幽波紋の奇妙な幻想 《Drifted Destiny》 作:右利き
戦いを書く方に慣れているため(まだまだ発展途上ですが)、すごく難しく感じました……
「ハァ……ハァ……」
早朝の魔法の森。
霧か瘴気か、白いベールに包まれたように霞んでいる風景の中で、霧雨魔理沙が季節に似合わず汗を垂らしていた。周囲には焼け焦げた跡のあるクレーターが、土や樹木に関係なくいくつも見られる。
彼女はここ数日、森の中で修行をしているのだ。弾幕を撃って、撃って、撃って、撃ちまくる。自分が納得できるまでより強く、より速く撃ち続ける修行である。
魔理沙がこうなったきっかけは、先日の
その時痛感した己の無力さを克服するため……あるいは紛らわせるために、彼女は弾幕を放っていた。
「荒れてんな、魔理沙」
「……! チャリオッツ」
不意にかけられた声に反応し、魔理沙は振り向く。
そこには木にもたれるチャリオッツが立っていた。
魔理沙はこの時間、自分がどこで何をしているかをハイエロファントとチャリオッツに話した覚えは無い。居場所は分からなかったはずだ。
それでもここに彼がいるということは、弾幕の爆発音が聴こえていたとか、そういうことなのだろう。おそらく今日気づかれたのでなく、前々からチャリオッツは分かっていたかもしれない。
「そんなに気にしてるのか? 俺たちだって手も足も出てなかったじゃあねぇか」
「そんなことないだろ。お前とザ・フールの攻撃とか、結構効いてたと思うけど」
「いいや、正直あれは遊ばれてたぜ。時間を止める能力を最初から使われてりゃ、俺たちはもっと早く全滅してた。強すぎたんだよ。
「俺たちには敵わねぇ」と首を振りながら、チャリオッツは近くの切り株に腰掛ける。
そして手に持っていた包みを広げると、中に入っていたおにぎり2つの内一つを魔理沙へ投げ渡した。
魔理沙は「ありがとう」と礼を言い、悲鳴を上げる腹のためにおにぎりを頬張る。一口で半分まで
「自分が活躍できなかったことがそんなに悔しいのか? お前はよくやったぜ。魔理沙がいてくれなきゃ、俺たちはそのまま死んでたろーよ」
「違うよ……でも、それもある。半分くらいはそれだ」
「んじゃあ、もう半分は?」
「……霊夢だ」
その返答はチャリオッツが予想もしていなかったものだった。
魔理沙がこうなっている原因の半分だと言うのだから、霊夢と余程のことがあったのだろうか。チャリオッツは推測する。
「そういや、霊夢も
「ちげぇよ。その……あいつ、私が知らない間にメチャクチャ強くなってたんだよ」
魔理沙と霊夢は昔からの付き合いだ。
魔理沙はこれまでも、数々の魔法の実験や弾幕の練習に努めていた。霊夢はいうと、博麗の巫女としての修行はせどもそれは最小限に留まっていた。
何事にも貪欲でいた魔理沙に比べ、霊夢は面倒くさがりの一面が強い。2人はまるで対照的だった。魔理沙も、このことについては誰よりも理解していたつもりである。
だが、いざ霊夢が本気で修行をするとどこまで進んでいくのか。それが分かってしまったことが、魔理沙にとってショックだったのだ。
「地底の異変を解決して、霊夢もケガしてたから修行自体はかなり短期間のものだったはずなんだ。でも、それで霊夢はあんだけ強くなった…………私がどうにもできなかった
「ははーん。なるほどな。それで置いていかれると思って焦ってたのか」
「あぁ…………チクショー、ハイエロファントだったらよかったんだけどな。お前に話すとすごい恥ずかしいぜ、チャリオッツ」
「何でだよ! まぁ、気持ちは分かるぜ。同じぐらいだと思ってたやつが、いきなり成長すりゃあ誰だってそうなるかもな」
チャリオッツは魔理沙に共感した。
だが、彼、というより本体のポルナレフにはそういった経験は無い。ハイエロファントの本体、花京院も同様である。エジプトへの旅の中で仲間を得た2人だが、共に力を磨き高め合う人間はいなかった。
本人は苦しいだろうが、妹の敵討ちのためにと独りで力を欲していたポルナレフもといチャリオッツはそれが少しだけ羨ましくもあるのだった。
会話は一端終わりを迎え、魔理沙は修行を再開する。チャリオッツが見守る中、魔理沙の弾幕は花火のような華やかさを見せながら展開され、辺りの木々を薙ぎ倒す。時にはスペルカードによるも交え、鮮やかなレーザーはチャリオッツの隣を縦に焼き払ったりした。
そうしてしばらくした後、チャリオッツは膝に手を突きながら腰を上げる。
「じゃあ、俺はそろそろ行くとするぜ。お前も気が済んだら神社に早く来いよ」
