幽波紋の奇妙な幻想 《Drifted Destiny》   作:右利き

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本当に、お待たせしました。
最近とても忙しく、手付かずで…………

しかし、第四部もこれで最終話。重要な場面です。そして、ボリュームも保証しましょう。


89.滅びる者に鎮魂歌(レクイエム)

ドガァア〜〜ーーーーン!

 

 

 大質量の物体がぶつかり合い、周囲に衝撃波と音が響く。ぶつかった世界(ザ・ワールド)とK・クリムゾンの拳は拮抗し、彼らの肉体同士の距離、そのちょうど中点で止まった。

 

「おおおぉおッ!」

 

「ヌゥン!」

 

 ぶつかった拳を離し、世界(ザ・ワールド)とK・クリムゾンは次なる一手を繰り出す。

 K・クリムゾンの拳を世界(ザ・ワールド)は交差した腕で受け止め、K・クリムゾンは世界(ザ・ワールド)の蹴りを躱す。互いの距離がまた離れたところで、再び拳がぶつかる。

 このような攻防が高速で行われた。その戦いは常人には観測することすら難しく、割って入り妨害するのも不可能。いつの間にか死んでいるというオチとなるだろう。

 時を飛ばし、あるいは止めて回避する。

 能力を使用するにはスタンドパワーを消費する。2人の場合、その回復には時間を置くことと呼吸が必要である。十分に回復せずに能力を使えば、もちろんのことながら効果時間は短くなる。

 少ないスタンドパワーを小刻みに使いながら、彼らはギリギリの戦いを繰り広げるのだった。

 

(やはり、こいつも時を………………だが、真実の頂点に立つ者として選ばれたのはこの俺だ。ディアボロ(我が本体)の帝王としての誇りを守り勝利するのは、このキング・クリムゾンでなくてはならないのだ!)

 

 K・クリムゾンには野望がある。

 それは、未だディアボロを苦しめるレクイエムの呪縛を解く術と、憎きジョルノ・ジョバァーナを超える力をこの幻想郷で手に入れ、再び絶頂に返り咲くこと。金を手に入れ、権力を手に入れ、部下を手に入れ、支配する。失った……いや、奪われたものは必ず取り戻すと決めていた。

 K・クリムゾンはディアボロにまつわる、そんな野心の象徴。全て己が為というのが根底にあった。言い換えるなら、それは限りの無い自己愛となる。だからこそ、K・クリムゾンはディアボロを絶対として行動するのだ。

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄」

 

 一方で、()()()も負けられないのは同じ。

 世界(ザ・ワールド)とホワイトスネイクは、本体同士の関係から固い。『天国』へ行くという同じ志をもった者同士である。

 『天国』とは、己を取り巻く『運命』をも克服し、超越した世界。『運命』に覚悟し、立ち向かえる世界。精神の行き着く究極の地点なのだ。

 ホワイトスネイクが敗れ去ってしまった今、世界(ザ・ワールド)は彼の意志を継いで『天国』を目指す。目の前の敵を打ち倒して。過程や方法など、どうでもよいのだ。

 

 

ドガッ ドゴォ ガァ〜〜ン! 

 

 

 空中で何度もぶつかり合う中で、世界(ザ・ワールド)は妙な感覚を覚える。K・クリムゾンの能力のことであるが、それは『時を飛ばす能力』についてではない。

 時を飛ばされるという感覚は既に()()()。時を止める自らの能力と違い、時が飛んだその間に攻撃してくることがないということも。

 問題は、時を止める直前、その瞬間にどうして自分から()()()()()()()()のかという点だ。K・クリムゾンの元に到着する前に、停止時間を過ぎてしまうのだ。

 回復しきっていないスタンドパワーを無理矢理使っている状態のため、時を止めていられる時間はフルパワーの時よりも短い。だが、それでもおかしいのだ。どうしても距離を取られる。まるで、どのタイミングで時を止めるのか知っているように。

 

「…………貴様の能力……時を飛ばすだけではないな」

 

「フン! どうだろうな」

 

 K・クリムゾンは時を飛ばし、世界(ザ・ワールド)の背後に回り込む。そして手刀を掲げ、その脳天目掛けて振り下ろした。

 だが、この一撃が世界(ザ・ワールド)の命に届くことはなかった。当たる直前、世界(ザ・ワールド)は振り返り、腕で受け止めたのだ。

 

「何ッ!」

 

「無駄無駄無駄ァ!!」

 

 

ドン ドン ドン!

