幽波紋の奇妙な幻想 《Drifted Destiny》   作:右利き

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久しぶりの異変です。
半年以上ぶりの


92.東方神霊廟①

「……んーー…………」

 

 久方ぶりの大規模宴会を終えてからおよそ一月半。春を迎えつつある幻想郷では目立った異変や事件は全く起きていなかった。スタンドの幻想入りも鳴りを潜めている。

 去年とは違い、暦上は春を迎えても雪が降り続けるといったこともなければ、どこかへ逃げ(おお)せたK・クリムゾンの噂も不自然なほど立たない。

 だが、人里の復興も粗方目処が立ってきた今日この頃、霊夢は奇妙な光景を目にすることが多くなってきた。それは霊の中でも神として崇められ、力のある部類である『神霊』、その中で力の弱いものの出現。そして消失である。

 

「……また()()()()()()()()

 

 現在幻想郷に出現し続けている神霊は普通よりも力の弱い小神霊。それは人の欲や願望を苗床として姿を見せるのだという。

 だが、いくら力が弱く神でなかろうと『神霊』には変わりなく、霊夢ほどにもなれば神霊の霊力を感じ取って位置を探ることもできる。霊夢はそうして、神霊たちの出現と消失を感知していたのだ。

 鳥居の間から不思議そうに幻想郷を見下ろす霊夢に、サイレント・ウェイも何かを予感した様子。既に霊夢の仕事について理解している彼は尋ねる。

 

「行くのか?」

 

「えぇ。久しぶりの異変よ。スタンドが関係無い、ね。霊がおかしなことになってるわ。今から冥界にいる亡霊の所に向かうから、あなたも来なさい」

 

 博麗の巫女を手伝う身であるなら、異変解決に従事することになるのは自然。霊夢は既にお祓い棒も弾幕戦用の札も持って準備万端だ。サイレント・ウェイも、元から()()()()()()()()思っていた。

 霊夢は鳥居の下から飛び出し、空へと舞う。サイレント・ウェイも彼女に続き、2人は異変の鍵を握っているであろう冥界の主の元へ向かうのだった。

 

 

____________________

 

 

 場所が変わり、同時刻の魔法の森。

 久しぶりの長い平穏の中、魔理沙やハイエロファントたちはゆったりと日常を過ごしていた。

 地底の異変を解決したお礼として、宴会の時からハイエロファントたちは河童との様々な取引を行い始めた。その一つとして、玄武の沢で取れる魚や温室で採れる作物を人里で得るよりも簡単に入手できるように。

 ちなみに、魚などと引き換えにするものは外の世界で生きていたハイエロファントやチャリオッツの記憶を頼りに、新たな発明品のアイデアを出してもらうというもの。早苗とスタンドたちでは、元来た時代が違うからである。

 カウンターに肘を突き、魔理沙が間延びした口調でこぼす。

 

「あ〜〜……暇だなぁ。異変もねぇし」

 

「戦いばかりに慣れてしまうと、いざ平和が訪れるとたしかに退屈ではあるな。良いことではあるんだが…………」

 

「そういやハイエロファントォ、お前も最近修行してんだって? チャリオッツから聞いたぞ」

 

「あぁ。君もチャリオッツもしてるし、僕だけ成長が無いのもと思ってな」

 

 魔理沙は以前の戦いから、チャリオッツは幻想郷に来てからも自分の力を磨いている。ハイエロファントも自分の力は幻想郷では下位も下位であることを自覚しているため、皆の足を引っ張らないようにと独自で修行を始めていたのだ。

 チャリオッツにはそのことを伝えていたが、魔理沙には伝えていなかった。これといった理由はないが、ハイエロファントも修行を始めたからと彼女に気を使われたくなかったという気持ちはあった。

 

「エメラルドスプラッシュの威力とか上げてんの?」

 

「そうだな……それもしたいことではあるが、また別のことだ。単純に僕がやれることを増やさないと戦い方の幅が増えない」

 