「じ、神社? 何で神社に行くんだよ」
「何だ、知らなかったのか? 今日博麗神社で宴会やるんだぜ。昼前から準備を頼まれてるから、それで呼びに来たんだよ」
「宴会ぃ? こんな時にか?」
「祝勝会みてぇなもんさ。勝ってねぇけどな。こんな暗い時にこそ、そういうことやって元気を出すのが良いんじゃあねーの? 俺はもう行くから、ちゃんと来いよ!」
魔理沙の返答を聞かず、チャリオッツは空へ飛び上がり行ってしまった。
取り残された魔理沙は、自分の弾幕で荒れた周囲を見回す。チャリオッツは自分の話を聞いても、さほど問題だと思っていなさそうだった。
重く捉えすぎている部分もあるかもしれない。だが、魔理沙は霊夢に置きざりにされるのは御免だと思っている。腕を磨くのはプライドのため。これからも霊夢と共に行動するため。それで十分だ。
霊夢が新たな力を得ていくというのなら、自分は元々ある力をさらに強力なものへと進化させよう。弾幕とはパワーなのだ。より力強さを求めていく。
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時は午前10時過ぎ。チャリオッツとハイエロファントの2人は空を飛んで移動し、博麗神社に降り立った。宴を行う予定の会場だが、その気配は全く無い。いつも通りの人気のない境内だった。
「変わらないな……」と2人して思っていると、神社の横の縁側から三角巾を頭に付けた霊夢が出て来た。彼女の右腕の包帯は取れており、骨折は治ったことが分かる。回復の効果がある札を使ったのだろう。
「あ! やっと来たわね。ほら、早くこっち来なさいよ。ハイエロファント、あんたは料理。チャリオッツ、あんたはサイレント・ウェイと一緒に敷き物とか机とか用意しなさい!」
「
「ったく、到着していきなり手伝わされるのかよ。お茶一杯とか出してくれてもいいんじゃあねーか? 一応客だぜ。俺たちも。つーか、サイレント・ウェイって誰だ?」
「私だ」
チャリオッツとハイエロファントは声がした方へ顔を向ける。そこには、インディアンのような服装と羽飾りを身に付けた者が。
名前からしてそうだろうとは思っていたが、2人はサイレント・ウェイがスタンドであることを目視して改めて認識した。スタンドエネルギーも確かに彼から感じ取ることができる。
サイレント・ウェイは脇に丸めた敷き物を挟んで立っており、早く手伝ってくれと言わんばかりにチャリオッツたちに視線を飛ばしていた。
「あんたがチャリオッツか。神社の裏に運ぶ物がたくさんある。手伝ってくれ」
サイレント・ウェイはそれだけ言い残すと、境内の石畳の上に持っていた敷き物を広げる。そして端に石を重石として置くと、そそくさと神社の裏へと行ってしまった。
チャリオッツとハイエロファントは心無しか彼がイラついているようにも見えたが、きっと間違いではないだろうと2人して思う。霊夢はそもそも人使いが荒いため、サイレント・ウェイもこき使われているはずだ。
「……しょうがねー。行ってくるぜ、ハイエロファント。お前も頑張れよ」
「あぁ……チャリオッツ、無理はしないようにな……」
ハイエロファントにそう告げ、チャリオッツはレイピアを神社の賽銭箱に立て掛けると、サイレント・ウェイを追って神社裏の納屋へ向かった。
一人取り残されたハイエロファントも、霊夢に言われたように宴会の料理を用意するため、神社の中にある台所へ向かう。エプロンは無いが、きっと大丈夫だろう。
ハイエロファントが宙に浮きながら縁側から入って台所へ来ると、水の流れる音が聴こえてきた。霊夢かと思ったが、彼女ではない。霊夢は三角巾を着けていたものの、ハイエロファントとチャリオッツに声をかけた後は拝殿の方へ行っていた。そのため、彼女が台所にいるはずがない。
ハイエロファントが覗いてみると、髪を縛って野菜を洗っている早苗の姿があった。
「君は早苗か?」
「わっ! び、びっくりしたぁ……な、なぁんだ、ハイエロファントさんだったんですね。宴会のお手伝いをしに来られたんですか?」
「あぁ。霊夢に頼まれてしまったんだ。料理の方を手伝ってくれと言われたんだが……その様子だと、どうやら君も同じようだな」
「はい。私は幻想郷での宴会はこれが初めてなので、神奈子様や諏訪子様に色々経験してくるように言われて」
笑顔を見せながらそう言うと、早苗は一度止めた手を再び動かし始める。
ホワイトスネイクが直接攻め入り、3人のディスクを奪ってしまったのだ。
その後はS・フィンガーズたちの活躍によりディスクを取り戻し、なんとか一命を取り留める。そして体力が回復し、宴会の準備をするという今に至るわけだ。