 

 

「ぐおオオオッ!」

 

 世界(ザ・ワールド)の速い拳がK・クリムゾンの胸に叩き込まれる。大事には至ってないものの、彼の体は勢いに押されて吹っ飛ばされた。

 だが、世界(ザ・ワールド)の攻撃はそれだけで終わらない。体勢を崩したことで生まれたK・クリムゾンの隙を見逃さず、追撃を加えようと接近する。

 

「ぐゥッ、キング・クリムゾンッ!」

 

 かと言って、K・クリムゾンも易々とダメージを受けてくれはしない。世界(ザ・ワールド)の拳が当たる瞬間に時を飛ばし、肉体を通過させて回避する。

 吹っ飛ばされた時間はスローで過ぎていき、世界(ザ・ワールド)はいつの間に標的を見失ったことに気付かない。そして、K・クリムゾンの目には世界(ザ・ワールド)がこれから行う未来の動きが見えるようになる。

 そのはずだった。

 

「……!?」

(何だ……!? こ、こいつの未来の軌跡が…………無いッ!? 数秒先まで、こいつは動かないのか!?)

 

 世界(ザ・ワールド)は拳を突き出した状態のまま、ピタリと止まって動かない。K・クリムゾンが見る、ほんの数秒先の未来の世界(ザ・ワールド)すら動かない。ここに来て、彼は動きを変えたのだ。

 K・クリムゾンは確信する。世界(ザ・ワールド)は何かを企んでいると。それがどのようなものか分からない以上、K・クリムゾンも彼を安易に攻撃することはできなかった。

 

「くっ……時は再び刻み始める」

 

 

____________________

 

 

「……どうした? 攻撃しないのか? さっきからずっと後ろを取っていたではないか……」

 

「………………」

 

「何か()()()か?」

 

「…………!」

(こいつ……やはり気付いている…………私が未来の動きの軌跡を見られるということを)

 

 K・クリムゾンと世界(ザ・ワールド)が戦い始めてから、未だ5分も経過していない。たしかに、K・クリムゾンはそれまでに何度も能力を使用してはいた。かつてサン・ジョルジョ・マジョーレの地下で相対したブチャラティのように、世界(ザ・ワールド)はK・クリムゾンの能力を戦いの中で理解していたのだ。

 だからこそ、()()()()を取ったのだ。

 K・クリムゾンが時を消し飛ばし、再び彼の攻撃の気配が感じられるまで動かない。これでよい。時の消し飛んだ世界では、K・クリムゾンの存在も同時に消し飛んでいる。

 あらゆる事象はK・クリムゾンを居ないものとして扱い、時は過ぎていくのだ。つまり、K・クリムゾンの存在が無くては成り立たない事柄は、時の消し飛んだ世界では絶対に起こらない。世界(ザ・ワールド)の動きの軌跡は、辿れない。

 (ザ・ワールド)はここまで読んでいた。

 

「あまりに不自然だった。あそこまでピンポイントで距離を離されては、誰でも「動きを読まれている」と理解できるだろう。現にこうして攻撃を受けていないということは、やはり私の立てた仮説は間違っていなかったようだな…………私の動きを『読む』能力と、『時を消し飛ばす』能力。今度は貴様の姿を視界に収めた上で、拳を確実に叩き込んでくれよう」

 

「自らの反応速度に物を言わせ、俺の能力を無理矢理突破する気かッ……!」

 

「さぁ、どうする? キング・クリムゾン」

 

 K.・クリムゾンの頬を一滴の汗が流れる。

 力業も力業。それこそレクイエムのような、さらに強力な能力で完全に『時を消し飛ばす』能力を無効化されるわけではなく、まさに正攻法で対策されてしまった。本体がおらず、スタンドだけが存在しているというこの状況だからこそ成り立つことである。

 

「…………それがどうした。いくら貴様が私を対策しようと、『運命』は勝者としてこの俺を選び続けるッ! 勝利に向かうのはこのキング・クリムゾンだァァーーッ!」

 

「フン。無駄無駄!」

 

 世界(ザ・ワールド)は不意打ちの前蹴りをK・クリムゾンに放つ。

 だがもちろん、そんな攻撃は当たらない。時を消して回避したK・クリムゾンは世界(ザ・ワールド)の後方右から姿を現し、拳を彼の頭部へ向けて振り下ろした。

 

 

バシィッ!