 スタンド能力は磨けば磨くほど洗練される。ハイエロファントは一体何を伸ばしているのか。魔理沙としてはちょっぴり気になるところである。

 ハイエロファントが客のほぼ見て行かない(そもそも店にあまり客が来ない)商品棚を整理していると、店の外から土や小石を蹴る音が聴こえてきた。出かけていたチャリオッツが帰って来たのだ。

 

「よう、帰ったぜ」

 

「おう、おかえり〜〜」

 

「なぁ魔理沙。さっき霊夢とサイレント・ウェイのやつが揃って空飛んでたんだけどよォーー、何かあったのか? 知ってる?」

 

『!!』

 

「ど、どうしたんだよ。お前ら……」

 

「チャリオッツ! 霊夢たち、どっちへ向かって飛んでたんだ!?」

 

「えぇ? えーっとだなぁ……あっち、いや、こっちの方だったかなぁ」

 

 チャリオッツは首を右へ左へ傾げながら、北西の方角を指差す。

 魔理沙の魔法店からその方向は進めば、あるのは妖怪の山である。山には守矢神社、間欠泉センター、大蝦蟇の池……色々あるにはある。

 だが用事があるにしろ、霊夢は面倒くさがりの面も強い。単なるお使いならばサイレント・ウェイを一人で行かせるはずだ。だというのに、2人で向かっているのは気がかりである。

 だが、ここで魔理沙がもう一つの可能性に気がついた。北西には山があるが、その方向の空を突き進むとあの場所へ行ける。お使いには行かないような場所だ。

 

「……ハイエロファント、チャリオッツ。出発の準備をするぞ。大急ぎで!」

 

「あぁ。行くんだな」

 

「ハァ? 今からだぁ!? ちょ、ちょっと待て。色々話が見えねーぞ! お前ら何か知ってんのか!?」

 

「異変だ異変! 私らも解決しに行くぜ!」

 

 魔理沙はそう言いながら箒を手に取り、帽子を被ると、扉のことなどどうだっていいと言わんばかりに勢いよく外へ飛び出して行った。

 ハイエロファントもカウンターを乗り越えると、魔理沙に続いて店を出る。何が何だか分からないまま、チャリオッツも河童たちに貰った物を入れた籠を置き、一拍遅れて2人を追った。

 一刻も早く霊夢の元に合流しようと全速力を出す魔理沙だが、霊夢たちは思いの外近くを飛んでおり、すぐに発見することができた。霊夢は速く移動する方だが、今は速度を落として飛んでいる。飛行にまだ慣れていないサイレント・ウェイを気遣っていたのだろう。

 魔理沙はサイレント・ウェイと霊夢の間を縫い、後ろから追い抜かすように霊夢の横に並んだ。

 

「よう、霊夢! 面白そうなことしてんじゃあねーか!」

 

「まっ、魔理沙!? 何であんたがいるわけ!?」

 

「チャリオッツがこっちの方へ飛ぶお前らを見たって言ってたからよぉ〜〜、きっと異変だって思って着いて来たんだぜ。何かあったのか?」

 

「ハァ〜〜ーー…………魔理沙ってホントに……霊がおかしな挙動見せてんのよ」

 

「霊が? どんな風に?」

 

「力の弱い神霊が消えたり出てきたりを繰り返してんの。こんなこと初めてだから、幽々子のところに行って調査するのよ」

 

 霊夢の返事に「ふーーん」と興味無さげに応える魔理沙。自分から尋ねておいてのこの態度にピキッとくる霊夢だが、魔理沙相手にいちいちそんなことではここまで一緒にやってくることはできない。すぐに平常心を取り戻し、目的地への到達に意識を戻す。

 少女たちが普段通りのやり取りをするその後ろでは、彼女らに着いて来たスタンドたちもまた会話を始めていた。

 

「そうだ。サイレント・ウェイ、君の能力ってどんなものなんだ? まだ見せてもらったことがないから、ぜひ知りたいんだが」

 