「神奈子様方も後ほど宴会に出席すると仰っていました。その時に改めてハイエロファントさんやチャリオッツさんにお礼がしたいと……」
「大したことじゃあない。僕らは神社の中から皆んなを外に出しただけで、お礼をするならスティッキィ・フィンガーズやF・Fだ」
ここで2人の会話は止まってしまう。
彼らの中で、同時にあることが浮かんできたからだ。
それはキラークイーンについてのこと。
戦いが全て終わった後、その関係者たちは一度博麗神社に集合した。どのような被害を受けたか、勝利あるいは敗北したかなど、様々なことを報告し合うために。
その際、人里の代表である慧音とF・Fが言っていた。
キラークイーンが消滅した、と。
ホワイトスネイクと戦い、相討ちになったと。
彼はハイエロファントやマジシャンズレッドを除けば、幻想郷のスタンドたちの中でも古株の部類であった。消滅したと知ったことでショックを受けたものの、ハイエロファントは特に慧音の言葉に何か裏があるように感じていた。キラークイーンの消滅は本当だろうが、何かがあったのではと……
だが、そんな心配しているのはいつの間にかハイエロファントだけだったようだ。
「あの、ものすごく失礼だとは思うんですけど訊きたいことが……ハイエロファントさんって料理できるんですか?」
「え? あ、あぁ。これでも魔理沙の家で家事をやらされてるからね」
「……ぷふっ」
「な、何だ今の……笑う部分なんて無かっただろう?」
「いえ、絵面を想像したら……つい……うふふっ」
口元を押さえながら早苗は笑いを堪える。
ハイエロファントは「本当に失礼だな……」と呆れながらも、自身も用意されていたエプロンを身につけると彼女の手伝いをし始めるのだった。
2人して楽しくやれているなら良いだろう。外のチャリオッツ、サイレント・ウェイなんて、ただ黙って物を運んでいるばかりなのだから。
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ハイエロファントたちが準備に加わったことで、宴会はいつでも始められる状態となった。昼を回った今、参加者たちが続々と集まり出す。
守矢神社から2柱の神、神奈子と諏訪子。
魔法の森からアリス・マーガトロイド。
永遠亭の輝夜、永琳、てゐ、鈴仙。そしてハーヴェストたちとエニグマ。
地霊殿から古明地さとり、お空、お燐、ザ・フール。彼女はハイエロファントたちと初対面のつもりではないが、「初めまして」と言われてしまった古明地こいし。後から旧都の妖怪も来るのだとか。
命蓮寺からは本当の初対面である多々良小傘、村沙、ぬえ、暗殺チーム。他の面々は人里の復興作業に手を貸しており、夜からの参加となるらしい。
そして霧の湖の妖精たちと、妖怪の山から来た河童に天狗の記者。これで昼から参加する予定だった者はほとんど集合した。残るは魔理沙ぐらいだ。
「魔理沙は……まだ来てないようだな」
「別に構わねぇと思うぜ。見てみろよ。始まりの挨拶も無くおっ始めやがった」
「あぁ。僕はまだ慣れないな。この光景」
ハイエロファントとチャリオッツは早速始まった宴会を、輪の外の方から眺めている。
外の世界から来て数ヶ月も経つが、まだ明らかに未成年のかわいらしい少女たちが酒を呑む光景には中々慣れない。平気でタバコを吸っていた未成年なら2人も知っているが、彼はもはや例外だろう。その体躯は高校生とは思えないほどだったし、自他共に認める不良だったのだから。
「こら! あんたら何やってんのよォ!」
「うおっ!? れ、霊夢!?」
「まさか……君もう酔っ払っているのか……!?」
「せっかくの宴会よ。楽しまなきゃ損損! つべこべ言わずこっち来る!」
「いだだだだ! こいつ力強すぎんだろ!」
魔理沙の到着を待つ2人だったが、そこへ魔の手が構わず襲いかかってきた。
既に酒の入った霊夢がチャリオッツとハイエロファントの首を捕まえ、無理矢理皆の方へと引っ張って行く。彼女の絡み酒も永遠亭での宴会から健在らしい。
諦めて抵抗しなかったハイエロファントはすぐに放されたが、チャリオッツはそのまま神奈子たち酒呑みのグループに連れて行かれてしまった。
頑張ってくれ、チャリオッツ。ハイエロファントは憐れみの目で彼を見るのだった。
「ハイエロファントさん、お久しぶりです」
「ああ、さとり。久しぶり。元気にしてたかい?」
「私たちの所にもスタンドが来ましたが、見ての通り無事ですよ」
