幽波紋の奇妙な幻想 《Drifted Destiny》 作:右利き
霊夢率いる異変解決チームが冥界を発ってから、およそ十分が経過。空を飛ぶ彼女らの目に、人里から少し離れた位置に建つ命蓮寺が見えてきた。
5人はそこを目指し、降下を始める。
飛倉が幻想郷中に現れる異変から数ヶ月が経っているが、実はこの中に命蓮寺に出向いたことがある者はおらず、全員その構造にあまり詳しくはなかった。だが、命蓮寺の横には幽々子が言っていた通り確かに墓地があるのが確認でき、彼女が言っていたことが本当のことであると確認する。
そして、霊夢は墓地に降下しながら、人の欲や願望の現れである『小神霊』たちがその付近に集まっているのを感知した。他の者は墓地に降り立つと、さっそく辺りに不審なものが無いか周囲を見回して確認する。
「うーーん、特に怪しそうなものはねぇな」
「でも、小神霊は幽々子が言ってたようにこの墓地に集まってるわ。今まで私が感知してたやつらも、みんなここに来てたのね」
「なぁ、ハイエロファント。正直俺はあんまり話に着いて行けてねーんだけど、お前どう?」
「幻想郷中に小神霊という特殊な霊が現れていて、何が起こっているのかを探りに来ているんだ。白玉楼の幽々子さんが言うには、この墓地に何かあるらしい」
「なるほどなー」
どこまでも他人事なチャリオッツの様子に、ハイエロファントは「君は何を聞いていたんだ」と心の中でツッコミを入れる。
聞いていたも何も、チャリオッツは白玉楼ではずっと幽々子に見惚れていたので、話は半分も耳に入っていない。漠然とした理解しかしていなかった。
そうして各々が話をしていると、ある墓石の後ろで何かの影が動いた。
それに一番最初に気付いたのは魔理沙。
だが、彼女が見たその光景を口走ろうとした瞬間、影は勢いよく飛び出した。
「当たって砕け、うらめしやー!」
『…………!』
「………………」
『…………』
「…………な、何か言ってよ」
飛び出してきたのは目玉と口の付いた大きな傘……を持った少女だった。彼女は忘れられた傘の妖怪、多々良小傘である。
霊夢は彼女と初対面ではない。だが、霊夢は彼女のことは全く知らない。
それでいて、対照的に魔理沙やハイエロファントは覚えている。彼女は最後に行った宴会にも出席していたからだ。霊夢とチャリオッツは酔っていたため覚えておらず、サイレント・ウェイは単純に喋っていないので印象に残っていなかった。
絶望的にリアクションに困る登場のおかげで、墓石の裏から飛び出してきた小傘と霊夢たちの間に沈黙が流れる。変えづらい、小傘にとって非常に嫌な空気だ。
「あっははは! 小傘ったら、また人間驚かすのに失敗したんだー!」
「あっ、響子ちゃん!?」
「な、何なんだ? この子たちは……」
「妖怪だぜ。ハイエロファント。霊夢、どうする? 退治するか?」
「そうね。しましょ」
「ちょ、ちょっと待った! 驚かすのに失敗した上に退治されるなんて嫌だよぉ!」
小傘が霊夢たちの反応に困っていると、さらにそこへヤマビコの幽谷響子が現れる。2人の接し方からして、どうやら友人の仲であるらしい。
小傘はどうやら人の心が食べ物であ。驚かすことによってその心を食べ、腹を満たしている。人喰いではない、特に害の無い妖怪ということだ。
しかしいくら害が無いとはいえ、彼女も響子も妖怪のため、霊夢は仕事として彼女らを退治しようと前へ出る。それに対し、もちろん退治されたくない小傘は両手を突き出して、「ちょっと待ってほしい」と全力で霊夢を止めようとした。