「能力を? なぜ?」

 

「何でって、もしかしたらこれから共闘するかもしれないからな。なるべく把握しておきたいんだ」

 

「ハイエロファントもこう言ってるし、教えるぐらいいいだろ? 減るもんじゃあねぇしよ〜〜ーー。俺たちも後で言うから、な?」

 

「……『音』を形にする能力。発した音を固めて、その音に触れたものを()()()に破壊する。それが俺の能力だ……いくら仲間でも、無闇に明かしたくはない」

 

 サイレント・ウェイがそう言うと、スタンド3人の会話は幕を閉じてしまった。

 たしかに、自分のスタンド能力を他人に打ち明けるのを嫌がる者はいるにはいるかもしれない。と、ハイエロファントは思う。

 スタンドは自分の心の鏡であるから、それは同時に弱点をさらすことにもなるのだ。

 スタンド能力を家族にも明かさない者曰く、「エロ本の隠し場所は家族にも言わない」、「スタンドは自分のケツの穴のようなもの」とのこと。

 仲間同士の繋がりや信頼を重んじるハイエロファントたちと、()()()()()()()()サイレント・ウェイではやはり感覚は違うのだ。

 

 

 少女たちは駄弁りながら、スタンドたちは少し重くなってしまった空気の中黙りながら飛び続けた。すると、ほんのり陽気が感じられていた外気はガラリと変わり、突如辺りに冷たい霧のようなものが発生してくる。

 「何だこれは」とチャリオッツが思うも、それが声になることはなかった。出てきたと思った霧はすぐに晴れ、周囲に暮れなずんだような薄暗さの世界が広がっていたからだ。

 

「こ、ここは……? いや、ここがそうなのか」

 

「そっか。ハイエロファントたちが来るのはこれが初めてだもんな。お察しの通り、ここが冥界だぜ。妖夢がいるところさ」

 

「へーー。思ってたより綺麗な場所なんだなぁーー」

 

 チャリオッツが辺りを見回しながら言う。冥界の光景は彼が言う通り何とも華美な、それでいてどこか哀愁の漂う場所だった。

 5人はいつの間にか地面に足をつけており、目の前には長々と続く石階段が。その周りには春を感じる桜の木々が見られ、極めつけに石階段の遥か上には超巨大な桜を咲かした木が(そび)えている。

 霊夢と魔理沙は石階段を登り出し、その先にある白玉楼を目指し始めた。そこにこそ、桜の花びらとは別に宙を漂う人魂を統括する冥界の主がいるのだという。

 

「冥界の主ねぇ……一体どんなやつなんだろーな」

 

「大食いの亡霊だぜ。食べ物の話してるイメージしかないけど、結構強いんだ」

 

「それに紫との関わりもあるわ。ただ、のらりくらりしてるというか、飄々としたやつよ。今起こってることを素直に教えてくれるかは分からない」

 

「…………誰かいるぞ」

 

 長い階段を登り出した一行だが、移動手段はすぐに飛行に変わった。とにかく階段が長いために、歩きでは(らち)が明かないのだ。

 しばらく進み、上に在る建物が見えてきたその手前。サイレント・ウェイが人影を見つける。彼の言葉を耳にし、他4人は視線を移した。

 階段の上にいたのは妖夢だった。

 

「あっ、妖夢!」

 

「あれ、みんな? どうしてここに……冥界に誰かが侵入したのを感じたからここに来たんだけど、魔理沙たちだったんだね」

 

「突然で悪いけど妖夢、私たち幽々子に用があるのよ。通してもらえる?」

 

「幽々子様に?」

 

 妖夢は霊夢たちを一瞥する。

 妖夢がここへ来た理由とは、主君たる西行寺幽々子を侵入者から守るため。彼女が持つ白楼剣と楼観剣は、以前アヌビス神に取り憑かれてしまった時に失っている。防犯のためにわざわざ予備の刀まで持ち出してきた。