ハイエロファントが座布団を敷いて座ると、そこにさとりがやって来た。手に料理を取った皿を持っており、ハイエロファントの横に座ると彼に差し出す。
地霊殿にはスタンド、エンプレスが攻め入って来た。彼女の目的とは、
さとりはエンプレスとの戦いで負傷していたが、そこは妖怪。人間にはない治癒力で後遺症も残さず完治した。エンプレスもこいしがスカイ・ハイと共に撃破しているため、地霊殿は大丈夫とのことだ。
「ハイエロファントさん。私があなたとの別れの時、何をお願いしたか覚えてますか?」
「お願いだって? 何か言っていたか?」
「……私、またやりましょうねって言いましたよ。F-MEGA。美味しいお菓子にお茶も用意して、ハイエロファントさんがいつ来てもいいようにしてたんです。でも、待てど暮らせどあなたは来ない……」
「す、すまない……忙しくて頭に無かったんだ……ここのところ、戦いばかりで」
さとりは微笑んでいるが、明らかに顔に影がある。
心を読む能力を使い、ハイエロファントが嘘を言っていないことは分かった。だが、「頭に無かった」というのが本当のことでショックあるのに変わりない。
さとりは少しだけ傷ついた。そんなさとりを、ハイエロファントはかなり怖がった。しかも、そこへお燐とお空まで現れてしまうのだから混沌とした状況になるのは避けられない。
「あーーっ! さとり様、緑のお兄さんとイイ感じだ!」
「だめだよお空! せっかく2人っきりになれたんだから邪魔しちゃ!」
「だってぇ〜〜。お燐も嬉しいでしょ?」
「しっ! 2人ともあっちに行ってなさい! すみません、ハイエロファントさん。お空たちが失礼なことを……」
茶化しに来たお空とお燐を叱り、向こうへ追っ払うさとり。だが、赤くなりつつもちょっと口元が綻んでいるあたり、満更でもないのだろうか。
ハイエロファントの方へ振り向くさとりだが、彼自身は全く別の場所を見ていた。その視線の先にはさとりが持ってきた皿。の上にあるさくらんぼが。
季節ではないが、このさくらんぼ河童と神奈子の技術改革の成果として生み出された温室で育てられたもの。ハイエロファントはさくらんぼの存在を知らなかったため、これは早苗が用意した料理だろう。
ハイエロファントはさくらんぼを指差して尋ねる。
「さとり、これ貰ってもいいか? 好物なんだ」
「はい、いいですよ。ハイエロファントさんのために取ってきたんですもの」
「ありがとう。じゃあ……レロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロ……」
「…………」
ハイエロファントはマスクを外し舌を突き出すと、その上でさくらんぼを転がし始めた。独特の声と共に繰り広げられるその光景は、さとりを多少幻滅させるには丁度良かっただろう。
ひとしきり楽しんだ後にさくらんぼを呑むと、ハイエロファントの元にさとり以外の者が次々とやって来た。さとりと同様、久しぶりに再開したハーヴェストとエニグマ。調子に乗るエニグマを叱りながら、ハーヴェストたちの話を聞いたりした。
以前戦ったことのある封獣ぬえも、今では仲良くなった暗殺チームのスタンドを連れてやって来てリベンジマッチを申し込んできたりした。
アリスとは魔理沙のことを話したり、酒で潰されたチャリオッツを笑ったりした。宴会とはやはり良いものだと、ハイエロファントはつくづく思う。
心配の種だった魔理沙は後ほど、ちゃんと宴会に出席した。夜になってからの参加だったが、紅魔館の住民や残りの命蓮寺の者を連れてやって来た。
既に酔い潰れた早苗を叩き起こし、輪の中に入れていないサイレント・ウェイを無理矢理引き入れ、暗い雰囲気を吹き飛ばす幻想郷の伝統、宴会はまだまだ終わりを見せないのであった。
ちょっとキャラ崩壊が起きてる気がしないでもない……
特にさとり。
to be continued⇒
あくまで参考までに、ということで。
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東方をよく知っている
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ジョジョをよく知っている
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東方もジョジョもよく知っている
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どちらもよく知らない