したのかッ!」

(まずい……こ、これでは逃げることも、防御することもでき……)

 

 

「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ」

 

 

ドゴ ボゴ ドゴ バゴ ボゴ ドゴ ドゴ ボゴ バゴ ドゴ バゴ ドゴ ボゴ ドゴ ボゴ ボゴ

 

 

「あああああがああああ!! ぐあばああああ!!」

 

 ホワイトスネイクはS・フィンガーズのラッシュを、またも生身で食らってしまう。しかも、今度はさらに強力な攻撃である。最後の最後、力の全てを振り絞った全力のラッシュ。S・フィンガーズは傷から逆流してくる血を口から溢れさせながら打っていた。

 ただの人間であれば、ジッパーの能力に関係無くバラバラになっているだろう。ホワイトスネイクも既に脚や腕の一部がひしゃげ、クレーターの波打ちも破裂寸前の水風船の如き荒れよう。

 そして、ついに限界を迎えたのか、ホワイトスネイクの右腕がブツンとちぎれ、宙を舞う。ちぎれたにしては断面が平たいが、そんなことはどうでもいい。赤い血液が顔にかかろうとも、S・フィンガーズは意に介することはない。ラッシュのパワーを弱めはしない。

 もっと速く。もっと強く。こいつを早く倒さなくては、間に合わな…………

 

 

ドガン!

 

 

「ガッ…………」

 

「………………!?」

 

 終わりは、唐突にやって来た。

 糸が切れた人形のように、S・フィンガーズはいきなり手を止め、その場に崩れるようにして倒れ伏せる。彼の頭からは、銀色の一枚のディスクがはみ出ていた。

 ラッシュから解放されたホワイトスネイクも、同じようにして地面に倒れ込む。完全に砕けてしまった手足を震わせながら、ゆっくり、ゆっくりと地を這う。ある場所を目指して。

 

「…………の……所……へ…………あの……場所へ……あの場所に…………行きさえすれば……いいのだ……それが、私の…………ガフッ!」

 

 ホワイトスネイクももはや限界だった。息をする度に血液が口へ流れ込んでくる。それを何度も何度も吐き出しながら、生まれたばかりのイモムシのようにして慧音の元へ向かう。

 こんな所で死ぬわけにはいかない。S・フィンガーズの体はまだ消滅は始まっていないが、トドメを刺している暇は無い。F・Fも、きっと今頃水を手に入れに行っているのだろう。この負傷では、絶対に勝てない。早々に慧音のディスクを回収し、姿を隠さなくては。

 

「ぐっ……ク…………!」

 

 ホワイトスネイクは震える手を伸ばす。倒れている慧音へ。必ず手を届かせ、奪ってみせる。そして世界(ザ・ワールド)と共に向かうのだ。『天国』へ。

 

 

バリッ バリバリ

 

 

「!?」

 

 ホワイトスネイクの指先が、突如として裂け始める。最初はささくれのようだったが、中から空気が噴き出ているかのように裂け目は徐々に大きくなる。

 やがて裂け目から光が漏れ出てくると、ホワイトスネイクはいよいよ理解した。自分の内側から、自分のものとは別のスタンドパワーが溢れ出てくる。S・フィンガーズではない、()()()()()()()()ということを。

 

「こ、こんな……ところでッ…………そんな……バカなァアアアアアッ!」

 

 

バグオォ〜〜ーーーーン!

 

 

 ホワイトスネイクは粉々に弾け飛び、爆散した。

 その場に残されたのは黒い爆煙だけで、それも風に吹かれてすぐに消えて果てる。一瞬にして、ホワイトスネイクの何もかもに終わりを告げたのだった。

 そして、ホワイトスネイクがいた場所から煙が晴れると、一つの影が揺らめく。彼はおぼつかない足取りで慧音に近付くと、彼女の横に落ちているディスクを拾い、慧音の頭に挿入する。

 ディスクが完全に慧音に入ったのを確認すると、彼の者、キラークイーンは通りの反対側の家屋の方へ。壁に背中を合わせると、その場にゆっくり腰を下ろした。

 

「…………終わったな。何もかも……」

 

 キラークイーンは自身の左手に目をやる。

 左手の指の間には亀裂が入っている。少し動かすと、すぐに砕け、破片が地面に崩れ落ちてしまった。その衝撃で亀裂は腕を上り、首を上り、顔にも入り始める。

 キラークイーンも、もはや限界の時が来ていた。






to be continued⇒

あくまで参考までに、ということで。

  • 東方をよく知っている
  • ジョジョをよく知っている
  • 東方もジョジョもよく知っている
  • どちらもよく知らない
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