その後ハイエロファント等からも一旦話を聞いてあげるよう言われ、霊夢は退治を中止。小傘の話に耳を貸す。話を聞いてみるに、どうやら近頃困ったことがあったようだ。
「おほん、あなた達がここに来た理由は大体分かるわ。それに関わってると思うんだけど、最近この墓地に変なのが来ちゃったんだ。なんか番人みたいなのがいて、この先にある穴を守ってるのよ。私たちそれで結構困ってるの」
「変なの? 番人? こりゃあ本格的に怪しくなってきたな。私は小神霊共が集まってるのは間違いなく
「ま、十中八九そうでしょうね」
「うん。それでね、小傘が言った番人が居座ったのと同じタイミングで、小さな霊みたいなのが集まってきたの。きっと穴の中に何かあるんだよ!」
小傘と響子の証言より、墓地に何かがあるということは確定した。小神霊が集まってきたタイミングと番人とやらの来訪の時期を考慮して、異変の元凶が『穴』の中にある、あるいはいるというのは間違い無い。
霊夢と魔理沙は先にある穴に突入することを決定した。
そして、ここで気になってくるのは2人が言う穴の番人だ。一体どんな姿をしているのか。妖怪なのか、亡霊なのか。はたまた幻想入りしたスタンドなのか。
ハイエロファントは問うた。
「小傘、響子、穴の番人はどんなやつなんだ?」
「う〜〜ん……なんか鉄の塊みたいな……でも、形は子犬みたいだったわよ。それでいて動き回るし!」
「何だそりゃ。鉄でできた子犬だってかぁ?」
「私の友だちのスタンドさんは、その番人はスタンドだって言ってたよ。剣士さん」
「あーー……なるほどな」
チャリオッツは番人の珍妙な姿に納得する。幻想郷に来てから妖怪についての知識も積んできたため、番人が妖怪だろうと思い込んでいたのだ。
響子の友だちというのは、グレイトフル・デッドやリトル・フィートたちのことだ。彼らも響子たちと同じく、番人の存在に気付いていた。
番人の正体については教えてくれたものの、困っている旨を伝えても彼らは動かなかったと言う。なんでも、向こうが
スタンドたちは手を貸してくれず、小傘たちもそこまで力があるわけではないため、番人が居座っている状況は変わらなかった。
しかし、そこへ今日霊夢たちが現れた。響子と小傘はいきなり現れた番人を倒してもらうため、こうして情報を売り渡したのだ。
「じゃあ、その番人ってやつに会えば何か分かるはずね。情報ありがと。退治するのはまた今度にしてあげるわ」
「えぇ〜〜、嬉しくない!」
「よし、行ってみようぜ」
理不尽な目に遭った小傘と響子を置いて、5人は番人のいるという穴へ向かった。
穴はかなり近い場所にあり、数十歩歩いただけで見えてきた。後ろを振り返ると響子や小傘がやり取りしているのが見えるほどである。
穴の形はほぼ円形。縦に空いているのではなく、傾斜があって進むごとに下に下がる洞窟のようなタイプのもの。そして小傘たちの話によると、この辺りに番人がいるという話だ。しかし、周りを見てみてもそれらしい者の影は見当たらない。子犬のようなものの影が。
墓石に紛れて地面に落ちているのは、古い剣や長い釘といった鉄器だけだった。
「なーんだ。番人なんていないじゃあねぇか。ちょっぴり警戒してたのにさ」
「………………」
「どうしたの? サイレント・ウェイ。
「……あぁ。おそらくは……」
霊夢はサイレント・ウェイに問いかける。
彼は地面に落ちている釘をずっと見つめていた。
まるでそれ自体に何かを感じているよう。たしかに、墓地に釘や剣が散乱しているのはおかしな光景だ。だが、サイレント・ウェイは
すると次の瞬間、釘に異変が起こった。
プクッウゥ!