 

 

 世界(ザ・ワールド)は両腕で拳をガードし、K・クリムゾンに延髄斬りを放つ。攻撃を感知するや否や、再びK・クリムゾンは時を飛ばし…………

 埒の明かない攻防はまたもや展開される。K・クリムゾンは能力と攻撃によってスタンドパワー、体力を消耗。世界(ザ・ワールド)は集中し続けることによってスタンドパワーの回復速度が通常以下となっている。

 徐々に追い詰められつつあるK・クリムゾン。それに対し、世界(ザ・ワールド)は体力的にはまだ余裕がある。スタンドパワーの回復が遅れたって構わない。いずれ行う、強力な攻撃のために()()()()()のだ。

 

 

ガシィィィイッ!

 

 

「掴んだぞ」

 

「何ッ!?」

 

 何度目の攻撃だったか。世界(ザ・ワールド)はK・クリムゾンの拳を避けると、その腕をガッシリとホールドしてしまう。そして背負い投げをするような体勢へ持ち込むと、K・クリムゾンを遥か下にある地面へと投げ飛ばした。

 

「落ちてしまえよ! ウリィイアアッ!!」

 

「ぐうぅおおっ!!」

 

 

ドォォ〜〜〜〜ン!

 

 

 凄まじいスピードで地面に叩きつけられるK・クリムゾン。しかし、完全に墜落する間一髪のところでなんとか受け身を取り、大事は免れていた。

 と言っても、着地に使った両手足にかかった負担はかなり大きく、そこかしこヒビが走り、血が噴き出している。回復するのにどれだけ時間を要するだろうか。それまでに、世界(ザ・ワールド)が何もしない保証も無い。

 忌々しそうに、K・クリムゾンは上空を見上げる。

 世界(ザ・ワールド)の表情はもはや敵を見るものでなく、ゲームの攻略法を見つけたかのような、嫌な笑みとなっていた。

 

「傷が治るまでどれだけかかる? 治ったその瞬間! いよいよ最終ラウンドといくとしよう。スタンドパワーを全開にし……貴様のその顔を絶望に染めてやるぞ!」

 

「……ナメるなよ…………()()()()()()()()()()()()()()()()()! こんな傷などすぐに修復する。スタンドパワーも十分だ…………」

 

 そう言うと、K・クリムゾンは傷を瞬時に回復させる。

 静寂の時が流れる。西部劇のガンマンが早撃ち対決をするように。カエルとヘビが鉢合わせたあの一瞬のように。時を支配するスタンド2名が、一言も発することなく睨み合った。

 先に動けば勝つか? 後から動き、相手に上手く対応すれば勝つか?

 先手は世界(ザ・ワールド)が打った。

 

 

世界(ザ・ワールド)! 時よ止まれッ!」

 

 

_____________________

 

 

ズゥラァアッ!

 

 

「うッ!?」

 

 世界(ザ・ワールド)の周りに、突如大量のナイフ群が現れる。

 全ての刃先はK・クリムゾンの方を向いており、ゆっくり、ゆっくりと彼に近付き始めていた。これから何が起こるのか、簡単に想像がつく。ディアボロの半身、ドッピオがリゾットと交戦した際にも同じような攻撃を受けたからだ。

 最も、今回降ってくるのはメスではなくナイフ。おそらく紅魔館から既に持ち出していたのだろう。世界(ザ・ワールド)が承太郎に使って見せた『処刑』と同じである。

 

「貴様が時を飛ばせるのはせいぜい十数秒ほどだろう。このナイフの雨を避けるのに足りるか? 次に姿を見せた時が、貴様の最期だ!」

 

 

ギュゥォオオオオッ!

 

 

「チィッ!」

 

 ナイフ群はついに物理法則に従い出し、K・クリムゾンへと降り注いだ。それを見るや否や、K・クリムゾンはリゾットとの戦いでやったように、拳によるラッシュでナイフを打ち落とす。

 雨のように降り注ぐとは言ったが、その実ナイフは全てK・クリムゾンを標的としている。数量のこともあり、向かってくるナイフ全部を打ち落とすのにキリが無かった。

 そんな状況を打破するため、K・クリムゾンは降ってきたナイフを一本だけ掴むと、それを世界(ザ・ワールド)に向けて投げつける。

 

キング・クリムゾン!」

 