 普段の彼女なら、きっとここで弾幕戦を挑んだことだろう。

 何せ妖夢は知り合いのほとんどに『辻斬り』と呼ばれるほどの()()()()()だから。

 しかし、それは彼女がシリアルキラーだとか狂戦士だとかそういう訳ではなく、単に口より先に刀が出るだけである。

 しかし、今のこの状況。()()()()()()()()で自分を打ち負かした霊夢と魔理沙に加え、アヌビス神に取り憑かれていた自分と互角に戦ったハイエロファントとチャリオッツがいる。そして謎のスタンドも。この5人を同時に相手すればどうなるか、分からない妖夢ではなかった。

 

「わ、分かりました……」

 

「……何で敬語になったんだ?」

 

 妖夢は諦めると、魔理沙のツッコミを受けながら近くにいた人魂に何かを伝える。その後5人に自分に着いてくるよう促し、踵を返した。

 5人が彼女に続いて門を潜ると、右を見ても左を見ても趣深い庭が広がっている和風の豪邸が目前に現れた。これが白玉楼である。冥界の幽玄たる雰囲気を崩さない庭の手入れは、ここの庭師である妖夢が行っている。

 玄関から邸内に入り、いくつか畳の部屋を抜けて、また長々とした今度は縁側を歩く。隣り合っている庭には妖夢が整えた植物たちが見られ、人魂も外と同じように漂っている。それらを目にしていれば退屈することはなかった。

 そして、ある部屋の前まで来ると、ようやく妖夢の足が止まる。

 

「入ります。幽々子様」

 

「……どうぞ〜〜」

 

 障子の向こうから若い女性が返事をする。妖夢は主君の了承を得ると、「失礼します」と断りを入れ、5人と共にいよいよ入室した。

 魔理沙と霊夢は久々の再会。ハイエロファントたちスタンドは初めて出会う。桃色の髪で水色の着物を着た亡霊の女性、西行寺幽々子は座布団を敷き、部屋の真ん中に坐していた。

 

「先程送った霊が言いました通り、こちら霊夢たちが幽々子様に用があるとのことで……」

 

「えぇ、分かってるわ。妖夢、霊夢たちに座布団を用意してあげて。それとお茶とこの前買って来てくれた人里のお菓子を……」

 

「悪いけど幽々子。私たちまぁまぁ急いでるの。悠長にあんたの2()()()()()()には付き合えないわ」

 

「あらあら……それは残念」

 

 幽々子は扇子で口元を隠しながら言う。

 普段は妖夢にとやかく言われるため、この機会に乗じておやつをつまもうとした彼女。しかし見事阻まれてしまい、言葉通り残念そうな表情を浮かべた。

 そんな幽々子のスタンドたちからの印象だが、一名を除いて霊夢が言った通り「飄々している」というもの。たった二度しか霊夢と会話を交わしていないが、ハイエロファントとサイレント・ウェイは彼女から大物の凄みを感じ取れずにはいられなかった。

 

「最近、幻想郷の神霊……と言っても力の弱い小神霊なんだけど、おかしな動きをしてるのよ。いきなり消えたり、またどこかから現れたり。その原因を知らないかと思って来たのよ」

 

「ふゥん。なるほどね。霊に関係してるから、冥界(ここ)に来たと……」

 

「私もそう詳しくないから、スペシャリストの力を頼ろうとしたってわけ。どう? 何か分かる? それとも、あんたでも分からない?」

 

「ふふ。どうかしら。疑わしいなら信じる信じないはあなた次第だけど、ヒントをあげる。その小神霊たちは冥界との関係はないわ。そして、怪しいのはお寺の墓地よ」

 

 予想外の答えが出た。霊というのなら冥界にほぼ関わるものだと思っていたが、そうでもないらしい。冥界はそもそも転生を待つ霊たちの待機場所のようなもので、転生することのなくなった神霊は冥界にはいない。

 しかし、今回の異変に幽々子が関わっていないということは分かったものの、またおかしな場所を指された。「お寺の墓地」となると、おそらく命蓮寺の裏のことだろう。なぜそんな所が怪しいのか。