『!!』
「な、何だ!?」
「釘が……いきなり膨らんだわ」
「チャリオッツ、どうやらアレのようだな」
「あぁ。あの釘がスタンドだったか。周りにもあって
釘は突然風船のように膨張し始めた。
やがて長く細い風船のように膨らみ切ると、ギリリッと中間地点でねじれ、さらにどんどん形を変えていく。その光景はまるで透明人間がバルーンアートを作り出しているようである。
膨張後の変形はものの数秒で終わり、出来上がったのはバブル犬。
ここで5人は小傘の言葉の意味を理解した。子犬のような鉄の塊、それはこいつのことだったのだ。彼女が見たのは鉄器が変形してバブル犬になったもの。そしてその正体はスタンド。サイレント・ウェイはどれが番人なのかを当てていた。
『私はこの穴の先にある夢殿大祀廟の番人をしているスタンド、『チューブラー・ベルズ』。お前たち、一体ここに何の用の世界だ?』
「ハァ? 世界? 何言ってんだお前」
「私たちは異変を解決しに来たのよ。ここが怪しいから探りに来たんだけど、邪魔するなら容赦しないわよ」
『私はある方の命によってここを守っている。彼女の邪魔をさせるわけにはいかない世界だ。お前たちこそ、邪魔するのなら容赦しない』
チューブラー・ベルズと名乗るバブル犬のようなスタンドは、この姿が本来のスタンドヴィジョンというわけではない。いつか永遠亭を襲った透明ゾンビのスタンド、リンプ・ビズキットと同じように能力と関係の深いものにスタンド能力が宿ったものだ。
その能力とは金属に息を吹き込み、風船のように扱えるというもの。一見ふざけた能力に思えるが、実はとても恐ろしい真価を隠している。
彼は穴の先にいるらしい『あの方』の部下として番人をしているようだ。霊夢たちはその人物の元へ辿り着きたいわけだが、もちろんチューブラー・ベルズがさせるわけがない。戦いは避けられない。
チューブラー・ベルズの言葉を聞き、臨戦態勢に入ろうとする霊夢と魔理沙。すると、彼女らの前にハイエロファントが立った。
「何よ、あんたがやるの?」
「あぁ。ここは任せてくれないか。僕も修行して、その成果を確かめてみたいんだ。相手もちょうどスタンドだからな」
「私はいいぜ。いいよな? 霊夢」
「代わりにやってくれるんなら全然文句ないわ。面倒も減るしね。じゃ、任せるわよ」
「頑張れよハイエロファント!」
霊夢はそう言うと、墓地の砂利を蹴って穴へと向かう。魔理沙やチャリオッツたちも彼女に続き、チューブラー・ベルズの後方目掛けて飛び出した。
ハイエロファントはチューブラー・ベルズを相手する。だが、チューブラー・ベルズがハイエロファントよりも優先して、先に行こうとする霊夢たちを狙うのは当然だ。彼はすぐさま攻撃を仕掛ける。
『逃がさないぞ! 私は防御シールドにして、お前たちへのギロチン処刑の世界を兼ねているッ!! みすみす行かせると思うかッ』
ドッバァアアアッ!
『うっ!?』
「お前たちが何を企んでいるかは分からないが、僕らは一応
ハイエロファントは霊夢たちを攻撃しようとするチューブラー・ベルズを『エメラルドスプラッシュ』で阻む。
そのおかげで4人は穴の中へ侵入。外にはチューブラー・ベルズとハイエロファントの2人しかいない。墓地の多少の破壊は伴うが、小傘や響子も既にこの場を離れたようで、これなら大した被害は出ないだろう。
弾幕戦とスタンドバトルの相性は良くない。弾幕には弾幕で、スタンドにはスタンドで。それが一番。そして何より、ハイエロファントがこの実戦の機会を望んでいた。一対一が好ましいのだ。
4人を穴の中に逃してしまい、チューブラー・ベルズはようやくハイエロファントをターゲットとした。その証拠に、墓石の陰にあった剣や他の釘、その他金属製の物品が膨らんで宙に浮かび始める。
ハイエロファントの目の前のバブル犬のように、他の金属たちも形を変える。徐々に形作られていく、羽を畳んだ白鳥。多くの金属風船たちを相手に、ハイエロファントは掌にスタンドエネルギーを込めた。
久しぶりに「ッ」を使ったように思います。
STEEL BALL RUNを久々に読み返しましたが、記憶よりマイク・Oは「〜の世界」と言っておらず「忘れてるな〜」と反省しました。
あくまで参考までに、ということで。
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東方をよく知っている
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ジョジョをよく知っている
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東方もジョジョもよく知っている
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どちらもよく知らない