 世界(ザ・ワールド)はK・クリムゾンが投げたナイフにすぐに気付いたようだが、彼が何かするより先にK・クリムゾンが能力を発動する。

 時の消し飛んだ世界ではK・クリムゾンはいないようなもの。だが、彼の身から離れれば話は別だ。つまり、投げられたナイフは在るものとして因果ははたらく。

 少しゆっくりになったスピードでナイフは世界(ザ・ワールド)へ向かっていく。しかし、K・クリムゾン以外の者は消された時を認識することはできない。よって、世界(ザ・ワールド)はナイフに対して何の防御も取れないのだ。

 

 

ズブ……ズブ ズブ

 

 

 一切の障害に隔たれず、世界(ザ・ワールド)の顔にナイフが突き刺さり、後頭部を貫通する。それを確認すると、K・クリムゾンは能力を解除した。

 次の瞬間、世界(ザ・ワールド)の見える世界は、痛覚を伴う赤色と鈍く光る銀色に彩られる。

 

「ぐゥぬうぅぅ!?」

 

「終わりだなァ!」

 

 K・クリムゾンはナイフを投げ、時を飛ばしている間に彼自身も世界(ザ・ワールド)に近付いていた。ナイフの雨を通過し、世界(ザ・ワールド)の目も潰した。ただ今振り上げている拳を、完全なるトドメの一撃としてお見舞いできる。

 だが……

 

「えぇいッ、無駄なことよッ!」

 

 

ドメシャァァアッ!

 

 

「うがァアアッ!」

 

 なんと世界(ザ・ワールド)は土壇場でK・クリムゾンのスタンドエネルギーを察知し、強力な裏拳をK・クリムゾンの顔面にヒットさせた。

 不意打ちを仕掛けたはずが、逆に食らってしまったK・クリムゾン。想像以上の威力に体が耐えきれず、再び後方に吹っ飛ばされてしまう。自分のターンを終わらせないため、世界(ザ・ワールド)は顔からナイフを抜き、捨て去ると、吹っ飛ぶK・クリムゾン目掛けて突進する。

 

 

ドガァア〜〜ーーン!

 

 

「ぐあぁあああッ!」

 

 世界(ザ・ワールド)はK・クリムゾンの胸に蹴りを叩き込み、さらにスピードを加えて吹っ飛ばした。そして再び、追撃を行うためにK・クリムゾンを追う。

 吹っ飛ばされたK・クリムゾンに追いつけるなど、普通のことではない。野球選手は自分が投げたボールに走って追いつくことはできないのだ。彼だからこそできる、脅威のスピードで飛行していた。

 

WRYYYYYYY(ウリイイイイイイイ)! 貴様がどれだけ私の動きを読めようとも! 時を消し飛ばせようが関係ないッ! 能力を発動する暇をも与えず、()()()()()()ッ!!」

 

「ぐ……」

 

 

バキィィイッ!

 

 

「ガブゥッ!」

 

 K・クリムゾンは強力な一撃をさらにもらい、三度吹き飛ばされた。

 戦いの終わりが近付いてきたことにより、世界(ザ・ワールド)の興奮はいよいよ絶頂へと至る。スタンドパワーも溢れんばかりに高まり、スピードもパワーも上昇していく。もはや、時間停止の能力もいつでも使えるようになった。

 いよいよ最終局面である。

 

「正真正銘、最後の攻撃だッ! 最後の時間停止だ! これより静止時間22秒以内に貴様を殺すッ!」

 

「……キ、キング…………」

 

 

世界(ザ・ワールド)!」

 

 

ドォォ〜〜ーーン!

 

 

 世界(ザ・ワールド)を中心に爆発するスタンドパワー。そして、時は止まる。そこには音も、風も、日光の暖かささえもない。まさしく、彼だけの世界。

 世界(ザ・ワールド)はフワリと静止するK・クリムゾンの前に降りると、その両拳を握り、振り上げた!