 

「寺ってなると……命蓮寺だよな?」

 

「……あの和尚が神霊使って何かしようとしてるって言いたいの?」

 

「違うわよ霊夢。私が言ったのはお寺じゃあなくて、その後ろのお墓の方。和尚さんは関係ないわ。とにかく、行ってみたら分かるはずよ」

 

 霊夢と魔理沙は顔を見合わせる。

 幽々子のことをスタンドたちよりは知る2人からすれば、彼女は何を考えてるか読みづらい存在ではある。仮に彼女が異変の元凶だったとして、幽々子はここで嘘を言うタイプの者ではない。たしてや誰かに擦りつけることなど。去年霊夢たちに弾幕戦で敗北しているのだから、変に状況を拗らせるような真似はしないだろう。

 霊夢と魔理沙が頷き合うと、今まで黙ってやり取りを聞いていた妖夢は帰りの案内のために部屋の出口の方へ。スタンドたちはスタンドたちで、話を何となくで理解して妖夢に続く。

 ちなみにだがその際、というよりそれまでチャリオッツはずっと幽々子に釘付けであった。美しさと少女のような可愛いらしさが同居している彼女の容貌は、確かに男性の目を惹くものではあるかもしれない。

 

「んじゃ、幽々子。私らはお前の言う墓地に向かうとするぜ。妖夢はどうする? 一緒に連れてってやろうか?」

 

「うーーん……大丈夫よ。()()()()()()()()()

 

 退室する直前、魔理沙が意味ありげな笑みを浮かべながらそう訊いたが、幽々子は首を横に振った。魔理沙の真意は「妖夢を連れて行けばお前はお菓子を食えるぜ」というものだが、きっと伝わった上で断ったのだろう。幽々子は妖夢のことを考えている。

 アヌビス神との戦いが終わり、自身の刀を失った妖夢は以前と比べてどこか上の空になることが多かった。本業は庭師であるが、幽々子の護衛もまた職務の一つ。それに、彼女にとっての剣とは鍛えてこその、まさに己自身。どこかへ旅立ってしまった師、もとい祖父の形見のようなものでもあった。

 彼女が一人で動き出せない、動き出そうとしないうちは幽々子もそう手を出すべきではないと考えていた。霊夢や魔理沙がいるのだから、彼女がそうしようとしないうちは妖夢を向かわせる必要はない。

 魔理沙は幽々子の返事に「そっか」と返し、部屋を出る。こうして部屋の中には幽々子一人……ということはない。まだ、霊夢が彼女の目の前に立っていた。

 

「あなたは行かないの? お茶欲しくなっちゃった?」

 

「……ねぇ、幽々子。仲が良いあんたなら、あいつと会ってたりしない?」

 

「…………紫と?」

 

「えぇ」

 

「残念ながら、ね」

 

 幽々子は視線を落とす。霊夢も黙ってしまった。

 幻想郷の賢者、八雲紫は幽々子の友人であり、また霊夢の助言者でもある。そんな彼女はここ数ヶ月にも渡って両者の前に姿を現していない。

 霊夢が最後にあったのは満月の異変の時。紫と共に永遠亭を目指していたのだが、到着するや否やすぐに姿を消してしまった。それ以来、霊夢は紫と会っていない。幽々子もそれぐらいの時期から会っていなかった。

 だが、霊夢と違って幽々子はなぜ紫が姿を見せないのか、それは知っていた。

 

「……心配なのは分かるけど、紫なら大丈夫よ。ほら、彼女何かあるとすぐに冬眠とか言って、長寝するでしょ? それに、藍は紫は無事だって報告しに来てるわ」

 

「あの狐、何で私のところには来ないのよ……」

 

「ふふ。なんだかんだ、霊夢も紫がいないと寂しいのね」

 

「うっさい!」

 