 

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄WRYYYYYYYYーーーーッ」

 

 

ボゴ ドゴ ドゴ バゴ ドゴ ボゴ ドゴ バゴ ドゴ バゴ ドゴ バゴ ボゴ ドゴ ボゴ バゴ 

 

 

 世界(ザ・ワールド)のラッシュがK・クリムゾンの体に叩き込まれていく。全ての因果は止まっているため、K・クリムゾンの体にクレーターはできないものの、確かな手応えは感じられる。

 こうなってしまえばもう逃れられない。全てが動き出した時、K・クリムゾンの命が消える。それが今、確実なものとなった。

 どれだけ殴ったか、数えてなどいない。だが、もう十分であろう。時が動き出したその瞬間こそ、全てが終わる時である。そして、『運命』を超越する『天国』の時が始まるのだ。

 

「フ、クククク……フハハハハハ。この世界(ザ・ワールド)を超越する者は、やはりジョースター以外にはいなかったということが証明されたな。貴様の思想や能力は、確かにこの私と似通っていた部分もあるだろうが……真に支配するのはこの世界(ザ・ワールド)だッ!」

 

 満足気な世界(ザ・ワールド)は人差し指を立て、いよいよ時間停止を解除しようとする。

 

「…………どれ、そろそろ能力を解除するとしよう。時は動き……」

 

 

「時は刻み出す」

 

 

「!?」

 

 静止していた時が動き出すと、今まで目の前にいたK・クリムゾンの姿が空気に溶けるかのように消えて無くなった。スタンドの消滅とは違う、消え方。

 しかも、K・クリムゾンの声は彼の姿が無くなったにも関わらず、世界(ザ・ワールド)の声と被せるように、どこからか響いてきた。いや、どこからかは何となく分かった。それは、世界(ザ・ワールド)の背後。

 

 

ドボォァアアッ!

 

 

「なにィィーーッ!?」

 

 世界(ザ・ワールド)の左胸から、突如K・クリムゾンの手が突き破って出てきた。

 K・クリムゾンは死んでいない。確かに、声が聴こえてきた方向におり、世界(ザ・ワールド)の胸を貫いたのだ。人間で例えれば、心臓のある位置を。

 K・クリムゾンの手と傷口の隙間から、ドバドバと血が流れ出す。世界(ザ・ワールド)の頭が混乱している中で、K・クリムゾンは上がる息を殺しながらも余裕を見せようと、解説を入れた。

 

「ほんの一瞬なら…………可能だ。過去と、数秒先の未来を()()()()()()()()()()()……お前が止まった時の世界で触れたのは、過去の私だ…………未来の私は既にお前の背後に、そして過去は消えて無くなる。タイミングさえ合わせれば、止まった時の世界で2人の私が存在することになる。まんまとハマったわけだな……」

 

「こ……この……世界(ザ・ワールド)がッ……!」

 

 世界(ザ・ワールド)は背後に向けて腕を薙ぎ払うが、気付いた時には()()()()()()()

 K・クリムゾンは後ろへ振り向いた世界(ザ・ワールド)の背後に再び回り込み、手刀を掲げる。真っ直ぐに。そして、脳天目掛けて振り下ろした。

 

 

バギャァアアアアッ!

 

 

「うぐおおおおあああッ! なああにィィイイイッ!?」

 

「帝王は我がディアボロだッ!! 依然変わりなく!」

 

 K・クリムゾンの手刀により、世界(ザ・ワールド)に頭部からどんどんヒビが走っていく。顔が割れ、腕が砕け、胸が壊れ、脚が崩れていく。

 スタンドパワー全てをあの一撃に注いでしまった世界(ザ・ワールド)は為す術無く、同じくK・クリムゾンの全力の攻撃をモロに受けてしまった。胸を貫かれ、頭部から完全に割られてしまえば、いくらあの世界(ザ・ワールド)も回復することができない。能力を使い、反撃することも。

 勝者は、K・クリムゾンだ。

 

「バ……バカなッ! こ……この世界(ザ・ワールド)が…………貴様ごときにッ…………この世界(ザ・ワールド)がァァァァァ〜〜〜〜ッ!!」

 

 

ドガパァ〜〜ーーッ!

 

 

 世界(ザ・ワールド)はついに限界を迎え、内側から爆散する。飛び散った破片もシューシューと音を立て、消えていく。完全敗北。世界(ザ・ワールド)は消滅したのだった。

 勝者であるK・クリムゾンは世界(ザ・ワールド)の消滅を見届けると、ゆっくりと地上に降下する。地に足をつけると、そのまま倒れるように膝を突いた。

 今回の戦いが幻想郷に来てから最も激しい戦闘だった。生前でさえ、あそこまで体力を消費した可能性があるのはリゾット戦であろう。それでも、戦っていたのはドッピオであり、本来のK・クリムゾンの能力を存分に発揮できていなかったことを考えると、やはり初めての経験だった。

 とても強かった。率直な感想がそれだった。

 

「ハァーッ……ハァーッ……乗り……越えたぞ……! ええ? トリッシュ……まつろわぬ、我が娘よ……お前がやった通りだ。俺は、さらに強くなった……!」

 

 新たな能力を得ただとか、パワーやスピードが上がっただとか、そんなものではない。単純に強くなったのとは違う。だが、それでも彼は確信していた。

 この戦いで、自分は成長したと。試練を乗り越えてこそ、己の成長を迎えられる。自分の未熟な過去を克服してこそ……

 かつて、トリッシュが自らに言い放ったように。

 本体、ディアボロがポルナレフに言ったように。

 

「…………だが、邪魔者はまだ存在している」

 

 帝王、K・クリムゾンは警戒を怠らない。

 世界(ザ・ワールド)を倒して終わりというわけでないことは、重々承知していた。まだ、付近には()()()がいる。その気配を今、感じ取ったのだ。

 K・クリムゾンは草むらへ目をやる。直後、草をガサガサと揺らし、それは姿を現した。気絶したハイエロファントを担ぎ、ミニ八卦路を手にした霧雨魔理沙である。

 

「キング・クリムゾン……! ザ・ワールド(あのスタンド)を倒したのか……! だが、今ならやれる!」

 

「………………」

 

 K・クリムゾンは手負いの状態。対して、魔理沙はほぼ無傷でピンピンしている。だからこそ、彼女は今ならK・クリムゾンを倒せると思ったのだろう。

 気持ちは分かる。だが、そんなものはひどい思い上がりだ。K・クリムゾンは内心、呆れ返りながら魔理沙を真っ直ぐ見据えた。

 

「思い上がるなよ……魔法使い。貴様如きが、この私を越えられるなどと…………そんな可能性は万に一つもない。億にも、兆にもな……」

 

「どうだろうな……でも、お前はもうボロボロだ。やってみなきゃ分かんねーだろ」

 

「…………」

 

 両者は睨み合う。だが、ここに新たな戦いが起こるということはもはや確定した。

 魔理沙はハイエロファントをそっと地面に下ろし、八卦路を構える。

 K・クリムゾンもおもむろに立ち上がり、スタンドパワーを溜め始める。

 先程も同じようなことがあった。数秒の静寂。以前は世界(ザ・ワールド)に先手を打たれたが、今度はどうか。先に爆発するのはどちらなのか。

 

「恋符.マスター……!」

 

キング・クリムゾン!」

 

 

____________________

 

 

「!」

 

 時間が飛んだ。

 魔理沙が撃ったマスタースパークはK・クリムゾンのいた地点を完全に抉り、そのさらに後方を焼き払っていた。だが、時が飛んでいたために、手応えを感じることはできていない。

 十中八九、マスタースパークを外したと考えた魔理沙はすぐさま警戒態勢に入る。ハイエロファントの安全を確認、確保し、自分の背後に回り込んでいないか執拗に辺りを見渡す。

 

(いない……)

「…………ま、まさか……逃げたのか……?」

 

 経過時間、数十秒。ついにK・クリムゾンが姿を現すことはなかった。魔理沙が呟いたように、彼はその場から逃走。これまでと同じように、行方をくらませてしまうのだった。

 今回の事件で、失われたことは多かった。世界(ザ・ワールド)の刺客たちに負傷を負わされた者は多く、ピノキオに宿ったボヘミアン・ラプソディーによる被害者は数知れず。人里の一部が消失するにまで至った。ホワイトスネイクとの戦いではキラークイーンが消滅し、世界(ザ・ワールド)も幻想郷の強者たちを負傷させている。そして、それら全てによってスタンドの信頼というものも以前と比べると失われていた。

 つけられた爪痕はあまりにも大きい。特に、人里では。ハイエロファントと魔理沙、S・フィンガーズたちの活躍によって生まれた、人里におけるスタンドの居場所。それが今回の事件によって少しずつ……また少しずつと狭まっていくのだった。




この結末には、いろいろな意見があると思います。しかし、私はこの結末が絶対正しいということはなく、あくまでも一つの可能性というか、選択肢の一つとして書かせていただきました。そもそも、二次創作というのはそういうものですしね。
様々な感想、お待ちしています。

では、第五部『幻想潮流』でまたお会いしましょう!

to be continued⇒

あくまで参考までに、ということで。

  • 東方をよく知っている
  • ジョジョをよく知っている
  • 東方もジョジョもよく知っている
  • どちらもよく知らない
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