 幽々子に茶化され、重くなりつつあった空気と霊夢は元の調子を取り戻す。そんな彼女を見て、「それでこそ霊夢よ」と幽々子も微笑んだ。

 博麗の巫女は幻想郷の調停者。妖怪退治と異変解決が仕事である。4人を待たせている霊夢は幽々子に短い別れの挨拶を告げると、部屋を後にしようと元来た縁側方向へ歩き出した。

 

「紫に代わって応援してるわね。霊夢」

 

「……いつもされてないわよ!」

 

 霊夢はそう吐き捨てると、部屋を飛び出して自身を待つ4人の元へと向かう。

 ツッコまれてしまった幽々子だが、もちろんそんなことは分かっている。本心半分、冗談半分で柔らかな笑みを崩さず手を振って霊夢を送り出した。

 およそ一月前に参加できなかった宴会。今度の異変を解決した暁には、ぜひ一番に呼んでほしい。今の幽々子の中にはこの気持ちがどんと鎮座していた。

 

 

____________________

 

 

「いやーー。しっかしあの幽々子って()、可愛いかったよなーーっ! 今度お茶にでも誘いたいもんだぜ。俺は亡霊だってこと気にしないもんね」

 

「うるさいぞチャリオッツ」

 

「ヘヘ。チャリオッツ、マジでお茶に誘っちまったらお前の財布スッカラカンになるぜ! あいつめちゃくちゃ食べるからなぁーー」

 

 先に外に出ていた魔理沙たちは、霊夢を待ちながら白玉楼の門の前で談笑していた。

 どうやら、チャリオッツは幽々子のことが余程気に入ったらしい。ハイエロファントたちに懸命にそのことを話しているが、肝心なハイエロファントには非常に鬱陶しがられていた。

 チャリオッツがハイエロファントに突っぱねられたり、魔理沙に小突かれたりしていると、ずっと門の方へ目を向けていたサイレント・ウェイが3人へ向き返る。

 

「おい、来たぞ」

 

「おっ、霊夢だ。何やってたんだぁ? おやつか?」

 

「違うわよ。ちょっとした世間話。さて、私も来たところでいよいよ異変解決に出発よ!」

 

 お祓い棒を掲げ、いかにもリーダーっぽく声を上げる霊夢に魔理沙は「後から来たくせに」とこぼす。

 霊夢はそんな魔理沙の言葉に構わず地面を蹴飛ばし、石畳の上を滑空しながら冥界の出口へ向けて飛び出した。サイレント・ウェイもそれに続く。

 勢いよく飛び出した霊夢の姿は、魔理沙の目には心なしか、どこかワクワクしていそうに見えていた。あるいは、何かが吹っ切れたような。

 霊夢は地底の異変の後、疲れてK・クリムゾンとの戦いには不参加。命蓮寺の寅丸星や雲居一輪などが起こした異変も、聖白蓮と戦っただけで異変を解決した達成感を味わえておらず、先日の世界(ザ・ワールド)は全力は出せたものの勝利の美酒は口にできていない。

 きっと、得意分野に飛び込んで憂さ晴らししたい。そういった気持ちもあるのかもしれない。

 

「ハイエロファント、チャリオッツ。なんだかんだ言って初めて3人で異変解決だ。気合い入れろよ!」

 

「もちろんだ」

 

「任せな。ちゃちゃっと解決しちまおーぜ」

 

 そして魔理沙、ハイエロファント、チャリオッツも霊夢たちを追って冥界を飛び出した。

 目的地は命蓮寺の裏の墓地。そこにある何か。

 待ち受けているのは誰も予想していない太古の偉人。そして、異空間に作られた『神霊廟』である。

 

 




登場人物が多いと、
「彼も喋らせなきゃ」、「彼女も喋らせなきゃ」となって書くのが難しいですよね。上手く描写できる人は凄い…………


to be continued⇒

あくまで参考までに、ということで。

  • 東方をよく知っている
  • ジョジョをよく知っている
  • 東方もジョジョもよく知っている
  • どちらもよく知らない
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